新聞記者・鶴巻吾郎 2015.02.26


(語り部)むが〜し昔長清水浜村の人たちと十三浜村の人が村境の事でいっそう争ってたんだと。
その醜い争いを見た神様が怒って…。
(雷鳴)
(雷の落ちる音)
(語り部)ものすごい地響きと雷で岬の大っきな岩を真っ二つに割ってしまったんだと。
(語り部)そうして神の怒りが収まるとそこさ1人の天女がスーッと降りてきたんだと。

(シャッター音)
(シャッター音)
(鶴巻吾郎)やっと咲いたな。

(谷田部彩)お久しぶり。
彩…。
1枚くれない?ちょうど探してたの。
福寿草の写真を。
そこどいてくれないか?あらごあいさつね。
写真が欲しいんだろう?
(シャッター音)
(彩)キレイねぇ…。
福寿草は2月から3月にかけての寒い時期に咲く。
花の中の温度を下げないよう開いたりしぼんだり花自身で調節してるんだ。
そう…。
見た目は可憐なのに力強い花なのね。
うん。
映画のパンフレットには最適だわ。
映画?ええ。
私森直哉の小説『福寿草』を映画化するの。
森直哉って…昭和最後の悲恋文学といわれたあの『福寿草』かい?あなたが驚くのも無理ないわ。
プロデューサーの私自身今でも信じられないもの。
『福寿草』は映画界に身を置く者にとっては夢の企画。
それを私が実現させるだなんて…。
(物音)知り合い?いいえ。
(森下久作)何!?あの『福寿草』が映画化されるのか!?おお…そうか。
うんわかった。
(清水あかね)どうぞ。
(藤原千晶)すいません。
(森下)この一大事に鶴巻はどうした!
(河合真美)支局長落ち着いてください。
鶴巻さん取材です。
また趣味の取材か!あ〜とにかく大至急奴の携帯に連絡しろ。
今文化部のデスクからすんごいネタもらったんだ。
幻の映画が復活するんだよ。
連絡!あ…はい。
うん。
何年ぶりかしら?7年になるかな。
そっか…。
あなたが私を振ってからそんなに経つんだ。
よしてくれよ。
冗談。
あれは私たちにとって正しい選択だった。
仕事順調そうだね。
おかげさまで。
…と言いたいところだけど強がりね。
今映画作りは製作委員会を作ってファンドという形で資金を集めるんだけど長引く大不況で何社も降りちゃって…。
毎日必死よ。
映画をヒットさせるためにはそれなりの戦略が必要だし。
君が立川に来たのもその資金繰りのためかい?相変わらずハッキリ言うのね。
でも図星。
原作者の森先生はここ立川で『福寿草』の着想を得たの。
つまり『福寿草』は立川で生まれた作品なのよ。
その縁で立川の名士の方に出資してもらえないかと思って。
ねえ鶴巻さん。
お願い。
心当たりがあったら紹介して。
私の事軽蔑した?いや…。
君は映画製作に人生をかけてるんだろう?時にはその…なりふり構わず。
利用出来るものなら昔の男でも利用する。
(2人の笑い声)まあ出来る限りの協力はするよ。
このあと取材の合間にでも心当たりを当たってみる。
あ今夜どうしてる?会えるかい?ええ大丈夫。
ありがとう。
恩に着ます。
いや。
…行こう。
ええ。
乾杯。
(グラスを合わせる音)あ…そうそう。
写真選んどいたよ。
ありがとう。
画像のデータはこれに入ってる。
(彩)じゃあいただくわ。
ああ。
あそれから例の件。
先方は町のためになるなら2口200万ぐらいはお付き合い出来るって言ってくれたよ。
あぁ…!鶴巻さん本当にありがとう。
この借りはいつか必ず返します。
いいよ気にしないで。
そういうわけにはいかない。
(携帯電話の振動音)ごめんなさい。
(携帯電話の振動音)もしもし。
え?本当ですか?ありがとうございます。
すぐに伺います。
はい。
ごめんなさい。
急用が入ってしまって。
ああ気にしないでくれ。
ありがとう。
じゃあ…また。
ああ。
え…?辞表を出した?私決めたの。
映画に人生をかけるって。
そうやって生きていくしかないって。
それが君の選んだ道か。
今までありがとう。
彩…。

(ため息)
(エレベーターの到着音)
(うめき声)どうしました!?
(うめき声)しっかりしてください!どうしました?
(うめき声)
(下坂拓也)て…てんにょ…。
てんにょ…?
(エレベーターの到着音)キャー!
