【乾坤一筆】ぶれず報じてきて正解だったアギーレ監督の八百長疑惑

2015.2.5 11:30

 サッカー日本代表のハビエル・アギーレ監督に関し、八百長疑惑が持ち上がっていると昨年9月、日本で真っ先に報じたのはサンケイスポーツだった。スペインなどのメディアが伝えたのをキャッチしたもので、クラブに対して疑いがかかり「監督自身に調査が及ぶかは不明」という内容だった。正直に明かすと、このときはまだ、アギーレ監督の解任に発展する事態とは思っていなかった。

 しかし、指揮官や選手に金銭の授受が判明し、スペインの検察庁が告発したことで、「このまま指揮を任せてはいけない」という考えは強くなる。「捜査」という密室性の高い事象であることに加え、遠く離れた欧州での疑惑。限られた情報の中、取材を進めるのは容易ではなかった。

 記者の中には当初、「黒ではなく疑惑の段階では、日本サッカー協会が解任に踏み切らないのもやむを得ない」と考える者もいた。それでも取材を重ねるうちに、「休養という形でもいいから、このままずるずると指揮をさせるべきではない」という思いを強くしていった。

 そこには、W杯の予選や本大会の期間中といった大事な時期に突然、指揮官が不在になるという最悪の事態を招いてはならない、という考えがあった。日本協会の大仁邦弥会長は「リスクを排除する」と解任理由を説明したが、われわれが早くから指摘していたことだ。

 サンケイスポーツのアギーレ監督に関するスタンスには、社内外から「厳しすぎるのでは」という声が聞こえていた。しかし、ぶれずに報じてきたことに間違いはなかったと確信している。

 もちろん、問題はこれで終わったわけではない。後任監督を早急に決めなければならないし、アギーレ監督を選び、解任をここまで引っ張った日本協会幹部は、きっちりとけじめをつけなくてはいけない。

 選手に驚きはあっても、動揺はないだろう。監督の交代で、今度は自分が代表に選ばれるチャンスととらえている者も少なくないはずだ。日本代表の新たな船出を、しっかりと報じていきたい。

古沢 一彦(ふるさわ・かずひこ)

 1988年入社。産経新聞社会部、運動部などを経て2007年からサンケイスポーツ運動部。サッカーのフランス、日韓W杯やシドニー五輪、長野、トリノ冬季五輪などを取材した。現在はサッカー担当のデスクながら、かすりもしないトト(サッカーくじ)で一獲千金を夢見る毎日。

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