報道特集【沖縄で何が▽直志の酒】 2015.02.28


少年3人の逮捕から一夜明けた今日も、遺体が見つかった現場では、朝から花を手向ける人の姿が絶えずあり、静かに手を合わせ冥福を祈っていた。
今月20日、川崎市の河川敷で中学1年の上村遼太君が首を何度も突き刺されるなどして殺害された事件。
昨日、殺人の疑いで逮捕された18歳の少年1人と17歳の少年2人は今朝、身柄を検察庁に送られた。
警察への取り調べに対し、少年3人はいずれも容疑を否認しているが、17歳の少年の1人は、逮捕前、任意の事情聴取に対し、こう話していたことが新たにわかった。
また、17歳の少年はいずれも、18歳の少年と上村君と4人で現場に向かったなどとも話していて、これが現場付近の防犯カメラに映っていた内容と一致。
逮捕の決め手の1つとなった。
知人によると、去年12月頃から十数人規模の少年グループとつきあいを始めたという上村君。
18歳の少年がグループのリーダー、17歳の少年2人がサブリーダーのような存在だったと言う。
今日、献花に訪れた友人は、上村君の最近の様子について…警察は、少年3人の自宅など複数の関係先を捜索し、殺害の動機や経緯について慎重に調べている。
なぜ13歳の少年の命を守れなかったのでしょうか。
川崎の中学1年生殺害事件で昨日、10代の3人が逮捕されました。
早速、捜査本部に置かれている川崎警察署から捜査の状況について伝えてもらいます。
新たな情報が入ってきました。
逮捕された3人の少年のうち17歳の少年2人が取り調べに対し、衣服を燃やしたなどと供述していることが捜査関係者への取材で新たにわかりました。
上村君が殺害された今月20日未明には、現場からおよそ700m離れた公園のトイレで上村君のものと見られる衣服や靴が燃やされているのが見つかっていて警察は、逮捕された少年3人が祥子隠滅を図った可能性があると見て裏づけを進めています。
今後の捜査の見通しはどうなんでしょうか?警察は今日、18歳の少年の自宅を捜索し、少年のものと見られる自転車やスマートフォンを押収した。
現場付近の防犯カメラには、事件の直前に上村君を含むと見られる4人の少年が自転車を押すなどした姿が映っていたということで、警察は押収した自転車などを詳しく調べている。
一方で少年3人は、いずれも容疑を否認している。
犯行には複数の刃物が使われたと見られていますがカッターナイフの刃以外の凶器が見つかっていないなど、犯行と少年らを結びつける物証が少ない状況で、警察は慎重に裏づけ捜査を進めています。
ロシアのモスクワ中心部でプーチン大統領に批判的な立場の野党の有力指導者が射殺されました。
事件の背景に政治的な理由があるとの見方も出ている。
殺害されたのはモスクワ市に近いヤロスラブリ市の市会議員、ボリス・ネムツォフ氏。
27日午後11時過ぎ、モスクワのクレムリン宮殿近く橋の上を歩いていた際、後ろから近づいてきた白い車から背中に銃弾4発を受け死亡した。
ネムツォフ氏は、90年代のエリツィン大統領の政権下で第一副首相を務め現在、野党国民自由党所属で、プーチン政権に批判的な立場だった。
弁護士によるとネムツォフ氏はここ数カ月間、ソーシャルネットワーク上で殺すとの脅迫を受けていたと言い、ロシア捜査委員会の報道官は、政治的な動機が殺害理由の1つとの見方を示した。
大統領府によると、プーチン大統領は殺害は暗殺と見られ、挑発的な性格を帯びていると述べたとのこと。
野党勢力は3月1日に予定していた大規模な反政府集会を追悼集会に変更し、開催すると発表した。
一方、アメリカのオバマ大統領は残酷な殺人を非難するとの声明を発表。
ネムツォフ氏について、ロシアにおいて腐敗と勇敢に戦ったと最大級の賛辞を送った上で、迅速、公平かつ透明性のある捜査を求めるとプーチン大統領をけん制した。
また2009年のロシア訪問時に極秘裏にネムツォフ氏と会談したことを明らかにした。
来日中のイギリスのウィリアム王子。
東日本大震災から4年になるのを前に、今日は安倍総理とともに福島県の児童施設を見学しました。