(藤岡)被害者の下坂拓也さんと面識は?ありません。
エレベーターが開いて突然倒れこんできたんです。
(藤岡)ええ?今をときめくIT企業の青年社長ですよ?本当に初対面だったんですか?ええ。
あなたは最上階のバーにいらっしゃったんですよね?はい。
連れは女性であなたが飲んだのはバーボン女性はカクテル。
事件の時その女性は?夜の11時半頃でしたかね。
彼女の携帯に電話が入って先に帰りました。
(ノック)
(目黒)警部。
ん?ちょっと…。
部屋のコーヒーからヒ素の化合物が検出されました。
(藤岡)死因はそれだな。
ただいま。
いや〜ご心配おかけしました。
(森下)いやよく戻った。
本社は社会面トップを空けて待ってる。
書けるか?10分で記事を送ると伝えてください。
よしっ!たった今鶴巻が戻りました。
10分後そちらに事件当事者の生の声を送ります。
警察発表は2時。
え…?無論うちだけのスクープですよ。
すいません。
「うちだけ」って私ちょっとよくわかんないんですけど…。
あ千晶ちゃんは入ったばかりで初めてだったわね。
朝刊の最終版に載せるには記事を1時30分までに入稿する必要があるの。
警察発表が2時っていう事は…?あ…他紙は間に合わない…大スクープじゃないですか!そういう事。
わ!すごい!なんかドキドキしてきました!鶴巻さん。
頼まれていたものそろえておきました。
おう。
被害者下坂拓也の写真とプロフィル。
これは彼の会社Tプラスアルファの業務情報と財務情報です。
ここ2年でいきなり業績が落ちてるな…。
取引先も調べてくれ。
可能なら金の流れも。
わかりました。
フフフ…。
ハッハッハッハ〜!完全に他紙を出し抜きましたね!本社の連中に支局の底力見せてやったな。
鶴巻さんが事件に巻き込まれたおかげですね。
そうだ。
事件に巻き込まれるというのはブンヤにとっちゃ大のチャンスなんだよ。
それを逃さずきっちりとものにした。
さすがは鶴巻だ。
はいご苦労さん。
スクープものにしたっていうのに浮かない顔ですねぇ。
そんな事はないさ。
あそうだ鶴巻。
今日は河合と一緒に丸の内のホテルに行ってくれないか。
幻の映画『福寿草』の製作発表があるんでな。
『福寿草』…?うん。
立川が生んだ昭和最後の悲恋文学の映画化だ。
うちが動くしかないだろう。
フフフ…そんな事言って!支局長がハルミストだから気になるんでしょう?次の主演女優が誰なのか。
千晶。
私はただ原作者の森直哉が「主演女優は桂木春海以外はあり得ない」とかたくなに映像化を拒否してきたにもかかわらずだここへきて急に了承したその理由が知りたいんだよ。
ま支局長をはじめ全国ン千万のハルミストたちには興味津々ですよね。
さすが支局長の遠縁。
心見抜いてるわぁ〜。
(咳払い)とにかくだ主演女優次第では大ニュースになりうるネタだ。
2人ともきっちりと取材して来い。
はい。
河合先に行っててくれ。
え?会見までに行くよ。
あはい。
(従業員)お部屋に運んだのは2人分のコーヒーです。
一緒にいたのはどんな人でしたか?警察の方にも話しましたけど下坂さんがドアまで出てこられたので室内には入ってないんです。
(従業員の声)ですからどんな方といらしたかは…。
室内に何か変わった様子は?いえ特に何も気づきませんでした。
あそういえばドアが閉まる直前ソファに黒っぽいコートが掛けられているのを見ました。
黒っぽいコート?
(秘書)あああの女性プロデューサーですね。
これは社長の個人的な出資です。
業績が傾いても出資を続けていたんですね?ええ見栄を張ってたんです。
でも今回の映画への出資は土壇場で取り止めましたけど。
失礼ですがお二人の関係は?社長は相当入れ込んでたようですが最近では「携帯にも出てくれない」ってぼやいてました。
あ鶴巻さん。
おう。
(彩)本日は映画『福寿草』の製作発表会にお越しいただきありがとうございます。
プロデューサーの谷田部彩です。
『福寿草』は小説が発売された昭和51年に桂木春海さん主演で映画化が決定しました。
しかし皆さんご存じのとおりクランクイン直前に桂木春海さんが突然引退したため作品の製作は中止となりました。
映画『福寿草』は幻の企画となってしまったのです。
その後何度か映画化の話はありましたがそれ以来森先生は「三崎奈津子」は桂木春海さん以外には考えられないと映画化のオファーをすべて断ってきました。
痛っ…!
(彩)あきらめきれないプロデューサーたちは…。
何よあれ…!
(彩)桂木春海さんに代わる女優を求めて奔走してきました。
そして33年の時を越えようやく私たちの前に今三崎奈津子が現れたのです。
(ざわめき)森先生も認めたという事ですね?
(森直哉)ああ。
この女優なら三崎奈津子を演じられるだろう。
一体誰なんですか?その俳優は?それがこの女優です。
スクリーンをご覧ください。

(記者)これじゃ記事にならないよ。
(記者)もったいぶらないで教えてください!
(乾正孝)実はねぇ私も知らないんですよ。
ああもちろん監督もね。
(記者たちのざわめき)しかるべき時が来ましたらきちんと皆さんに主演女優を発表します。
今日のところはこれで失礼します。
(記者)え…?これで終わりですか?
(記者たちのざわめき)へ〜謎の主演女優か…。
ホント誰なんでしょうね。
なあ河合…先に帰って支局長に報告しといてくれ。
え?鶴巻さんは?プロデューサーの谷田部彩とは知り合いなんだ。
追っかけてもうちょっと取材してみる。
(乾)いや〜ホントお疲れさまでございました。
(彩)わかってます。
約束は守ります。
最低あと5千万は…。
ええそのはずだったんですが…。
もう少し待ってください。
資金は必ず調達します。
(ドアが開く音)
(小畑浩二郎)おい…主演女優は誰なんだよ?何よあなた…。
あんたあいつに何する気だ?言えよ!はあ!?意味がわからないわ!なんだとこの野郎!やめろ。
なんだよ!
