サービスをゼロから作り、500万ユーザーまで増やした「爆速のエグゼキューション力」

Posted on 2015年3月6日 7:00

human idea Retty 100%を求めない リーンスタートアップ スピード感 ポジティブシンキング エグゼキューション力 根拠のない自信

motech_エンジニアHack_retty_長束

「Retty」を開発した取締役は、開発経験ゼロの元ネット広告営業だった!

 私の職歴は、エンジニアとしてはかなり珍しいと思います。「Retty」の開発に関わるまではプログラミング未経験、全くの素人でした。

大学時代から「20代で起業し、30代でビジネスを成功させ、40代に投資家となり、50代でやりたいことをやる」という人生設計を立てていました。そのためには、まずは経験を積もうと思い、一部上場企業の素材メーカーに入社し、企業法務、株式実務等を担当しました。2年後に、インターネットの可能性に魅せられ、ネット広告代理店に転職し、モバイル広告の営業やモバイルSEOコンサルティングを2年半経験しました。そして、営業部門の上司だった武田和也(Retty代表取締役)と「Retty」を立ち上げることにしました。

「食を通じて世界中の人々をHappyにしたい」というビジョンは、当初からありました。2人とも営業出身でしたが、サービスを自分たちの手で創りだすことにこだわり、自分たちで勉強して開発しようと決意したのです。

そこからは、猛勉強でした。「初めてのPHP」「SQLとは何か」みたいな初心者向けの本を買ってきては、見よう見まねで作り始めました。しかし、本を読んだだけではわからない部分も多く、すぐにエラーに直面していて、なかなか思うようには行きませんでした。そこで、知り合いの紹介のエンジニアの方や、武田が勉強会に行って勧誘してきたフリーのエンジニアの方などにサポートしていただきました。会社勤めの方も、退社後に来て終電までマンツーマンで教えて下さっていました。「未経験者が、自分たちのビジョンに向かって頑張っている姿」を見て、しょうがないから助けてやろうかと思って下さったのだと思います。

こうしたサポートのお蔭で、開発に着手してからわずか半年で、サービスをリリースすることができました。今振り返れば、デザインはひどいし仕様も粗削りでした。でも、タイムラインや投稿機能など基本的な機能面では現在のものをある程度備えていました。

全くの未経験者が半年でサービス開始まで至れたのは、「このサービスを成功させる。それ以外は、やらない」という強い想い、サービスの発案者である自分たちの手で一から作り上げようという気概、そして、徹底的なポジティブシンキングにあると思っています。もちろん、実にたくさんの人の支えはありましたが、武田と私に、「頑張れば、絶対にできる!」という根拠のない自信があったからこそ、走り続けられたのだと思います。

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このアイデア行けそうだなと思ったら、すぐに「やる!」と判断して手を動かす

 サービス開始後、約3年半で「Retty」の月間ユーザー数は500万人を突破しました。ここまで急激に成長できた理由はさまざまありますが、開発現場において「すぐ実行に移して形にする」ということを繰り返してきたからだと思っています。Rettyでは、「スピードと実行力」を非常に重視しています。「Retty」のためにはこれをすべきだと思ったら、その場で「やる!」と判断し、手を動かす。「こうしてみたら?」というアイデアがメンバーから出たら、翌日には実装を終えているぐらいのスピード感です。

サービススタート時の「Retty」は、今の基本機能をある程度網羅していましたが、デザインもイケていなかったですし、検索機能もありませんでした。サービスとしてまだまだ粗削りでした。ユーザーの声を聞きながら、良いと判断したものはどんどん実行していき、ブラッシュアップして来ました。初期のユーザーから見れば、毎日のように進化している「Retty」は、「頑張っているな」という印象だったようです。皆さんが応援して下さいましたし、周りの方に拡めていただけました。本当に感謝しています。

私自身が「スピードと実行力」を発揮できた例として思い出深いのは、20135月に実施したWebサイトリニューアルです。それまでは、ちょうど盛り上がりを見せていたソーシャルメディアに注目し、TwitterやFacebookでユーザー数を伸ばしていました。サービスが軌道に乗り、一定数の口コミを獲得できたタイミングで、より多くの方にサービスを使ってもらうため、検索エンジンにサイトを解放してユーザー数を増やすべきだと判断しました。わずか2ヵ月半でWebサイトの全面リニューアルを行いました。リニューアルの開発担当は、私とインターン生の2人だけ。2カ月半は昼夜なく働き、休みも取れずデートもできず…とプライベートを完全に犠牲にしましたが(笑)、リニューアル後、検索経由の流入が爆発的に増えて、半年後には100万ユーザー、それから1年後には500万ユーザーと加速度的に伸びていきました。ここまで増えれば、あのときの苦労も報われますよね。

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エンジニアは完ぺきを求めたがる。できないと言う前に、まずはやってみる

 エンジニアは、完璧を求めたがる人が多いような気がします。きちんと計画を立てて、設計して、きれいに実装して…もちろん大切なことなのですが、100%を求めなくてもいい場面は多いはずです。例えば、「Retty」のような全く新しいサービスは、リーンスタートアップの考えで、粗削りでもまずはサービスを始めてみたほうが、ユーザーが本当に満足するサービスなのか、支持されるのかが見えてきます。まずは実行することを意識して、完璧を求めずに、とりあえず出してみるという考え方もありだと思います。検証して、いろいろ理由をつけて、「できない」というより前に、まずは「やる!」と判断し、実行してみるという姿勢が大事なのだと思います。

ちなみに私、普段から意識して判断を早くしています。「役職的に判断できる立場にある」というのもありますが、仕事だけでなくランチのメニューを決めるのも即決ですし、引っ越し先を探すものあっという間でした。不動産屋さんが「え?もう決めちゃっていいんですか?もっと見ないんですか?」って驚いていたぐらいで。

もちろん、失敗もたくさんあります。いける!と思ってやったことが、全く当たらなかったことだって、何度もあります。でも、球を打つ回数とスピードが早ければ、どれかは当たるものだし、前にだって進めると思います。

motech_エンジニアHack_retty_長束

 

Retty株式会社
取締役 長束 鉄也 氏

同志社大学法学部卒業後、2006年に一部上場企業に入社。法務総務部門に配属となり、企業法務や株主総会などを担当する。2008年にネットエイジ(現ユナイテッド)に転職し、モバイル広告営業、モバイルSEOコンサルティングを担当。2010年に同僚だった武田和也氏とRetty株式会社を共同創業。プログラミング未経験、PHPの知識ゼロから猛勉強し、半年後に実名グルメサービス「Retty」をリリースする。担当するグルメジャンルは餃子。同社では「餃子部長」の肩書も持つ。

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