改革は革命よりも難しい。政治の世界でそう言われることがある。 ひとた…[続きを読む]
先生が自由に教えにくくならないか。 学校の授業で、教科書とは別に使わ…
先生が自由に教えにくくならないか。
学校の授業で、教科書とは別に使われる「補助教材」について、内容が適切かどうかに留意を求める通知を、文部科学省が教育委員会などに出した。副読本や学習帳、資料集のほか、プリント、新聞などが対象だ。
気をつけるべき点として、教育基本法の趣旨に従っていること、子どもの発達の段階に合っていることのほか、授業で扱う際、偏った扱いにならないようにすることを挙げた。
いずれも重要な視点だ。過激派組織「イスラム国」(IS)に殺害された遺体の映像を見せたり、先生が自らの政治信条を子どもに押しつけたりすることは決して望ましくない。
ただ、何が「適切」な教材で、何が「適正」な取り扱いかという答えは一つではない。
どんな教材がふさわしいかは、まずは子どもと向き合っている先生が考えることだ。地域の実態をふまえ、学校で判断すべきだ。国がわざわざ通知を出すようなことではないだろう。
日本の学校はただでさえ、「偏向している」との批判を恐れ、意見の分かれる政治や社会のテーマを扱うのを避けてきた。通知は、先生をさらに萎縮させることになりかねない。
各教委は、教材の届け出や承認を求める規定を設けることになっている。副読本や資料集が対象の場合が多い。
教委が慎重になりすぎ、先生自作のプリントや新聞、雑誌まで届け出を求めるようでは、ニュースなど生きのいい話題を扱いにくくなる。
教育委員会改革で、自治体の長が4月から「総合教育会議」を設け、教委と話し合う。首長の政治的な立場で、教委の姿勢が左右されてはならない。
補助教材の使い方をめぐる通知は、1964年と74年にも出された。「自民党・文部省」対「社会党・日本教職員組合」とイデオロギー対立が激しかった時代だ。今は違う。
グローバル化の進むなか、主体性を持ち、言語や文化の違う他者と協力しながら新しい価値を生み出す。それが、文科省が大学入試改革や次の学習指導要領で育てようとしている人物像のはずだ。道徳の教科化でも「考える道徳」を目指す。
その実現のためには、多様な教材を用い、いろいろな見方を知り、多角的に考える機会を増やすことが欠かせない。
教室の外で子どもは様々な情報に触れている。幅広い教材に出会い、それをもとに考え、判断する力こそ育てたい。
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