原発事故の影響を気にせず、子どもたちが十分に運動できるようつくられた児童施設を訪問したウィリアム王子。
まずは3歳や4歳の子どもたちが遊ぶボールプールを訪問した。
子どもたちは、誰が来たのかよくわからず、初めのうちは少し警戒していたが…王子は、子どもたちにこんにちは、ありがとうと日本語で話しかけ、すっかり仲よしに。
その後、王子は子どもたちとともにイギリスのオークを植樹し、この木はきっと大きくなるねと話しかけていた。
これに先立ち、ウィリアム王子は午前中、東京・渋谷区のNHK放送センターを訪れた。
時代劇のセットが設置されたスタジオでは、芸者姿の女性が三味線に合わせて踊る様子を見学。
陣羽織やかぶとを試着したり、刀を持って写真撮影に応じ、次はぜひ大河ドラマに出演したいですねなどとユーモアを交え話したとのこと。
滞在最終日となる明日は被災地の宮城県石巻市や女川町を視察する。
スカイマークは経営再建を加速させるため、株式の価値をゼロにする100%減資を行う方針を固めたことがJNNの取材で明らかになった。
スカイマークの株式は昨日、市場での最後の取引を14円で終えたが、関係者によると、スカイマークは株式の価値をなくす100%減資という手法をとる方針を固め、株主の責任を明確にするとともに、負債を圧縮することで経営再建を加速させる考え。
これにより、スカイマークの既存の株主は退き今後は最大で90億円のつなぎ融資を表明している投資ファンドのインテグラルが過半数を持つ筆頭株主になる予定。
スカイマークは現在、出資も含めた支援企業の選定を続けていて、5月末までに再生計画をまとめる方針。
過激派組織イスラム国のビデオに頻繁に登場する戦闘員、通称ジハーディ・ジョンの素顔だとする写真をイギリスのテレビ局が放送した。
後藤健二さんの殺害ビデオにも映っていたジハーディ・ジョンについて、欧米のメディアは、ロンドン育ちの26歳の男だと報じている。
イギリスのスカイ・ニュースが放送したのはこの男がロンドンのウエストミンスター大学に通っていた頃の写真だとのこと。
イスラム国のビデオの中でジハーディ・ジョンはアメリカへの敵意をむき出しにしているが、男の帽子は、アメリカ・メジャーリーグピッツバーグ・パイレーツのもの。
大学の内部文書によると、男の専攻は情報システムとビジネスマネジメントで、成績は平均的だったとのことだが、当時、この大学では過激派による勧誘活動が盛んだったとの情報もあり、男が過激思想にのめり込んでいったいきさつが注目される。
テニスの錦織選手、またも快挙ですメキシコオープン準決勝。
世界ランク5位の錦織は15位のアンダーソンと対戦。
フルセットの競り合いを制し、決勝進出を決めた。
これで錦織は来月2日に発表される世界ランクで自己最高の4位以上が確定。
現行制度では1995年のクルム伊達公子が記録した日本勢最高順位に並ぶ。
また、錦織が今大会優勝すればツアー通算9勝目、日本勢単独最多となる。
大手ゲームメーカー、タイトーの創業者の長男と長女がおととし、母親から相続したおよそ二百数十億円の遺産に関して海外資産の分の相続税およそ100億円を滞納していることが関係者への取材でわかった。
2013年度の税制改正までは海外に住み、日本国籍がない人は海外の財産は課税対象外だったため、2つの条件に該当する2人は周知期間が短いとして、東京国税局に相続税の減額を求めているとのこと。
「特集」です。
沖縄県の普天間基地移設に伴い、名護市辺野古に新基地をつくる動きが政府の言い方を借りますと粛々と進められていますが、実際に現場で起きていることは、その粛々とという表現とは全く異なっているようです。
沖縄で今、起きていることを現地で取材しました。
それは、突然のことだった。
沖縄県名護市辺野古のキャンプシュワブゲート前。
アメリカ軍普天間基地の返還に伴う新基地建設への抗議行動が連日続いていた。
その最中の今週日曜朝、抗議行動を指揮する山城博治さんら2人が基地内に侵入したとしてアメリカ軍に拘束された。
そして基地内でおよそ4時間拘束された後、沖縄県警に引き渡され、逮捕・送検。
