「色々な人たちがいつか来るであろう“EPIC DAY”を求めている姿。
レコーディング中はそういう気分でアルバムを見ていましたね」
前作『C'mon』から3年8ヵ月ぶりにニューアルバム『EPIC DAY』がリリースされますが、いつから制作に入ったんですか?
アルバムの制作自体は合い間合い間でやっていたりしたので重なってないこともないんですが、ソロ活動を終えて、昨年8月からですね。新たな気分でスタートさせました。
松本さんと連絡を取り合って?
そうですね、8月から徐々に。スタジオに入る前にメールで「今どんな音楽聴いてる?」とか「やりたいことある?」といった話をしながら。いつもそうなんですけどね。
お互いどんな音楽を聴いてたんですか? 新しいボールはあったんですか?
僕もそうだったんですけど、むしろピンク・フロイドとかディープ・パープルといった昔の音楽を聴いてるって話をしていましたね。
タイトル曲「EPIC DAY」がアルバムの指針になったんですか? それともシングルが?
アルバムを念頭に置いて作るんですけど、シングルを出すことは決まっていたんです。シングルっていうと、昔はキャッチーですぐに耳について、聴けばすぐに分かるような感じだったけど、今は聴かれ方も変わってきているような気がして。久しぶりに出す僕らのシングルは一体何がいいのか考えて、最終的には、今の自分たちの雰囲気が一番伝わるものがいいんじゃないかと選んでいったんですけど。「有頂天」のラフのデモを作った時に、「これは面白くなりそうだ」って話していました。
最初に出来た曲って何だったんですか?
歌のキーを決めなきゃいけないのもあって、今回はフルコーラスきっちりアレンジするのではなく、ワンコーラスずつぐらいをバババババッと録って、その中から選んだものをフルアレンジして、フルコーラス作って、歌詞を乗せていくっていう作業だったんですよ。だからラフなデモが完成したのは「Man Of The Match」が最初でした。でも制作的には最後の方になったという、不思議な曲なんですけど。
アルバム1曲目の「Las Vegas」ですが、サウンドはものすごくキラキラした壮大なロックなんですが、詞ではラスベガスではなくて、国内の寂れたシャッター商店街でくすぶっている男の姿が描かれていて。「NO EXCUSE」「EPIC DAY」もそうなんですが、今は上手くいってないけど何とかしようともがいてたり、情けない主人公が出てくるんですが、この姿は稲葉さん自身にある分身だったりするんですか?
たぶんそうだと思いますね。そういう性質なんだと思います。
B'z の稲葉さんっていう大きな存在の人が、「NO EXCUSE」で<もう一回やらせてください>とか書いていたりするんで、親近感が沸きました。
初期の頃からB'zのサウンドはハードなものが多かったので、それとの対比、バランスからも、俺についてこい系の歌詞ではないものが多かったと思いますけども。あとは僕の元々の性質が……出てるんじゃないですかね(笑)。
歌詞で苦労された曲はありました?
今回も詞自体はあったんですが、勢いで作ってるものも多いので、同じだなと思ったらシチュエーションを変えたりして。メロディやリズムに合わせた時に、いまひとつ乗せにくいなと感じたのが「EPIC DAY」。「NO EXCUSE」もそうでしたね。意外と苦労しました。
アルバムのタイトルでもある「EPIC DAY」にはどんなイメージを持ってたんですか?
レコーディングしていく中で、“EPIC”って言葉が気になっていて。海外のスポーツニュースとか、すごく活躍した人に対して「今日は彼にとってのEPIC DAYだった」とか「EPIC NIGHTだった」って言うんですよ。それこそ全米オープンの錦織選手とかね。サーフィンの波情報でも、とんでもなくいい状態を“EPIC”って言ったりと、立て続けに耳にする機会があって、いいなって思っていたんです。“EPIC”には色々な意味があると思うんですけど、“とんでもなく素晴らしい”という形容詞でもあって、一生に一度あるかないかの輝ける日、最高だったと思えるような日として設定して、その気分でそれまで書いていた詞を見たら自分の中でも納得がいったんです。スポーツだけでなく何でも、いつ来るか分からない“EPIC DAY”に向けて、準備するし、練習するし、あらゆる努力をする。でも、来ないかもしれない。厳しい条件ではあるけど、すべての人に、平等にある“EPIC DAY”を追い求める権利があるし、それを追い求める姿が感動を呼ぶこともあるし。色々な人たちがいつか来るであろう“EPIC DAY”を求めている姿。レコーディング中はそういう気分でアルバムを見ていましたね。
ジャケットの風船も掴む前に飛んでしまいそうですもんね。
色々なジャケット案があった中で、1つだけ風船があるものがあって。“捕まえたいんだけど捕まえにくい”という“EPIC”の儚さ、希望の象徴でもあり。壮大な自然じゃなくてモノクロの街中っていうのもリアルでいいなと。
