サイエンスZERO「がんも!老化も!?生命を操る マイクロRNA」 2015.02.28


去年8月がんの早期診断方法を新たに開発する国家プロジェクトが始まりました。
これが成功すれば血液を一滴調べるだけで13種類のがんが極めて初期の段階でも診断できるようになるというのです。
プロジェクトのカギを握るのは国立がん研究センターに保管されてきた70万を超えるがん患者の血液です。
そこからがんの初期段階でも変化が表れるというある物質を見つけ出そうというのです。
その物質とは?生命の設計図DNAから転写されるRNA。
中でもとっても小さなマイクロRNAが重要だというのです。
生命を裏から操りがんの早期診断にも役立つというマイクロRNAに迫ります。
マイクロRNAちょっと初めて聞きました私。
ですよね。
これは注目され始めてからまだ10年ちょっとなので知らなくて当然ですよね。
ただ今生命科学でとってもホットな分野なんですよ。
へえ〜。
しかも血液中にあるマイクロRNAを調べるとがんの早期診断もできるかもしれないって事なんですね。
もしこれ本当にできたら画期的ですよね。
うん。
マイクロっていうのはすごく小さいって事ですよね。
DNAは知ってますよね?あっはい。
細胞の中にあるタンパク質の設計図ですよね。
仲間…。
リボ核酸…。
そもそもRNAとは一体どのようなものなんでしょうか?後ろにズラ〜ッと並んでいるのはDNAなんですね。
DNAはタンパク質の設計図なんですがここから直接タンパク質が作られる訳ではないんです。
ではどのようにコピーされるのかといいますとこのDNAをじっくり見て下さい。
分かりますか?4色ありますよね。
これ塩基といいまして4種類あるんです。
DNAがほどけますとRNAがやって来ます。
お〜っ!おっつながっていきますね!そうなんですよね。
DNAの塩基の並びに沿ってこのようにつながっていきます。
ではどのように並びに沿ってつながっていくのかといいますとDNAとRNAの塩基は…RNAの塩基も4種類あります。
今回はそのつながる相手を似たような色同士で表しているんですね。
例えば緑には青DNAの赤にはRNAの黄色といったように同じ色のもの同士はくっつきません。
こういった法則がありますのでDNAの塩基の並び方の情報がしっかりとRNAにコピーされるという訳なんですね。
はあ〜なるほど。
このコピーされたものは…塩基が数千くらいつながっているんです。
すごい!このメッセンジャーRNAからの情報を読み取る事でこのようにこれ白いのがタンパク質なんですけれどもタンパク質が作られていく訳なんです。
これがRNAの役割なんですね。
はい。
さあここで恒例の奈央ちゃんに質問です。
はい。
え〜っちょっと想像もつかないですね。
ちょっと言いかえると…うわ〜難しい!じゃあヒントを出しましょうかね。
はい。
え〜っ。
じゃあ近いんじゃないんですかね。
どうでしょう。
ブブ〜ッ。
う〜ん!答えは1.4%。
え〜っ少ないですね!えっじゃあほかの部分は何をしてるんですか?へえ〜。
そうなんですねDNAの中でもタンパク質の設計図にはならない部分からコピーされたRNAです。
このRNAは22塩基くらいにまで短く切り刻まれるんですね。
奈央さんこの小さなRNAが本日の主役…これが今日の主役なんですね。
だけどメッセンジャーRNAに比べるとだいぶ短いですよね。
これは何をしてるんですか?マイクロRNAは働く時にメッセンジャーRNAにくっつきます。
あっぴったりくっつきましたね。
はい。
くっつかれたメッセンジャーRNAはタンパク質を作る事ができなくなります。
へえ〜。
えっこんな短いのがくっつくだけで?そうなんです。
このようにしてマイクロRNAは体の中でいろいろと作用するんですね。
どのような事が起きるのか見てみましょう。
体の中でマイクロRNAがどんな働きをしているかを調べている東京大学の泊幸秀さんの研究グループです。
受精卵が成長する時マイクロRNAが重要な働きをしているというのでゼブラフィッシュでの実験を見せてもらいました。
ゼブラフィッシュは受精後2日ぐらいまで体が透き通っています。
体の中の器官がよく見えるため発生の実験でよく使われています。
この部分は栄養などが入った卵黄。
魚類では画面上の部分が細胞分裂していきます。
その様子を見てみると細胞は分裂を繰り返し受精から4時間を過ぎると卵黄を取り囲み始めます。