翌日の夜、釈放された。
辺野古での抗議行動の中で、初めてのアメリカ軍による拘束だった。
地元紙「沖縄タイムス」の浦崎直己記者は、拘束の瞬間を間近で撮影していた。
ゲート前の基地と国道との境を示す黄色い線。
そこから1〜2歩入ったところで山城さんは、抗議行動をする人々に線を越えないよう下がってと呼びかけていた。
その山城さんをつかもうとする手が写っている。
日頃、抗議行動の警備に当たっている沖縄県警などではなくアメリカ軍の警備員。
一気に警備員たくさん来て、中に県警も入っていて…。
警備というのは米軍の?後ろから倒して引きずっていってるんですね。
やった後は引っ張りだされたという状況。
現場にいた別の人が撮影していた映像でも、その様子はうかがえる。
抗議行動を行う人々に基地に背を向ける形で下がってと呼びかける山城さん。
その後ろから突然、駆けよるアメリカ軍の警備員。
ここずっと長い間取材されてて、ものすごく大混乱をきたしていたとか、ものすごく熱くなってたとか、そういう状況ではあったんですか?そういう状況があったときもあったんですが、昨日は比較的落ち着いていて。
そのときに普段、見ないセキュリティですね、米軍側の警備員が来たので、何事だというふうに…。
そのときの状況を山城さんはこう話す。
いったん下がろうと言ってるのに後ろから抱きついて、羽交い締めにされて、連れていかれた。
後ろから倒されて、ずっと引きずっていかれましたですね?いったん、座った感じがします。
両足引っ張られて、担がれて、そのまま道路またいでフェンスまで引っ張られた。
ケガなどはなかったですか?頭だけ気をつけました、ガリガリ引っ張られるんで、腰は少し石ころで引っ張られましたけど、沖縄県名護市辺野古の新基地建設への抗議行動を指揮する山城博治さん。
今週日曜、アメリカ軍によって拘束された。
「沖縄タイムス」の写真には、山城さんを撮影する4台のカメラが写っている。
1台は、アメリカ側のカメラ。
3台は沖縄県警のカメラ。
そのうち1台は、高い位置から撮影している。
彼らが一部始終を記録しようとしていたことがわかる。
山城さんはゲート内でアメリカ軍に後ろ手に手錠をかけられ、座らされた。
そして、沖縄県警に引き渡されるまで基地内でおよそ4時間拘束された。
この日は、辺野古移設に反対する集会が開かれる日だった。
体の血が逆流しそうという偉い方のお話がありましたけれども、本当にそういう思いで。
これが沖縄、植民地ですよ、全くもうホントに。
アメリカ軍による異例の拘束。
その法的根拠になっているのが日米地位協定に基づく刑事特別法。
日本の法律では補えない駐留米軍の保護などを目的に1952年に制定された。
第2条では、正当な理由がなく、アメリカ軍の施設や区域に入ることを禁じている。
今回の拘束は、これに違反した疑いによるもの。
刑事特別法に詳しい島伸一弁護士は境界ラインを越えた以上、法的には拘束できると話すが、現場の状況を見る限り、拘束の必要性に疑問を感じると言う。
拘束は、アメリカ軍の意思表示ではないかと島弁護士は指摘する。
これからは今までどおりいかないぞということを示した。
アメリカ軍の態度が強硬になった背景には、何があるのか。
それを知る上でのキーパーソンの1人が沖縄に駐留する海兵隊、外交政策部次長のロバート・エルドリッジ氏。
キャンプ・シュワブの内側から抗議行動を撮影するエルドリッジ氏。
先月にはインターネット番組に出演し、基地への抗議の声について、日本国民を代表しているとは思っていない、ヘイトスピーチと表現していた。
日本の英字新聞「ジャパンタイムズ」はエルドリッジ氏が出演した番組を極右番組とした上で、その発言を報じている。
今回、エルドリッジ氏への取材を申し込んだが急な依頼のため対応できないと断られた。
今回、山城さんらを拘束したのはアメリカ軍側の警備員だった。
実は、彼らは防衛省が雇用している日本人。
そして、ほとんどの人が地元・沖縄の出身だと言う。
拘束という事態を受けて、基地従業員でつくる労働組合、全駐労が沖縄防衛局に強く抗議した。