(ドアの開閉音)大丈夫か?ええ…。
誰なんだ?あいつ。
知らないわ。
女優X?一体誰だ?鶴巻さんが残って取材続けてます。
ふ〜ん…そのプロデューサー相当やり手だな。
あの『風と共に去りぬ』の有名なプロデューサーセルズニックみたいだな。
なんですか?それ。
ああ。
あのスカーレット・オハラの役をめぐってはこんなエピソードがあるんだ。
彼は主演女優にヴィヴィアン・リーを抜擢した理由をこんなふうに話してるんだ。
ヴィヴィアン・リーはその日たまたまイギリスから撮影の見学に来ていた。
ほらあの…アトランタ炎上で有名なシーンだよ。
そこにいる彼女を一目見たセルズニックはこう言ったんだ。
「ここにスカーレット・オハラがいる」な?うわぁ〜ドラマチック!まさにシンデレラストーリーですね!でもなんだか話が出来すぎてる気がするな。
まあね。
実際にはそんな出会いはなかったという噂だ。
でもそのほうが夢があるだろう?そこまで製作者がほれ込んで抜擢したなら作品のイメージにピッタリのはずだって見る側も期待しちゃいますよね。
うん…確かに今回の『福寿草』も同じ作戦ですね。
でも一番のハルミストである原作者を納得させた女優である事は事実ですよ。
え誰なんだろう!ん〜気になる〜!よし。
こうなったら我々も徹底的に謎の主演女優を追う。
支局の威信にかけて正体をスクープするんだ。
『福寿草』の映画化はプロデューサーになった時からの私の夢だった。
だから絶対にあきらめたくない。
どんな手段を使ってでも映画を完成させてみせるわ。
彩…。
下坂拓也とはどういう関係だったんだい?下坂…?公園で下坂を見た時君は知らない男だと言った。
だが彼は君の製作した映画のほとんどに出資している。
今回の『福寿草』も5千万出資する予定だった。
しかし直前で取り止めてる。
私が事件に関係してると言いたいわけ?事件は君が急用が出来たと出てった直後に発生した。
あの電話誰からだったんだい?森先生よ。
もう失礼するわ。
「天女伝説」…。
天女…。
てんにょ…。
年齢ぐらいは教えてくれてもいいでしょう。
いや谷田部さんに聞いてくれ。
私からは正体は明かせない。
森直哉先生。
申し訳ありません。
少々確認させていただきたい事が。
よろしければあちらで。
いやいやここで結構ですよ。
なんでしょうか?では失礼して。
昨夜23時半頃ですが先生はプロデューサーの谷田部彩さんの携帯に電話をされて谷田部さんと会われましたか?いいえ。
ゆうべは何も。
森先生よ。
(藤岡)ありがとうございました。
ちょっとすいません。
藤岡警部。
(藤岡)ん?あの…谷田部彩のほうはどうなりました?ああ事件が起こる直前まであなたと会っていたという事は証明出来ました。
しかし問題はそのあとだ。
谷田部彩は何者かに携帯に電話をもらった。
そうですね?ええ。
谷田部彩本人に確認したところ相手は森直哉で映画の打ち合わせに呼ばれたと言いました。
それで確認しに来たんですが…。
あの女は嘘をついていたようだ。
彼女の携帯の着信は調べましたか?任意で提示してもらいましたが公衆電話でした。
じゃ…行くぞ。
はい。
(乾)『福寿草』はうちの今年の目玉です。
32年間オファーを断り続けた原作者に「うん」と言わせた女優X!いや〜一体どんな女優なのか私もねワクワクしてるんです。
ハハハ…。
するとその女優Xの正体を知ってるのは谷田部彩と森先生このお二人だけという事ですね?ええそうです。
いや〜谷田部さんはたいしたもんだ。
ハハハ…。
部長…。
ん?ああちょっと失礼。
どうした?何!?それホントか?はい。
え?谷田部彩がいなくなった?携帯もつながりません。
おい…。
行き先どっか心当たりないのか?これは谷田部彩が忘れてったものです。
「南三陸天女伝説の岬」…。
ここは『福寿草』の舞台じゃないか。
彼女の行き先はこの南三陸かもしれません。
(千晶)はいはいはい…はい!東北の地図です。
早いなぁ…。
いやありがとう。
(千晶)南三陸は松島と気仙沼の間にあるんですね。
殺人事件と謎の主演女優か…。
鶴巻…久々に記者魂が燃えるな!はい。
行ってきます。
うん。
鶴巻さん…!うん?私も行きます。
そうか。
(森下)ちょっと待て。
はい。
『福寿草』の原作だ。
お借りします。
鶴巻さん。
うん?ひとつ聞いてもいいですか?ああ。
谷田部彩さんと鶴巻さんってどういうご関係なんですか?昔ちょっとね…。
恋人同士だったりして。
『福寿草』って作者の森直哉が母親をモデルに書いた小説なんですね。
寒さ厳しい2月のある日森直哉は立川の昭和記念公園でけなげに咲く福寿草の花を見た。
その黄金色の花に森直哉は控えめでありながらしたたかに生きた昭和の女だった母の姿を重ね合わせその物語を書いたらしい。
それで支局長立川が生んだ物語だって言ってたんだ。
うん。
ん…?アハ。
桂木春海のブロマイドか?支局長ったら…。
ハハ。
『福寿草』の主人公三崎奈津子は戦時中南三陸登米町のこの小学校で教師をしていた。
終戦を迎えるまで奈津子は独身を貫いてここの教壇に立った。
そしてお国のために身を捨てるのは尊い事だと教え続けたんだ。
でも多くの教え子たちが戦場で死んでしまった。
奈津子は自分が子供たちに教えてきた事が間違いだったと気付き泣きながら教科書に墨を塗った。
そして教え子たちに詫びるには死ぬしかないと心に決める。
そんな時死んだはずの教え子が帰還してくる。
教え子は片足を失い自分の将来に希望を失って抜け殻も同然になっていた。
奈津子は彼に生きる希望を与えようと必死で世話をした。
やがてそれは愛に変わり2人は10歳近い歳の差を乗り越えて結ばれた。
しかしその純愛は思わぬ形で幕を閉じる事になった。
鶴巻さん。
ん?あれ…森直哉ですよ。
知り合いかもしれないんだ!そんなはずはない。
はぁ?適当な事言いやがってこの野郎…!教えろよ!知ってんだろおい!
(森)やめなさい!やめるんだ!この野郎…!なんだよ…またあんたか。
君は確か毎朝の…。
鶴巻です。
大丈夫ですか?ああ大丈夫だ。
突然現れて『福寿草』の主演女優を教えろと。
あの男製作発表の時に見ました。
先生との面識は?いやいや全然知らない男だ。
しかしどうして先生がここにいる事を…。
つけてきたのかもしれん…。
今日はお一人ですか?ああ。
『福寿草』がついに映画化されるんで久しぶりにふらっとね。
あの作品は私の青春時代の思い出の作品だから。
世話になった。
ありがとう。
ええ。
うわあ…。
すごい!