そして30時間ほどでこのような魚の形になるのです。
このような成長にマイクロRNAはどんな役割を果たしているのか。
ある一種類のマイクロRNAの働きを止める物質を受精卵に注入して調べました。
受精から30時間後。
右が働きを止めたもの。
尾が曲がってしまっています。
この部分が心臓。
左は強く鼓動していますが右の鼓動は弱くなっています。
どういう事かというとゼブラフィッシュの受精卵ではまず最初は母親が残したメッセンジャーRNAからタンパク質を作ります。
このタンパク質が細胞分裂を促すのです。
受精から2時間半後。
子どもの遺伝子が働く時期がやって来ます。
このあとは母親由来のタンパク質が邪魔になります。
そこで子どもが作り出すのがマイクロRNAの430番です。
こうして子ども本来のタンパク質だけを使う事で正常に発達します。
しかし430番を止めてしまうと母親由来の余計なタンパク質が作られ続けてしまいます。
そのため本来働くはずの子どものタンパク質が邪魔されてしまうと考えられています。
成長がうまく進まないのはこのため。
マイクロRNAは発達の主役が母親から子どもにバトンタッチされるのを制御していたのです。
へえ〜。
お母さん由来のメッセンジャーRNAをマイクロRNAがぴったりくっついて止める事で成長がちゃんとできるようになってるんですね。
更に面白い事には…え〜っ1種類のマイクロRNAだけでそんなたくさんの種類のメッセンジャーRNAを止める事ができるんですか?そうなんですよ。
へえ〜。
こちらがマイクロRNA430の塩基配列です。
そしてこちらがお母さん由来のメッセンジャーRNA。
たくさんある中の4つです。
ここにマイクロRNA430がこのようにくっついてタンパク質が作られないようにしているんです。
お〜。
奈央ちゃんこれ何か気付きませんか?いやところどころくっついてないですよね。
はいはいはい。
くっついてる部分とくっついてない部分がありますよね。
はい。
だから数百種類を相手にできると。
うわ〜!その仕組みなどについて専門家に伺いましょう。
国立がん研究センター研究所の落谷孝広さんです。
あんなに小さいマイクロRNAがいろんなタンパク質を作れなくしちゃうってすごいですね。
そうですね。
実はこの発見に一番驚いたのは私たち研究者かもしれません。
メッセンジャーRNAというのはDNAを確実にタンパク質にするためにその中間体だと思われていました。
従ってその中間体そのものには機能はないというふうに考えられていましたけれども実はマイクロRNAのような機能を持っているRNAが…ちなみにさっきのはマイクロRNA430でしたけどその430っていうのは種類の数という感じなんですか?そうですね。
うわっそんなにあるんですか?すご〜い!しかもこの一種類でいろんなタンパク質に作用するんですよね?
(落谷)そうですね。
一つのマイクロRNAが先ほど出たように何百あるいは時には千を超える遺伝子を制御するといわれています。
先ほど例にあったゼブラフィッシュのマイクロRNA430。
そういうものは少し特殊で相手を完全に抑える訳ですけども…でもマイクロRNAの働きがたくさんの相手に及ぶために…そんな複雑なんですね。
そうしますとその数ですね。
(落谷)そうなんですね。
いわゆるショウジョウバエのようなものは人のゲノムの半分ほどといわれていますけども…へえ〜!5倍という事は人間の方が機能がたくさんあるという事なんですか?そうですね。
やはりマイクロRNAの数が多ければそれだけ調節をするいわゆる複雑さが増してきます。
ですからやはりより高度ないろんな生理的な調節がマイクロRNAによって達成されてる。
ですから我々人間はいろんな別の生物に比べれば…そういうふうに言っても過言ではないかと思います。
このマイクロRNAっていうのは体のどこにあるんですか?一般的には細胞の中に存在しています。
でも細胞の外つまり我々の血液。
そういった中にも実は存在してるんですね。
へえ〜細胞の外にもあるんですね。
そうですね。
このマイクロRNAは我々のあらゆる生命活動の局面で使われている。
そういったものなんです。
へえ〜。
細胞の場合には言語を持ちませんので…面白い!マイクロRNAを使ってコミュニケーションしてるんですね。
具体的にどういったコミュニケーションをしてたりするんですか?実は母乳の中にもマイクロRNAがある事が分かっています。
つまり赤ちゃんを外敵から守る。