かつてアメリカ軍の警備員をしていた男性が取材に応じた。
40年間沖縄の空軍基地で働いていたと言う。
警備員の方が抗議行動をやってたリーダーの人を拘束しましたですよね。
キャンプ・シュワブの副司令官は拘束の2日後、視察に訪れた国会議員に対し、上の指示で拘束したと説明している。
海兵隊員として沖縄に駐留した経験を持つ政治学者、ダグラス・ラミス氏。
15年前から、沖縄で暮らしているすごいパフォーマンスですよね。
中に引っ張って、足から引っ張ってアメリカ軍が日本人警備員を使って同じ日本人を拘束させたことについて、ラミス氏はこう語る。
それはイギリスも使ったしね。
辺野古移設反対の民意を託され、去年12月に就任した沖縄県の翁長雄志知事。
これまで6回上京したが、閣僚で面談できたのは山口俊一沖縄・北方大臣だけ。
安倍総理やほかの閣僚は応じていない。
知事は国に対し、辺野古移設反対の意向を伝えたり、工事の一時中止を求めたりしているが、国は工事を進めている。
クレーン船が四角いコンクリートブロックを次々と大浦湾へと沈めていっています。
1月末には立入制限水域を示すブイやフロートを固定するため、大型のコンクリートブロックが海に投下された。
大型ブロックの設置で海への影響はないのか。
ダイビングチームが今月、調査を行ったところ、押しつぶされたり傷ついたサンゴが確認された。
このブロックは20t。
サンゴに斜めに食い込んでいる。
サンゴを押し潰しているブロックも確認された。
先週、撮影されたサンゴ。
5日後には砕け、割れてしまっていた。
そもそも、県が岩礁の破砕を許可したのはこの区域。
しかし国はその区域の外にコンクリートブロックを37カ所投下した。
あの砕けたサンゴは、この辺りで確認された。
県はおととい国が海中に投入した大型ブロックについてサンゴ礁などを破壊している疑いがあるとして現地調査を始めた。
調査の途中、県に対し、沖縄防衛局の警戒船が制限水域内に入っているとして、外に出るよう呼びかける場面もあった。
県は、調査の結果次第で、国にブロックの撤去を求めるほか、埋め立てに向けた岩礁の破砕許可の取り消しも求めている。
これに対し、政府は…拘束から3日後の今週水曜。
キャンプシュワブの別のゲートの前で、アメリカ軍の関係者が黄色いラインを引いていた。
辺野古周辺では陸だけではなくて、海上の方でも海上保安庁が厳しい警備を敷いていて、抗議行動の排除などに乗り出しているわけですけれどもこうした状況を地元の沖縄の新聞が、過剰警備だと報じたわけですね。
これに対して海上保安庁はどう対応したかというと、在京のマスメディアだけに対して沖縄市の報道は誤報であると説明しているんですね。
もし誤報であるとすれば、当然、これを伝えた報道機関に言うべきであってどうして沖縄とそうじゃない地域を分けるような対応をするのか、非常に違和感を覚えるんですよね。
そして辺野古移設の反対派の翁長知事が誕生したりと民意は示されていると思うんですけれども、その民意が政府に伝わらないどころか、むしろ強硬な姿勢になっているようにも感じるんですが、いかがでしょうか?ちょっと聞く耳を持たないという政府の対応はね、さっき映っていたキャンプシュワブの前の黄色い線というのは、これまでは我々報道陣も含めて、関係者が自由に内側に入ったり、割とやっていたんですよ。
沖縄県警は混乱を来さないようにと、割と柔軟な対応をとってたんですけれども今回の出来事で、決定的に何か変わったという印象を持ちましたね。
それよりも何よりも、黄色い線の内側か、外側かという以前に歴史を振り返ってみると、もともと沖縄のアメリカ軍の土地というのは、アメリカ軍が銃剣とブルドーザーという形で強制的に奪った土地なんですね。
それを猛烈な抵抗運動が起きて、賃料を払って借り受けたという形になってるんです、今も。
そのことを全くどこかで忘れ去られているんじゃないかと、根本的な疑問を持ちますけれどもね。
