夏樹静子サスペンス「湖に佇つ人 鬼の棲む老舗旅館」 2015.02.25


(悲鳴)〜いやぁ早立ちですまなかったね。
いいえとんでもございません。
(譲吉)おはようございます。
湖月楼でございます。
いつもありがとうございます。
(譲吉)丹羽様今回は何名様で?はい…はいかしこまりました。
4日金曜日いつものお部屋でお待ちしております。
はいはい。
ありがとうございます・失礼いたします。
(房江)ご予約どなた?おはようございます。
丹羽様ね。
あの方海老蟹駄目ですよ。
わかってるよ。
また通り魔ですって。
物騒で困るわね。
夜散歩に行かれるお客様には特にご注意をね。
(仲居たち)はい。
(操)春秋の間はいつものビール2本ね。
はい。
そのお膳霧の間?そうです。
焼き魚に隠し包丁入ってるわね。
(井上)歯が悪いの霧の間でしたっけ?おいそれ戻して。
(仲居)はい。
(操)井上さん。
はい。
どうしたんだろう。
今月お料理がだんだん痩せてきてるような気がするんだけど。
お客さんから何かありましたか?お客様からはまだ何もないけどでもあってからでは遅いのよ。
そうでしょ。
試作で食べてもらったときから何も変えてないですよ。
たかが朝飯と思わないで。
下の者に任せきりにしないで出す前にしっかり目を通してくれない?
(仲居たち)おはようございます。
おはよう。
井上今日はお馴染みさんが多いようだから特に心してね。
はい。
(みどり)あ!あっちから撮りますね。
(上滝ゆき子)ここ?
(みどり)はい。
ゆき子先生本当に先方に連絡しなくて大丈夫ですか?え?もうちょっと右に。
はい。
は〜い!
(みどり)いきなり行ってお部屋ありませんなんてことないでしょうね。
さぁどうかしらね。
今度の出張湖月楼が楽しみでついてきたんですから。
泊まれなかったら嫌ですよ。
大丈夫よ。
〜〜着きましたね。
へぇ!なかなかすてきな宿じゃない。
へぇ〜いいわぁ。
〜操!来たわよ。
そんな顔しないでよ。
滝さん!約束したじゃない必ず行くからねって。
まずかった?そんなことないわよ。
電話してくれれば迎えにいったのにいきなりはないでしょ。
なかなか板についてるわね。
あのおさげのミチャオが女将さんだなんてね。
ほんとに来てくれたのね。
忘れないわよ約束したもの。
お義母さんに紹介するわ。
ここで何してたの?声かけるのどうしようかと思ったくらいよ。
湖の音を聞いてたのよ。
湖の音?湖のそばで長く暮らしてると聞こえるようになるのよ。
今日はとても穏やかだとか何かしら苛立ってるようだとか。
へぇそれで今日はどんな音なの?
(操)穏やかよ。
いつもと同じ。
〜突然おうかがいして申し訳ございません。
さっき操からも叱られてしまいました。
どうぞ。
いただきます。
ほんとによくお越しくださいました。
中学高校の友だちで弁護士になった人がいるっていつも嬉しそうに話してましたよ。
テニス部で一緒でした。
こちらに嫁いだと伺っておりましたので一度訪ねてみたいと思っておりましたが…。
やっと叶いました。
不思議でしょう?北国育ちのお嬢さんがこの松江の旅館に嫁いだなんて。
はい意外でした。
会社の旅行で来た操さんが熱を出しましてね。
看病しているうちにすっかり気に入って…。
私が望んでこの家に来てもらったんです。
へぇ〜。
操はいい出会いに恵まれたんですねぇ。
そうなの。
私はお義母さんに嫁いだようなものなの。
嫁入りのときも…。
(操)家もなく両親もない私を気遣ってくださって…。
お義母さんが何から何まで…。
ここが私の家…?そう。
ここが私とあなたの家今はもう私にとっては息子以上に大事な人になりました。
どうぞ。
頂戴いたします。
(仲居)失礼いたします。
女将さんすみませんちょっと。
どうしたの?
(仲居)失礼します。
どうしたの?あの…大社の警察から電話がありまして旦那さんが大変なことに…。
譲吉が?ごめんなさい。
ちょっと失礼します。
お義母さん。
女将さん定子さんから電話が入ってます。
定子さん?旦那さんと一緒だったんじゃないですか?
(みどり)ねぇ大変なことって何?交通事故?いいえ。
旦那さんが通り魔に襲われて…。
えっ!?
(パトカーのサイレン)
(平石)ご苦労さん。
ご苦労さまです。
このホトケさんが通り魔かい?通報してきたのは向こうにいる被疑者です。
(若水)襲ってきたのを逆に刺した。
えぇ。
あなたも怪我をしたんですね?
(譲吉)はい。
タイヤ交換をしているときにいきなり襲われて訳もわからず…。
老舗旅館の湖月楼のご主人だそうですね。
そげです。
加賀山譲吉です。
あの女性は?
(譲吉)あぁうちで経理をしている青木定子です。
あの人が一部始終を見ていたわけか…。
そげです。
あっ!沖さん…。
顔見知りか?そげです!主人に車を取りに行ってもらったばかりに大変なことになってしまって。
わかる範囲でいいから落ち着いて話して。
ご主人は操がパンクしたんで放置してきた車を取りに行ったんだよね?えぇ。
そのタイヤ交換をしてるときに通り魔に襲われて…。
襲った男は?
(房江)亡くなったそうです。
ご主人のほうは?もみ合ったときに刺されて今病院に…。
ただ主人を襲った通り魔がうちをよく使っていただいてたお客様だったのよ。
どういうことか…。
女将さんお車まいりました。
はい。
あぁ操大丈夫?私ついていこうか?大丈夫。
とりあえず主人に会ってくるわ。
お客様は何もご存じなくていらっしゃるんだからいつもどおり。
いいですね?
