東京都内にある競輪場。
今競輪場は大きく様変わりしています。
色とりどりの女性たちの似顔絵。
3年前から始まったガールズケイリンです。
選手は全て女性。
実力重視で選ばれた70人です。
キャッチフレーズは「顔より太もも」。
鍛え上げた67センチの太もも。
自転車競技を始めて1年半ながら無敵の22連勝。
小林選手といえば先行。
トップに立ったまま400メートル以上走りきる戦法です。
目の前には誰もいない圧倒的なスピード。
ひたすら先行を追求しています。
オリンピックでもメダルが期待される小林選手。
しかし去年の国際大会。
得意の先行で惨敗。
初めて自信が揺らぎました。
世界でトップに立つにはどうすればいいのか。
全力でもがき続けています。
最後まで!誰にも前は走らせない。
自分自身との真っ向勝負を見つめました。
福岡県の久留米競輪場。
小林選手はここを拠点に全国を転戦する毎日を送っています。
男子選手にも引けを取らない太ももがとてつもないスピードを生み出します。
加速するバイクを追いかける練習。
後ろは若手の男子選手です。
全速力で1周。
男子選手を置き去りにしました。
いい練習ができるとコーチからココアのご褒美です。
ありがとうございます。
おいしい?おいしい?おいしい?最高。
最高。
自転車を降りると21歳の笑顔がはじけます。
小林選手のデビュー戦は去年5月。
ガールズケイリンは7人の選手が400メートルのバンクを4周して競います。
序盤はポジション争い。
残り1周半の地点で誘導員が離れます。
さあ小林さん見せてもらうで!ここで小林選手が一気に前へ。
トップでゴールまで走りきる先行です。
トップスピードは女子最高の時速60キロ。
2位に10メートルの差をつけて圧勝しました。
小林選手はこの先行を武器にデビュー22連勝。
破格の強さを誇ります。
スピードこだわって練習してきました。
迷わず自分が思い切り行くだけだと思うので。
競輪ではレース終盤で勝負する戦い方が一般的です。
青い丸の選手。
誘導員が離れてもできるだけ体力を温存し最後にスパートをかけます。
これに対して小林選手の先行は残り1周半でスパートをかけます。
そのままトップで走り続けゴールを目指します。
先頭で走ると空気の壁が立ちはだかります。
時速60キロで走る小林選手は台風並みの風圧を受ける事になります。
風圧を物ともしない強じんな脚力。
先行で勝てる選手は最強の王者とたたえられるのです。
お願いします。
小林選手はなぜ先行で勝ち続ける事ができるのか。
よ〜い…。
せっ!せっ!せっ!全力で30秒間ペダルを踏む力を測定しました。
その結果驚異的な数値が記録されました。
ペダルを踏む力は最大124.8キロ。
女子選手の平均を大きく上回っています。
この力が圧倒的なスピードを生み出します。
更に先行に欠かせないのが持久力です。
小林選手が時速50キロ以上を維持できる時間は23.8秒。
これは女子選手の平均の倍以上。
より長い間速く走れるのです。
今までの日本人の選手の中ではトップですので世界のトップクラスで活躍できる選手になれるんじゃないかなと思っています。
先行を極めるため小林選手は毎日厳しい練習を積んでいます。
2キロの山道を時速30キロのバイクについて登るトレーニング。
脚力と心肺機能を鍛えます。
(荒い息遣い)繰り返す事4本。
この1年練習を欠かした事はありません。
(楢原)好きな食べ物は?アイス。
(楢原)彼氏は?いない。
(楢原)欲しいですか?いらない。
脇目も振らず自転車に打ち込む小林選手。
幼い頃からひたすら1番を目指してきました。
小林選手は小学生の時母が監督をしていた地元佐賀県のバレーボールクラブに入りました。
エースアタッカーとして全国大会に出場し中学高校はバレーの名門校に進みました。
しかし思いがけず身長が伸び悩みレギュラーを外されます。
いくら努力しても報われないままバレー部を引退しました。
バレーは自分はもう挫折で終わってるんで。
どんなに頑張っても身長がって言われた事が一番の挫折の原因です。
身長伸びたいって言っても伸びるものじゃないから。
自信を失い悶々としていた日々。
そんな時発足したばかりのガールズケイリンの事を知りました。
自分を変えられるかもしれない。
小林選手は迷わず日本競輪学校に入学。
自転車のスピード感に魅了されました。
もう乗った瞬間が何か魔法のほうきに乗ってるみたい。
自転車をこいで別に何も力入れなくてもスピードがバ〜ッて風が来るんですごいなって。
気を付け!礼!
