2011年3月11日。
太平洋の三陸沖を震源とする地震が発生。
その影響で福島第一原子力発電所が大きな被害を受けました。
当時の報道には放射能や原子力発電に関する専門用語があふれていました。
今回はそれらの言葉に注目して放射線と原子力について考えます。
(黒田)熊谷君悩んでるねえ。
(熊谷)う〜ん。
さあ始めるよ。
黒田有彩です。
熊谷知博です。
熊谷君今日は新聞が読めるようにしましょう。
えっいやひどくない?新聞ぐらい読めるよ。
じゃあ声に出して読んでみてくれる?うん。
どんな内容なのか分かった?いや…言葉が難しくて。
う〜ん聞き慣れない言葉が多いからね。
今日はこの記事の内容を理解できるようにするよ。
うん。
ポイントはこの3つ。
今日の講師は川角博先生です。
(2人)よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
え〜ニュースを理解するためにも科学の知識が必要な時代になってるんですよね。
え〜ところでですね先ほど熊谷君を悩ましていた記事これを読み解いていきましょう。
まず何が分からなかった?はいセシウム137です。
セシウムっていうのは原子の種類の名前なんですね。
は〜い熊谷君これを見て。
化学で習った周期表です。
セシウムはここ。
55番目。
一番左の列にあるナトリウムやカリウムと同じ金属の仲間になります。
じゃあ137は?その137という数を理解するためには原子の構造をまず知る必要があるんですね。
そこでこちらを見て下さい。
これはヘリウムの原子の模式図なんですね。
更に…このヘリウムの場合には陽子が2個そして中性子が2個からできてるんです。
そこでこれを表すとこうなるんですね。
この2というのが…こちらの4は…ではセシウムの場合はというと…。
はいじゃあまた周期表見てね。
セシウムは原子番号が55だから…。
という事は陽子の数は55個か。
うん。
そうですね。
こちら見て下さい。
セシウムは55番目で陽子が55個あります。
そして自然界ではですねセシウムは78個の中性子を持っていますので55と78を足して133。
これが質量数なのでセシウムはこう表すんですね。
セシウム133っていうんです。
137じゃないですね。
はい。
そこなんですね。
同じ種類の原子でも中性子の数が違う場合があるんですよ。
記事に出てきたセシウム137というのは人工的に作られたものなんですね。
ではね熊谷君セシウム137の中性子数はいくつになるんだろうね。
え〜っと質量数が137だから陽子数の55を引いて中性子数は82か。
だからセシウム137は陽子数55中性子数82質量数137の原子という事になります。
熊谷君次に気になったのはどこかな。
う〜んもちろんマイクロシーベルトとかベクレルとか気になるんだけど放射線と放射能って何が違うのかな。
(ブツリン)では放射線と放射能の違いを説明するよ。
まず放射能は放射性物質が放射線を出す能力の事。
で放射線とは…代表的なのがα線β線γ線だ。
この放射線は…放射線と放射能は混同しやすい言葉なんで気を付けましょうね。
これは放射性物質を電球に例えた図なんですね。
電球に相当するのが放射性物質セシウム137とすると光に相当するのは放射線γ線なんですね。
先生光と同じ仲間といっても見えないですよね。
見えないけどあるんです。
実は見えない放射線を見るためにいろいろな工夫がされてるんです。
ではあちらでそれ見てみましょう。
はい。
先生これは何ですか?これはね霧箱といって放射線を観察する装置なんですね。
そしてこちらがセシウム137なんですね。
さあこれをね置いてみましょう。
これもちろん実験用のサンプルで厳重に密閉してあります。
さてどうなったかな?うわ〜いっぱい見える。
はいそれでは皆さんにもこの小型カメラを使って放射線の様子を見て頂きましょう。
白いのがブワワワワって本当にたくさん見えるね。
熊谷君それが放射線なんだよ。
これが放射線か!えっとね霧箱では放射線が通ったあとに飛行機雲みたいに跡が見えるんだね。
これはセシウム137が出してるγ線がそのまま見えてる訳じゃないんだけどもこれに関係した放射線が見えてるんです。
じゃあねこのセシウム137どかしてみましょうね。
さあどうなったかな?あれ?数は極端に減ったんですけどまだ何か出てますね。
う〜ん。
これも地球や宇宙からやって来る一種の放射線が見えてるんです。
