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韓国駐在の米大使襲われ大けが 警備に問題の指摘
3月5日 19時30分

韓国駐在の米大使襲われ大けが 警備に問題の指摘
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韓国に駐在するアメリカのリパート大使が、5日朝、ソウルで男に刃物で切りつけられて、ほおを80針縫う大けがをしました。
警備態勢に問題があったという指摘が出ており、韓国政府は、各国の外交使節に対する警備を強化するなど対策を急いでいます。
韓国の警察によりますと、5日午前7時40分ごろ、ソウル市内にあるイベント施設のホールで開かれていた講演会で、韓国に駐在するアメリカのリパート大使が、突然、男に果物ナイフで切りつけられました。
男は近くにいた人たちに取り押さえられましたが、リパート大使は右のほおや左腕などに傷を負い、命に別状はないものの、ほおの傷は80針を縫う大けがでした。
目撃者によりますと、男は大使の近くのテーブルに座っていて、大声で何かを叫びながら大使に近づいて切りつけたということです。
男は50代で、警察の調べに対し、アメリカ軍と韓国軍が現在行っている合同軍事演習が北朝鮮との和解の雰囲気を妨げているとして、演習への抗議が犯行の目的だったと話しているということです。
この男は島根県竹島の領有権を主張する活動も行っており、5年前には当時の日本の大使にコンクリートの塊を投げつけ、隣にいた大使館の女性職員にけがをさせたとして、執行猶予のついた有罪判決を受けています。
警察によりますと、会場周辺では機動隊員などおよそ30人が警備に当たっていましたが、主な目的はデモなどの警戒で、会場に入る人たちの所持品は検査していませんでした。
講演会の出席者は、男が近くにいた人たちに取り押さえられたあとも、警察官はしばらく来なかったと証言しており、警備態勢に問題があったという指摘が出ています。
このため、韓国政府は、各国の外交使節に対する警備を強化するなど対策を急いでいます。
リパート大使は、大使公邸から大使館まで歩いて出勤するなど、韓国の一般の人たちと気軽に触れ合うことで知られていました。

米の反応

アメリカは、韓国駐在のリパート大使が男に刃物で切りつけられた事件を受けて、国務省のハーフ副報道官が「暴力行為を強く非難する」という声明を発表しています。
また、声明は、「ソウルのアメリカ大使館は現地の捜査当局と連携していく」として、韓国政府と協力する姿勢を強調しています。
今回の事件で、アメリカメディアは、リパート大使が顔から血を流している衝撃的な写真を報じていますが、この事件が同盟国の韓国との関係にマイナスの影響を与えるという論調は見られません。
アメリカとしては、北朝鮮の軍事挑発に対する米韓両国の結束を示すためにも、始まったばかりの両国の合同軍事演習は予定どおり続けるものとみられます。
一方で、アメリカは、シャーマン国務次官が先週ワシントンで行った講演で、歴史認識を巡り、「愛国的な感情が政治的に利用されている。指導者にとって、かつての敵をあしざまに言うことで国民の歓心を買うことは簡単だが、そうした挑発は機能停止を招くだけだ」と述べたことに、韓国国内で反発が広がっている事態には戸惑いを見せています。
ハーフ副報道官は講演の内容について、「特定の国や指導者を指したものではない。率直に言って少し驚いている」と述べ、韓国を名指ししたものではないと説明しています。
アメリカは戦後70年のことし、アジア太平洋地域を重視する政策を推進していくためにも、同盟国の日本と韓国が歴史認識の問題を乗り越えて関係を前に進めていくことが何よりも重要だという立場で、韓国との関係を安定させるため注意深く対応していくものとみられます。

パク大統領「決して容認できない」

リパート大使が男に刃物で切りつけられてけがをしたことについて、中東を歴訪中の韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領は「今回の事件は米韓同盟に対する攻撃であり、決して容認できない。大使の早い全快を祈り、家族やオバマ大統領にも慰めのことばを伝えたい」というコメントを出しました。

韓国政府対応

今回の事件を受けて、韓国政府は5日午前、外務省や法務省、それに警察庁など、関係部署による緊急の次官級会談を開きました。
そして、リパート大使の警護態勢や会場の安全対策がどうなっていたのかを詳しく調べたうえで、問題があったと判断されれば責任者を厳しく処罰することを確認しました。
また、今回の事件をきっかけに、韓国に駐在する各国の外交使節の活動に影響が出ないよう、外交官らの警護や大使館の警備について、改めて点検することを決めました。
午後には国会で緊急の外交統一委員会が開かれ、議員らは外務省のチョ・テヨン(趙太庸)第1次官に対し、事件によってアメリカとの関係に影響が出ないよう、対応に万全を期すよう求めました。

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