(従業員たち)はい。
加賀山の家内ですが…。
お疲れさまです。
大丈夫?痛みは?操…俺生きてるよ。
傷は痛まない?あぁ。
まだ何の感覚もない。
着替え持ってきました。
定子さんも一緒だったんですね。
あぁ…出るときちょうど出くわして。
知らなかったわ。
(ノック)奥さんちょっと署のほうにお越し願えませんでしょうか?ご協力いただきたいことがあるんですが。
(汽笛)う〜ん!こんなときに不謹慎ですけど先生これやっぱりおいしいですよ。
さすが!よかったらこれもどうぞ。
そうですか?すみません。
いただきます。
う〜ん!人間て幸不幸に関わらずお腹は空きますし女は悲しみのなかでも化粧はしなきゃなんないし罪深い生き物なんですね。
(房江)失礼します。
頂戴しております。
その後連絡は入りましたですか?えぇ。
太腿の傷がちょっと厄介だったようで…。
後遺症が残らなければいいですね。
いえ…無事だっただけでありがたいと思ってます。
それでゆき子さんにちょっと教えていただきたいことがあるんですが…。
はい。
譲吉の…このあとはどうなります?襲われたといっても相手の方は亡くなってますし…。
病院で取り調べを行うことになると思います。
その後の身柄は正当防衛が立証されれば拘束は解かれると思います。
帰れるということですね。
逃亡のおそれはないですしね。
裁判で執行猶予がつくのでは。
正当防衛立証されますわね?はい。
突然襲ってきた犯人をいわば返り討ちにしてしまったわけです。
でもこちらに殺意はありませんから。
ただ相手が顔見知りとなると事実関係を調べるのにちょっと時間がかかってしまうかと。
ご心配でしょうけど…。
(みどり)先生ここのお湯かけ流しですよ。
すごい。
公判ってあさってだったよね?あはい。
帰りのチケットは?とってあります。
午後1時何分でしたか…。
そうか…。
先生駄目ですよ。
公判延ばせませんからね。
《あのときの操の心はどこをさまよっていたんだろう?》〜指紋の採取に同意していただけますか。
指紋ですか?私の?家族以外の方の指紋を識別するのに必要なんです。
申し訳ありませんが。
(若水)こうまんべんなく全体的につけてください。
はいこちらにお願いします。
(若水)はい。
どうしてこんなことに…。
沖さんが通り魔だったなんて信じられません。
どんな客でした?はい…沖さんにはこの数年ご接待に使っていただいておりましたが今度の離れの増築の件ではすっかりお世話になって…。
先日も心ばかりですがそのお礼をさせていただいたばかりでした。
そのへんのところをもう少し詳しく話してくれませんか。
はい。
私どもではおととしコンクリートの離れを壊して純和風の離れを増築しました。
ところが当初の予定より1億円以上オーバーしてしまいました。
1億ですか!はい。
建築会社には6か月の手形を切っていましたからその間になんとかするつもりだったんですがせっぱ詰まって大阪の金融業者から借りてなんとかしのいだんです。
10回の分割で返済する予定でしたが3回目くらいからきつくなり始めて今更銀行に泣きつくわけにもいかず…。
そんなときに沖が助けてくれた?はい。
業者間でうちのことが耳に入ったらしく心配して駆けつけてくださいました。
沖:僕はこの湖月楼のファンなんですよ。
ここが大阪の業者の手に落ちたりしたらどうなるか知れたもんじゃない。
とにかくその大阪の業者の抵当を外しましょう。
短期のカネを用意してあとは銀行との交渉でなんとか乗り切ることです。
そんなこと…できるんでしょうか?やってみましょう。
よろしくお願いします!その短期のカネは無担保で?いえ…一時的に湖月楼の株式を譲渡担保にしました。
譲渡担保?へぇ!こりゃまたずいぶん沖を信用したもんですな。
藁をもつかむ思いでしたので。
沖さんは主人と一緒に銀行へ行ってくれてここで銀行が助け船を出さなければ湖月楼は業者の手に落ちて最初の銀行の融資も焦げついてしまうと追加融資を…。
なるほど。
でその後の沖との付き合いはどんなかたちで?ひと段落しましたときにお礼に100万円ほど包みました。
それだけだったらご主人を襲う理由がないですよね。
でも…主人と知らずに襲ったんじゃなかったんですか?立ち入ったことをお伺いしますが奥さんと沖とはどんなお付き合いを?お世話になった恩人ですから誘われればお茶くらいはご一緒しましたが…。
でもそんなことで主人を襲うなんて考えられません。
(若水)銀行へ行くついでに旦那さんを現場まで送ってきたわけだね?
