クローズアップ現代「いま“世界”のためにできること 紛争地 それぞれの眼差し」 2015.02.26


あの、オイルの臭いがすごくします。
これがたる爆弾の特徴です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
過激派組織IS・イスラミックステートによる殺害など長引くシリアの内戦ではすでに20万人もの人が犠牲になったと見られています。
テロが頻発する紛争地帯では刻々と危険な場所が変化し誘拐や殺害の被害に遭う各国のジャーナリストや援助団体の関係者が増えています。
フリージャーナリストとして中東やアフリカを中心に内戦や貧困問題を取材した後藤健二さんも、その一人。
亡くなっておよそ1か月になります。
紛争地や貧困の実態を最も弱い立場に置かれる難民や子どもたちと向き合い伝え続けてきました。
この番組でも後藤さんが取材した映像でイラク戦争の厳しい断面を伝えたことがあります。
組織に属さず自分の責任で紛争地に入って活動するジャーナリストや現地に身を置いて支援する人々は一個人だからこそ国や組織では、なかなかできない領域に入り伝えたり当事者に寄り添うこともできるのです。
しかし、状況の悪化で身の危険が高まりリスクを完全に取り除くことが難しい中で国に迷惑をかけるような行動を慎むべき支援は国に任せるべきといった意見など個人による活動に否定的な声も出ています。
危険を伴う取材、きめ細やかな人道支援に自発的に取り組み世界の厳しさに向き合ってきた人々が今回の事件後どのように状況を捉えどんな思いで活動と向き合おうとしているのか取材しました。
日本のビデオジャーナリストの草分けで、紛争地の取材を30年以上続けてきた野中章弘さんです。
後藤さんの死を、自己責任とする声がある一方で、その業績が海外で高く評価されていることに、注目しています。
後藤さんは、自身の報道を通じて、シリアの人々の苦境を世界に伝えようと、勇敢に取り組んだ。
後藤さんの報道は、私たちの活動を支えていた。
飢餓を撲滅しようとした仲間だ。
現地の人々の目線で、紛争地を見つめることの意味が、再認識されていると、野中さんは考えています。
今、フリージャーナリストなど、紛争地で活動してきた、人々によるシンポジウムが、頻繁に開かれています。
イラク戦争の取材を2003年からずっとやってきまして、ちょうどきのうですけども…。
ジャーナリストの綿井建陽さんです。
この1か月、危険と隣り合わせのみずからの仕事を見つめ直してきました。
今、バグダッド市内を、米軍の戦車が制圧しています。
イラクのフセイン政権の崩壊を現地から伝えるなど、世界各地の紛争を取材してきた綿井さん。
取材中は、常に臆病であることをみずからに課してきました。
治安状況を、現地に詳しいコーディネーターに逐一確認し、場合によっては、護衛をつけて移動することもあるといいます。
実際に自分の足で歩くのは、まあこの辺がやっとですかね。
しかし、国や武装勢力により、複雑な構図の紛争が増えたことで、現場で危険を察知することが、難しくなってきているといいます。
さらに中東では、日本人ジャーナリストの見られ方が、変わってきているとも感じています。
綿井さんが、それでも紛争地での取材にこだわるのは、そこに暮らす人々がいるからだといいます。
10年にわたるイラクでの取材をまとめた、ドキュメンタリー映画。
主人公は、空爆で一度に3人の子どもを亡くした男性と、その家族です。
綿井さんは、イラクに何度も足を運び、家族を記録し続けました。
2年前、家族のもとを訪ねた綿井さんは、男性が何者かに銃撃され、亡くなったことを知りました。
日々のニュースの背後に、多くの人々の死があることを伝えなければならないと、綿井さんは改めて感じています。
後藤さんもまた、イラク戦争の開戦時から現地で取材を続けました。
後藤さんが撮影した、白血病を患うイラク人女性と、その家族です。
後藤さんと共に、この家族を支援した佐藤真紀さんです。
佐藤さんは今、日本人スタッフ10人、現地スタッフ3人を抱えるNGOで、事務局長を務めています。
イラクやヨルダンで、がんを患う子どもたち5万人の医療支援を続けてきました。
こだわってきたのは、一人一人と向き合う支援です。
佐藤さんは、目にがんを患った、この11歳の少女が、4年後に亡くなるまで寄り添い続けました。
しかし、こうした支援が難しくなりつつあります。
中東情勢の悪化などで、命を落とす援助関係者が増加。
おととしは155人が亡くなりました。
一方で、紛争が激化するシリアから逃れてくる難民も急増しています。
これまでの支援をどう維持していくのか、難しい判断を迫られています。
先週、佐藤さんは、今回の事件を受け、現地の体制や活動方針を話し合うためにイラクに向かいました。
傷ついた世界のために、何ができるのか。
佐藤さんは、試行錯誤をやめてはならないと考えています。
ご覧いただきましたように、紛争の構図が複雑になり、状況は、より危険になっています。
それでも、そこに暮らしている人々を取材し、寄り添い続けたいという一人一人の深い思いが伝わってきます。
2000年以降、現地で亡くなった、殺害された日本人ジャーナリストは6人。