(真美の声)2人がこの神割崎で結ばれた3か月後教え子は海に身を投げてしまう。
奈津子に出会っていなければもっと早く死ぬつもりだったという遺書を残して。
奈津子もあとを追おうとしたがその時自分が死んだ教え子の忘れ形見を身ごもっている事を知るんだ。
奈津子は1人でその子を立派に育て上げ病で息を引き取ったところで小説は終わるんですよね。
壮絶な女の一生を情感あふれる筆致で書いた昭和最後の悲恋文学の名にふさわしい作品だよ。
(車の走行音)谷田部彩だ…。
え?「本田」…?桂木春海だ…。
えっ…!?写真からそのまま出てきたみたい。
どう見ても30代ですよ。
桂木春海は還暦過ぎてるはずなのに。
桂木春海の周辺に本田姓の人物がいないか支局長に調べてもらってくれ。
あっわかりました。
本田?ああそれは本田清子の事だ。
桂木春海の付き人で一卵性双生児とも言われマネジャーよりも信頼の厚かった人物だよ。
確か今は春海の肖像権を管理してるはずだな。
鶴巻さん…。
君が桂木春海の付き人本田清子さんと話していたという事は…一緒にいた帽子をかぶった女性彼女は桂木春海だね?つまり33年ぶりに復活する主演女優Xの正体は引退した桂木春海というわけだ。
えっ…?まさか!あの若さを保ってるなら三崎奈津子が演じられる。
だから森直哉は了承したんだ。
まさか桂木春海が演じるとはねぇ…。
主演女優をギリギリまで公表しない戦略はそこから生まれたんだね?記事にするつもり?ウラを取るまではしないさ。
いつ真実を話してくれるんだい?言ったでしょう?借りは必ず返すって。
時期が来たら一番最初にあなたに話して毎朝にスクープさせるわ。
だからそれまで待って。
登米の能舞台で森直哉をつけていた男が現れた。
ほら製作発表の時君に詰め寄っていたあの男だよ。
製作資金の事で何か危ない橋を渡ってるんじゃないのか?これも言ったはずよ。
映画は私の夢であり人生そのものなの。
私は私の人生に後悔してない。
じゃあもう一度聞く。
下坂拓也が殺された夜君は誰に呼び出されたんだ?森先生よ。
警察が確認したよ。
森先生は電話していない。
下坂さんだったんじゃないんですか?だったら何?私が下坂を殺したとでも言いたいの?その可能性はあると思います。
証拠もなくそんな憶測を言うなんて記者失格よ。
ごめんください。
(ノック)本田さん!出てくれませんね。
ああ…。
(ノック)カーテン閉まってます。
ごめんください!
(ノック)本田さん?
(ノック)
(本田清子)心配いりません。
じきあきらめて帰っていきます。
(ノック)何…!?春海本人か?で単独インタビューは取れたんだろうな?向こうも警戒してるらしくてそう簡単にいきそうもなくて…。
ええ…。
何がなんでもインタビューを取ってこい!そのためにお前たちを出張させたんだ!いいか?インタビューが取れるまでは帰ってくるな!わかったか!バカコンビが…。
今の支局長は仕事の鬼にハルミストが加わってるからインタビュー取るまで本当に帰れませんよ。
どうしたんですか?谷田部彩の車だ。
先に行ってチェックインしときます。
おう。
谷田部彩様でございますか?打ち合わせの約束をしていてね。
谷田部さんの部屋番号を教えてくれないか。
申し訳ございません。
お客様の情報をお教えするわけには…。
え…?君!よく会うね。
谷田部さんとは知り合いなの?いや別に…。
鶴巻さん!ああすいません。
はいこれ鶴巻さんのキーです。
おうありがとう。
このホテル客室が全部で250近くあるみたいで。
彼女の部屋を探すとなるとちょっと厄介ですよ。
まあ同じホテルに泊まっていれば偶然出くわす事もあるさ。
偶然ね…。
(ため息)偶然出くわす事もあるだなんて鶴巻さん適当な事言っちゃって…。
ん…?いた…。

(ショーの音楽)
(ショーの音楽)
(歓声と拍手)あっ…。
さっき鶴巻さんと一緒にいた人ね?ああ…。
あっ…河合と申します。
毎朝新聞立川支局の記者で鶴巻さんの後輩です。
そう。
私も後輩だったのよ。
毎朝のね。
谷田部さんも記者だったんですか?どうぞ。
はい。
文化部の記者だった頃映画会社の人とご縁が出来て当時付き合っていた人に相談もせず思い切って転職したのが7年前。
それが鶴巻さんですね?初めは映画会社に所属したけれど組織にいると何かと面倒な事が多くてそれでフリーに。
結局男社会だから。
なんとなくわかる気がします。
いつか自分がとことんほれぬいた企画を実現させたいって思ってた。
それこそ映画に人生を捧げてよかったって心から思える作品を生み出したかった。
それが『福寿草』なの。
だから絶対に成功させたいのよ。
私…谷田部さんみたいに強い気持ちで仕事に向かった事なかったかもしれない。
いつもどこかで鶴巻さん頼ってた…。
私は…とてもたくさんの事をあきらめてきたから…。
鶴巻さんに伝えて。
桂木春海の単独インタビューは…。
鶴巻さん…!?あきらめて東京に帰って。
乾杯。
乾杯。
鶴巻さんは本社に戻りたいと思わないんですか?支局にいると目の前にある真実を一刻も早く正確に伝える事に集中出来る。
だから俺は支局暮らしが気に入ってるんだ。
目の前にある真実…。
鶴巻さん今も見えてます?ん…?ああ…。
谷田部さんは独りで道を切り開くたくましさと能力があります。
そのプロフェッショナルに徹した生き方本当に素敵だと思いました。
でも…。
でも…なんだい?映画のためなら手段を選ばない…。
そんなふうにも見えました。
だから私下坂殺しについてやっぱり谷田部さんへの疑いを捨てる事が出来ないんです。
てんにょ…。
いやぁ驚きましたよ。
すごい計画ですね。
あっ…!?
