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コラム:女性の賃上げが男性も幸せにする4つの理由

2015年 03月 6日 18:41 JST
 
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Lynn Stuart Parramore

[5日 ロイター] - 同じ仕事をする男性と女性の賃金を同一にすることは、公平性に関する問題であるため、頭を悩ませる必要は全くないはずだ。だがこれは、単に女性が当然の報酬を得ているかどうかという問題や、都合のいい政治的な話題で済む話でもない。

同一賃金は誰にとってもに役に立つからだ。そして、かつてないほど多くの米国民が、埋まらない格差について懸念の声をあげているからだ。

トムソン・ロイターの委託を受けたイプソスが2月27日─3月2日に実施した調査では、同じ仕事で女性と男性の賃金が違うとの回答は61%に上った。支持政党別に見ると、共和党で61%、民主党で77%、無党派層で65%がこの考えを共有している。また、回答者の半数近くがこの問題を「非常に重要」と考えていることが分かった。

実際のところ、同一賃金の恩恵は、老若男女や支持政党に関係なく、すべての人にもたらされる。以下に、同一賃金を支持する4つの理由を挙げる。

<経済成長>

給料が少なければ、その分だけ女性の購買力に水を差す。マーケティング担当者らはずいぶん前から指摘していたことだが、家計の主たる消費者は女性であることを、米国の政治家たちは今こそ認識すべきだ。家庭での購買決定権の実に85%は女性が握っている。

米国では、食料品や衣服といった日常品の大半のみならず、自動車や家電製品の半分も女性が購買の決定を下している。戦略コミュニケーション・コンサルテイング会社のフライシュマン・ヒラードと出版社のハーストが2012年に行った調査によると、向こう10年間で、消費者支出を3分の2を女性がコントロールするようになるという。

女性の所得が増えれば、モノやサービスの消費も増え、米経済の本格的な回復に弾みをつけるカンフル剤として作用するだろう。どれくらいの効果があるのか。女性政策研究所のハイディ・ハートマン所長はハフィントン・ポストとのインタビューで、女性の賃金上昇は、米経済を少なくとも3─4%ポイント押し上げるとし、賃金上昇が女性の労働参加を促すことを考慮するなら、その効果はさらに大きいと指摘した。

<中間層の拡大>

女性の賃金の公平化は、減りつつある中間層の所得の改善にも大いに役立つだろう。女性の賃金格差に取り組む団体「WAGEプロジェクト」の創設者イブリン・マーフィー氏によれば、平均的な正規雇用の女性は生涯で70万─200万ドル損をしている。世帯収入に貢献する女性の数がかつてないほど増えているなか、女性の賃金が低いことは中間層世帯に直接的な打撃を与えている。そこには、家計の所得を女性に頼る男性や子供も含まれる。

経済学者のヘザー・ボウッシー氏は2010年、米国の典型的な妻の収入は家計所得全体の約3分の1を占めると米議会で証言。また過去数十年の傾向として、妻が働く世帯は収入が増加傾向にあるとも述べた。この妻の所得が、世帯間の格差を生む主な要因にもなっている。女性が公平な賃金を得られれば、中間層の拡大と経済の安定につながるだろう。

<貧困の撲滅>

ブルッキングス研究所が行った研究では、2008─2012年に米国の貧困層は500万人増加し、同国の貧困が記録的な水準にあることが示された。ジャーナリストのマリア・シュライバー氏が毎年発表する報告書で集めたデータによると、米国人女性の3分の1が貧困状態もしくはその瀬戸際で生活している。

では、女性が貧困を不公平に背負わされているのはなぜだろう。女性政策研究所のハートマン所長らは、賃金格差がその答えの一部だと考えている。同研究所が行った分析によると、女性に公平な賃金を支払うことで、働く女性の貧困率を半減することが可能だという。

稼ぎ手が女性1人だけの世帯には、賃金格差が特に重くのしかかってくる。また、低賃金で長年働いてきた女性は年金額なども低いため、定年後に貧困に陥る可能性が高まる。

<国際競争力>

米国の国際競争力という点においても、賃金格差は深刻な課題だ。賃金格差は女性の労働参加を妨げ、米国経済に女性のスキルと才能がもたらす利益が反映されにくくなる。世界経済フォーラムが2014年に発表した報告書によると、米国の賃金平等度は調査対象の142カ国中65位。また、国際労働機関(ILO)の世界賃金報告(2014/15年版)では、米国の賃金格差は調査国38カ国のなかで最大だった。

米国の政策は明らかにどこか間違っている。賃金平等度で上位だった国々は、たった1つの法律を制定して終わりにはしない。常に新たな政策を考え、現行法に修正を加えたり、根強い問題を解決するための対策を打ち出したりしている。

デンマークを例にとってみると、同国は1976年に男女賃金平等法を制定。だが、これで終わりではない。同法は何度か修正され、最近では2008年に改正された。同国では3年に1度、雇用相と男女平等相が、賃金平等を保障する対策に関する報告書を発表している。米国が見習うべきところはあるはずだ。

共和党が男女の賃金平等を可能にする法律に反対する一方、民主党はこの問題を2016年の大統領選で支持者たちに訴える争点の1つだと捉えている。

だが、これは超党派で考えるべき問題だ。賃金の平等はお金のことであると同時に常識にかかわる問題だ。米国は世界に後れを取ってはならない。

*筆者は独立系ニュースサイト「AlterNet」の寄稿編集者などを務める。著書に「Reading the Sphinx: Ancient Egypt in Nineteenth-Century Literary Culture」がある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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