(定子)はいさっきもそげん言いました。
旦那さんが襲われてるときあんたどうしてたの?車の中で化粧直しちょったんです。
おかしな声がしてちょっと振り返ったらあの男が旦那さんを襲うとこだったんです。
それで旦那さんがこうやって手で防ぎながらレンチを振り上げて…。
レンチが当たったみたいで相手がフラフラしたのははっきり覚えちょるんだけどもう怖くて…。
これは大事なことだからもう一回聞くけど被害者のほうから先に手を出したんだね?はいそげです。
あの男は常連なんだろう?あんただって顔くらい知ってたんだろう。
だけどヘルメット被っちょったからわかりませんでした誰だか。
(若水)沖が一連の通り魔の犯人だったと仮定してこれまでの通り魔は物取りではありません。
人を刺すことに快感をおぼえているやつです。
背後から刺すというのは同じ手口ですがこれまでと違って昼間だというのが引っかかります。
近くに連れの女がいることを知って襲ったことになるよな?それはどうかな。
目に入っていたのかどうか。
もうひとつ。
沖が通り魔を装って加賀山譲吉を襲ったという線はねえかなぁ。
どうしてそんなことを?沖女将加賀山の三角関係ということですか?とすると沖はたまたまあそこを通りかかってタイヤ交換している加賀山を見かけ加賀山が一人だと思って犯行に及んだということになりますね。
あの場所にパンクした車を置いてきたのはあの女将だよ。
(部長)あの県道辺りは一連の通り魔事件の延長線上ではあるんだよなぁ。
一応これまでの事件の関連性から洗ってみようか。
(一同)はい。
(テレビの音声)死亡したのは鳥取県米子の会社経営沖了二さんと見られ県警では島根県内で多発している通り魔事件の犯人である可能性が高いとみて…。
(操)ただいま戻りました。
(房江)おかえり待ってたんだよ。
(房江)定子も一緒だったんだね。
はい。
ちょっとお入んなさい。
譲吉はどげんな様子だった?もう落ち着いてました。
痛みは特に感じないそうです。
そうそれは何よりだわ。
ところで定子あんた警察に聞かれて話したこと言ってごらん?見たまま話したと思うけどどげなこと聞かれた?女将さん私もうクタクタで明日ではいけんですか?もう同じことなんべんも聞かれたもんで。
常の場合じゃないんだよ何言ってるんだ!お義母さん無理ですよ。
大変なことに巻き込まれたんですから。
すみません頭がボ〜ッとしてしまって眠くて…。
寝させてください。
お義母さん定子さん一緒だったことご存じだったんですか?いいえ。
〜《間の悪いときに来てしまったんだろうか?》《操の態度がなんだか気になる。
私には見えてないことがこの一家にはある》
(房江)せっかくお越しいただきましたのにこんな騒ぎで申し訳ございませんでした。
いえいえ私たちのことはどうぞおかまいなく。
あの…ゆき子さんにちょっとご相談したいことがございまして。
はい何でしょう?実はこの家にも顧問になってもらってる弁護士の方がいることはいるんですがこういう事件はとても手に負えないと思うんです。
それで東京でご活躍のゆき子さんに譲吉の弁護をお願いできないかと思いまして。
(房江)いかがでしょう?この場に居合わせたということもありますのでお引き受けしたいのはやまやまなんですが…。
やっぱりご無理かしら。
みどりさん後藤先生の連絡先わかる?あぁ後藤先生がいらっしゃいますよね松江には。
私どもの先輩で東京を引きあげましてこの松江に帰ってきてる弁護士がおります。
私のほうから事情を説明してお願いすることもできますけれどもいかがでしょうか?まぁそんな先生が松江にいらっしゃるんですか。
そういう方ならぜひ。
ね?操さん。
ええ。
《私はわかる…。
操は私に引き受けてほしくないと思っている》〜じゃあ。
ありがとうございました。
新しいお部屋いかがでした?いやぁ気に入ったよ。
オーライ!オーライ!
当時急速に過疎化が進んで町は荒廃していた。
保証人の判をついたばかりに何もかも失った操の家
テスト疲れた〜。
ねぇやっと終わった。
滝さんちょっと待っててすぐ支度するから。
いいよ。
(栄吉)いい加減にしねえか!これまで持っていくつもりか!邪魔だ旦那。
おめえらこの仏壇まで!どけ!おい!お父さん!どうして…。
おい!待て!おい!やめて!お父さん!操離せ!
(操)お父さん!操…。
(正己)栄吉さん今さらなんだね。
もう話はついてるはずじゃないか。
お父さん…。
(正己)往生際が悪いよあんた。
(栄吉)何もかも…!なんで!?酷いことしないで!ゆき子家へ帰ってなさい。
それ重ねるなよ!操…。
お父さん!
(泣き声)
何もかも失った操の家。
それを清算したのはよりによって私の父だった
その前の車だからな!
操は間もなく高校を中退して親戚を頼って町を出ていった。
その操に再び会ったのは20年後だった。
親戚の結婚式で久しぶりに故郷に帰った半年前のことだ
操…操!操よね?あっ上滝さん!?そうよゆき子よ。
うわぁ元気だったのね。
ええほんとに久しぶり!弁護士になって東京でご活躍とは聞いてたけど。
会いたかったわ!島根のほうで旅館の女将さんなんでしょ?うわぁこんな所でばったり会えるなんてね。
ほんと。
法事?昨日ね。
長いこと満足に法事もできなくて親戚に嫌味言われてから少々大袈裟な法事やったのよ。
そうなんだ。
私の暮らしもなんとか形になったので。
よかったわ。
それにしても大荷物ね。
これね…位牌。
えっ!?ご先祖のお位牌。
寺に預けっぱなしになってたのを持ってきたの。
ねぇ滝さん今度ぜひ私のところへ遊びに来て。
ちょっと遠いけど一度私の旅館を見に来て。
ありがとう必ず行くわ操の女将さんぶりを見に
(笑い声)いやぁ後藤先生がお引き受けくださってほっといたしました。
千人力です。
(後藤)お前さんも人並みの世辞が言えるかねぇ。
はい先生に鍛えられたのはお酒だけじゃありませんから。
(笑い声)ゆき子さんのおかげです。
後藤先生譲吉のことどうぞよろしくお願いいたします。
わかりました。
できるかぎりのことは。
それじゃゆき子さん私はこれで。
お見送りもできなくて。
いいえとんでもございません。
あの…操に元気出すようにお伝えください。
私タクシーつかまえます。
うん。
〜ああっ!