え?どういう事ですか?熊谷君実は…さて私は宇宙から来る放射線について勉強してきました。
その様子をご覧下さい。
ここは…宇宙線を検出する装置を作る講習会が開かれています。
集まったのは高校で物理を教えている先生方です。
先生方に交じって黒田さんも講習を受けています。
今回はどうして高校の先生方を対象にされたんですか?高校生それから中学生ですねそこら辺が一番大事なんですよね。
科学とかそういうものにですね興味を持ってもらうという事が非常に重要だと思うんですね。
いよいよ装置の組み立てです。
ウィアフター…。
ああ…。
物理の先生ですから細かな作業はお手の物。
宇宙線っていうのは身近なようでよく分からないのでこういう事をやってあと生徒にこんなものがあるよとかこういうふうに測れるよとかそういうのを教えたいなと。
装置ができたようです。
装置をコンピューターに接続して宇宙から降り注ぎ建物をすり抜けこの装置を通った宇宙線を計測します。
見えない宇宙線を検出しています。
放射線と聞くと特別なイメージがありましたが太陽や宇宙全体からも来てるんですね。
はい。
ビルくらいは簡単に通り抜けてしまうんです。
今もこの瞬間ですね私たちの体を貫通してるんですよ。
えっ今この瞬間も?そうだよ〜。
さて熊谷君これ。
これってフィギュアのケースじゃない?ううん。
手作りの霧箱装置なの。
これで放射線が見えるんだよ。
え〜これで?うん。
何言ってんの!これだってすごいんだから。
え〜?身近な材料を使って霧箱を作り放射線を観察してみましょう。
主な材料はこちら。
特にフィギュアのケースやドライアイス99.5%のエタノールが必要になります。
まずケースの箱の真ん中辺りにスポンジ付きテープを貼りそのスポンジ部分にエタノールをたっぷり染み込ませます。
次にドライアイスの上にケースの黒い底板を置きその上にもエタノールを少し多めにたらします。
底板にケースの箱をかぶせます。
箱の底をよく冷やして箱の中にアルコールの霧ができやすくするのです。
今度は塩化ビニルのパイプをペーパータオルでこすり静電気をためます。
パイプを箱のそばに近づけて箱の中のさまざまなイオンを静電気で取り除きます。
さあこれで準備完了。
箱に横から懐中電灯の光を当てます。
白い線がはっきりとできました。
スローモーションで見てみましょう。
これが…箱の中が冷えてくると放射線が飛んだあとに白い霧の線が見られます。
今度は単位について考えましょうね。
まずこちらの図を見て下さい。
放射性物質が放射線を出す能力これを数値で表したものがBqと書いてある単位これベクレルと読みます。
ベクレルというのは1秒間に何個壊れるかを表してんですね。
そして壊れて放射線を出すという事なんです。
はい。
記事にあった…お〜1秒間に2,000壊れる数か。
じゃあマイクロシーベルトは…。
そこであらかじめ皆さんの前に置いておいた装置に注目して下さい。
これずっと気になってたんです。
これはね放射線を測定する装置なんですね。
表示された値はその場所の放射線の強さを表しています。
1時間あたり何マイクロシーベルトかという単位で表してるんです。
マイクロというのは100万分の1という意味なんです。
そしてシーベルトというのはどれくらい人に吸収されて影響するかを表しています。
それぞれの測定値はいくらになりました?はい。
私の測定器では0.059マイクロシーベルト毎時です。
え〜僕のは0.060マイクロシーベルト毎時です。
このスタジオの中にも放射線が降り注いでる事が分かるでしょ。
こちらの図を見て下さい。
例えば胸のX線検査。
これは0.05ミリシーベルトと書いてあります。
ミリっていうのは1000分の1という意味ですからマイクロに直すと50マイクロシーベルト。
胸のX線検査では1回で50マイクロシーベルト浴びるという事です。
それからですね1人あたりの自然の放射線量というのがありますね。
これが2.4ミリシーベルト。
これはマイクロに直すと2,400マイクロシーベルト。
これが1年間に自然から浴びる放射線量だという事なんですがこれは場所によって違うんです。
自然にあるものにも含まれてるんだね。
そうだね。
では今度は放射線をさえぎる物質を実験で確認してみましょう。
どのような物質が放射線をさえぎるか調べてみましょう。