「アナログ盤は、音楽を聴く楽しさをぜひ味わってほしいという思いもあります。
興味のある方はぜひひっくり返して聴いてください(笑)」
収録曲が<SIDE A><SIDE B>と表記されていますが、アナログ盤も出るんですよね。
遊び心です(笑)。僕ら2人ともアナログ盤を聴くので、あの大きさのジャケットは手にするとワクワクしますよね。今はいい意味でもダウンロードで気軽に音楽を聴けるけど、アナログ盤は手間がかかるじゃないですか。1曲飛ばすのも針を動かさなきゃいけないし。そういう音楽の聴き方、楽しさを味わってほしいという思いもあります。興味のある方はぜひ5曲ずつひっくり返して聴いてください(笑)。アナログ盤を聴いて思いましたけど、やっぱり音楽の聴き方が変わりましたよね。
アーティストとしては曲順、曲間もこだわりますよね。
そうですね、リアルに溝削れていますからね(笑)。アナログ盤が出るのが決まった時に、ひっくり返して1曲目は『EPIC DAY』っていうのは決めていました。
B面の1曲目! ますますアナログ盤で聴きたくなりました。
ひっくり返して聴かないですよね(笑)。今は本当に便利ですよね。曲もすぐに飛ばせるし。知り合いのアレンジャーが「曲の中でアレンジをどんどん変えていかないと、すぐ飛ばされちゃうし、聴く人が飽きちゃう」って話をしていました。
それはエンタテインメント全体に言えることかもしれないです。
今は即効性のあるものが求められているような気がします。作る側がどこまで対応すべきかは人それぞれなので分からないですけど、じっくりと作りたいという思いもあります。昔は良かったっていうのではなく、むしろ新しいものとして、こういうデバイスもありますよ、ひっくり返して聴けますよ、と(笑)。
「僕ら離島にはかなり行ってますよ。
本島からもファンの方が来てくれたりとすごく盛り上がるんです」
アルバムの発売から1週間後の3月11日から全国ツアー「B'z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-」がスタートします。
今はセットリストを考えているところですね。バンドのリハーサルもこれからです。ツアータイトルは「EPIC NIGHT」って決めてました。ツアーでも素晴らしい“EPIC”を目指していきたいな、と
今回のツアーは、アルバム曲が中心になるんでしょうか?
そうですね。でもアルバムは10曲なんでね。定番曲もやると思いますよ。
ステージセットや演出面はどうなりそうですか?
まだ決まってないんですが、ホール・アリーナツアー、そしてスタジアムツアーでは演出もセットリストも多少違ってくるとは思います。
今回、奄美(鹿児島)でもやるんですね。北海道公演を見てもかなり細かく回りますね。
奄美は今回で2回目ですね。壱岐(長崎)は初めて行きます。僕ら離島にはかなり行ってますよ。福江島に始まって、佐渡島、隠岐の島……奄美大島は今回も行きますけど。島の人たちはもちろん、本島からファンの方が来てくれたり、お祭りみたいに盛り上がるんですよ。すごく楽しいですし、皆さんやるべきだと思いますけど。
島の方からしてみれば、B'zがやってきた!みたいな盛り上がりになるんですよね?
以前、隠岐の島でやった時には会場の外に屋台がブワーッと並んで。サザエ焼いたり、イカ焼いたりして。僕らもそうですけど、観光気分で来てくれる人もいるんでしょうね。
B'zはこれまで何十年もツアーを行ってきていますが、中でも印象に残っているステージセットはありますか?
セットはいっぱいありますね。ぐるぐる回るステージもあったり。バイクが上で飛んでた時は“お客さん全然こっち見てないな”と(笑)。みんなの視線が上に行ってるのをステージから見るのも楽しかったんですけど。
トラブルやハプニングは?
セットが動かなかったりしたことがあったかな。25周年ツアーの際に「XXV」のトラスが動いて「XXV(25)」の文字を作り出して火が付くんですけど、その数字にならないまま途中で止まっちゃって。“とりあえず燃やせ!”ってうやむやにしたことがありました(笑)。
今回もそういった仕掛けは用意されるんでしょうか?
どうだったかな? さっきもチェックしたんですけど……いっぱいあると思いますよ。
B'zのライヴの魅力や醍醐味ってどんなところにあると感じていますか?
バンドのみんなの演奏は本当に素晴らしいので、バンドの面白さを感じてもらえれば。観ていただければ伝わると思います。
25周年を経て、B'zとして25年以上松本さんと一緒にやってきている意味とは?
たまたま上手くいく相性だったんだと思います。2人とも性格が全然違いますしね。ステージの上って一種独特の空気、密度が濃い空間なので、話さなくても相手が求めていることが分かったりしますし。皆さんそうだと思いますけど、長く続けてやってるからこそですね。この距離感は昔から変わらないです。
(インタビュー/荘口彰久 テキスト/高橋公子)