柳谷政人
2015年3月6日07時39分
JR西日本の看板列車として25年以上、人気を集めた寝台特急「トワイライトエクスプレス」。最終便は12日に発車する。大阪―札幌間片道22時間の長旅は、大勢のスタッフが支えてきた。鉄道ファンだけでなく、彼らもまた引退を惜しんでいる。
■車掌歴17年 福田さん
トワイライトの車掌は、通常の黒色とは違う緑色の制服を身にまとう。大阪から青森まで乗り、札幌へ向かう列車を見送った後に仮眠。札幌から折り返した列車で大阪まで戻る。大阪車掌区の福田博好さん(55)は17年間、月に2回この乗務を続けてきた。
初乗務は1998年。「すごい列車に乗れるという緊張感があった」。実はその数年前、自分の新婚旅行で札幌発トワイライトのB個室に乗った。最上級「スイート」の乗客が降りた後に車掌が部屋を見せてくれ、豪華な雰囲気や至れり尽くせりの設備に驚いた。改めて自分が乗務すると、スイートの乗客の振る舞いや言葉遣いには上品さがあった。
印象的な出会いが多かった。トワイライトの絵を描いてプレゼントしてくれた子どもがいた。100回以上乗車している顔なじみの常連さんもいる。スイートに乗った初老男性は「10年かかってやっと取れた。この感動をみなさんにも伝えたい」。他の乗客を連れてきてと頼まれ、知らない人同士で一緒に写真撮影や食事を楽しんでいた。
長旅の乗客をもてなすのも車掌の仕事だ。
後輩が手作りした子ども向け切符をプレゼントしたり、ベテラン車掌が彫ったはんこでスタンプラリーをしたり。サインを求められれば「日本一の豪華寝台特急にご乗車ありがとうございます」と書き込む。
トワイライトは天気の影響を受けやすく、2月13日の札幌発の列車は25時間半、遅れた。長時間の遅れも車掌にとっては慣れたもの。急ぎの乗客に乗り換え案内をする合間を縫い、じゃんけん大会やクイズ大会を開催。乗客に車掌の帽子を貸し出して記念撮影するなど、飽きさせない工夫をする。
車窓の名物は日本海に沈む夕日だ。5月と9月がとりわけきれいだが、曇る日も多く、長年の乗務で「絶景」は年に1回あるかどうか。「あの夕日がもう見られないのは寂しい」と話す。
6日の大阪発に乗り、8日に戻ってくるのが最後の乗務だ。トワイライトの車掌の役割は、乗客の話をじっくり聞くことだった、と振り返る。「我々以上に列車に対する思いが深く、話が尽きない」。耳を傾けるたび、自分も乗客と一緒に旅行をしている、と感じる。「最後までうまい聞き役として、お客様にいろんな話をうかがいたい」
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