10分で済みますので是非受診して頂ければと思います。
ありがとうございました。
(2人)ありがとうございました。
(テーマ音楽)
(拍手)宝井琴桜でございます。
今日は親孝行のお話を申し上げます。
親孝行と申しますと徳川三代将軍家光ある日の事芝の増上寺へご参拝になろうと美々しく行列を整えてやって参りましたこの時に一人の親孝行者「このお行列を見せてあげたい母親に」。
そう思って背負いだしているうちにはずみでつい行列の先へ飛び出してしまいます。
「無礼者!」。
「申し訳ございません。
おふくろに公方様のお行列を拝ませたいと思いましてとんだ粗相を致しました。
申し訳ございません」とこれを聞いた家光が「それは親孝行である」とおとがめなしで金10両のご褒美。
さあこれがあっという間に評判になりまして親孝行というのはいいもんだなあなんという事がうわさになる。
これを聞いたのが江戸一番の親不孝者。
「へえ〜!驚いたな。
うちでまごまごしているあのばばあ担いでいくと銭もうけになるとは気が付かなかった。
よ〜し今度将軍様どっかお出かけになる時にはあのばばあ担いでいって褒美の金をふんだくっちまわなきゃいけねえ」。
そうこうしているうちに今度家光公が上野の宮様のもとへご挨拶にお出かけになる。
これを聞きました親不孝者が「しめた!おいおふくろ。
今日はなひとつ親孝行ってのをしてみるぞ。
おめえをおぶって出かけるんだ。
おぶさってくれ」。
「何が親孝行だ。
お前ぐらい親不孝な伜があるもんか。
酒は飲む博打は打つ女郎買いはする。
ない子には泣きは見ないというけれどもお前がいるばっかりにわたしゃ毎日泣きの涙。
私をおぶってく?ふん!江戸の外れでうっちゃろうって了見だろうよ。
嫌だよ!」。
「違うよおふくろ。
おめえ担いでいかなきゃ銭もうけにならねんだよ」。
「本音吐いたな。
コンチクショー!」。
「ちぇっ!どうして伜の言う事はそう素直に聞けねえのかな。
こんな子不孝なおふくろは見た事ねえや」。
ひどいものでいきなり殴りつけ蹴飛ばしぐったりしている母親を無理やり背負うと慌てて御成街道へ出てまいりました。
前のははずみで飛び出したんですが今度はわざと承知の上で横切ったものですから…。
「無礼者!」。
「申し訳ございません。
おふくろに公方様のお行列を拝ませたいと思いまして親孝行をしようと思いまして背負いだしましてとんでもない粗相を致しました。
ご勘弁を頂きとうございます」。
「お役人様だまされちゃいけません。
この伜は私の伜ではございますがそりゃあもうひどい伜でございまして。
今日も私をおぶって銭もうけをする銭もうけだとわたしゃ嫌だ嫌だと言いましたらご覧下さいまし。
顔なんぞは曲がるほどひっぱたきやがって。
本当にどうしようもない伜でございますからどうぞご遠慮なくはりつけに上げて頂きとうございます」。
ありのままを将軍様に申し上げますと親子を呼べとおっしゃってお駕籠脇まで。
双方の言い分を聞いた家光公が「母の申す事伜の申す事は真反対。
しかしたとえ日頃は親不孝にせよ今日は親孝行をしようとして母親を背負いだした。
それが嘘まねにしてもよい事ならばよいではないか。
のう。
親孝行はまねでもよい。
これい孝行者に褒美を遣わせ」。
前と同じように金10両のご褒美。
お行列は何事もなかったように出立を致します。
「ヘッ。
おふくろこっち来なこっち来な。
おめえ背負ったおかげでこれだけもうかった。
将軍様うめえ事言ったな。
『いい事ならまねでいい』って。
まねでこれだけもうかるんだ。
じゃあもうちっとやってみるか」。
ちょっと母親を大事にしてみる。
母親は「これは嘘なんだ。
まね事なんだ。
褒美の金欲しさなんだ」とは思ったんですけれどもそこは自分の産んだ息子でございます。
ちょっと優しくされるとうれしくなる。
そのうれしそうな顔を見て息子は張り合いが出てくる。
「へえ〜おふくろってのはあんな事でうれしいのかな?じゃあもうちっとやってみるか」。
やればやるほどうれしそうな親の顔を見て張り合い込む。
こうして江戸一番の親不孝者がいつの間にか自然に孝行者に変わったというのですから人間は妙なものでございます。
さあお話はここからでございます。