そういったマイクロRNAが母乳中に仕組まれていてそれによって赤ちゃんは実はうまく成長できていく。
そういった事まで分かってるんですね。
自分の体に何か影響があるっていうのは何となく分かったんですけどお母さんのマイクロRNAが生まれてくる赤ちゃんにまで影響を及ぼすってすごいですね。
更にマイクロRNAは私たちが気になる老化にも大きく関わっている事が分かってきました。
細胞の寿命や老化を専門にしてきた広島大学の田原栄俊さんです。
田原さんは老化にもマイクロRNAが関係しているのではないかと考え研究を進めました。
この研究で使ったのはヒトの線維芽細胞。
全身に存在する細長い細胞で細胞分裂の回数に限界がある事が分かっています。
分裂を1年くらい繰り返すと細胞が大きく広がった形になってしまいます。
老化したのです。
見た目にも分かりやすいため老化研究でよく使われています。
田原さんは若い細胞と老化した細胞で含まれるマイクロRNAに違いがないか調べてみました。
まず培養した線維芽細胞に薬品を入れて溶かします。
マイクロRNAは透明な部分に溶けています。
この透明な部分の液体を分析しました。
線維芽細胞に含まれるマイクロRNAはおよそ1,000種類。
若い細胞と老化した細胞でその量を比較しました。
その結果大きな違いが見つかったのがマイクロRNAの22番です。
調べた線維芽細胞は3種類。
若い細胞と老化した細胞では22番の量が2倍以上違っていたのです。
このマイクロRNA自体に何か機能はあるのか。
田原さんたちは若い線維芽細胞に注入してみました。
青く見えるのは細胞の核です。
3日たつと細胞はたるんだように広がり数も減っていました。
通常これほどの変化が起きるには100日ほどかかるといいます。
マイクロRNAのせいでたった3日で老化したのです。
へえ〜。
マイクロRNAによって細胞があっという間に老化してしまうの驚きでしたね。
何かこう浦島太郎の玉手箱を開けたみたいな感じでしたね。
確かに!逆に若返るためのマイクロRNAはないんですか?恐らくあると思います。
お〜!世界中の研究者が探してるとこだと思いますが残念ながらまだ今では分かっていません。
そうなんですね。
でもこの老化のプログラムも体にとっては重要なんですよね?そうですね。
実際に我々が生きていると…それってがん細胞って事ですか?まさにそのとおり。
実はマイクロRNAに起こる異常ががんと非常に強く結び付いています。
そうしたがんと関わりの深いマイクロRNAを見つける事でがんの治療に応用しようという研究が行われています。
国立がん研究センター研究所の土屋直人さん。
土屋さんたちの研究グループはがんの増殖を抑えるマイクロRNAを見つけました。
際限なく増殖する…増殖が制御できないのは多くの場合p53という遺伝子が壊れているからです。
細胞の異常な増殖を抑えるp53はがん抑制遺伝子と呼ばれがん研究では長く注目されてきました。
そこで土屋さんたちは…用意したのは…ここに抗がん剤を加えます。
すると増殖を抑えるp53が活性化します。
そして抗がん剤を加える前後のマイクロRNAの量を測ります。
調べたのはおよそ170種類のマイクロRNA。
その一部がこの表です。
増えたのは7種類。
その中でp53と関係が深いとして注目したのがこの34aです。
これが34aの塩基配列。
p53の活性化と共に増えたので逆にこれを入れればp53が活性化し異常な増殖が抑えられるかもしれません。
土屋さんたちは大腸がんの細胞に34aを加えて効果を見ました。
マイクロRNAを投与しないと大腸がんの細胞は急激に増殖します。
しかし入れた方はがんがほとんど増殖しませんでした。
マイクロRNAによってp53遺伝子が働き異常な増殖が抑えられたと考えられます。
生体内でも同じ事が起きるのかマウスの背中にヒトの大腸がん細胞を移植し34aの効果を見ました。
がん細胞を移植して14日目。
右側のマイクロRNAを投与しなかったがんは大きくなっています。
一方マイクロRNAを投与したがんはそれほど大きくなっていません。
生体内でもがんの増殖を抑える効果がある事が確かめられたのです。
土屋さんたちは論文として発表。
これがマイクロRNAががんの治療に使える可能性を示した世界で最初のものでした。
へえ〜。
マイクロRNAでがんの治療までできる可能性があるんですね。
ちょっとこれ驚きですよね。