NGOの援助関係者も1人います。
肉親を失った遺族は痛みと向き合いながら、みずからが果たす役割を模索しています。
ジャーナリストの佐藤和孝さんです。
アフガニスタンやイラクなど世界の20か国以上の紛争地で取材を続けてきました。
3年前、シリアで取材中パートナーの山本美香さんが殺害されました。
美香さんは紛争地の女性や子どもの悲しみに一人の人間として寄り添うジャーナリストでした。
赤ちゃん連れです。
うわぁ、かわいい。
志半ばで命を落とした美香さんのために何ができるのか。
第1回山本美香記念国際ジャーナリスト賞は…。
佐藤さんが美香さんの死後始めたのはジャーナリストの育成です。
今、経済的に不安定で危険を伴うこの仕事を志す若い世代は減っています。
これはアレッポ。
最期に美香が撮ってたやつ最期まで撮ってたやつだ。
大学で特別授業を行うことが多かった美香さん。
世界には、痛みを強いられている人がいることに思いをはせてほしいと伝え続けていました。
命を奪ったその国の人々と向き合い続ける遺族もいます。
こんにちは。
よろしくお願いいたします。
橋田幸子さん。
夫の信介さんはイラク戦争の取材中に武装勢力によって殺害されました。
髪の毛とかあと脳しょうとかですよね。
ね、かわいそうに。
信介さんは亡くなる前イラクの少年と一つの約束を交わしていました。
戦闘に巻き込まれ視力を失った少年に日本で治療を受けてもらいたいと考えていたのです。
夫の最期の願いをかなえたいと寄付を募った幸子さん。
3000万円と、多くの激励のことばが寄せられました。
幸子さんはそのお金をもとに基金を作りイラクに病院を設置するなど現地の人々への支援を行っています。
夫が殺害されたイラク。
なぜ人々を支援するのか。
去年、中東メディアの取材に幸子さんはその思いを語っています。
もちろん悪いことをした人はその罰というか法にのっとった裁きは受けてほしいと思いますけれども。
すばらしい人たち。
だからといってその国の人たち全部を憎むということはよしとしません。
支援をしてきた病院のある地域は現在過激派組織ISが支配しています。
憎しみの連鎖を生まないためにどのような支援が可能なのか幸子さんは今、模索しています。
今夜は、紛争地の人道支援に20年以上にわたって関わり続けてきましたNPO法人難民を助ける会理事長で、立教大学教授でもいらっしゃいます、長有紀枝さんをお迎えしています。
現地での活動が、危険性を増しているということなんですけども、実感として、どのようなこの危険性の変化っていうのを感じられますか?
やっぱり何かフェーズが、段階が変わってしまったということはひしひし感じます。
例えば、これまでNGO、私たちNGOは、危機管理、安全管理というのは、いろんな対策取ってきました。
例えば、現地でそういう情報の専門家を雇うとか、あるいは国連が主催する、そういったトレーニングに参加するとか、また日々の中では、同じ道を通らないとか、時間を変えるとか、さらには一番大事なことですけれども、地元の人に溶け込んで守っていただく、それが最大の安全管理。
武器などは当然使わない、それこそが私たちにとって最大の安全管理だったわけですね。
それはでも、敵といいますか、攻撃する人が外から入ってこない場合で、今は、せっかく時間かけて培った人間関係、信頼関係も、外から1人、特定の意図を持った人が入ってきたら、そこで崩れてしまうような状況というのを、ひしひしと感じます。
そうしますと、例えば、退避勧告などが出た場合は、退かざるをえない。
援助にも影響があるわけですね。
やはりNGO、特に日本のNGOの強みというのは、きめの細やかさ。
私たちも障害者の方、地雷の被害者の方、一人一人のニーズとか調査をして、そこに行って支援をしてというのをとにかく基本としてきました。
ですが、こういった危険な状況で、入れない地域が増えると、それは私たち自身は行くことができない。
現地のパートナーとか、現地のスタッフだけに任せることになる。
それで私たち外国人、日本人の安全を守られるかもしれないけども、危険の肩代わりを、全部地元の人にしてるんじゃないかというおそれはありますね。
でもいったん事故に巻き込まれると、事件、事故に巻き込まれると、これは安全に撤退せざるをえなくなる。
そのとおりです。
ビデオの中で、臆病ということばがありましたけども、私たちは長く存じ上げてますが、後藤さんも臆病な方だったんじゃないかと思います。
私たちも臆病なんです。
というのは、勇敢だから、危険を冒すために現地に入るのではなくて、とにかく現地に支援を待っている人がいるから入る。
とはいえ、私たちが身を危険にさらして、もし私たちに何か被害が及んだら、それは私たちの身だけではなくて、ほかの団体も撤退せざるをえなくなる。
その援助してる業界全部に被害が及ぶとか、もっと言うならば、そうすることによって、私たちが一番助けたいと思っていた人に支援を届けることすら、できなくなってしまうということで、責任も同時に感じます。
支援活動をするうえで、そのジャーナリスト、現地にジャーナリストがいるということの関係性ですね。
どういう関係になるんですか?