明治の末茨城県多賀郡大津町の在に田沢勘作という若い漁師がおりました。
幼なじみの村のお亀という娘と結婚を致しました。
お亀なんていうと妙な名前に聞こえるかもしれませんが親が付けてくれた名前が鶴亀の亀なんですね。
めでたい事がいっぱい起こるように長生きができるようにというので亀という字を使った。
その時に呼ぶ時に「お」をつけますからそれでお亀という事になる訳です。
夫婦仲むつまじくやがて生まれましたのが花のような女の子。
講談はいろいろ決まり文句がありまして女の赤ちゃんが生まれますとたとえどんな赤ちゃんでも花のようなと言う事に決まってるんですね。
中には言いにくい赤ちゃんも生まれるかもしれませんがじゃあ男の子はというとこちらは玉のような男の子。
「ねえお前さんこの子にいい名前付けてやっておくれよ」。
「ああそうなんだよ。
俺もいろいろ考えてるんだがなどうだお亀。
お前がお亀だからこの子はおたふくにしたら」。
「おたふくじゃ…」。
「いやいや福が多いと書いてお多福。
俺はいいと思うんだが」。
「もっと別のにして下さいよ」。
「そうか?じゃあ俺は漁師だからひとつ魚の名前でも付けようか。
まぐろ。
ひらめ。
いわし。
さんま」。
「それは何だか男みたいだし」。
「そうか?じゃあさざえ。
わかめ」。
「何だか漫画に出てきそうだし」。
「じゃあ威勢のいいところでさめというのはどうだ?」。
「何だか人に食いつきそうだし。
かまぼこにされそうだし」。
「いちいち言ったら付ける名前がねえじゃねえか。
あっそうだ!2年前に亡くなったおばあさん96まで長生きをなさったんだ。
おばあさんの名前をもらえばいいじゃないか」。
「ああそれがいいね」と付いた名前がてい。
おていでございます。
這えば立て立てば歩めの親心。
月日のたつのは早いもの。
あっという間におてい12歳。
早いでしょ。
張り扇をたたけばすぐ12歳になります。
その年の2月の半ばでございました。
父勘作の乗っておりました船が沖で疾風に遭う。
あっという間もなく沈んでしまいます。
幸い勘作は仲間の船に助けられ命は助かったんですが…それからというものあれほど明るく和やかだった田沢の家の雰囲気ががらっと変わってしまいます。
勘作はいつも眉間にしわを寄せて考え事ばかり。
母親のお亀はため息ばかり。
子ども心にも大層心配をしておりました娘のおてい。
ある晩夜中に目を覚ましましたおてい。
隣の部屋でヒソヒソボソボソ両親が話をしている。
「はあ〜どうにもこうにもしょうがねえやお亀。
沈めた船は網元さんのもんだ。
弁償もしなきゃならねえし義理の悪い借金も増えるばっかりで。
もうこうなったらしかたがねえ。
いっそのこと夜逃げでもしようと思ってな」。
「まあお前さん情けない事に…。
夜逃げったってどこへ行こうという…」。
「いや〜東京へでも行って漁師の力業生かして働きゃ親子3人ぐらいなんとかなると思うんだよ」。
「はあ〜そうだねぇ。
そうするよりしょうがないかね。
それじゃあお前さんそうと決まったら早い方がいいよ」。
「そうだな。
明日の晩にでも…」。
夜逃げの相談がまとまったこの時にさらっと障子が開いて…。
「おとう!おっかあ!」。
「おてい。
何だ寝てたんじゃねえのか」。
「今の話聞いてしまいました。
おとう夜逃げだなんてそんな情けない事は言わないで下さい。
東京って言ったって東京のどこへ行くのか何をするのか当てがあるんですか?それに私らがいなくなったらご先祖様のお墓は誰がお守りをするんですか?おとうお金が要るんなら私が奉公に出ます。
奉公に出して下さい。
それから私からも網元の旦那様にお願いをして少し待ってもらうように頼んでみますしお金借りたおじさんたちにも訳を話して少しずつにしてもらいます。
だからそんな情けない事は言わないで下さい」と目にはいっぱいの涙を浮かべて一生懸命。
「何だよ。
子どもが親に説教するって事があるか」。
「お前さんおていの言うとおりだよ。
東京ったってねどこへ行く何をするって当てがある訳でもなし苦労するだけだよ。
同じ苦労するんなら生まれて育ったこの村でした方がどんなに気が楽か。
お前さん夜逃げなんてやめた方がいいよ」。
「さっき早え方がいいって言ったじゃねえか。
まあそれもそうだな。