でもマイクロRNAはメッセンジャーRNAの働きを止めるんですよね。
…って事は何かを止めるとp53遺伝子が働きだすという事ですか?そういうふうに考える事ができると思います。
つまり邪魔者を働かなくするという事ですか。
はい。
マイクロRNAって体の外から薬みたいな形で体内に入れるっていうのは大丈夫なんですか?そうですね。
マイクロRNAの場合には皆さんの我々の体の中にもともとあるものですね。
ですからその増えたり減ったりするものを元に戻してあげる。
そういった事はひょっとしたら我々の体にとって優しい治療になるのではないかというふうに考えられています。
しかしやはりこうしたマイクロRNAを標的に治療薬を開発するにはかなりの時間が要すると考えられます。
しかし先ほどお話に出た細胞の外に出るマイクロRNA。
つまり我々の血液で…番組の冒頭にちょっと出てきた血液一滴で診断できるっていうやつですか?そうですね。
実はがんになるとそのがんに特有のマイクロRNAがその患者さんの血液中に出てきます。
これを利用して新しい診断が今進もうとしてるんですね。
これは縦軸にある患者さんの血液中のマイクロRNAの量を示しています。
実は健康な方ではこのマイクロRNAはほとんど見つかりません。
ところががんになるととても増えるんですね。
そしてこのがんを例えば手術で取り去ったとします。
そうなるとこのように術後ある一定期間は必要ですけれども正常のレベルに戻るんですね。
残念ながらまた再発をするといった場合にはこの同じマイクロRNAがまたその患者さんの血液中に出てくると。
つまり血液中のマイクロRNAを見るだけでその患者さんの体の中でこのがんがどういった振る舞いをしているかそれが手に取るように分かる。
そういった事なんですね。
本当にすごく敏感に量が変わるんですね。
(落谷)そうですね。
現在でも血液中の腫瘍マーカーを調べてがんを調べたりしますけれどもそれとは違うんですね?はい。
腫瘍マーカーっていうのは優秀なものたくさんございます。
でも実際にそういった腫瘍マーカーというのは…そういったものなんですね。
ですから残念ながらがんが早期でゆっくり増えてまだ細胞があまり死なない。
そういった事もしたりあるいは…そういったような事もしているんですね。
ですからそういった…へえ〜。
がん細胞がマイクロRNAを使っておしゃべりしてくれてるおかげで早期診断ができるって訳なんですね。
そうですね。
まさに我々人類はそれを逆手に取って今度はがん細胞に仕返しをしようという事なんですね。
これ実用化っていうのはいつごろになりそうですか?そういったところをめどにしています。
でも既にもう我々の基礎研究から…こういった新しい診断が可能であるという事が分かっていますので…今ですと例えば大腸の内視鏡検査をやったり胃の内視鏡検査をやったりあるいはCTスキャンを撮ったりとか臓器ごとにがんを調べないといけないじゃないですか。
それが血液一滴でいいというのはすごいですよね。
落谷さんどうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに!2015/02/28(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「がんも!老化も!?生命を操る マイクロRNA」[字][再]

血液1滴で13種類のがんを早期診断できるかも。調べる物質は血中のマイクロRNA。複雑な生命現象の重要な調整役で、がん細胞の変化に敏感に対応しているという。

詳細情報
番組内容
生命の設計図・DNAのうち、タンパク質の情報は1.4%しかないことが分かってきた。残りは何をしているのか。注目されているのは、タンパク質の情報を運ぶメッセンジャーRNAよりずっと短いマイクロRNA。人間では2500種類も見つかっていて、1種類のマイクロRNAで100以上のメッセンジャーRNAの働きを制御しているという。発生や老化、がんにも大きくかかわり、がんの早期診断の実現が期待されている。
出演者
【ゲスト】国立がん研究センター研究所…落谷孝広,【司会】竹内薫,南沢奈央,【キャスター】江崎史恵,【語り】中山準之助

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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