(刺す音)ああーっ…!あの車は?毎朝新聞の記者です。
毎朝の…?いや実は昨日能舞台の近くで鶴巻という毎朝の記者にバッタリ会ってしまった。
私が南三陸に来た目的を感づかれてしまったかもしれない。
構いません。
彼に気づかれる事は覚悟してました。
原作者の森先生と桂木春海さんの対面に鶴巻さんたちにも立ち会ってもらいます。
えっ!?あでも昨夜は…。
朝になって考え直したの。
桂木春海の単独インタビューは許可出来ないけど原作者との再会はこれから製作する映画の宣伝として利用しない手はないって。
それがプロデューサーとしての君の判断ですか?そういう事ね。
ただし記事にするのは『福寿草』の主演女優が桂木春海である事を発表する日の朝刊よ。
あぁ…わかった。
お待たせしました。
桂木春海です。
春海さんだ…。
間違いない。
(桂木春海)先生…お懐かしゅうございます。
本当にあなたは昔とちっとも変わらない。
それに引き換え私はすっかり歳をとってしまって…。
そんな事をおっしゃらないで。
見た目が少々若いだけ。
(森)いいえ。
あなたは昔も今も三崎奈津子のイメージそのものです。
あなたにそうおっしゃっていただけてうれしいです。
ああ…神に感謝する。
春海さんで『福寿草』が映画になる日が来るとは…。
(彩)こちらのお二人は毎朝新聞の方です。
毎朝の鶴巻です。
河合と申します。
お目にかかれて光栄です。
よろしく。
あの…写真お願いします。
写真はあとにしてまずは質問からどうぞ。
あはい。
桂木さんが若さを保たれている一番の秘訣はなんだとお考えですか?さあ…わかりませんわ。
心穏やかに自然体に…。
私はそうやって生きてきただけですから。
33年前の突然の引退に衝撃を受けた多くのハルミストが今も真相を知りたがってます。
引退なさった本当の理由教えていただけますか。
女優として燃え尽きた…。
ただそれだけです。
じゃあなぜ『福寿草』でカムバックを?
(春海)最初はお断りしました。
「今の私には無理です」と。
ですが谷田部さんは約1か月間毎日のようにここに足を運んで「あなたなら出来る。
いえあなたにしか出来ない」と自信を持たせてくれました。
『福寿草』は唯一の心残りでしたし思い切って決意しました。
じゃあこれを機に芸能界に完全復帰されるおつもりですか?いいえ。
この『福寿草』だけです。
今日はこのぐらいで。
いずれ共同記者会見を開きますのであとの質問はその時に。
あ最後に桂木さんと森先生のツーショット撮らせてください。
(森)お辞儀の仕方も座り方も何よりそのしぐさ昔とまったく同じだ。
先生こそ昔のままですわ。
ああ…。
今日は本当にどうもありがとう。
(森)ありがとう。
それではこのへんで。
春海さん参りましょう。
では皆さんいずれまた。
彼女は33年前のままだ…。
はい。
ああ…!
(春海)先生!お久しぶり〜。
また来たよ。
うん。
(カメラのシャッター音)なんだ君たちは!
(森の声)あの時は騒がれて大変だったが今思えば懐かしい青春の1ページだった。
彼女と2人だけでゆっくり話をしたい。
2〜3日なら南三陸に滞在出来るからなんとか段取ってもらえないか。
わかりました。
早速明日にでも。
河合さんだったわね?原作者と桂木春海の再会いい記事にしてもらえるのを楽しみにしているわ。
ええ。
ご期待に添える記事を書きます。
驚きましたね桂木春海。
この年齢でこの美しさ。
これだけでも全国のハルミスト垂涎の大スクープですよ。
あの若さには何か秘密がありそうだな。
秘訣は…「心穏やかに自然体でいる事」なんて絶対に嘘。
とんでもない美容法かあるいは若返りの整形か…?アメリカでは信じられないほどの若返りの整形手術があるって聞いた事があるが…。
よーしウラを取ってスクープ第2弾「桂木春海の若さの秘密」つかむわ。
(パトカーのサイレン)あの男は…。
教えろよ!知ってんだろおい!やめるんだ!森先生と揉めてたあの男ですよ。
(若松)夜10時頃だっつうのは間違いないっちゃね?はい。
なんであんな時間にって気になったもんで。
黒いコートを着た人があっちのほうさ逃げるように去っていくのを見ました。
黒いコート…。
森先生のコートも…。
実は下坂殺しのあった夜俺は廊下を横切る黒いコートの人影を見た。
同一犯っていう事ですか?それはわからない。
とにかく被害者が何者かをつかんで谷田部彩と森先生との接点を洗ってみよう。
免許証から身元が判明した。
小畑浩二郎30歳。
職業はホストだ。
ホスト…?地元のホストクラブに勤めていたんですか?いや新宿歌舞伎町の「愛」というクラブらしい。
河合。
はい。
お前は東京へ戻って歌舞伎町のクラブ「愛」へ行ってきてくれ。
了解。
小畑浩二郎の周辺を探るんですね。
ああ。
あっ鶴巻さんは?俺はもう一度谷田部彩に話を聞いてみる。
ええ出資の約束を取りつけました。
手続きがありますのであと2日こちらにいる事に。
ええ…ああはい。
その件は毎朝にスクープさせます。
いいかな?3分だけよ。
小畑浩二郎とはどういう知り合いなんだい?誰の事?新宿歌舞伎町でホストをやっていた男だよ。
ホストに知り合いなんていないけどその人が何か?昨日荒島で殺された。
気の毒な話ね。
でも私には関係ないわ。
知らない人だし。
ごめんなさい。
急いでるから。
小畑は製作発表の時君を執拗に見つめていた。
そのあとあの小部屋で君に激しく詰め寄っていた。
あいつに何する気だ?言えよ!はあ!?東京で殺された下坂拓也今回の小畑浩二郎。
2人とも君を追っていた人物だ。
私は事件には関係ない。
本当よ。
だが君は電話の件で嘘をついた。
なぜだ?確かに…あの夜森先生から電話があったというのは嘘よ。
本当は下坂から…。
下坂はやっぱり出資するって言ってきたのよ。
それじゃ12時前に必ず行くから。
待っててくれ。
じゃ。
(彩の声)でも約束の場所に下坂は現れなかった。
(彩)この仕事に就いて私はいろいろと危ない橋を渡ってきた。
それは事実。
だけど人を殺してまで夢を追おうとは思わないわ。
これが真実よ。
ごめんなさい。
でも信じてくれないわよね。
いや俺は信じる。
君は夢のために犯罪を犯すような人じゃない。
君はまっすぐな心の持ち主だ。
昔も今も。
ありがとう。
いや…。
1つ気になる事がある。
下坂が殺された夜君はバーに忘れ物をしたね。
「天女伝説」…。
これにはどんな意味があるんだい?鶴巻さん実は私もこの伝説をもっとよく知りたくて…。
真美さーん!真美さん!