じゃあおていおめえにまで苦労かけてすまねえが奉公に出てくれるか?」。
「はい。
喜んで」と話がまとまる。
からすカーで夜が明けて。
母親お亀に送られましておていは父勘作に伴われまして一山越えた平潟町松月堂という大きなお煎餅屋さんへやって参ります。
「ごめんくださいまし。
旦那様ごめんくださいまし」。
「ああ勘作さん聞きましたよ。
この度はえらい事じゃったね。
まあ命あっての物種というから」。
「ご心配をおかけ致しましてありがとうございます。
あの〜この前伺った時に坊ちゃんの守っ子がいねえから困ってるってお話でございましたがもしまだであればこの子を使ってもらえねえかと思って連れてきたんで」。
「ああそりゃあ助かるよ。
オホホ随分かわいい娘さんだね」。
「へえ。
うちの娘で」。
「ええ?確か勘作さんお前さんとこは一人娘。
よくまあ一人娘を奉公に出す気になったもんだねえ」。
「実はこれこれしかじかでございます」と夜逃げの相談を聞かれた話をする。
「偉い!へえ〜!それはまた親孝行な娘さんじゃないか。
ああそういう娘さんなら喜んでうちでお預かりをしようじゃないか。
よそよりも給金を余計にあげるようにもするしそれから出過ぎたまねかもしれないけれども勘作さんもしよかったら網元の弁償の方も私の方で立て替えてやろう。
なあ。
都合がつく時にお前さんが私の方へ返してくれればいいから」。
「助かります。
ありがとうございます。
おてい聞いたか?旦那様はこのとおりお優しいお人だ。
親だと思いおとっつぁんだと思ってしっかり奉公するんだぞ」。
「うん」。
「だどもな奉公なんというものはなまやさしいもんじゃない。
つらい事や悲しい事がたんとある。
それはいくら優しそうに見えた旦那様でも根が他人だからしかたがねえ」。
「おいおい勘作さんなんて事…」。
「あ…聞こえましたか。
いやいやおてい今のは間違っていた。
安心をして奉公をするんだぞ」。
心を後に残しつつ父親勘作が帰ります。
それからおていは2つになる男の子のお守りでございます。
それだけじゃない。
朝は一番早くに起きまして掃除から何から下働き夜は遅くまで。
丁度お盆の上で豆を転がすようにクルクルクルクルクルクル実によく働いておりました。
ある晩の事主人の久兵衛がおていの部屋の前女中部屋の前を通りかかりますとボソボソとおていの話し声が聞こえてくる。
「あれ?何だろう1人のはずなのに」と障子の隙間からのぞいてみるとおていは何やら箱をのぞき込んで「おっかあそれじゃあ今日はこの辺でおやすみなせえ」。
あんな小さな箱に母親が入っている訳でもなし「何だろう?何がおっかあだろう?」と気になりました久兵衛がからすカーで夜が明けておていがいないのを見計らって部屋へ入ります。
棚の上に箱があった。
これを下ろしまして蓋を取る。
のぞいてみると…。
これが大層にこやかなおかめの張り子の面でございます。
「ハハッ何だ何だこんなものが。
あ〜そうか。
確かあの子の母親の名前がお亀とか言ってた。
それでこれを母親だと思って毎晩話しかけていたのか。
利口なようでも子どもは子ども。
かわいい事をするもんだ」と見ていたそのうちに「待てよ。
う〜んうちの孫にもこんなものを買ったはずだな」とおもちゃ箱を引っかき回してみると出てまいりましたのが張り子の般若の面でございます。
こりゃあ面白いぞとよせばいいのにおかめの面と般若の面を入れ替えて知らん顔。
もちろんそんな事は知りませんおていが戻ってまいりましていつものように棚の上から箱を下ろして蓋を取り「おっかさん今日はとっても忙しかったんだよ」とのぞき込んでみるとにこやかなふくよかなおかめの面と打って変わってキリキリッと目尻もつり上がった恐ろしい般若の面。
「ああおっかあそんな怖い顔しねえで笑って下さい」。
笑う訳がない。
お面ですから。
この時にとっさにおていの頭に浮かんだのはもしかしたらおっかさんが今頃病気かお怪我でもしてこんな怖い顔をして苦しんでいるのかもしれない。
ああきっとそうに違いがない。
さあそう思いますと居ても立っても寝転んでも居られない。
「そうだ。
夜明けまでには間があるから一っ走り行っておっかさんの様子を訪ねてみよう」と無造作に般若の面を懐へ押し込んでそのまんま無断で松月堂を飛びいだす。
