『ジャッジ!』公開直前 永井聡監督インタビュー
主演に妻夫木聡、ヒロインに北川景子を迎え、世界一のテレビCMを決める国際広告祭を舞台に「業界の裏側」を描いた映画『ジャッジ!』が11日、いよいよ公開される。
超豪華キャストとCM業界のトップクリエイターがタッグを組んだ、新年を彩るにふさわしい注目作だ。
脚本は、カンヌ国際広告祭などの受賞歴を誇るCMプランナー・澤本嘉光氏。そして、監督を務めるのは、CMディレクターとしてサントリー、大塚製薬など、数多くの話題作を手掛けてきた永井聡氏だ。
今回、公開を直前に控えた永井監督に、製作秘話やCMに対する思いについて伺った。
―広告業界がテーマの『ジャッジ!』ですが、どのような映画にしようと考えましたか?
「業界の人間が業界を描く」ということで、なるべくリアルにしたいなと思いましたね。映像に関しては、CMのスピード感で、テンポ良く引っ張っていく絵作りを意識しました。
また、広告業界の人間って「アートなモノ」を作ろうとしちゃう部分があるんですが、僕は「王道」の作品にすることで、たくさんの方に楽しんでもらいたいと思いました。そのため、澤本さんと一緒に、脚本は数え切れないほど練り直してます。最初は、恋愛要素がなかったくらいです。
―作中では、エースコックの「きつねうどん」や、カギを握る「ちくわ」をはじめ、多彩なCMも見どころですよね。
映画やドラマの中に出てくるCMって、作り込まれていないことも多いですが、僕は実際のCMにも引けを取らないクオリティを意識して製作しました。
また、エースコックやトヨタなど、実際の企業名を使うことは当初からのこだわりだったんです。架空の「〇〇食品」等ではなく、実名にすることで、映画に感情移入ができますからね。
「ちくわ」にしたのは、外国人が全く知らないモノからです。食べ物かどうかもわからないみたいです。
作中のちくわCMに関しては、あえて「地方っぽさ」を狙いました。地方独特のチープな映像は海外では全く通用しないので、逆にそれがいいなと。出演者もほぼ素人です。撮影時は雨だったんですど、「それも地方のCMらしいな」と、撮り直していません(笑)。
―妻夫木さん演じる主人公・太田喜一郎のモデルはいますか?
モデルは脚本の澤本さんです。実際に澤本さんは、海外でアニメのTシャツを着て審査員をやったこともあります。そうまでしないと、外国の方って話を聞いてくれないんですよね。広告祭では、ロビー活動も実際にあります。作中のエピソードは、オーバーにはしていますが本当の事なんですよ。
―太田がCMの出来に葛藤するシーンがありますが、永井監督もご自身のCMに対して「納得いかないな」と思ったことはありますか?
不思議なもので、そう思いながら完成させたCMが、高く評価されることもあるんですよね(笑)。それに、僕は自分の中で納得が出来ていなくても、結果的にみんなが楽しんでくれれば、幸せな気持ちになれるんです。僕が理想とするCMって、不特定多数の人が喜んでくれて、学校でも話題になるようなものだからです。その意味で、僕自身は海外や日本のCM賞について、そんなに重要視してないですね。
―それでは、永井監督は太田のCMに対してまっすぐなキャラクターと共通する部分もあるのでしょうか?
実際には、広告業界では太田のような純粋さだけでは勝負できないと思います。他の業界と同じように、流れに上手く乗る人の方が成功することも多いです。でも、彼のような「気持ち」をなくすと仕事はすべて面白くなくなるし、崩れてしまうと思うんです。なので、心の奥の部分では共感していますね。
―撮影を通して印象に残っているエピソードを教えてください。
豊川悦司さんがクランクアップされたときに、少し一緒に飲む機会があったんです。その時、「(映画の)演出は初めてだったので......」と言ったら「いや、初めてじゃないよ。CM何本もやってるからね」って答えてくれました。豊川さんは、CMの演出も映画と一緒に数えてくれていたんです。そういう考え方を持ってくれていたことに、感動しましたね。
―それでは、最後に読者に向けてメッセージをお願いします。
広告業界を知らない方でも、「王道」のストーリーで楽しめるエンターテインメントになっていますので、是非ご覧になってください!
映画『ジャッジ!』(配給:松竹)
監督:永井聡 脚本:澤本嘉光
出演:妻夫木聡/北川景子/リリー・フランキー/鈴木京香/豊川悦司 ほか
2014年1月11日全国ロードショー