(みどりの悲鳴)先生!傷は案外深かったみたいだけども腕でよかった。
傷口は整形の先生が縫ってくれたんだそうです。
どうしても痕は残るそうですがちょっとしたしわのようになるだけで。
被害者は誰でもそう思うんでしょうけどまさか私が襲われるとはね。
(ノック)はい。
失礼します。
大社署の平石と申します。
若水です。
お訪ねしようと思っておりました。
後藤です。
このたび加賀山譲吉さんの弁護をお引き受けすることになりました。
ああそうですか。
よろしくどうぞ。
じゃあ我々は少し席を外しましょうか。
はい。
(みどり)洗面用具を買ってきますね。
湖月楼にお泊まりだったそうですね。
東京の弁護士さんだそうで。
ええ。
女将の操さんとは幼馴染みで20年ぶりに会いに来たところでした。
ああそうですか。
襲われたときですが犯人の特徴とかなにか印象に残ってることは?それが一瞬のことで残念ながら覚えてることはたった一つだけ。
ひとつ?はい。
犯人の目です。
私を刺したあと笑ってました。
愉快犯でしょうか?犯人は俺は死んでねえぞといってるんです。
ふざけた野郎です。
あそれからたぶん若い男。
20代かと思われます。
会えばわかりますか?どうですかね?自信はないですけどもヘルメットの風防を通して目を見ればあるいは。
(操)あら一人?うん。
今ね刑事帰ったところ。
大丈夫?痛みは?うずくだけでたいしたことないわよ。
着替えがいるんじゃないかと思ってとりあえずこれ。
ああありがとう。
よかったでも。
大事にならなくて。
操私のことよりもねご主人回復したらしばらく拘束されると思うよ。
あの事件少なくとも単純な正当防衛では片づかなくなると思う。
そうなの?
(後藤)単刀直入にいくつかのことを伺います。
はい。
通り魔の出現で状況が変わってきましてね。
はい。
操から聞きました。
なぜ沖はあなたを襲ったんでしょう?思い当たることはまったく…。
やはり偶然だったんでしょうか?自分もそのことをずっと考えちょったんだけどこっちは沖さんにはお世話になっちょって感謝することはあっても恨まれるようなことは…。
なにか他に思い当たることは?あの…。
どうぞ。
しかしこれは。
なんでも話してくださいよ。
誤解されると困るけど沖さんは私や母に対する態度と妻の操に対する態度がちょっと違っちょるだわね。
どげに言ったらいいか。
つまり沖は奥さんに好意を抱いていたということですか。
家柄なんかじゃなくて母が気に入って迎えたほどの妻じゃけぇ。
妻には沖さん以外にもファンのようなお客さまが何人も。
もっともそうでなくにゃあ旅館の女将は務まらんけどね。
なるほど奥さんにね。
パンクがすべての始まりだよな。
石さんまたなにか考えてるんですか?平石さん凶器の出どころ割れました。
おうそうか。
沖の凶器となったナイフですが米子の三春デパートで前日に買われたものと判明いたしました。
これは店員に顔写真を見せて確認済みです。
買ったときの時間のウラは取れてんのか?はい。
閉店間際のことで店員によると高いものなのにいきなり来て選びもせずにぱっと買って帰ったそうで。
ということは沖には前日に情報が入ってたと考えられるな。
あの場所を誰が沖に教えたかだ。
湖月楼の従業員たちも複数知っていたわけですよね。
例えば若女将の操が沖に教えた…っていうのは突飛かな。
いや俺も考えてた。
万が一そうだとした場合若女将の操が何気なしにしゃべったことを沖が犯行に利用したか。
あるいは若女将がそのつもりで沖に教えたか。
もし沖と女将がそういう関係ならどっかで会ってたはずだ。
(平石)バカ。
旅館の女将が密会するのにモーテルや旅館を使うわけねえじゃねえか。
沖は学生時代アメフトやってたのか。
(若水)石さん。
沖に関する資料を米子署の同期から送ってもらったんですよ。
沖の奥さんは暴力団の争いに巻き込まれて亡くなってるんです。
譲吉は学生時代柔道部だって言ってましたよね。
柔道をやっていた譲吉とアメフトをやっていた沖。
これは普通に戦えば互角ですね。
そうかなるほどね。
いいとこに目つけたじゃねえか。
襲われた譲吉は襲った沖を正当防衛で殺害した。
だがこれがもしももしもだよ。
仕組まれたものだったらどうなる?ええ?加賀山譲吉にも殺意があったらということは考えられないか?はあ。
はぁじゃねえだろ。
捜査にもしもはつきものなんだよ。
そりゃそうですが…ちょっと飛びすぎてませんかね。
正当防衛で完全犯罪だよ。
あの顔でそこまでいきますかね?人間ってのは案外平凡なやつほど心に深い闇を抱えてるもんだぜ。

(平石)指紋は出ねえだろうな。
あら。
どうも。
何してらしたんですか?東京帰るところなんですけどね習性ですかね担当でもないのに松江を離れる前に現場見ておこうかなって。
お連れさんは?あぁ先に帰しました。
いろいろあるもんで。
あぁいやいや。
ご無理なさらないでください。
抜糸は東京でもできますからね。
ところで先生は若女将とは同郷とおっしゃってましたね。
えぇ。
中学高校で後輩でした。
テニス部だったんですダブルス組んでたんですよ。
それだけの関係ですか?これってなんか事情聴取みたいですね。
いや。
そんなおそれ多い。
平石さんっておかしな刑事さんですね。
先生から見ると田舎刑事なんてだらっとして見えるんでしょうな。
だらっとしてるの?平石さん。
えぇ。
もうただの酒飲み。
あぁ…一度でいいからね松江の酒飲みたかったな。