まず円の中心に放射性物質のバリウム133を置きます。
バリウムが出す放射線量を4方向から測定します。
それぞれの測定値はおよそ1.4〜1.5マイクロシーベルト毎時を示しました。
次に4つの物質でできた壁でバリウムを囲みます。
プラスチックのアクリル。
測定器のAは鉛の壁に。
Bはステンレスに。
Cはアクリルに。
Dはアルミニウムに向いています。
それぞれの壁を通った放射線量を測定します。
Aは0.421マイクロシーベルト毎時に下がっています。
壁で囲む前と後の測定値を比べてみましょう。
BとCとDの測定器はあまり変わりませんがAの測定値は小さくなりました。
測定値が小さいほど放射線を大きくさえぎっているのです。
つまり放射線をさえぎる働きは鉛が一番大きい事が分かります。
今の実験ではγ線をさえぎろうとしたんですけれどもγ線はとても透過力が強いんですね。
そこでこちらを見て下さい。
α線は紙1枚で止まってしまうんですけれどもγ線はですね鉛の厚い板でやっと止める事ができるんですね。
透過力っていうのは放射線の重要な性質の一つなんですが放射線の種類によってその違いがある事が分かりましたよね。
熊谷君を悩ませているもう一つは何かな?う〜ん原子力っていうのがいまひとつぴんと来ないんだけど特に…確かに難しいよね。
ウラン235のように陽子や中性子をたくさん持っている原子核は中性子が当たると2個に割れるものがあります。
これが核分裂です。
この時割れた核が高速で飛び出します。
同時に中性子が2〜3個飛び出てほかの原子核を次々と壊していきます。
これが…原子力発電ではこの核分裂を制御して利用してるんです。
こちらを見て下さい。
原子力発電所では核エネルギーでまず水蒸気を作りこの熱エネルギーでタービンを回します。
そしてその運動エネルギーで電気エネルギーを作り出す。
このようにして核分裂の連鎖反応をうまく制御して使ってるんですね。
ふ〜ん核分裂を利用して発電してるっていう訳なんですね。
そうだね。
でも核分裂の時に出る放射性廃棄物の処理の事をきちんと考えないとだね。
そのとおりなんですね。
エネルギーや放射線そして原子力の知識を正しく持って自分で判断できるようにしなければいけませんよね。
はい。
今日は「放射線と原子力」について学習しました。
熊谷君どうだった?うんいや〜今もね放射線が降り注いでんのとか知ったり霧箱でああやって見てとてもびっくりしたよ。
そうだよね。
私も宇宙線の観測する装置を実際に作って何か身近に感じられた。
放射線のように私たちには感じないけれども存在してるっていうものがまだまだたくさんあるんですね。
科学的なものの見方や考え方っていうものが気付いてない問題に気付いて適切な行動をするために必要な事が分かりますよね。
そうですね。
物理の目で見なきゃだね。
それでは皆さん…。
(2人)さようなら。
原子は原子核と電子で構成されています。
そして原子核は正の電荷を帯びた陽子と電荷を持たない中性子でできています。
放射線は物質を通り抜ける透過性や物質を電離する作用などがあります。
原子力発電はこれを利用して電気エネルギーを作っているのです。
2015/02/25(水) 14:20〜14:40
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 物理基礎「放射線と原子力〜原子核のエネルギー〜」[字]
放射線や放射能とは何か。ベクレル、シーベルトなどの意味と単位を学び、原子力について理解を深める。ポイント・原子の構造を調べる・放射線の種類と特徴・核分裂と原子力
詳細情報
番組内容
原子の構造について理解を深める。放射線は、放射性物質から出されるエネルギーの大きな粒子や電磁波のことで、放射線を出す能力を放射能という。放射能の強さはベクレル、放射線がどれくらい人に影響をあたえるかはミリシーベルトなどで表す。原子核は、中性子が当たると核分裂を起こし、次々と核分裂が起こることを連鎖反応という。原子力発電についても学習する。【講師】川角博(東京学芸大学特命教授)
出演者
【講師】東京学芸大学特命教授…川角博,【司会】黒田有彩,熊谷知博
ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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