昔話にこんなお話がございましてあるお店の小僧さんが主人から用事を頼まれたお使いを頼まれた。
その駄賃にとあんころ餅をもらったんだそうです。
大好きなあんころ餅今食べないで用事が済んでからお使いを済ませてから後でゆっくり食べようと小僧さんが台所の隅へ持ってまいりまして「ほかの人が見たら蛙に化けるんだぞ」とあんころ餅に言い聞かせて蓋をして出かけた。
これをこっそり見ていた主がかわいい事をするもんだとよせばいいのにあんころ餅と本物の蛙をすり替えておいた。
そんな事は知りません小僧さんが急いで使いを済ませてさああんころ餅が食べられるぞと蓋を取りますと蛙がピョンピョンピョンと飛び出てくる。
この時に小僧が「おい俺だよ俺だよ。
そんなに跳ぶとあんが落ちるよ」。
まあこんな昔話もございますがさあこちらはおてい。
母親の身を気遣います孝行の一念ただ一筋。
暗い山道怖いも恐ろしいもありません。
どんどんどんどんどんどんどんどん駆け上ってまいりますと中腹に金毘羅様のお堂がございましてその前も急いで通り過ぎようとしたその時に「おっとねえやちょっと待ちな」。
暗がりから大きな男が2人。
「ああ通して下さい。
おっかあが病気でこれから見舞いに行くんだから」。
「ああ分かった分かった。
驚かしてすまなかったな。
ああ怖がる事はねえんだよ。
いや寒くなったんでなたき火をしようと思うんだがなかなか火が付かねえんだ。
おめえちょっと見てやってくれねえか」。
「はい。
火が付いたら燃えたら通して下さい。
おっかあが病気ですぐに見舞…」。
「ああ分かった分かった。
こっちだから」。
利口なおていの事ですからこういう時には逆らわずに言うとおりにした方が早く通れるだろうと…。
「おじさんこんなに太い枝ばっかりじゃ駄目だよ。
もっと枯れっ葉枯れ枝集めて下さい」。
マッチを借りて火を付けます。
夜露で湿っていたんでしょう。
モクモクモクモクモクモクと煙が立ち昇ってまいりますから煙いもんですからおていが「あっそうだ」。
懐へ押し込んでまいりました般若の面を思い出してこれを顔につけふ〜っふ〜っ。
ようやくボボッと燃えだした。
ああこれで通れる。
おっかあに会えると思いましておていが「おじさんこれでいいかしら?」とそのまんま顔を上げたもんですからのぞき込んでいた2人の男たちがびっくり仰天。
煙の中から矢庭に般若の面が出てまいりましたから「出た〜!」。
これが合図になりましていきなりお堂の扉がバタンバタン開かれたかと思うと中から飛びいだしてまいりました15〜16人の男たち。
バ〜ラバラバラバラバラバラバラ。
麓を目指して逃げていく。
思いがけない事に呆気にとられておりましたおていでしたが「あっそうだおっかあが」と思い直して火事にならないようにしっかりとたき火を踏み消してそのまんままた山道を駆け上り駆け下ってようやく懐かしい我が家へと戻ってくる。
(戸をたたく音まね)「おっかあ!おっかあ!」。
(戸をたたく音まね)「おっかさん!」。
一人娘を奉公に出しました母親の耳聡くパッと目を覚まします。
「お前さんおていじゃないかい?あの声」。
「ええ?おていが何だって今時分…」。
勘作が戸を開けますと…。
「おっかさん!」。
転がり込んでまいりましたおてい。
「どうしたんだい今時分に。
ええ?」。
「おっかあは?おっかあ!」「おっかあは今寝てるよ」。
「ああやっぱりどっか具合が悪いんだな」。
「具合が悪くなくたって夜だから誰でも寝てるよ。
どうしたんだいおめえ。
誰かにいじめられでもしたのかい。
それとも旦那様に小言でも言われたのかい」。
「そうじゃないんです。
実はこれこれでおっかあがこんな怖い顔をして苦しんでいるのかもしれないと思うと居ても立っても寝転んでも居られなかったんです。
おっかさん大丈夫?」。
「まあ…それじゃあお前は私の身を案じてこんな夜中に山道を1人で来てくれたのかい」。
これがうれしくない母親がどこにありましょう。
ボロボロボロボロ涙をこぼした。
思わず勘作ももらい泣き。
「そうか。
そりゃあよく帰ってきたな。
いやおっかあは大丈夫だよ。
それはな誰かがいたずらをしたんだ。
おめえが大事にしているおかめの面をわざわざ般若の面にすり替えておくなんといういたずら者がいたんだなあ。