これからちょっといきましょうか?お怪我でしたよね。
ありがとう。
明日帰るのね。
滝さんがいてくれて心強かったわ。
ありがとう。
ほんと?来ちゃって悪かったのかなって…。
《操はまだ私のことを許していないのかもしれない》これ…傷が治ったら旦那さんとやって。
旦那さんか…。
どこ行っちゃったんだか。
え?結婚してるでしょ?うん。
したようなしてないような。
山のカメラマンでさ。
ガッシャブルムっていう山に行ったきり帰ってこないの。
遭難?う〜ん。
どこかでね能天気に生きてるんだろうけど。
そう思って腹立てたり文句言ったりしてるわけよ。
知らなかったわ。
表通りを真っ直ぐ歩いてる人だと思ってた。
まさか。
滝さんにもそんなことがあったのか…。
操。
昔故郷の町であったこと。
忘れるはずないよね。
私のこと許してないでしょ?もう…遠い昔。
何もかも懐かしいわ。
滝さん。
私は変わったのよ。
あの頃のおさげのミチャオじゃない。
別の世界で生きてきた女よ。
そっか。
そうなんだろうね。
この前操に会ったとき私に操「私の旅館に来て」って言ったわ。
大変だったね。
あのお義母さんに拾いあげてもらって想像もしなかった人生を歩くことになったわ。
感謝してるわ。
その操の人生を今度の事件はもう一度大きく変えるかもしれないよ。
操私にまだ話してないことがあるんじゃないの?捜査が進めばいずれは明るみに出ることなのよ。
時間の問題だわ。
東京へ帰って。
お願い。
今更滝さんに裸にされるのはつらいわ。
あの沖っていう男がご主人を襲った動機が解明されない限り裁判は前には進まない。
警察の関心もそこに集中すると思うよ。
何を…どこまで話せっていうの?事の起こりは離れの増築なの。
後藤先生から聞いてるでしょ?沖はどうやって銀行から追加融資を引き出したの?銀行を脅したのよ。
沖:支店長さん。
お宅にもずいぶんと説明のつかない融資があるじゃありませんか。
不正融資。
世間の目は今厳しいですよ。
新聞社系列の週刊誌が近々松江に来ます。
地元の老舗旅館を見殺しにして多額の資金はいったいどこに流れたのか…。
多額の資金はいったいどこに流れたのか…その追加融資は?それは全額沖さんが用立ててくれたお金の返済に。
自分で用立てたお金は自分で回収したっていう寸法ね。
それなら万事うまく収まったんじゃないの?それが…。
つい先延ばししていた利子の1,200万円ほどを返済しないまま…。
譲渡担保の期限が過ぎてしまったのね。
そしたらあの人は突然牙をむいてきた。
皆様からお礼なんてとんでもない。
この湖月楼の経営を交代していただきます。
法的にも株の60%はすでに私が所有しているわけですから。
何をおっしゃるんですか?話の通りだとすればこれは法律にかなった乗っ取りだわ。
株式の譲渡書類に印鑑を捺して沖に差し出しその代価…金利の分ね。
代価も受け取ってる。
乗っ取りは成功してるのよ。
旅館って…。
そろばんだけで成り立つものじゃないのよ…。
特にこの湖月楼は代々の女将たちが育て守り…醸し出してきた品格や風情というお金には換算できないもので成り立ってる…生き物なのよ…。
それはわかるけど…沖っていう人はこの種のことは初めてじゃないんでしょうね…。
私たちがあまりに素人だったのね…。
乗っ取りが動機なのかしら…。
それなら譲吉さんを襲う必要があったのかな…。
最後の話し合いのとき…感情的になってかなりの言葉を吐いたわ…お互いに…。
だとしてもなぜ譲吉さんを…。
乗っ取りだけでは沖の動機が見えてこないわ…。
沖は湖月楼に経営の交代を迫ってそのあと…この宿をどうするつもりだったのかしら?あの男でもね旅館経営の特殊性くらいは…。
操…?〜何があったの?操…。
〜衣紋掛けが着物着てるんじゃないんだよ。
ほんとにあんたは何を着せても様にならないんだから…。
すみません…。
(平石)よ〜しいいか!
(平石)足は痛まないか?はい…。
よし!始め!!いきます!おりゃ!あぁ〜っ…!!あっ…。
どうした?あっ…あの…相手がそこで後ろに倒れました。
ふ〜ん。
ならお前…後ろに倒れてみてくれ。
はい…。
〜始め!!いきます!おりゃ!〜やめ!!どうしてもあんたが先に刺されちまうじゃねえかよ。
もう一度やるぞ。
もう一回ですか?うん。
どうした?もう一度やるんだよ。
申し訳ないです!なんだよ?スタンガンを…。
スタンガン?護身用のスタンガンを使ったのか?
(平石)湖の…あんたが教えてくれた場所から出てきたよ。
どうしてこんなもの持ってたんだ?それは…。
女が護身用に持ってたんだったら元のボックスに戻しとくのが普通じゃねえのか?つっかえてること吐き出しちまえよ!あんたがどんなに頑張ったって警察でシラを切り通せるタイプじゃねえよ!なぜ持ってた?あんた…沖が来ること知ってたんじゃねえのか?どうなんだ!!加賀山!!申し訳ありません…。
私が…妻を使って…沖を誘い出して…殺しました…。
(若水)沖が女房に気があるのを利用したというわけか?湖月楼を守るためにはこげんするしかなかったんです…。
スタンガンは…偶然定子の車にあったのを…見つけて…。
〜なんだ?これ…。
護身用に買ったの。
スタンガンじゃないか!ネットで買ったわね。
最近物騒じゃけん…。
ねぇ旦那さん…。
日御碕の先までちょっと足のばさやねん。
陽が落ちると面倒じゃけ…。
先にやることやって時間があったらな。
早く終わらせてね!あぁ!