それとアメリカ軍当局というのは、今回のことをきちんと説明する機会を持つべきだと思いますけれどもこれは自戒を込めて言うんですが沖縄で起きていることを東京のメディアというのはなかなかきちんと伝えてこなかったということが根本にあるように私は思いますね。
続いての「特集」は震災4年を迎える岩手県陸前高田市から80歳の長老、佐藤直志さんの挑戦です。
津波をかぶった田んぼを仲間とよみがえらせた直志さん。
目指したのは土地の人に愛された地酒をもう一度つくることでした。
カメラが見つめた4年間。
直志さんの生きざまから見えるものとは。
去年5月、岩手県陸前高田市の水田に賑やかな声が響いた。
地元の小学校の子どもたちが田植えの体験学習にやってきた。
先生役は佐藤直志さん80歳。
子どもたちからも、直志さんと下の名前で親しまれている地域の長老。
皆さんが食べている白米になるまで呼び名が違います。
最初に収穫したのはお米のもと、お米が殻をかぶっている。
このときの呼び名は籾。
のどかな風景が広がる。
だが、この田んぼは…2011年3月11日、押し寄せた巨大な津波飲み込まれた。
陸前高田市を流れる気仙川沿いにあった田んぼ。
瓦礫を取り除き、土を入れ替え、この田んぼをよみがえらせたのが、直志さんと同じ集落の仲間たちだった。
あの津波から、間もなく4年。
陸前高田市の復興工事は、ようやく本格化している。
山を切り崩して高台をつくり、低い土地を高さ10m以上にまでかさ上げする。
土地の造成は、4年後の2019年3月までに完了するとされている。
中心的な2つの地区だけで総事業費1200億円。
被災地最大のプロジェクトとなっている。
その一方で、人口の流出も進んだ。
津波による犠牲を除いても、震災前に比べ、人口はおよそ2000人減少。
造成地が完成しても、本当に人は戻ってくるのか。
危惧する声も上がり始めている。
その片隅で直志さんは自らの力で生きることにこだわり続けてきた。
求めているのは、ただ、震災前のこの土地の暮らしを取り戻すこと。
ありがとうございました。
皆さんが一生懸命、楽しく植えてくれたので、この秋には大きな大きな穂がなると思います。
その姿は今、何を問いかけるのか。
直志さんが暮らしていた今泉と呼ばれる集落は600世帯近くのほぼすべてが流され、犠牲者は200人あまりに達した。
震災直後の直志さんの家は、2階まで津波をかぶったもののかろうじて形を残していた。
だが、直志さんの長男は足の不自由な女性を助けようとして津波にのまれた。
直志さんは電気も途絶えたこの家に残り、決して避難所に行こうとはしなかった。
津波から4カ月後、集落の中に9世帯分の仮設住宅ができたが、そこにも入ろうとしなかった。
その仮設住宅は、避難所に行かず集落に残った仲間のためにつくってほしいと直志さんが行政にかけ合ってできたものだった。
土地も直志さんが探して地主とも交渉した。
だが、その直志さん自身は頑として壊れかけの家に住み続けた。
瓦礫が残る土地に直志さんがまいたのは、荒れた土地でも育つソバの種。
井戸水で洗っていたのは…直志さんは被災を免れた畑を借りて野菜をつくった。
ボランティアの助けは受けたが、行政からの救援物資は受け取らなかった。
自分たちの食べるものは自分たちで生産しようという。
そういう気があるからここにいるんだ。
これが商売、これが本職だよ。
80になるとは見えないべ?直志さんは16歳のときから山に入り、農業と林業で生計を立ててきた。
国の政策には振り回されてばかりだったと言う。
戦後の復興の時代。
資材不足を補うため、国は成長の速いスギやヒノキを植えるよう奨励した。
結局、買い手がつかなくなった木を直志さんはその後も大切に育てた。
だがその木も、津波の塩分で次々と枯れ始めた。
この枯れた木を使って自分の家を建てる、直志さんは、そう宣言した。
そして、津波から1年半が過ぎた冬壊れかけの家があった場所に直志さんの新たな我が家ができていた。
柱も梁も、直志さんが切った木が使われている。
赤みがかった独特の色合いは地元の気仙杉の特徴。
俺はもう被災者ではない。
直志さんはそう言い切った。
