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2015.3.6 FRI
TEXT BY RAY YAMAZAKI
PHOTOGRAPHS BY HIROTAKA HASHIMOTO
「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」
ピーター・ティールは採用面接で必ずこう訊くそうだ。
あなたは、どんな答えが浮かんだだろうか。ティールは近著『ゼロ・トゥ・ワン ─ 君はゼロから何を生み出せるか』(NHK出版)において、この質問に対する答えのほとんどは「異なる視点で現在を見ているだけ」のものだと指摘する。
さらに、ティールはこの質問をビジネスに敷衍し、問いかける。
「誰も築いていない、価値ある企業とはどんな企業だろう?」
この問いかけこそ、先日来日し実現した、ティールと日本の学生との対話のなかで語られたテーマだ。ティールの言葉に日本の若者たちは何を求め、何を見るのか。幣誌編集長、若林恵も交えた質疑応答の一部を紹介する。
日本のスタートアップは、既存のビジネスモデルやプロダクトを真似てばかりです。一方、シリコンヴァレーは新しい価値を生み出し続けているように思います。日本ではなぜ新しい価値を生み出すことができないのか。そして、どんな環境が日本に欠けていると思いますか?(学生その1)
ピーター・ティール(以下PT):日本が真似ばかりだとは必ずしも言えないでしょう。例えば、ヤフーは本国のヤフーが苦戦しているにも一方で日本では成功しているし、シリコンヴァレーでも二番煎じなものは多いです。オリジナリティーさえあれば何でもいいわけではない。グローバルなテクノロジー・リーダーとなる企業を目指すなら、人々がまだ見たことがないような世界に発信できる価値を創るべきです。
起業するにあたっては、初めから世界を視野に入れるべきですか? それともまずは特定のターゲットに絞って起業すべきですか?(学生その2)
PT:特定のターゲットに絞るべき。まだ人々がやっていないことをやりなさい。それから世界に広げるべきです。ローカルな計画からグローバルへ展開するのが望ましいでしょう。
人工知能(AI)に注目が集まっています。以前クリーンエネルギーがトレンドになったときに多くのスタートアップが生まれましたが、しばらくしてそのほとんどが消えていってしまいました。それと同様に、今後AIスタートアップの多くもつぶれるのではないでしょうか。「テスラ」のように、業界で革新的なポジションを占め、しかも企業として存続し続けるには今後、AIスタートアップは何を心掛けるべきだと思いますか?(学生その3)
PT:たしかに、AIはバズワードになっています。ここで言えるのは、みんながAIというテクノロジーそのものに注目しすぎているということ。どのようにしてビジネス化するかの視点が満足ではありません。
いわゆる「AI」の意味するところは広範かつ曖昧で、そのままではビジネスモデルとして従来のソフトウェアをベースにしたものに劣ってしまいます。例えば、テスラはクルマというコンポーネントとしてはありふれていましたが、テクノロジーとコンポーネントの組み合わせがイノヴェイティヴだった。AIについても同じことが言えて、「AIが人に取って代わる」という考えには賛同できません。AIと人が補完しあう、そのコンビネーションこそが重要なのです。
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