(譲吉)現場に近づくうちにだんだん怖なって使えるものなら何でもと…ついポケットに…。
(ノック)平石さん。
東京の科研から電話です。
科研から!?待ってたのよ待ってたのよ!もしもし?玉井警視ですか?タイヤをお送りした平石です。
お待ちしておりました。
早速に…ありがとうございます。
指紋は出ましたでしょうか?えっ!?二人も!?
(平石)東京科警研技官の玉井警視からの鑑識報告によりますと個人識別に耐えるほどの紋理を割り出すことは無理でしたが特定者との異同識別は可能でした。
つまりある人物と同じかどうかは判断できるというものです。
タイヤにめり込んでいた三寸釘の表面から採取できた5個の指紋の断片が二人の人物と合致いたしました。
(平石)鑑定法はニンヒドリン法とアルミ粉末法を併用したものです。
(平石)実は…タイヤに刺さったままの釘から指紋が検出されましてね。
(房江)指紋が…?太くて新しい三寸釘の表面から採取された指紋は…奥さん…あなたのものでした。
…えっ?
(若水)ご主人にも事情を聞いていますが奥さんにも署までご同行願います。
(房江)そんな…釘なんて…。
工事のあとの物置にはいっぱい散らばってましたよ。
詳しいことは署で伺いましょうか…。
〜支度をしてまいります。
(平石)日御碕の県道沿いで男が一人殺された。
襲った男が返り討ちにあった。
事件は正当防衛で決着するはずだった。
ところがそれは仕組まれた殺人だった…。
襲ってくることを知ってご主人はガタガタ震えながらその瞬間を待ってた。
男は巧妙におびき出された。
違います!主人は被害者です。
それはどういうことですかね?〜君から連絡してくるなんてどうしたんだ?…何かあったのか?〜日御碕に車をパンクさせて置いてきたわ。
譲吉に取りに行ってもらうつもり。
どうしろっていうんだ?書類上はもう俺たちのものなんだぞ。
湖月楼は…。
たとえ書類上はそうなってもあの人がいるかぎり…。
〜…通り魔にでも襲われるか
(操)私が沖さんをそそのかして主人を襲わせたんです。
私が工事のあとに物置にあった釘を持ち出して現場で車に踏ませてパンクさせました。
主人にその車を取りに行ってくれるように頼んで…沖さんにも連絡しました。
なるほどね。
奥さん…。
あなたせめてもの罪滅ぼしに旦那だけでも守ろうとしてるんだろうけどまだ少し違うんじゃないの?実はね問題の釘からはあなただけじゃなくもう一人の指紋が確認されたんですよ。
ご主人のね。
それは…私が何も知らない主人に釘を出してきてもらったので…。
物置から自分で持ち出したと今言ったばかりじゃないか!!いいかげんにしてもらいたいな。
ご主人はね…沖が襲ってくるのは計算済みだったと白状したよ!構えていたから殺すことができた。
ああいいよいいよ。
どうぞ。
手酌でいくから。
おねえさん…コップ。
もう飲めなくて残念。
夫を庇っているのか?それとも妻を庇っているのか?このままじゃ真相は藪の中だな。
若女将はしばらく留められるだろう。
藪の中に見え隠れする登場人物は…4人。
4人だけとは限らないかもしれないよ。
え…?
足は自然に湖月楼に向かっていた
(房江)お待ち申しあげておりました。
遅くなって悪かったね。
(房江)いいえ。
渋滞に引っかかっちゃってね。
(房江)そうですか。
《あのお腹…まさか妊娠?》
(房江)まだまだ半人前で行き届きませんがどうぞお見知りおきください。
そうですか。
まっ何が起ころうと大女将がいるかぎりこの湖月楼は安泰ですよ!
(房江)ありがとうございます。
いくら食べてもお腹が減って…。
定子さん…何か月なの?え…あの…。
定子何をしているの?そんなところで…。
いえ別に…。
ゆき子さん東京へお帰りじゃなかったんですか?操には弁護人が必要です。
操さんからまだ何の連絡もありませんがゆき子さんにお願いしたんでしょうか?そうさせていただこうと思ってます。
いけませんか?私が東京へ帰ったほうがいい事情が何かおありでしょうか?滝さん…東京へ帰って。
20年前の私じゃないのよ。
巡り合わせなのよ。
あきらめなさい。
私じゃ頼りないかもしれないけど。
それより定子さんお腹が大きいよね?お腹…?うん何か月かしら?洋服だと気がつかなかったけど着物だと案外目立つわ。
定子さんが着物?ええ。
着物を着てお客様にご挨拶してたわ。
お義母さんが着せたのかしら?まさか…。
《妊娠だなんて…あの人に女将なんか務まるはずがない》《操に考える時間を与えてみた》《お願い…真実を話して》わぁ〜見事なお着物ばかり。
まぁゆき子さんどうぞお入りください。
失礼いたします。
せっかく松江に遊びにいらしたのにこんなことになってしまって…。
いつまでもゆき子さんにこの松江にいていただくわけにもいかないでしょうから。
先ほど操と面会してきました。
まぁおそれいります。
操は沖と図って…譲吉さんを殺害しようとしたと供述しました。
そのようですね。
譲吉さんも実は自分が襲われることを知っていたのだと供述しています。
操に沖を誘わせたのだと。
でもそれはまだ真実ではない。
お互いに何かを隠してます。
女将さんあなた操のこの家を思う気持を利用して彼女に何を言い含めたんですか?言い含めるなんてとんでもない。
私にそんな力はありませんよ。
そんなことより操さんの自白には案外真実が含まれているかもしれませんよ。
真実?えぇ。
操さんは譲吉に協力するふりをして沖さんに譲吉を殺させようとしたのかもしれませんよ。
実直で平凡なだけの譲吉と刃物のような沖さんと。
何をおっしゃってるのかおわかりですか?私が操さんと沖さんとのこと知らなかったと思いますか?そうですか。
ご存じだった…。
それであなたは操を信じることができなかったんですね?自分や譲吉さんを裏切るかもしれない。
沖にこれは罠だと知らせるかもしれない。
そう考えて定子さんをつけてやった。
かわいそうに…操は信頼するあなたにまで疑われていたんですね。
操は私の親友です。
彼女は私の父親のせいで故郷を追われて苦労をかけました。
少しは聞いてます。
私操がこんな立派な旅館の女将になってほんとによかったって思いました。