直志さんが仮設に入らなかったのは、自立っていうか、自ら立つというところを奪われるような気がしたからですか?だな、うん。
あそこに行ったら、なかなかそれに慣れてしまって、ただ自分は、自分だけはなんぼ建てても、仮設には行く気はないと。
仮設に行っては、この家を1年半で完成させるなんていうのはな。
そして春を迎えた2013年4月。
直志さんの新たな挑戦が始まった。
今、ここに来てみればわかる。
今、発芽始まってきたの。
これ、芽。
発芽したばかりの米。
食べるために育てるのではないと言う。
多賀多、それは震災以前、今から10年前に生まれた酒。
震災前の陸前高田は、7万本の松原に象徴される美しい自然が街に生きる人たちの自慢だった。
だがその一方で、高齢化や人口の減少は既に深刻な状態だった。
そんな街を元気にしたいという願いを込めて地酒多賀多は生まれた。
地元の酒蔵、酔仙酒造が直志さんたちの米だけを使ってつくる。
地域の人たちに田植えや酒造りを体験してもらい、みんなで飲んで、土地の豊かさを楽しむ。
そんな我が町の酒だった。
あの日、酔仙酒造も津波に流され、従業員7人が犠牲となった。
旗印だというふうに考えようと思っております。
酔仙酒造は、直志さんの家と同じ1年半で隣の大船渡市に工場を再建された。
ならば、力を合わせてあの多賀多をつくろう、直志さんが動き出した。
自分たちの顔写真の入ったラベルをつくってな、うん。
だが、田んぼの復活は簡単ではなかった。
土を掘り起こすたびに大きな石が出た。
何度も手作業で取り除いた。
用水路の確保や津波で流された農機具の購入。
行政などに掛け合い、復旧に向けた補助金がようやく認められた。
そして田んぼはよみがえった。
皆さんで田植えしていただいた田んぼのお米を酔仙さんにお願いして、酒造会社にお願いして、今年からまた多賀多というお酒をぜひとも震災前のように復興させたと思います。
ボランティアに来てくれた人たちと植えていく。
震災前の田んぼ。
当時と同じように、稲はまっすぐ伸びた。
8月、直志さんの田んぼの脇に、プレハブの店ができた。
小さな理容店。
直志さんが暮らす今泉の集落にできた最初の店。
開いたのは、三嶋和子さん。
津波で夫と息子を失ったが、震災前、住んでいた場所のそばにどうしても戻ってきたかったと言う。
今泉だもん、ここもね、とっても気持ちが落ち着くね。
店の看板の文字は、すべて直志さんが書いた。
明るく笑顔がとても直志さんできないよと言ったの。
のんびりとはいいんだけども。
だけど、そんなことねえんだって。
明るくのんびり、笑顔にしなさいってことだって。
集落を望む高台で直志さんが語った言葉がある。
どこの誰それさんの家はここ、誰それさんの家はここって80年近くも住んでると、1軒1軒、全部頭にある。
1人増え、2人増え、この地に寄ってきてさ、元の町のようにな、やってもらいたいというのが夢だ。
9月、稲穂が実った。
農薬を減らし、焼酎の粕を肥料として使うなどこだわって育て上げた。
これは刈り取って、すぐのお米。
これがお酒になるんだな。
収穫された米は直接、酔仙酒造が買い取る。
直志さんたち農家は、米価に関係なく安定的な収入を得ることができる。
年が明けた2月。
仕込みの最終段階を迎えると、震災前と同じように地域の人たちを集め酒造りの体験会が開かれた。
麹や蒸した米をタンクに流し込み、3mを超えるかい棒でかき回す。
多賀多は酒米ではない、ひとめぼれだけで造る。
粘りけのある食用の米でつくるのは、一定の技術が必要だと言う。
それでも、あえてひとめぼれを使うのは、地元の米でつくりたいというこだわり。
自分たちのつくったお米がな、このように皆さんに喜ばれて、お酒になっていくんだから。
何だか娘を送り出すようで、な。
早く飲んでみたいよな。
だがそんな中、復興計画の思わぬ余波が直志さんたちの田んぼに降りかかった。
田んぼに国道を通すという計画が持ち上がった。
理由について、行政側は復興計画の都合だと説明。
田んぼの所有者に売却を打診した。
公共事業というのはすべてそうやって事前の100%の皆さんのご理解をいただいてという…。
