2015-03-05
”ほら、あの時ああ言ったのがさあ……"『ラブストーリーズ コナーの涙』『ラブストーリーズ エリナーの愛情』
映画 | |
二本で一つの映画!
自殺未遂を図り失踪した妻のエリナー。コナーはレストランを経営する傍ら彼女を探し続け、やがて大学に復学したところを探し当てる。だが、エリナーはつれなく彼を拒絶した。もうあの日々は帰ってこないのか? 二人で、そして三人で過ごしたあの日々は……。
エリナーの失踪を、夫であるコナーとエリナー自身それぞれの視点から二本の映画として作っている。男女、父母の考え方、物事の捉え方の違いを、このスタイルによって浮き彫りにしようという構成である。
両方見て、両者の視点を体験しないと映画としては完結しない。一応、どちらから観ても最終的にはわかるわけだが、敢えてどちらから見るべきかと問われるとコナー編からがおすすめである。一応、わずかながら時系列が先行して始まるし(エリナー編はやや後の時系列で終わる)、単に起きた「出来事」を捉えるならばわかりやすい。その上で、コナー編で「謎」として問いかけられるエリナーの内心が明かされるエリナー編を謎解き感覚で見るのが良いのではないか。
コナー編の方が時系列も整理されていて、順番通りに時間が流れていくのだが、これはやはり男女の物事の捉え方の違いを表現しているのであろう。ああなったからこうなって、ああなって……という風にコナーは物事を整理したがるのだが、それではエリナーがなぜこういう振る舞いをするのか、ああいうことを言ったのか、全然わからないのである。男にとって女は謎だが、女にとって男はそうではない、という何かの格言を思い出すところ。「そのこと」があって以後、以前とは全く変わってしまったエリナーの行動が、コナーはまったく理解できない。なぜなら、自分は何一つ変わっていないから。
記憶にまつわる物語でもある。「別の女と寝ればいいじゃない」と言われたコナーは抵抗を感じつつも結局その通りにしてしまうのだが、コナー編の序盤で印象深かったそのシーンが、エリナー編では一切語られなかったりして綺麗さっぱり忘れられている。再会後、車の中での会話で、コナー編ではコナーがそのことを自ら告白するのに対し、エリナー編ではエリナーが見抜く格好になっている。エリナー編では前述の彼女自身の示唆がカットされているので、単にコナーがただの浮気野郎か自ら距離を置き始めたかのように解釈するしかないのだが、コナー編ではエリナーに言われたとおりにしただけなのに……と理不尽に思うことに。ころっと忘れてるエリナーが悪い!わけだけど、コナー側にも「そのこと」があって以来不安定だった彼女のいうことを真に受けて……あるいはそれを言質として喪失感を埋め合わせた感もある。
二人の恋愛は、レストランでの食い逃げから始まった。店を走って飛び出し、公園に逃げ込んで抱き合う二人の幸せな時期。自分の経営するレストランの最後のパーティで、コナーは同じように食い逃げしたカップルを追いかけ、あの日と同じように街を疾走する。このシーンの美しさには涙が出てしまったよ。
しかし……エリナー編を観たら、食い逃げのくだりはスパッとカットされて抱き合っておしゃべりしてるところから始まる。その後、二人で蛍を見るシーンがあったのがわかり、エリナーにとってはその方が記憶に残る印象深いエピソードであることが伝わる。食い逃げは忘れたのかよ!
邦題は『ラブストーリーズ』だが、恋愛の話というよりは、原題『THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY』どおりエリナーの失踪にまつわる話で、その原因である二人の子である赤ん坊の死に物語はやがて直面する。序盤ではぼかされているのだが、そのことが次第に明らかになるにつれて、コナーとエリナー、それぞれの子に対する捉え方の違いが浮き彫りになる。
コナーには、妻、子供、仕事、金魚を、悪く言うならステータスや従属物のように捉えてしまっている部分がある。金魚の死に「おまえまで俺を置いていくのか」といういい台詞があるのだが、あくまで自分中心。対して、エリナーにとっては死んだ子供がほぼ自分の一部のように捉えられていて、喪失感が桁違いであり、二人の出会いが後回しで自殺未遂から物語が始まるしあたりが象徴的。普通に生活していればなんということもない差異なのだろうが、こうして死に直面した時に大きな違いとなってくる。
二人の物語が、
エリナー→子供の記憶>自分探し>>>>>>>>(越えられない壁)>コナー(いや、少しは気にしてるのよ……)
コナー→エリナーLOVE♡♡♡
と全然力点が違い、これが再び交わる点を見出すまでには長い時間を要することになる。かつて家族で過ごした部屋に戻り、赤ん坊の顔について話すシーンで、コナー編では「瞳だけ僕に似てた」と言うのにエリナー編のコナーは「全部君そっくりだった」というところも、コナーとエリナーの中での子供のウエイトの違いが表現されている。いや、こう書くとコナーが子供に対して薄情者みたいに思えてくるわけですが……やっぱりそこらへん、母親にはかなわないって! 出産を経ない男は、やっぱり子供を観念的に捉えることしかできないわけで……。その辺り、コナーが自分の父親と長い時間をかけてわかり合っていく過程でも見せられている。
コナーの父、エリナーの両親もそのあたりを表現するためか豪華キャスト。エリナーは妹がいるが、コナーは一人っ子なところや、コナーの父は再婚しているところなども、家族、夫婦関係への執着の違いか。
エリナーの母役のイザベル・ユペールが最高だね。出たーっ、『ピアニスト』! 常にワインを片手に装備した、フリーダムなフランス女! 行き詰まったら「パリに行きなさい」。ああ、超カッコいいわ。そんなフランス女の血がエリナーにも流れているのである。しかしワイングラスを取り上げられたら急激に弱体化するところに爆笑した。「私のワイン〜!」「まだ残ってるの〜!」、きっとワインの方が本体なんじゃなかろうか。
色々と細かく見ていくと、考え抜かれて作られていて面白い。脇のキャストも気が利いてるし、二本見ても退屈させない作りになっている。ただまあ、一本ではほんとに中途半端に終わってしまうので、料金倍払って二本見るのが前提。その価値はある!と断言しても構わないが、やっぱり敷居は高いなあ。
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