今週スイスのジュネーブで開幕する国際モーターショーでは、「決して製造されることがないかもしれない自動車」が最大の話題となりそうだ。それは米Apple製の自動車だ。
ジュネーブモーターショーには世界中から自動車メーカーが集結し、最新のミニバンやシティカー、SUVを披露する。自動車市場は目下、欧州では回復基調が継続するも、新興市場では需要の減速が見られるなど、不確実な要素を抱えている。
だが自動車業界には、さらに長期的な懸念も大きくのしかかりつつある。IT大手のAppleが電気自動車を開発中と報じられたことを受け、ここ130年近く燃焼エンジンの改良に精力を傾けてきた老舗自動車メーカー各社は、未来の車を開発する上でもまだ自分たちが最も有利な位置につけているのかを不安に思い始めている。
自動車にITを組み込み、スマートフォンなどの機器と連係させる動きが進む中、IT企業や自動車メーカーには新たなビジネスチャンスがもたらされ、それに伴い、次第にライバル関係も生まれつつある。
IT系調査会社Gartnerの自動車担当副社長ティロ・コスロフスキー氏によれば、今や自動車メーカーとIT企業の間では、次世代自動車の「脳」となる部分の制御をめぐる競争が始まっているという。
「自動車メーカーの立場は2つに分かれることになる。この新しい分野に自ら取り組むメーカーとなるか、自動車の中核を担う技術を外部のIT企業に委託するメーカーとなるかだ。この先5年でそれがはっきりしてくるだろう」と、同氏は語る。
Appleの他、無人走行車を開発中のGoogleなどのソフトウェア企業には新たな収入源を開拓する革新力があることを見せつけられ、自動車メーカーは戦々恐々としている。
自動車業界の幹部らを不安にさせているもう1つの要因には、Appleの企業としての大きさがある。Appleの時価総額は7500億ドルであり、これは独Daimler、独Volkswagen、仏Renault、仏Peugeot、伊Fiat Chrysler、米Ford、米General Motors(GM)の時価総額の合計を上回る額だ。
ドイツの大衆紙Bild am Sonntagの取材に応じたAppleのティム・クックCEOは1日、自動車の開発に関する質問に対してはコメントを断り、代わりに次のように答えている。
「売上げや市場シェアや利益はどれも二次的なものだ。重要なのは、優れた製品の開発に集中することだ」
自動車メーカーはまだ戦いをあきらめたわけではない。多くのメーカーは、自らをハイテク企業へと変身させるための取り組みに多額の投資を行っている。
Daimlerのディーター・ツェッチェCEOは先日、「未来の自動車の開発をめぐる競争はまだ当分終わらない」と語り、IT企業がどのような役割を担うことになるのかもまだ定かではないとの見方を示した。
「GoogleなどのIT企業はこの動きに加わりたいのであって、自ら自動車を生産したいわけではないはずだ」と同氏は指摘し、次のように続けている。
「こうしたIT企業がわれわれ自動車メーカーにとってどの程度まで相補的な存在で、どの程度まで依存できる相手であり、どの程度のライバルになるのか。われわれはそうしたことを見極めた上で自分たちの役割を見つける必要がある」
現代の自動車の発明者とされるDaimlerは目下、新しいタイプの顧客サービス「MercedesMe」を展開中だ。ライバルのBMWも新しい車載サービス「ConnectedDrive」に力を入れている。ConnectedDriveでは、最新の交通情報を入手したり、“インフォテインメント”(情報とエンターテインメントを融合させたもの)を利用したりできる他、エアバッグが作動した際の緊急サービスへの通報などもサポートされる。
Renaultのカルロス・ゴーンCEOは2日、スペイン・バルセロナで今週開催されるモバイル業界の展示会「Mobile World Congress」に登壇してから、ジュネーブのモーターショーに向かう。これも、自動車メーカーとIT企業との融合を顕著に示す1例だ。
GMの欧州部門であるOpelもジュネーブモーターショーでは、新車の発表より、車載インフォテインメントシステム「Opel OnStar」の発表に力を入れる。
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