(千晶)真美さん!ちょっと派手すぎない?えぇ〜?ホストクラブへの潜入取材ですよ。
地味すぎるぐらいです。
行きましょ行きましょ。
(ホストたちの掛け声)
(成宮)君たち小畑の客だったの?うん…なかなか会えなかったんだけど。
でもまさか三陸まで行って殺されちゃうなんて…。
小畑さん南三陸へ何しに行ったのかな?そりゃあ金策でしょ。
金策…?借金でもあったの?うん。
小畑を贔屓にしてたセレブマダムがさ500万近くの売り掛け残してトンズラしちゃったの。
えーっ…!?それって500万の借金がお店に出来ちゃったって事ですよね?ところが1週間ぐらい前「金のなる木を見つけた!」って言ったっきり行方わかんなくなっちゃったんだよ。
金のなる木…?小畑浩二郎はそう言っていなくなったんだな?ああ…。
そうかわかった。
ありがとう。
刑事さん…。
どうかしたんですか?ああ…。
小畑浩二郎らしき人物が初老の男を追っていったのを目撃したらしいんだ。
初老の男…。
この人じゃありませんか?
(駅員)ああこの人です。
(若松)これは森直哉…。
(携帯電話)あっ…。
(携帯電話)はいはい何?陣痛…!?あっ今すぐ救急車呼ばねば。
うんうん。
出来るだけ早く俺も行く。
(電話を切る音)…失礼。
いやぁ近くの下坂産婦人科がまだあればこんな事には…。
下坂産婦人科…?すいません!あっ…ご近所の方ですか?ええ…。
あの…こちらにあった下坂産婦人科医院の関係者の方どなたかご存じないですかね?あそれだったら佐々木助産院さ行けばわかりますよ。
ああ…。
ごめんください。
はーいどうぞ!毎朝新聞の鶴巻と申します。
こちらにかつて下坂産婦人科医院にお勤めだった方がいらっしゃると…。
(佐々木明子)私です。
助産婦をやってましたが何か?ああ…。
下坂院長の息子さんについて少々お伺いしたんですが。
拓也さんの?ええ。
拓也さん父親のお葬式にも帰ってこなかったんですよ。
そうですか…。
だから院長の遺品も私たち関係者が預かってるんです。
遺品を?ええ。
でも半月前だったかしら…。
拓也さんひょっこりと現れたんですよ。
半月前?ええ。
私にまでお金を貸してくれって言いに来て。
もちろん断りましたけど。
東京で殺されたってやっぱりお金絡みなのかしら…。
(電話をかける音)先生…。
(森)もしもし?谷田部さん?ハハ…明日の春海さんとの件なんだが…。
その件ですが明日春海さんと会う事は中止します。
春海さんの体調があまりよくないみたいなんです。
先生は明日東京へお帰りください。
待ってくれ。
あさってでもしあさってでもいい。
都合などいくらでもつける。
だからもう一度春海さんに会わせてくれないか。
残念ながらそれは無理です。
明日東京へお帰りください。
鶴巻さん!ああ…。
ご苦労さんだったね。
いいえ。
(足音)君たち谷田部さんを見なかったかね?いいえ…。
ホテルにはいないんですか?彼女がどうかしたんですか?いや…実は谷田部さんに明日春海さんと2人で会う段取りをつけてもらっていたんだが夕方いきなり会えなくなったから東京に帰ってくれと言われて…。
会えなくなった?先方が体調を崩したという事なんだがどうも谷田部さんの様子がおかしくて。
携帯もつながらなくなってしまったし。
なんでしょうか?夜分遅くすいません。
こちらに谷田部彩さん来てませんか?いいえ。
午前中に皆さんとお帰りになったあとはいらしてません。
そうですか…。
春海さん体調を崩されたそうですが…。
いいえ。
元気にしております。
桂木は森先生に再会出来た事をとても喜んでおりますしまた先生にお目にかかりたいと申しております。
どうぞ先生にもそのようにお伝えください。
谷田部彩はなぜ森直哉に桂木春海に会うなと言ったんだろう…。
彼女…一体どこにいるんだ。
鶴巻さん。
彩さんと2つの事件は…。
彼女は関係ないと言っている。
下坂拓也と小畑浩二郎はともに借金があったんでしょ?その2人が彩さんの周辺に現れて殺された。
ひょっとしたら彩さん2人にゆすられてたんじゃないかしら?それで彩さんが2人を…。
俺は…谷田部彩を信じたい。
彼女は嘘や偽りを何よりも嫌う女だったんだ。
7年前まではそうだったかもしれません。
でも鶴巻さんおっしゃいましたよね。
記者は目の前にある真実を一刻も早く正確に伝える事に集中すべきだって。
ああ…。
だからこそ…だからこそあの時の谷田部彩の言葉…。
あれこそが真実だと…俺は感じたんだ。
だけど人を殺してまで夢を追おうとは思わないわ。
記者としていや…人として俺は谷田部彩を信じてあげたい。
鶴巻さん…。
彩さん戻ってきませんでしたね。
(パトカーのサイレン)パトカーだわ。
(パトカーのサイレン)鶴巻さん!お知り合いでしたか?ええ…。
遺書はありません。
自殺他殺の両面から捜査します。
失礼します。
ありがとう。
警察は彩さんが2人を殺害したあと覚悟の自殺を遂げたという線で動いているみたいです。
鶴巻さん私…。
ああいたいた!鶴巻さん真美さん!千晶ちゃんどうしたの?支局長の命令で手伝いに来ました。
事件解決したみたいですね。
調べてきた小畑浩二郎の情報を伝えに来たんですけどもう必要ないかな。
情報って?殺された小畑浩二郎は気仙沼の出身で十代の頃地元の女の子と一緒に東京へ出て行ってそれっきりなんだそうです。
よくある不良カップルの家出ってやつかしら?いやいや続きがあるんですよ。
その相手の女性が1年くらい前から行方不明になっているんです。
なんかよくわかんないんですけどなんか事件の匂いしません?確かに気になるわね。
なあ千晶。
その小畑の家族は今も地元にいるのか?はい。
父親が気仙沼で魚の仲買をやってます。
気仙沼はここから1時間足らずか…。
千晶ご苦労さん。
戻って支局長にもうしばらく南三陸にいると伝えてくれ。
了解です。
俺は気仙沼に行ってみる。
…はい。
河合お前は地元の新聞社で南三陸の天女伝説について調べてくれ。
いいな?天女伝説…。
ああそうだ。
頼むぞ。
はい。

