韓国に駐在しているアメリカの大使が男に襲われ、顔を80針縫う大けがをしました。男は過去に日本の大使に石を投げて逮捕されています。事件の背景に何があるのでしょうか。
「演習はやめるべきだ!」(取り押さえられた男)
5日朝7時40分過ぎ、ソウルの中心部にある文化施設のホールが騒然となりました。講演会に訪れていたアメリカのリッパート大使が会場内にいた男におよそ25センチの果物ナイフで突然、切りつけられました。男はすぐに取り押さえられ、逮捕されました。
「アメリカ大使が襲われたのは、こちらの場所です。このテーブルに座っていたところ、同じ会場にいた容疑者に刃物で襲われました。今もじゅうたんには血の痕が残っています」(記者)
「こうやって5センチくらい、血がサッと出た」(目撃者)
顔面から流れ出る血を押さえながらも自力で歩いて会場を出たリッパート大使。
「顔の傷は右の頬骨から顎まで、長さ約11センチ、深さは3センチほどです」(病院の会見)
命に別状はありませんが、およそ80針を縫う手術を受け、後遺症が残る可能性があるということです。
アメリカ国務省は、強く非難する声明を出しました。リッパート大使は、オバマ大統領が上院議員時代に外交政策の顧問を務めたのを皮切りに、ホワイトハウスや国防総省の高官を歴任した大統領の側近で、事件後、大統領は大使に見舞いの電話をしたということです。
韓国政府もすぐに声明を発表。
「最も重要な同盟国であるアメリカの大使に対する犯行だという点を深刻に受け止めている」(韓国外務省報道官)
中東を歴訪中の朴槿惠(パク・クネ)大統領も「米韓同盟に対する攻撃であり、許せない」と非難しました。
逮捕された男は、反日、反米を訴える54歳の活動家、キム・ギジョン容疑者(54)で、逮捕時には、今週始まった米韓軍事演習に反対などと叫んでいました。
「軍事演習で南北離散家族が会えなくなっている」(キム・ギジョン容疑者)
キム容疑者は、2010年に当時の日本大使に石を投げて有罪判決を受けたほか、韓国統一省によると、これまでに8回、北朝鮮を訪問しています。今回、はっきりとした動機はわかっていませんが、韓国内では、アメリカ政府高官の先週のこの発言が物議を醸していました。
「どこの政治的リーダーもかつての敵を中傷することで、安直な称賛を得るのは難しくない。しかしそうした挑発は前進ではなく停滞を招くだけだ」(アメリカ、シャーマン国務次官)
これが歴史認識問題で日本寄りの発言だとして、韓国内ではアメリカへの反発が広がっていました。(05日17:57)