クローズアップ現代「“休眠資格”が在宅ケアを変える」 2015.02.26


おはようございます。

住み慣れた自宅で介護や医療を受ける在宅ケアのニーズが高まり続けています。
そこで深刻になっているのが在宅ケアに不可欠な看護師や理学療法士など専門職の不足です。

こうした中、新たな戦力として期待されているのが資格を持ちながら働いていないいわゆる潜在資格者です。
在宅ケアは病院や施設とは違い短時間でも就労できるため子育てなどと両立した新たな働き方が可能だといいます。
ブランクによる技術の遅れをサポートするなど潜在資格者の不安を取り除き再就職につなげるための取り組みも始まりました。

どうすれば眠った宝である潜在資格者の力を引き出すことができるのか。
今夜は在宅ケアの現場で始まった新たな人材活用に迫ります。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
介護を受けながら自宅で穏やかに暮らしたい高齢者。
がんなどの病気と向き合いながら自宅で療養する人々。
国は医療や介護サービスを在宅中心で提供していく方向を打ち出していまして実際、在宅で医療や介護を受ける人は増え続けています。
求められている在宅での医療や介護の量的、質的ニーズにどうやって応えていくのか今、大きな問題になっているのがケアを担う専門職の人材確保です。
例えば看護師ですが、現在資格を持って、そして実際に働いている人は154万人。
2025年には最大206万人の看護師が必要になるといわれています。
これから年間3万人ずつ増えていくとしても、13万人の人手が不足すると見られています。
こうした中、注目されているのが在宅ケアに必要な国家資格を持ちながら働いていないいわゆる潜在資格者です。
その数は看護師で71万人歯科衛生士で14万人理学療法士で3万人に上ります。
人材育成に時間がかかる中即戦力にもなりうる貴重な人材です。
その多くが結婚や出産を機にやむなく離職し条件さえ合えば再び資格を生かして働きたいという意欲を持っていると見られています。
医療、介護の現場に欠かせない専門性を持った人材。
潜在資格者を掘り起こし復職にどうすればつなげられるのか。
子育てしながら技術を生かして女性が活躍できる受け皿にもなりうるだけに積極的な取り組みが求められていますけれども資格を持った人材がどこにいるのか把握すらも容易ではないのが実態です。
人材確保に奔走する現場からご覧ください。

今月開かれた看護師の再就職を支援する相談会です。
資格を眠らせているいわゆる潜在看護師に再び働いてもらうのがねらいです。
40の病院や施設などがブースを出し80人以上が訪れました。

会場の中に参加者があまり足を止めていないブースがありました。

人がまばらだったのはいずれも利用者の自宅で医療を行う訪問看護ステーションのブースです。

再就職相談会に参加した訪問看護ステーションです。

おはようございます。

現在10人の看護師が勤務し足立区を中心に100人の利用者をケアしています。

ここ数年、利用を希望する人が1.5倍に急増。
看護師の採用が追いつかず年間60件以上の依頼を受けられない状況になっています。

なぜ必要とされているのに在宅ケアは潜在看護師から敬遠されているのか。

訪問看護の現場では基本的に看護師が1人で利用者宅を訪ねます。
呼吸器や胃ろうの管理点滴などの医療行為を医師の指示の下行うのが主な仕事です。
相手とじっくり向き合える理想の看護といわれる一方でたった一人で利用者の命を預かる重い責任があります。

訪問看護の現場は多くの看護師が最初に働く病院とは環境も全く異なります。
病院では患者の容体に変化があると、すぐに同僚の看護師に相談をしたり医師の指示を仰いだりすることができます。
しかし、訪問看護の場合現場の看護師が判断を迫られます。
潜在看護師が飛び込むにはハードルが高いのです。

この法人では訪問看護以外にもさまざまな在宅サービスを手がけています。
理学療法士によるリハビリや管理栄養士による栄養指導歯科衛生士による口腔ケアなど。
いずれも資格を持った専門職を増やさなければ増え続けるニーズには応えきれません。
法人では毎週会議を開き人材確保の対策を協議しています。
この日は求人チラシに載せる募集の条件を話し合いました。