あそこで農業をしている人たちがいるということですよ。
その人たちにも一切説明なしに。
いろんな要素を勘案しなければならないわけですが。
日頃、ほとんど感情を高ぶらせることのない直志さんだがこのときは違った。
結局、国道はギリギリ田んぼを残すルートに変更することで折り合った。
仕込んでから20日。
いよいよ酒を搾る。
多賀多だ。
自分が作ったお米がこのように生まれ変わる。
だから内緒で飲ませろや。
ラベルには震災前と同じように、直志さんたちの姿があった。
満開の桜の下、太鼓の音が響き渡る復活した多賀多を囲んで花見が開かれた。
震災の年にできた多賀多は、みんなで飲む前に、流された。
こんなに効きのいいお酒だかな。
家、そして酒。
大切なものを1つずつ、直志さんは仲間たちと自らの手で取り戻してきた。
あの津波から間もなく4年。
今、新たな問題が起きている。
家を失った人たちが仮設住宅を出て暮らすための災害公営住宅が次々と完成し、入居や募集が始まっている。
仮設住宅に比べ、見違えるように広いスペース。
壁の薄さ、音や振動、冬の寒さを心配することもなくなる。
ところが、災害公営住宅の希望者が想定を大きく下回る事態となっている。
陸前高田市で入居・募集を開始した5つの公営住宅合わせて415戸のうち30%以上が希望者なしの状態。
特に2つの公営住宅では、半分以上が埋まっていない。
陸前高田市だけでいまだ4000人あまりが仮設住宅で暮らしているにもかかわらず、一体なぜなのか。
所得によって異なるが、最も広い3DKタイプの家賃は最大月7万円。
低所得者には市独自の軽減措置もあるるだが、この金額を聞いて、仮設を出ることをためらう人が少なくないと言う。
災害公営住宅ができても仮設にとどまらざるを得ない人たち。
その現実は、被災者が生活を再建する難しさを改めて浮かび上がらせている。
今、直志さんの家の前に新たな家ができ上がろうとしている。
建てるのは、吉田光昭さん。
陸前高田市が保有する山林の管理をしてきた直志さんの山の仲間。
津波で、妻と母親を亡くしている。
この場所に家を建てた理由は…使われているのは、直志さんが切ったヒノキやスギ。
ヒノキのいいとこ。
節が出ても、節の光沢がいいの。
節の光沢が模様にも見えるんだ。
吉田さんの家は、集落でまだ4軒目将来、この町にどれだけの人が戻ってくるかはわからない。
それでも直志さんは今年は倍の量の米をつくると意気込んでいる。
こちらは、今日行われた陸前高田の特別純米酒、多賀多の搾り体験会の様子です。
地域の皆さん20人ほどの皆さんが参加しまして、今年も去年と同じ5000本が春と秋の2回にわたって出荷されるということなんです。
こちらにも現物がありますが、改めましてスタジオには、取材に当たりましたTBS社会部、桜井記者です。
直志さん、本当にパワフルな方ですが、中でもとりわけ、多賀多の復活には強い思い入れがありそうですがこの思いの原点は何なんでしょうね?直志さんは林業だけではなくて、農業でも国の減反政策ですとか、米価というものに振り回されてきたんですね。
ただ、そういったものに身を任せているだけでは地域が豊かになれないということで、10年前に多賀多というお酒をつくったわけなんです。
この多賀多というお酒は地域にとって、自立のシンボルだったわけで、だからこそ直志さんたちはこの復活にこだわったんだと思います。
間もなく震災から4年ということですけれども直志さんの集落の人たちの現状というのはどういうものですか?まだ多くの人が各地の仮設住宅にバラバラに暮らしているという状態で、現地で取材をしていますと、先が見えないという声もよく聞きます。
仮設暮らしの長期化は自立する力というものを奪いかねない深刻な問題だと思いますけれども、そんな中にあって、土地に根ざした豊かな暮らしにこだわる直志さんの姿勢というのは何か大きなヒントを与えてくれているのかもしれないと、取材を通じて感じました。