(一同)お願いします!小林選手は競輪学校で先行を徹底的にたたき込まれました。
教わったのは…人間機関車と呼ばれた名選手でした。
滝澤さんが先行とは何かを見せつけた伝説のレースがあります。
後続を50メートル近く引き離します。
対戦相手も風圧も超越した走り。
それを可能にしたのは一日200キロにも及ぶ走り込みでした。
練習した事は全て出てくる戦法だからごまかしがきかないんで。
人は欺けても自分は欺けないみたいな。
やっぱり自分を信じないと何もできないっていうところが如実に出てくる戦法だと私は思ってるんでだからやっぱり…優秀な生徒を選抜して行われた滝澤さんの授業。
小林選手は男子に交じって教えを受けました。
授業の名物心臓破りの坂。
足は固定され自転車を降りる事ができません。
脚力精神力。
先行に必要なあらゆるものを鍛えます。
ほら!いけるいけるいける!女に負けんのか!?手を挙げてもう一本志願。
男子には負けたくありませんでした。
抜け抜け!ほら!抜け抜け抜け!練習すればするほどタイムがどんどんよくなっていきました。
卒業する時目標に掲げたのは「先行日本一」。
先行は小林選手の生きる道になったのです。
もう同じ挫折は繰り返せないし失敗はできないので。
本当に賜物だと思っているので。
小林選手は卒業すると無敵の強さを発揮。
オリンピックのメダルも期待されるようになりその目は今世界を見据えています。
11月リオオリンピックに向けた強化合宿が行われました。
ガールズケイリンから日本代表候補に選ばれた選手が集まりました。
選手たちは1年後の代表選考に向けガールズケイリンの合間を縫って国際大会で戦っています。
オリンピックがあと2年後。
どんどん自分たちをアピールして頑張っていくようにな。
お願いします!
(一同)お願いします!小林選手の目標はロンドン大会から正式種目になったケイリンに出場する事。
オリンピックも得意の先行で挑みたいと考えていました。
しかし世界の壁は予想以上に高いものでした。
自信を持ってトップに立ちます。
しかし残り半周。
国内無敵だった先行で惨敗しました。
日本で戦ってきたバンクは主に1周400メートル。
残り1周半で誘導員が外れゴールまで600メートルを走ります。
しかし国際大会はこれより小さくアジアカップの場合およそ333メートル。
残り2周で誘導員が外れます。
先行すれば国内より66メートル長く先頭で走り続けなければなりません。
小林選手はいつもより長い間風圧を受け続け体力を消耗してしまいました。
これに対し海外勢は先頭を走る小林選手を風よけにして脚力を温存して走っていました。
このため終盤一気に追い抜かれたのです。
前を走るっていうのは後ろに誰かがついてるけどやっぱり自分が踏まないと勝てないしやっぱり風もあるしやっぱりずっと逃げてるので体力的にも奪われるのでやっぱりそれはきついですね。
先行の厳しさを初めて味わいました。
全日本の強化合宿。
小林選手は2か月後に大きな大会を控えていました。
オリンピックのメダル候補たちが出場するアジア選手権です。
321ゴー!この日課題を克服しようとある練習を繰り返していました。
止まった状態から一気にトップスピードへ。
瞬発力の強化です。
前回の大会は残り2周で先頭に出て惨敗しました。
そこで小林選手は先頭に立つタイミングを半周遅らせる事にしました。
ただしほかの選手も徐々にスピードを上げるので先頭に出るのが難しくなります。
先頭に出るためにはいち早くトップスピードにもっていき前の選手を抜き去る瞬発力が必要になります。
今度は実戦的な練習。
小林選手は最後尾。
掛け声と同時に全員がダッシュします。
はい!はい!はい!逆に差が開いてしまいました。
小林選手に指示が出ました。
タイム的には何にも変わっていない。
立ちもがきは腰を浮かせて全体重をペダルに乗せスピードを上げる方法です。
はい!はい!はい!それでも抜く事ができません。
問題は体のブレにありました。
小林選手の腰が左右に大きく動いています。
このためペダルに効率よく力が加わらないのです。
上げるじゃないですか。
上げて…それはレベルが低い話の話なんだ。
分かる?はい。
思うように成果を出せないもどかしさが募ります。
去年暮れ2014年の競輪女王を決めるレースの前夜祭。
小林選手はデビュー1年目ながら勝利は確実と見られていました。
自分のスピードにこだわったレースを頑張りたいと思いますので応援よろしくお願いします。
年間成績の上位7人だけが出場できる国内最高峰の大会。
スタートで大きく出遅れました。
勝負の残り1周半。
立ちもがきで前へ。
ところが腰を下ろしてしまいました。
一瞬の迷いが持ち前の思い切りのよさを奪いました。
先頭に立てないまま残り1周。
まさかの敗戦でした。
(場内アナウンス)「3着1番小林優香」。
自分の戦い方が全くできませんでした。
練習が全部出せなかったです。
アジア選手権まであと1か月。
年が明けた1月。
いらっしゃい。
いらっしゃいませ。
小林選手は実家の焼き鳥屋にいました。
大事なレースの前には必ず立ち寄ります。
厳しい勝負の世界に飛び込んだ娘を気遣っていました。
おいしいよ。
おいしいよ。
いつも出してくれるのが鳥皮です。