去年は32万枚のチラシを配布。
しかし、問い合わせはありませんでした。

働く側のニーズをより詳しく把握してなんとか就労につなげようという動きも始まっています。
東京・世田谷区は、潜在看護師に的を絞った就職支援セミナーを年に3回開催。

参加者のアンケートから浮かび上がったのは潜在看護師の7割が働く意欲がありながら就労していない実態です。

壁になっていたのは仕事のブランクによる技術の遅れや在宅看護の知識が乏しいことへの不安など再教育や支援の仕組みが必要なことが分かってきました。

世田谷区では、潜在看護師に在宅ケアの現場をいわばお試しで体験してもらう機会も設けました。

在宅看護に必要な医療技術や知識はどの程度なのか。
どんな判断を求められるのか。
間近で見ることで不安を払拭するのがねらいです。

ありがとうございました。

こうした事業を通して昨年度は5人の潜在看護師を就職に結び付けることができました。
どうすれば事業者と働く側のミスマッチを埋められるのか。
模索が続いています。

今夜は在宅医療、そして介護現場の人材政策に大変お詳しい、労働政策研究・研修機構研究員の堀田聡子さんをお迎えしています。
潜在的な資格を持った方々のおよそ7割が、働きたいという意欲を持ってらっしゃる。
そして、今、介護の現場には、そうしたニーズも高いし、事業者のほうも雇いたいと思っている。
それにも関わらず、人が集まってこない。
どうして歯車がうまく回っていないんですか?
今、大きな転換期にあるんですね。
以前のあまり高齢化が進んでいない時期の病気になったら病院に行って、そして病気を治して帰ってくるっていう、病院完結型で、資源を集中的に病院に投じるっていうところから、人口が高齢化していくと、病気や障害とつきあいながら地域で暮らす方々が増えていく。
そういう方々をどうやって支えていこうかということが今、動こうとしているわけなんですけれども、でも働く側からすると、主に学校で勉強したら、病院で勤めて、そして結婚したり出産、育児、あるいはちょっと疲れてしまって休んでしまったっていうと、戻ってくるときの勤め先として、主にこの地域のイメージがまだ十分伝わっていないということも、この歯車が回らない大きな要因かなと思います。
多くの職場が待ってるっていうことも、十分認識されてないかもしれないんですけれども、今のリポートの中で、人材を求めて32万枚のチラシを配った、しかし問い合わせはなかった。
多くの潜在的な資格者がいらっしゃって、これ、国家資格を持った方々、そして国が法律を作って、就職あっせんの体制作りもしようとはしていますけれども、なかなか掘り起こせない。
課題、どうしたら掘り起こせるんでしょうか?
ただ、まず看護についてはすでに走っていますけれども、資格を持った方々が登録をして、都道府県の看護協会がナースセンターという形で、ハローワークと連携をして、職業紹介をするとか、復職支援をするとか、その登録された情報に基づいた形で、マッチングをしようというような動きが始まってきて、介護もそれをならっていこうというような動きが出てきたのは、一つの手がかりとしては前進だと思うんですね。
ただ、現状では、まだまだ先ほどの働く側が新たな地域という可能性について、まだイメージできていないというところが大きいと思いますので、国の施策の流れに乗った形で、でも実際に潜在していた方々が復職して、どんな感じで働いて、どうやって不安を乗り越えて、どんな喜びを持っているのかということを、もっともっと語る場を地域の中で広げていってほしいなと思うんですよね。
それは同窓会であれ、地域のお仲間であれ、保護者会であれ、なんでもいいんですけれども、そのストーリーを広げるということが1つ。
それからもう1つは、潜在化してしまう前に、病院だけではなくて、今、出向のシステムなんかも模索されたりしていますけれども、病院で働きながら、訪問看護も経験をしてとか、さまざまな場の経験をいろいろと最初から伏線的に積んでおくというようなシステムを作っていく動きも見られますし、これは今後、期待されると思います。
早い段階でイメージが持てるような仕組みを作っていくということですね。
ただやはり、5年、10年と仕事をしていないと、日進月歩で医療は進んでいく中で、機材が変わったり、あるいは看護の考え方も変わったりして、自分がやれるんだろうか、しかも1対1で患者の方と向き合わなければならないとなると、これ、不安を持つのは当然ですよね。
その研修の仕組みなど、十分なんでしょうか?
おっしゃるように、地域はとても変わってきていて、高齢者の方々が、いろいろな疾患、がんで、認知症で、糖尿でといったようなことを抱えてらっしゃる方もあれば、他方で、人工呼吸器をつけながら生まれてくるお子さんたちがいらしたりということで、さまざまな難しさを抱えた方々が増えているというときに、すべてを一人でおうちに行って、全部を責任を持ってやらなければいけないっていうところから、まずは突き抜ける、そういった方向性が、そういった可能性が、1人で責任負わなくてもいいんだというような不安を払拭する手がかりとしての復職支援が整っていくことは重要だと思います。

きちんと研修したうえで、いったん働き始めたあと、1人で向き合うという、そういう考え方を持たないほうがいいということですね。
そうですね。
実際にはチームで、ご本人を中心に支えていくということですので、1対1で全部負わなきゃいけない、そうではないんだよということが、復職までの間に手応えが得られるといいなと思います。
さあ、資格を持っている方々が不安なく、そして柔軟に働ける体制作りができるのか、具体的に取り組み始めた例をご覧いただきましょう。