しかしおめえ旦那様にはきちっと断ってきたんだろうな」。
「黙って来た」。
「黙って来た?ああそりゃあ駄目だ。
朝になっておめえがいねえという事が分かったらみんながどんだけご心配をなさるか。
話もしたかろうまだいたかろうけれども今日はこのまんま帰った方がいいよ。
わしが送ってってやるから」。
「分かった。
じゃあこれで帰る。
おっかあ体くれぐれもお大切に」。
「お前も気を付けるんだよ。
宿下がりの時にはお前の好きなものをこしらえて待ってるから」。
涙の母に送られて父に手を取られまして山道をまたやって参ります平潟の町へ。
途中金毘羅堂の前を通りかかりましたその時に…。
「そういえばおとっつぁん来る時にこうこうしかじかだったんです」。
話を聞いた勘作が中へ踏み込んでみると月明かり壺皿にサイコロたくさんのお金が散らばっている。
勘作の考えではここで夜みんながひそかに集まって博打をしていたらしい。
外にいたのが見張りの役目でおていの般若の面に驚いた2人の男の叫び声が警察の手入れの合図か何かと勘違いをしてみんな放り出して逃げ出したものらしい。
まあとりあえずこうしてもおけまいというのでこれをひとまとめにして手拭いに包んで平潟町へやって来た時には既に夜が明けている。
1番に起きだすはずのおていの姿が見当たりませんから松月堂ではえらい騒ぎでございます。
「おはようございます。
旦那様おはようございます」。
「ああ勘作さん。
いいところへ来てくれた。
実は大変なんだい…。
おてい。
なんだお前やっぱりうちへ帰ってたのか。
おいおい!おていが見つかりましたよもういいよ。
全く勝手な事をされちゃ困るじゃないか。
私はお前に小言ひと言も言った覚えもないんだし」。
「旦那様勝手な事を致しましてまことに申し訳ございません。
実はこれこれしかじかでございましてどうか母親を思う孝行の気持ちに免じましてご勘弁を頂きとうございます」。
「へえ〜。
そうだったのか。
そうかい」。
「それから旦那様このお店にはとんでもないいたずら者がおります。
わざわざおかめの面と般若の面をすり替えておこうというそういういたずら者がいては安心して娘を預けてはおけませんからどうかその者にはすぐに暇を出して頂きとうございます」。
「悪かったな。
そのいたずら者はこの私なんです」。
「えっ!旦那様が何だって…」「いやいやまさかこんな事になろうとは思いもしなかったからね。
しかしまあ道中何事もなくってよかったよ」。
「とんでもございません。
一つ間違えやあこういうえれぇ事になるところでございました」。
話を聞いた松月堂の主がそれじゃあそれはおていの名前で警察へ届けた方がいいだろうという事になりました。
警察の方ではすぐに掲示板に「一つ平潟大津の間金毘羅社内に金175円13銭発見せしものなり。
何者が遺失せし物に候や心当たりの者は申し出でろ」と張り出した。
当時巡査の初任給が12円という時代ですから175円13銭というとある程度まとまったものになる訳でございます。
「ヘヘッそれは私のもので…」なんて名乗り出てくる者はおりません。
出てきたら「お前が博打をしたんだな」と捕まってしまいますからこれがまるまる1年が経過を致しまして誰も名乗り出てまいりませんからこの175円13銭がおていのもとに下げ渡される事になり借金に苦しんでいた田沢の家が非常に助かったという訳でございます。
「般若の面」と題します一席この辺で失礼を致します。
(拍手)2015/02/28(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 講談「般若の面」[解][字][再]
講談「般若の面」▽宝井琴桜
詳細情報
番組内容
講談「般若の面」▽宝井琴桜
出演者
【出演】宝井琴桜
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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2/0モード(ステレオ)
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