いつも初戦…デビュー戦の時にそれで勝てたので験担ぎで決まったメニューを。
勝ち方とか最近いろいろ言われてるみたいだけども勝てばいいんじゃないかなと俺は思う。
ハハハハ。
期待に応えるためにはどうすればいいのか。
アジア選手権を間近に控えたこの日。
小林選手は日本競輪学校を訪ねました。
(滝澤)こんにちは。
久しぶりだな。
お久しぶりです。
寒いでしょ?はい寒いです。
先行を教えてくれた…世界を相手に先行で勝てるのか。
滝澤さんの話を聞きたいと思ったのです。
でも練習ばっかりだからなかなか時間もないしな。
本当に小さくなり過ぎてたので競走が。
やっぱり…もちろん先行主体で今年は頑張ろうと思ってるんですけどやっぱりどうしても先行だけじゃ勝てない時も展開によってはあるので。
本当に壁にぶち当たったりとか何かつまずいた時に変えてもらいたいな。
本当に競輪学校の時みたいに一本一本出し切って立てなくなるぐらいまでうずくまって立てなくなるぐらいまで出し切れたあれが最高の勝ち方だと思ってその辺もこだわってね一戦一戦で力を出し切ってほしいんだよな。
「自分の戦い方で全力を出し切れ。
結果はついてくる」。
滝澤さんはその事だけを繰り返しました。
翌日の強化合宿。
小林選手は先行の特訓を再開しました。
先頭に飛び出す瞬発力の強化。
立ちもがき。
ただ全力を出し切る事だけを考えていました。
はいそこだ!お願いします!合宿を終えても先行の特訓は続きます。
せっ!一気に時速を30キロ加速。
必死に食らいつきます。
せっ!せっ!先行こそが己の道。
気温が32度に達する中アジア選手権の戦いが始まりました。
世界のケイリンはトップテンの選手の半数を香港中国などのアジア勢が占めています。
自転車競技を始めてまだ1年半の小林選手は世界ランキング36位。
自分の戦い方を貫く事ができるのか。
まずは予選。
5人中2人しか勝ち上がる事ができません。
(場内アナウンス)「ナンバーセブンティーンコバヤシユウカフロムジャパン」。
いきなり世界9位の強敵林俊紅選手との対戦です。
ここは出たら今みたいに後ろ見ながらでもいいからダ〜ッと流す…流すっていうかそのままのペースで踏んでいくような感じだぞ。
前回残り2周でスパートして敗れた反省から残り1周半で前へ出る作戦です。
(スタートの合図の音)2番手の好位置につけました。
誘導員が外れて残り2周。
まだ我慢。
立ちもがきで勝負。
(鐘)ここで林選手が前へ。
目いっぱい踏め!そこは目いっぱい踏め!懸命の追い上げ。
最後の直線で一騎打ち。
結果は2位。
その差車輪半分でした。
迷わず先行に出たがゆえの大健闘。
予選突破です。
作戦どおりうまくいって基本的にはそのスタイルを貫くっていう自信もちょっとはついたと思うので。
手応えをつかんだ小林選手。
すぐに次の試合です。
強敵がそろった準決勝。
そして…決勝に進める3位以内を目指します。
(スタートの合図の音)3番手につけた小林選手。
真後ろに李選手ムスタファ選手が続きます。
意外な展開が待ち受けていました。
ノーマークのインドの選手が先に飛び出したのです。
第2集団ながら図らずも先頭に。
早くも風圧を受ける事になりました。
勝負のスパート。
風圧で消耗した体にムチを入れます。
行け行け行け行け!行け行け行け!
(鐘)残り1周後ろの2人が一気に前へ。
すかさず追う小林選手。
ところが…。
前輪がはね飛ばされました。
接触です。
あと半周諦めずに追い上げます。
及ばず4位。
決勝に進む事はできませんでした。
それでも世界の強豪に果敢に挑んだ小林選手。
先行への迷いはもうありませんでした。
まだ高く険しい世界の壁。
オリンピックは来年に迫っています。
どんなに厳しくても先行を貫く覚悟です。
誰にも前を走らせないで1番に前を通過できたらそれほど格好いいものはないと思いますし。
一番苦しい戦法でだけど一番…勝ったら一番すばらしい戦法なんじゃないかなって。
小林優香選手21歳。
成長を信じて己と闘い続けます。
2015/02/26(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「誰にも前は走らせない ケイリン 小林優香」[字]
自転車競技デビューして1年半で破竹の22連勝と国内敵なしの小林優香選手に密着。リオ五輪で日本女子初のメダル獲得に向け、持ち味の爆発力を磨く小林選手の闘いを追う。
詳細情報
番組内容
自転車を始めて1年半。破竹の22連勝で国内敵なし。“怪物少女”と呼ばれリオ五輪で日本女子初のメダルを期待されるのが小林優香選手、21歳だ。太さ67cmの太ももを武器に、時速60km超でトップを走り続ける。しかし世界を相手に先行を貫くのは至難の業だ。台風並みの風圧をまともに受けるため、最後まで自分を信じ続けないと逆転のリスクがある。それでも世界の頂点に立つため信念を貫く闘いを見つめる。語り:萩原聖人
出演者
【語り】萩原聖人
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – 競馬・公営競技
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