(小畑の父親)あいつが東京さ出て行ったのはもう10年以上もめえの事ですよ。
もう最後まで親不幸な息子でねぇ。
一緒に行った相手は地元の女性だそうですね?ああ2〜3度見かけた事あっけど札付きの不良娘だっちゃ。
その娘さんのご両親まだこの気仙沼に?いや。
4〜5年前に2人とも病死した。
あの子も親の葬式には戻ってこなかったなぁ。
もっとも実の娘でねくてもらい子だって噂だ。
彼女の名前は?確か…土田みゆきだったかな?土田みゆき…。
年齢は…息子さんと同じですかね?いや1つ年上だって言ってたから今年32になるんでねぇか?32…。
(安岡佐知子)ええ土田さんならお隣さ住んでました。
娘さんがいらっしゃったそうですが…。
(佐知子)はい1人。
みゆきさんで学校の先輩です。
みゆきさん土田さんご夫婦の実の子ではなかったそうですね。
(佐知子)ええ。
お母さんのお姉さんから預かって育ててるっていうのを聞いた事があります。
そのお姉さんというのは?さあ私も詳しくは…。
そうですか…。
(校長)これが土田みゆきさんがのってる平成3年度の卒業アルバムです。
失礼します。
(シャッター音)違う…。
天女…天女…。
これは…?私が預かってる遺品はこれで全部です。
あの…昭和52年2月4日と5日の分がなくなっていますね。
誰が破り取ったか心当たりありませんか?そういえば拓也さんお金をうちに借りに来た時にこの日記を一生懸命見ていたわ。
(笑い声)几帳面な親父を持ってよかったよ。
(明子の声)あの時に破り取ったのかも。
このページには何が書いてあったんでしょう?すみません私には…。
(語り部)そんな事があってから神割崎の岩と岩の間から大っきな真っ赤なお日様が上がってきたんだと。
それと同じ時刻にオギャーオギャーって天女もめんこいおなごをぼこなしたんだと。
神割崎の岩と岩の間から日が昇るのは年に2回。
2月と10月だけなのさ。
その奇跡の朝に生まれたおなごおぼっこは天女の生まれ変わりとしてこの南三陸では今でも大事に大事におがしてんのさ。
えんつこまんま。
鶴巻さんこれ。
「昭和52年2月6日」…。
どうやらすべての謎は天女伝説にあったようだ。
なんだね!突然呼び出すなんて。
皆さんにお話したい重大な事があります。
谷田部さんは映画の資金繰りのトラブルで残念ながら自殺してしまった。
しかし『福寿草』は春海さんが出資してくださる事で製作が続行になった。
これ以上何か話す事があるのかね!春海さんが出資を?桂木の最後の映画だから喜んで協力させてもらう。
そう先日谷田部さんに伝えたばかりなのに…。
『福寿草』の製作は谷田部彩の夢でした。
資金の目処が立ったにもかかわらず彼女はその夢を断念する事にした。
それは…ある事実を知ってしまったためです。
ある事実?それは桂木春海さんあなたが偽者であるという事です。
何をバカな!彼女は…。
本物の桂木春海さんは32年前ここ南三陸で亡くなっています。
そうですね?本田清子さん。
いいえ。
桂木春海は生きています。
ほらここに。
もうやめましょう。
土田みゆきさん。
いつまでも桂木春海を演じるのは無理です。
中学時代のあなたの写真です。

(笑い声)もうおしまいよ!何もかも見抜かれてるわ。
何言ってるの春海さん!春海さん!清子さんあなたは桂木春海さんの付き人でした。
しかし通常の付き人とは違う。
一卵性の双子のように仲がよく身の回りの世話からメーク結髪までこなすマネジャー以上の存在でした。
そんなあなたにとって春海さんの死はさぞやショックだった事でしょう。
違う…違う…。
桂木春海は生きています!清子さん。
これを見てください。
これは昭和52年2月6日の新聞記事です。
神割崎で海に何かをまいている女性を地元の漁師が見てその寂しげで儚げな姿を天女かと思い写真を撮ったんだそうです。
この女性は清子さんあなたですね?そして海にまいていたのは桂木春海さんの遺骨です。
まさか…。
あなたは世間には桂木春海の死を隠し通した。
そして月日が流れ東京に桂木春海とよく似ているホステスが現れた。
それが土田みゆきさんあなたです。
(土田みゆき)へぇー!そんなにお金もらえるんだ。
ええ。
大丈夫。
あなたなら出来る。
私の指示に従ってくれればね。
(鶴巻の声)桂木春海の生き写しのようなみゆきさんにあなたは桂木春海に成り代わるよう諭しここ南三陸に連れて来た。
桂木春海だわ!
(清子)春海さんの右手の動きよく見てて。
(清子)はいここ!
(みゆき)春…。
海…。
(清子)そうそう。
こここうやって。
ここ。
そうそう。
そうじゃない。
こっち向いて!ここよ。
えっどこ?第二関節のところ。
ここを下。
ここ。
こう!
(鶴巻の声)みゆきさんはあなたの手でここで桂木春海に作り変えられた。
そして満を持して谷田部彩にみゆきさんを会わせ『福寿草』の映画化を持ちかけた。
プロデューサーの谷田部彩さん。
プロデューサーの谷田部彩です。
谷田部彩は悲願の『福寿草』が映画化出来る事に喜んだ。
しかし…もっと喜んでいる人がいた。
それは清子さんあなたです。
(鶴巻の声)あなたは製作発表の日会場となったホテルのラウンジにいましたね。
あなたの夢が実現に向かって動き出すのを少しでも近くで感じたかったからです。
違いますか?33年前森先生の『福寿草』を読んだ時これは春海の代表作になると思いました。
引退後もいつか春海が三崎奈津子の役を演ずる日が来る事を私は信じて疑わなかった。
しかし下坂拓也は父親の日記から桂木春海が亡くなっていた事実を突き止めあなたをゆすってきた。
ここに証拠がある。
黙っていてあげますよ1億円で。
桂木春海の財産をもってすればはした金でしょう。
じゃあ。
いやしかしあなたはとんだ天女ですね。
早速小切手をもらいましょうか。
その前にお水いただける?はいはい。
(鶴巻の声)あなたはお金を渡す方法を話し合いたいと嘘をつき下坂さんの指定した立川のホテルに出向きコーヒーにヒ素化合物を混入し殺害した。
(うめき声)
(エレベーターの到着音)
(下坂のうめき声)どうしました!?
