クローズアップ現代「どう守る 妊娠中の働く女性」 2015.02.25


予定日より3か月余り早く生まれた赤ちゃん。
医師から命が危ないと言われました。
母親は出産直前まで無理をして働いていたことを悔やんでいます。

きのう、労働組合の連合が発表したアンケート調査。
妊娠中の働く女性の実態が浮かび上がりました。
4人に1人が早産や流産を経験。
危険な状態になっても職場で十分な勤務配慮が受けられなかった人も少なくありませんでした。

企業も対応を迫られています。

どうすれば妊娠中の働く女性を守ることができるのか。
実態と課題に迫ります。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
妊娠は女性の体に負担をかけます。
法律では正規、非正規雇用を問わず、妊娠中の女性が申し出た場合、残業や休日出勤深夜労働などをさせてはいけない軽い業務に転換させなければならないと定められています。
また医師から例えば休むようになどの指導・診断があった場合、企業は勤務上の配慮を行わなくてはならないとされています。
子どもを産み育てながら女性が当たり前に働くことが大切だとされている今妊娠した女性が安心して妊娠期を過ごせるような働き方職場環境を提供することがいわば企業の社会的責任となっています。
ところが労働組合の連合が行った妊娠した時点で働いていた女性を対象にした初めての大規模調査では妊娠6か月ごろまでに赤ちゃんを亡くす流産赤ちゃんが未熟なまま生まれてしまう早産を経験した人が合わせて25%4人に1人に上りました。
インターネットを通して調査が行われたため関心が高い人が答えている傾向はありますが妊娠中の働く女性の実態を知る手がかりとして医師もその結果に注目しています。
流産については胎児の染色体異常が主な原因とされていますが働き方との関係については十分解明されているとはいえません。
早産については働き過ぎがリスクを高めるといわれています。
無理な働き方がもたらすリスクや法律で定められた権利について女性たちや上司は十分な知識を持っているのか。
妊娠したことにより雇用が切られるなど不利益を被る事態もまだまだ少なくないと見られる中で妊娠中の女性が職場で安心して出産まで過ごせると思えるようになるためにはどのような配慮が必要なのか。
初めにその実態からご覧ください。

今、各地の労働局に妊娠中の働く女性からの相談が相次いでいます。
この日も勤務配慮を受けられず体調を崩したという女性が訪れました。

昨年度、全国の労働局には妊娠中に十分な勤務配慮を受けられなかったという相談がおよそ1300件寄せられました。
前の年より2割近く増えています。

全国の労働局への相談で目立つのが、非正規雇用の女性からの訴えです。
妊娠中に体調不良を伝えたところ退職を勧められるなどして無理をしてしまうケースが多いといいます。
非正規の契約社員として外回りの営業をしていた飯田智美さんです。
妊娠4か月ごろ、おなかに違和感を覚えるようになりました。
しかし、毎月のノルマを達成できないと契約を打ち切られるため無理を押して働き続けたといいます。

妊娠6か月のときこのままでは赤ちゃんが未熟な状態で出てきてしまうおそれがあると診断されました。
担当した医師は婦人科系の病気も経験しているため早産の危険が高いと注意しました。

飯田さんは診断結果を職場に伝えましたがノルマは減らされず、勤務時間も短縮されなかったといいます。
法律では妊娠中の女性は医師の指導に基づいて勤務時間の変更や勤務の軽減を受けられることが定められています。
これはすべての女性労働者が対象となり非正規雇用の女性も含まれます。
しかし飯田さんも職場の担当者もそのことを知りませんでした。
おなかの痛みに耐えながら働き続けた飯田さん。
早産の危険がさらに高まり自宅での安静を医師に指示されました。
結局、出産までの3か月間をほとんどベッドの上で過ごさざるをえませんでした。

番組では連合のアンケートのデータを、日本医科大学の中井章人教授に依頼し詳細に分析してもらいました。
飯田さんのように早産の危険があると診断されながら勤務配慮を受けられなかったケースはどのぐらいあるのか。
早産の危険があると診断された人は95人。
そのうち26人が十分に勤務配慮を受けられなかったと回答。
3割近くに上ることが分かりました。

連合のアンケートからは雇用が安定しているとされる正社員の妊娠中の働き方についても新たな課題が見えてきました。
正社員の女性の4人に1人が妊娠中も残業をしていて中には1日に3時間以上残業していた人もいました。
社員数およそ100人の会社に正社員として勤めていた盛田明子さんです。
妊娠4か月で流産しました。
盛田さんは当時、長年希望してきた花形部署に女性第1号として抜てきされプロジェクトを任されていました。
妊娠したのは30代半ば。
上司たちからは、子どもを産んで深夜残業ができなくなるならこの部署から離れてもらうしかないという声も上がりました。
盛田さんは上司に認めてもらうためには今のうちに頑張るしかないと毎日遅くまで仕事をしました。