けどこの家はこの家は操や譲吉さんを犠牲にしてまで守らなければならないものなんですか?家を守るということは生なかなことじゃありません。
ここには私の半生が塗り込められているのです。
あなたのそのこの家に対する執着が3人もの人間を犠牲にしようとしている。
いえ4人だわ。
定子さんだって巻き込まれる可能性がありました。
操の悲劇はあなたに見込まれたことから始まったのかもしれない。
代々続けていくということはそういうことです。
おさげの操をあなたが変えてしまった。
操をここまで追い込んだのは結局あなたではありませんか。
それなのにあなただけ自分の責任から逃れようとなさってる。
遠くから眺めていらっしゃるんですね。
美しいものに犠牲を伴わずにあるものなんかあるものですか。
美しいものはみな鬼が守っているんです。
あなたは何もご存じない。
房江:美しいものに犠牲を伴わずにあるものなんかあるものですか。
美しいものはみな鬼が守っているんです操をここまで追い込んだのは結局あなたではありませんか。
それなのにあなただけ自分の責任から逃れようとなさってる女将さ〜ん!女将さ〜ん!はい上滝です。
あぁ後藤先生おはようございます。
え?女将さんが入水?それで?あぁ…。
(後藤)まだ警察の管理下にあって面会は難しいと思うけどとりあえず。
わかりました。
ありがとうございました。
まさかあの強い人が自殺だなんて…。
お義母さんが入水!?そんなことをするような人じゃないわ。
女将さんは操と沖とのこともご存じだった。
平凡な譲吉さんと刃物のような沖と。
真実は操の心の中にあるって。
お義母さんがそう言ったのね?譲吉さんに協力するふりをして実は操は沖と図ったんじゃないのかとも。
滝さん湖月楼はどうなるの?このうえお義母さんが警察に呼ばれるようなことにでもなったら…。
操…。
何言ってるかわからないよ。
これ以上湖月楼を傷つけるようなことはしないで。
滝さんにはいくら話してもわからないと思うけど湖月楼に来て20年私毎日あの家の床の間や廊下磨いてきたのよ。
あの家を守るってどういうことか外の人間にはわからないの。
女将さんも同じようなこと言ってたわ。
でもこれだけは言えるわよ。
何人もの人間を犠牲にしてまで守らなければならないものなんてあるとは思えない。
お義母さんに触らないで。
お願い。
操それはどういうことなのよ?裏切られてもお義母さん守るつもり?人は死ぬまで抱えていく秘密が一つや二つあるんじゃない?真実はたった一つよ。
人間は闇を抱えたままなんか生きていけないわ。
〜《鬼なることのひとり…。
鬼まつことのひとり。
しんしんと…》〜怖いわ。
心配するなあぁ!女将さんもう大丈夫なんですか?お義母さん!よかった心配しました。
今日は私の好きな着物を持ってきたの。
これをあなたに着てもらおうと思って。
わぁ…これお義母さんが大事にしてらしたつむぎじゃありませんか。
母から譲られたものなのよ。
これを操さんあなたに着てほしいと思って。
これを着るのは定子さんでしょう。
定子には女将は務まらない。
でも譲吉の子供が生まれます。
承知しています。
でも子供などあなたが育てればいい。
私がしてきたように。
お義母さん…。
(房江)定子のことは譲吉のあなたへの面当てですよ。
成り行きにすぎない。
そうでしょうか…私にはそうは思えない。
私は子供も産めなかったしあの人定子さんの前では手足を存分にのばしてる。
これでよかったんです。
何を言うの!あの2人では湖月楼は守っていけないわ。
それならなぜ私を見捨てたんです?一度は定子さんに任せようと思われたんじゃありませんか?私は罪を逃れようとは思いません。
あなただって一度は私や譲吉を裏切って沖と組もうとしたじゃありませんか。
そういうあなたにならあの家を守れる。
お義母さん私はもう湖月楼へは戻れないんですよ。
そんなことはない。
あなたにあの男を誘わせ譲吉に実行させた主犯は私ですもの。
そのことはこれからゆき子さんにもすべて話すつもりです。
私はもうあなたの思いどおりにならない。
この事件は私が沖をそそのかして仕掛けたんです。
私は誰よりもあなたを認めています。
何を考えているの?つまらない意地をお捨てなさい。
裁判が終わったらあなたは湖月楼へ戻りなさい。
すべてを書き残して水底から見つめていようと思ったけど湖の神様がまだし残したことがあるとお思いになったんでしょう。
私はこのまま出頭します。
〜私は操さんという新しい鬼を育てました。
もう交代のときです。
先生…。
操は房江さんに代わって新たな鬼になるんですかね。
女がひとつことをやり抜こうとするとき鬼になるんじゃないのかな。
君だってその瞬間はあっただろうし思い当たるんじゃないの。
鬼は人間であることを捨てなきゃなりませんよね。
まぁこの裁判は君じゃなきゃできない弁論をぜひ展開してほしいんだ。
そうでなければ無理させてる東京の連中に顔向けができないよ。
裁判はこれから始まるんだからね。
そうそう君を襲った通り魔。
やっぱり君が言ってたとおり若い男だったよ。
逮捕されましたか!うん。
〜精が抜けて何てやわらかい…。
〜一緒にやっていこう。
本当にそんなことが叶うのかしら…。
(沖)もう後戻りできない…女将さんは供述を始めたわ。
今日は沖がきた日のことあの夜何が起きたのかを操から聞きたいと思ってきたの。
女将さんの語る真実と操の語る真実。
すべてを話すときがきたのよ。
すべてを…。
そう…。
房江:このたびは沖さんに本当にお世話になりました。
沖さんのお力添えがなかったら譲吉だけではどうにもこうにも。
とんでもない。
私はこの湖月楼が好きなんですよ。
沖さんのご好意はとてもこんなものでお返しできるとは思いませんがお納めください。
これは頂戴するわけには。
私どもの気持です。
(沖)そうはいかないんですよ。
自分の会社から使途不明の金を受け取るわけにはいきませんから。
自分の会社?何をおっしゃっているのだか…。
わかりませんか。
この湖月楼はすでに私の会社のものなんですよ。
そんな馬鹿な!