(下坂のうめき声)しっかりしてください!
(下坂のうめき声)てんにょ…。
(清子の声)桂木春海のカムバックを邪魔する人間は誰であろうと許せなかった。
みゆきさんを追って南三陸までやって来た小畑浩二郎さんを殺したのもあなたですね?彼が殺されたのは私のせい。
携帯電話も取り上げられてたった1人でこんなところに閉じ込められて桂木春海になりきるためのレッスンばかり!寂しくて我慢出来なかった!私よ。
ごめんねずっと電話出来なくて。
なんだか声聞いたら安心したわ。
お金のためだもの我慢する。
みゆきの話から金の匂いをかぎつけたんでしょ。
あの男は『福寿草』の主演女優の謎を探り始めたんです。
小畑浩二郎もあなたをゆすってきたんですね?ええ。
いやぁ驚きましたよ。
すごい計画ですね。
(小畑)あっ…!?
(刺す音)
(小畑)ああーっ…!ひどい男だったけど…悪いとこばかりじゃなかった。
何も殺す事なんかないのに…。
そこまでしなくてもいいのに!小畑浩二郎が殺された事で谷田部彩は今度の桂木春海のカムバックには裏に何かあるのではないかという疑惑を抱きあなたに詰問し真実を突き止めた。
あの女は言ったわ。
桂木春海の替え玉をスクリーンには出せないって。
映画の製作は中止するって。
私は桂木春海本人の主演だからこの企画を始めました。
森先生もそう信じてるからこそ映画化を了承してくれたんです。
プロデューサーとしての責任を果たすためにも世間に真実を公表します。
待って!あれは桂木春海よ!あなたさえ黙っていてくれれば作品は大成功するわ。
(清子)お金の事は心配しなくていいこれからは。
偽りの作品を送り出すつもりはありません。
製作は中止します。
(清子)待って!ねえお願い!ねえもう一度聞いて。
離してください!
(清子)もう聞いてよ!ねえお願い!
(彩)やめてください!あっ!ああぁーっ!彼女は…彼女はいつだって真剣でした。
人生をかけて愛した映画を自らの手で汚すような事は絶対にしない。
清子さんあなたとは違うんです。
私は…春海を汚してしまったの…?やはり…桂木春海は幻の女だったのか。
森先生みゆきさんがこんなに春海さんに似ている事を偶然だと思いますか?下坂拓也が破り取った父親の日記。
32年前の2月4日には桂木春海さんが息を引き取る直前に赤ん坊を産み落としていた事が記されていたはずです。
下坂さんの父親は産婦人科医でしたから。
桂木春海が引退した本当の理由は妻子ある人の子をひっそりと出産するためです。
私は反対だった。
でも春海は引退して『福寿草』の舞台になったこの南三陸で赤ん坊を産んで育てたいと言い張って。
春海さんのその赤ん坊の父親は…?そうです。
一時期恋愛関係にあった森先生あなたです。
桂木春海さんの死後赤ん坊は密かにあるところで育てられました。
その赤ん坊を育てたのは気仙沼に住んでいたあなたの妹さん。
そう土田夫妻です。
土田…?私…私が…?あなたが春海さんと私の…。
娘…!32年前の2月4日みゆきさんが生まれた日…。
何があったのか話していただけませんか?難産の末に赤ん坊が生まれたのはこの神割崎の岩の間から朝日が昇り始めた時でした。
それは一年にたった二度しかない奇跡の朝。
(清子)春海さん。
(赤ん坊の声)
(春海)ねえ清子さん知ってる?この地に伝わる天女伝説。
ええ知ってるわ。
今日はその奇跡の日よ。
この子は…きっと…天女の生まれ変わりね。
(清子)春海さん!?春海さん!天女の…生まれ変わり…。
あなたを見つめて春海うれしそうに呟いて眠るように息を引き取りました。
春海はこの32年間私の中で生きてきた。
これからも春海は生き続けるわ。
私の中でいつまでも…。
あの子が戻ってきたら温かく迎えてやろうと思います父親として。

(森下)桂木春海がまさか亡くなっていたとはな…。
(森下)しかし似てるよなぁ…。
親子ってのはこんなに似るもんなんだ。
あっ支局長千晶ちゃんもタイプだったりします?何言ってんだ君は。
聞きましたよ。
千晶ちゃんのお母さんのおなじみさんだったんですって?あはは…隠しきれなくてすいません。
娘の就職の世話を焼くくらいだからただのおなじみさんじゃないんじゃないですか?いやそれはだね…。
わかった!千晶ちゃんは支局長の隠し子なんだ!バカ言ってんじゃないよ!そんなわけないだろうが!そうですよ!支局長がお父さんだったらガッカリ!ガッカリとはなんだ!ガッカリとは!はあ!?2015/02/26(木) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
新聞記者・鶴巻吾郎[再][字]

天女伝説殺人事件!鶴巻の元恋人に、殺人容疑…ルームサービスの死角に謎が!

詳細情報
◇番組内容
毎朝新聞立川支局の記者・鶴巻吾郎は、かつて後輩記者だった谷田部彩と数年ぶりに顔を合わせる!!彩は今はフリーの映画プロデューサーで、立川を舞台とした悲恋文学の映画化を狙っていたのだが!!シリーズ第3弾!宮城県南三陸、気仙沼に大ロケーション!
◇出演者
村上弘明、伊東四朗、床嶋佳子、小林綾子、久世星佳、高林由紀子、藤田宗久、河本千秋、英玲奈

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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