かつて歯科医院で衛生士として働いていた樋口聖子さんです。
おかず持っていきなさいよ。

結婚と同時に退職し子育てに専念してきました。
いってきます。

しかし、今。

10年のブランクを経て歯科衛生士に復職しました。
歯科医院に勤めるのではなく在宅ケア専門の衛生士として働いています。

お口の中ねきょうきれいにさせてくださいね。

樋口さんの仕事は口の中をきれいにする口腔ケア。
肺炎などの予防に効果があるとしてニーズが高まっています。
1人のケアはおよそ1時間で終わります。
仕事のスケジュールは利用者と相談して自由に決められるため、樋口さんは家事や育児に支障のない日中の空き時間に仕事を入れています。
短時間でもできる在宅ケアの仕事はフルタイムでは働きづらい人でも専門性を生かすことができるのです。

樋口さんの復職を後押ししたのは歯科医師会が作った仕組みです。
もともと在宅での口腔ケアは歯科医師が外来診療の合間に行っていました。
しかし採算が取れず、利用者のニーズに応えきれないことが課題でした。
そこで注目したのが就労していない潜在歯科衛生士です。

まず資格を持ちながら歯科医院に勤務していない衛生士に連絡を取りリストを作りました。
そして医師の指示の下歯科衛生士が訪問口腔ケアを行う体制を整えたのです。
この仕組みによって上越市では年間1000件余りの訪問口腔ケアを実現。
肺炎になる高齢者が減るなど効果も見られ今や潜在衛生士は在宅サービスに不可欠な存在になっています。

人手不足の事業者と資格を生かしたい人々。
双方にメリットのある働き方は訪問看護の現場でも模索されています。
この訪問看護ステーションは15人の看護師のうち7人が元潜在看護師です。
採用の条件は資格があることと自転車に乗れることだけ。

ここでは潜在看護師がスムーズに復職できる体制を充実させています。
その一つが看護師の負担を軽くする工夫です。
この日、床ずれの悪化に気付いた看護師は、患部の写真を事務所に送信し、所長に相談しました。

所長は医師の指示の下新しい薬を使うよう伝えました。
看護師一人に責任を負わせないことで医療ミスなどのリスクも減らしています。
さらに復職した看護師には3年にわたって先輩がバックアップにつきます。

深呼吸しててくださいね。

復職して1年の元潜在看護師。
判断に迷う場面では週に1度同行する先輩にアドバイスを求めます。

多くの潜在看護師がブランクを経て復職したことで新たな可能性も見えてきたといいます。
子育てなどの経験が利用者の心を開くことにつながりサービスの質を上げるのに役立っているというのです。

専門性の高い方々に見てもらえると、利用者にとっての生活の質も上がっていきますし、自分のスキルを生かしながら、柔軟に働けるという、この新しい働き方は、多くの女性たちに自分もできるかもしれないと思わせますよね。
そうですね。
まず1つ目のこの上越の取り組みというのは、もちろんこの歯科衛生士さん、9割が今、診療所に勤めていますけれども、それがこうやって地域に行かれることを通じて、口から食べる、肺炎や感染症を予防するといったことで力を発揮されてるということはとても大きいなと思います。
さらに、今、おっしゃってくださいましたけれども、フリーランスで働いているわけですね。
今までは事業所、診療所に張りついていらしたわけですけれども、そうではなくて、地域全体として、必要な機能としてプールされていて、そして今までの経験が生きる場で輝いてらっしゃる。
それを支えている一つが、歯科医から歯科衛生士に権限が少し役割が移譲されているっていうのも、とても重要なポイントだなというふうに思いました。
正直、やっぱり不安とどう向き合っていくのか、いろんな現場がある中で、訪問看護のステーションが行っている取り組みとしては、先輩が付き添ってくれるとか、あるいは専門家に意見を請うことができる、こうした体制があると、本当に安心でしょうね。
利用者にとっても安心ですよね。
何よりもケアの専門職の方々は、ご本人の生命力をもっともっと持ってる力を引き出す人間性を復活させるということに向けていらっしゃるので、双方にとって安心ということになると思います。
ただ、どこの事業所もあちらのように大きな事業所、比較的大きな事業所で、事業所の中で教育ができるかというと、そうでもない所がありますので、いかにご本人を中心に事業所を超えて、そして看護だけではなくて、医師とか介護とか、ほかのリハビリとか、いろんな職種が目標を共有するチームとして、学び合っていくということが、とても重要ではないかなというふうに思います。
そのことが恐らく、人それぞれが持っている、生活者としての知恵や経験、先ほども子育ての経験がというのがありましたけれども、それぞれの難しさをさまざま抱えながら生きる方々、その知恵や経験が地域の中で物語として蓄積されていく、交流するということにもつながるかなというふうに思います。
ありがとうございました。
堀田聡子さんと共にお伝えしてまいりました。
今夜の「クローズアップ現代」は、これでお別れです。
2015/02/26(木) 00:10〜00:36
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「“休眠資格”が在宅ケアを変える」[字][再]

在宅医療・介護サービスの現場で、看護師など専門的な資格を持つ人材の不足が深刻化している。資格を持ちながら就業していない“休眠人材”を掘り起こす最前線をルポ。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】労働政策研究・研修機構研究員…堀田聰子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】労働政策研究・研修機構研究員…堀田聰子,【キャスター】国谷裕子

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ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
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