やはり危険地ですと、いろんな方が退避していく中で、現場に入っていくのはジャーナリストの方と、やはり援助関係者なわけですね。
現場でいろんな協力をすることもありますし、また同じ目的といいますか、例えば私たち、ふだんの生活、忙しいですし、外の、海外のことなんて目を向けるのって難しいかもしれない。
私たちって、特に日本人って、人情にあふれた民族だと思うんですが、自然災害でも、そういう心の想像力、たくさんある。
でも、海外のことになると、それはちょっと難しくなって、日本人が普通に持っている身近な人に向けている人情を、見ず知らずの全然関係ない、でも同じ時代に生きている人に向ける、それは私たちは人道だと思っているんですが、そういう人情を人道に変える仕掛けって、やっぱり必要で、その人情を人道に変えていくことができているのが、ジャーナリストの方たちが現場に行って、伝えてくれること、また私たちが現場で困難な状況にある方に寄り添って、一人一人のお話を聞いて伝えることだと思ってます。
実際にジャーナリストが集めてくる情報によって、安全か、安全ではないかという判断もおできになるでしょうし。
そうですね、もちろんそういう安全管理の面でもそうですし、またその現地の私たちが入れない面での…状況を知らせてくれるのも、ジャーナリストの方だと思います。
また特に日本人にとっては、欧米のジャーナリストが入るのと、あるいは欧米の団体が入るのとまた違って、日本のジャーナリストが行き、日本のNGOが支援することで、呼び起こされる気付きであったり、関心っていうものがとてもあるんではないかと思っています。
どうなんですか、しかし、日本へ向けられる現地のまなざしが変わってるんではないかという指摘もありますよね。
残念ながら、あまりそれは信じたくないですが、それはやはり、ひしひしと感じます。
ちょっと古い話になってしまうんですが、私自身関わってきた旧ユーゴスラビア、特にボスニアの紛争の時代ですね、日の丸を掲げて活動することがありました。
それは、あの紛争のあの文脈で、政治的にも宗教的にも、全く関係のない、日本の支援ということで、非常に中立というふうに理解されましたし、日本の国旗が安全の象徴、安全を守る象徴でもあったわけです。
でも今のこの文脈では、日本の国旗では、私たちの安全を守られないという状況になってきてしまっていると思います。
そういう外国での日本の見られ方も変わってますけど、今回の事件を受けて、今のリポートにもありましたけれども、紛争取材に対するその視線が、やはり厳しくなっているんではないかと実感されてらっしゃいます。
こういったことが起きたことによって、その内向きになっていくのではないかという懸念もありますけれども、今、何が必要だと思いますか?
今こういうときっておっしゃいました。
まさに本当にこういうときだからこそ、日本人の心を内向きにしてはいけないんだと思います。
援助にしても、これはジャーナリストの人と二人三脚で私たちも一緒にやっていくことですけれども、例えば今、シリアに大きな脚光、脚光といいますか注目が集まっていますが、やはりそれは暴力があるからだと思うんですね。
でも今、世界には暴力はないけれども、大変な貧困、HIVとか、地雷の問題とか、マラリアとか、そういう大変な貧困な状況、困った状況に置かれている方たちがたくさんいるわけで、その方たちへの支援をなくしてしまったら、元も子もなくなってしまうと思います。
もっともっと危険な武力に手を染める人たちが増えてきてしまうと思う。
私たちはやはり、シリアから逃げてくる方たちの支援、もちろん強化していくのですけども、同時に、そうじゃない地域、まだそんなに暴力がないけれども、貧困がある地域、そこに支援していかなければいけないというふうに思っています。
2015/02/26(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「いま“世界”のためにできること 紛争地 それぞれの眼差し」[字]

過激派組織IS・イスラミックステートによる日本人殺害事件。長年、紛争地での人道支援や報道に携わってきた人々は「今自分たちに出来ることは何か」を考え続けている。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】立教大学教授、難民を助ける会理事長…長有紀枝,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】立教大学教授、難民を助ける会理事長…長有紀枝,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz

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