夫も明子さんを心配していたといいます。

深夜残業が1週間ほど続いたある日盛田さんは夜中に突然破水。
翌日、流産しました。
妊娠14週のことでした。

盛田さんのように妊娠12週以降の流産については母親の働き方を含む生活環境などが原因といわれています。
今回のアンケートでは流産した109人のうち12%が12週以降に流産していました。

盛田さんは今も当時の働き方を後悔しています。

今夜は、働く女性と、そして妊娠にお詳しい、産婦人科医の愛育病院医師、中林正雄さんをお迎えしています。
今回初めて、連合が行いました、妊娠時に働いていた女性の大規模調査。
流産、そして早産、このデータ、どのように捉えていらっしゃいますか?
まずひと言で言いますと、まだこういうことがあるのは、大変残念だなぁということですね。
働く女性に対する法律や、いろいろな規約はずいぶん整備されたんですけれども、実際にはこういうことがまだ起きているということで、大変残念な感じはいたしますね。
この数字が、一般と比べて、高いのか、どうかっていうと、なかなかちょっと判断がつかないんですけれども。
そうですね、一つ流産率に関しては、13%ぐらい出ておりましたので、一般的には、10から15%といわれているので、これはまあまあ、普通だろうと思いますが、その中でも12週以降の流産率が10%以上あるということで、これは妊娠、ごく初期の流産は、多くは染色体異常で起きてくるといわれていますが、12週以降になりますと、その他の環境とか働き方とか、そういうものが関係してくる感じがいたしますので、これはもう少し、よく医学的に検討していかなければいけない問題ではないかというふうに感じましたですね。
今のVTRで、非正規の方が、ノルマを達成しないといけないから、頑張って契約を打ち切られたくないので、働き続けたい、あるいは残業をすることが当たり前の職場で、頑張って働いた方々。
相当皆さん、無理をされてるのではないか、そういう職場環境が、リスクの高い働き方を強いてるのではないかというふうに見えたんですけれども、どうして、こういうことになっているのか、妊娠中の女性に対して。
そうですね。
一つは、働く女性が増えてきて、また昔は男性ばかりが行っていた仕事にも、女性が進出してきたということが、基本にはあるんでしょうけれども、やはり、女性がだんだん高齢化していくということによって、リスクが増えてきたということも考えられますね。
そして、私たちの今まで行った研究で、どういうものがリスクになるかといいますと、これは立ち仕事の長い方、それから長時間労働する方ですね、それからストレスの多い仕事、上司が怖いなんていうこともあるかもしれませんね。
それから、自分の意思では仕事が止められないような仕事、これはもうストレスになると思うんです。
これは、妊娠というのは、言ってみれば、5キロから10キロぐらいの荷物を持って、長い坂道を歩かなければいけないということですから、一部の人は途中で疲れてしまって、止まらざるをえないということが起きるわけですね。

一部の方々というのはどれぐらいの割合ですか?
これがですね、10人中8人はおおむね、正常お産までいきます。
ところが、2割ぐらいの方は、流産、早産、妊娠高血圧症候群というような病気で、赤ちゃんが小さく生まれて、亡くしたり、また母児共に危険になったりということが起こりえるわけですね。
そうなりますと、働き方として、念頭に置かなければならない適正な働き方というのは、どの程度というふうに思ったらよろしいんでしょうか?
これは一概に言うことはできないんですけれども、例えば、個人個人に体力に差があるのと同じように、ある人にとっては十分耐えられることだけれども、ある2割ぐらいの人にとっては、耐えられないというのが妊娠だとしますと、妊娠中には、ふだんの仕事の大体7、8割ぐらいの仕事に制限していただくと、あまり大きな異常は出てこないだろうと。
出てきたとしても、定期的な妊婦健診等を受けていれば、そういうことが察知できて、予防できるのではないかと思うわけですね。
予防できるわけですね?
そうですね。
現在、早産に関しては、子宮収縮を抑制する薬とか、安静とかいうことで、抑えることができますし、妊娠高血圧症候群に関しては、塩分を制限したり、安静にしたり、血圧を下げたりというようなことで、かなりの治療ができてくるわけですね。
予防効果が非常に高いということが、妊娠中の状態だということができると思いますね。
さて、今回の調査で、16.8%の方が、妊娠期を安心して過ごせないということで、妊娠後、仕事を辞めています。
どうすれば仕事を続け、そして妊娠中も安心して過ごせるのか、取り組み始めた企業の模索をご覧ください。

全国に支店を持つ大手運送会社です。
この会社では女性配達員が妊娠した場合速やかに業務を変更しています。
お願いします。
この女性は妊娠6か月。
もともとは配達員をしていましたが妊娠を報告した直後に伝票整理など内勤の仕事に変わりました。