(沖)いいですか!この湖月楼の株の60%は私が所有しているんですよ。
申し訳ありませんが湖月楼の経営を交代していただきます。
(譲吉)おふくろ何するんだっ!やめろよ!
(操)お義母さんお義母さん…お義母さんやめて!あんな男にこの湖月楼を渡すくらいなら火をつけて燃やしてやる!
(操)お義母さんの湖月楼への執着を目の当たりにしてふだん大人しい譲吉も熱に浮かされたように…。
あの男に消えてもらうしかない。
わしがやる。
あなたがそんなことをしたら湖月楼の名に傷がつく。
第一どうやって…。
操さんあなたならあの男を誘い出せるわね。
どこかへ誘い出して…。
そうだそうしよう
(操)沖を誘い出して殺すという恐ろしい話が…。
沖とはいつからだったの?
(操)沖は大胆だった。
空港で待ち合わせて時には日帰りで札幌まで行ったことも…。
私は力強い沖を拒みきれなかった。
でも湖月楼はお義母さん抜きでは考えられない。
パンクをさせておびき寄せることを思いついたのは?〜本当にいいの?お前こそできるのか?やってみます。
何もかも終わったらやり直せるか?あなた…所詮素人の浅知恵だったわ。
指紋まで出てくるなんて。
タイヤをパンクさせた日沖に連絡したのはどこで?現場近くの公衆電話から…。
公衆電話から?
(操)沖はいつもケータイでの連絡に慎重できっと何かを用心していたんでしょうね。
沖は待ち合わせた場所に迎えに来てくれた。
沖:書類上はもう俺たちのものなんだぞ湖月楼は。
たとえ書類上はそうなってもあの人がいるかぎり…。
通り魔にでも襲われるか…
(操)私は沖をそそのかした。
譲吉が待ち構えていることを知らせずに。
沖も今なら通り魔の犯行に見えるだろうと。
でも譲吉さんが待ち構えてるとはいえ沖が譲吉さんを刺してしまうことだって十分に考えられたんじゃないの?そう…どちらかが死ぬ。
平凡で実直な夫と野心家の男。
操あなた…。
そのときに本当はどうなればいいと思ってたの?操…。
あなたまさか沖のことを愛してたんじゃ…。
愛する人を犠牲にしてまで湖月楼を守ろうとしたの?〜《私がここに来た日。
操はここに佇んで湖の音を聞いていた。
風の音か地鳴りの音か…。
あのときすでにことは始まっていた。
あの日操はここで何を思っていたのだろう》あの家も愛も両方手に入れるなんてことはできないのよ。
私は鬼になったのよ。
美しいものはみな鬼が守ってるんです。
《操の抱えた闇の深さに法の光は届くだろうか…。
裁判はこれから始まる…》お母さんただいま。
お帰り。
宿題してから遊びに行くのよ。
今日は宿題ないもん。
おばあちゃんただいま。
(定子)あんたお昼何にする?ゆんべのカレーでいいよ。
平凡な幸せを手にした譲吉夫婦と亡くなった房江の思いどおりに譲吉の子を育て家とともに生きている操。
愛と引き換えに操は何を得たのだろう
2015/02/25(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
夏樹静子サスペンス「湖に佇つ人 鬼の棲む老舗旅館」[字]

美しいものは鬼が守ってくれる…女たちの情念が招く、哀しき殺人…。

詳細情報
番組内容
弁護士のゆき子は、島根県松江市に出張した際、親友の操が嫁いだ老舗旅館『湖月楼』を訪れた。滞在中、操の夫・譲吉が、多発する通り魔事件の被害に遭い、犯人を返り討ちにした。なんと、犯人は旅館の常連客で、実業家の沖と判明。一連の通り魔事件も沖の仕業とされるが…。その直後、ゆき子が通り魔事件の被害に遭う。真犯人の出現で事件は思わぬ展開を見せる…!
出演者
上滝ゆき子…室井滋
加賀山房江…八千草薫
加賀山操…麻生祐未
平石警部…斉藤暁
青木定子…広岡由里子
沖了ニ…冨家規政
加賀山譲吉…朝倉伸二  ほか
原作脚本
【原作】夏樹静子
【脚本】高木凛
監督・演出
【演出】堀川とんこう

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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