この会社は7年間で女性社員が倍増。
配達員のうち11%を女性が占めるようになりました。
妊娠中の女性配達員が仕事を辞めるケースが相次ぎ対応を迫られたのです。

こうした状況を改善しようと4年前から対策に乗り出しました。
女性配達員が妊娠した場合直ちに負担の少ない業務に変更します。
欠員は近隣の支店などと連携して補う仕組みです。
確実に実行するため女性社員が妊娠したことを上司がきちんと把握するというルールを作りました。

制度が導入された直後は現場で人手が足りなくなるのではないかと懸念する声も上がりました。
しかし、以前は妊娠を機に辞める女性がほとんどでしたが辞めずに出産後戻ってくる女性が増え以前の経験が生かされ業務がスムーズに進むようになりました。

20年以上かけて妊娠中の女性が働きやすい環境を整えてきた企業もあります。
神戸に本社がある大手家庭用品メーカー。
総合職の4割が女性です。
以前は妊娠中に無理をして体調を崩す人がいました。

そこで始めたのが妊娠した女性社員が無理をしていないか上司が頻繁に確認する仕組みです。

通勤の電車の中でおなか痛くなってしまって途中下車しなきゃいけなかったんですけれども。

東京支社で働く小川琴音さん現在、妊娠8か月です。

社員は妊娠してからも基本的に同じ業務を担当しますが体調に合わせて仕事を調整することが認められています。
小川さんのケースです。
妊娠する前は本社のある神戸に出張する場合、始発で東京を出て朝から仕事をしていました。
しかし、妊娠後は体調を見極めるため午前中は東京で仕事をし本社での仕事を午後に設定。
1泊して帰るようにしました。
体調が悪ければ、出張をキャンセルして在宅勤務に切り替えることもできます。
それすら難しいときは情報を常に共有しているため上司や同僚が仕事を代わることができる仕組みです。

さらに妊娠中に働き方を調整しても、人事評価に影響させないよう徹底しています。
その結果、働き過ぎで妊娠中に体調を崩す人は、今ではほとんどいなくなったといいます。

中林さん、このようにVTRに出てきた企業のように、妊娠期を安心して過ごせる職場が、一体どれだけあるのだろうかと考えてしまうんですけれども、データでは、3人に1人が妊娠の報告をためらうという結果もありました。
本来は、職場と女性職員の間に、コミュニケーションができていれば、大変いいことなんですけれども、それは今の状況では、なかなか全部の企業が実施することができないと。
そういうのを改善するために、私どもは、その職場と個人の働き方の間のものとして、母性健康管理連絡カードというようなものを作っておりまして、医師がそこにある1か所に丸をつけますと、どういう働き方をしたらいいかということが分かるようにしてるんですね。
それを使っていただくと、コミュニケーションツールとしては、いいのではないかと思います。
それは母子手帳の最後のほうに?
母子手帳の裏に縮小版が載ってますし、また病院でもとってありますので、言っていただければ、すぐ出せると思うんです。
そこに書いてある医師のアドバイス、あるいは指導、診断っていうのを、企業は、きちっと受け止める義務があるわけですよね?
これは守らないと、法律違反になってきますよ。
一体、妊娠のどの時点で企業に伝えるべきなのか、皆さん、どちらかというと、妊娠が安定期に入ってからと思われる方も多いかと思うんですけれども、どの時点で伝えるべきでしょうか?
私どもの考えでは、妊娠が分かって、6週ぐらいで分かると思うんですけど、その以降、7、8週で赤ちゃんの心拍が見えてから、伝えていただくのが、ちょうどいいのかなというふうには考えています。
しっかりコミュニケーションができていれば、たとえ流産などの悲しい結果になったとしても、受け止め方が違うでしょうね。
そうですね。
これまではどちらかというと、生まれたあとの育児とか、そういうことに注目があったわけですけれども、これからは妊娠・出産時に、かなりの人が辞められるという、仕事を辞められるということを考えると、そのへんをもっと研究し、またその方々に、たとえ流産したとしても、これは十分にやった結果であるということで、次に希望を持つというようなことができれば、これは職場としては、一番いいのではないかというふうに思いますが。
ここまで妊娠期への配慮が、どちらかといえば、欠けていたということに、初めて気が付かされましたね。
そうですね。
やはり仕事と妊娠というのは、大変重要なテーマですので。
2015/02/25(水) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「どう守る 妊娠中の働く女性」[字][再]

妊娠しても働き続ける女性が増える中、過酷な働き方や妊娠期のリスクについての知識不足から、早産や流産などのリスクに直面する人が少なくない。実態と何が必要か考える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】愛育病院総合母子保健センター所長…中林正雄,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】愛育病院総合母子保健センター所長…中林正雄,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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