長老としての直志さんの人間性って相変わらずチャーミングだなと思いましたけれども地域の人々のプライドというか、教示みたいなものがありますよね。
直志さんのお仲間の菅野剛さんという方が言ってたんですが、あの地区は経済的には貧しくても、心と食べ物はぜいたくだったという、そういう思い、地域の自立の力というんですかね、そういうものを支えていると感じました。
この後はスポーツ、林さんです。
テニスの錦織選手、メキシコオープン準決勝を制し、ランキングは自己最高の4位以上に浮上。
錦織圭、勝てば世界ランキング4位以上が確定するメキシコオープン準決勝。
優勝したメンフィスオープンでもストレート勝ちしたアンダーソンに対し、得意のストローク戦でポイントを重ねる。
1回戦からすべてストレートで勝ち上がってきた勢いそのままに、第1セットを奪うところが続く第2セット。
ファーストサーブの成功率が第1セットの73%から29%に急落。
甘くなったセカンドサーブからラリーの主導権を握られ今大会初めてセットを落としてしまう。
それでも錦織は勝率8割を超えるファイナルセットでギアを一気に上げる。
2m3cmの頭上を越えるロブショット。
2時間を超えるフルセットの熱戦を制し、決勝に進出した錦織。
月曜日に発表される世界ランキングで自己最高となる4位以上が確定した。
シートバッティングに登板した広島の黒田博樹。
メジャー仕込みの威力ある球で、なんとバットを3本もへし折る。
そして昨日、この人のバットを折りたいと話していた新井との対戦では…この日、唯一のホームランを打たれる。
思わず苦笑いの黒田は新井の、このポーズに…10日後に侍ジャパンの強化試合を控える藤浪晋太郎。
最速152kmのストレートで押す力のピッチングを見せる。
右手の指先から出血するアクシデントもあったが、5回を76球、5つの三振を奪う好投を見せた。
こちらは侍ジャパン対決。
日本ハム・中田翔対広島の大瀬良。
これで中田は9試合4ホーマー。
侍ジャパンの4番が絶好調。
続いてサッカー。
Jリーグ開幕を告げるシーズン最初の公式戦、富士ゼロックススーパーカップ。
3冠王者のガンバとリーグ戦2位のレッズとの一戦。
前半を0−0で迎えた後半23分、コーナーキックから、最後は宇佐美若きエースの一蹴りでガンバが先制する。
リーグ戦の雪辱を果たしたいレッズは新加入のズラタンがゴールを狙うがネットを揺らすことはできない。
後半アディショナルタイム。
ガンバのパトリックが追加点。
8年ぶり2度目の優勝を飾った。
そして来週、ついにJリーグファーストステージが開幕する。
ラグビー日本一を決める日本選手権決勝。
初優勝を狙う青のジャージー・ヤマハは前半7分、日本代表候補、サウのトライで先制する。
前半をリードして折り返したヤマハは後半、鉄壁のディフェンスで得点を許さない。
サントリーに一本もトライを許さなかったヤマハ。
創部32年目で初の日本一に輝いた。
川崎のニュースでもやりましたけれども、とっても重い事件ですけれども小林さんは取材現場に行ってたんですね。
多くの方が花を手向けられていましたけれども、感じたのは、やはり子どもたちの狭いコミュニティーで何か異変があっても当事者も周りもすごく言いにくいと思うんです。
でもこれは、勇気を出して声を上げてほしいですし、大人としても大丈夫と声をかける勇気を持たなければいけないなと強く感じましたね。
あまりにも凄惨な事件だから、どこかよその世界のことだと思いたい部分もあるんですけれども、果たしてそうなのか。
弱いものいじめとか、見て見ぬふりというのは、決して違う世界のことじゃないし、大人も我が事として考えないと子どもたちのSOSは聞こえないんじゃないかと思いますけれどもね。
2015/02/28(土) 17:30〜18:50
MBS毎日放送
報道特集[字]【沖縄で何が▽直志の酒】

辺野古への基地移設でゆれる沖縄。異例の住民逮捕はなぜ起きた▽大震災から4年。陸前高田の長老・直志さんが目指す復興とは。

詳細情報
番組内容
【異例の逮捕 沖縄で何が?】 
辺野古への基地移設反対を唱える翁長知事誕生から3ヶ月余り。いま沖縄で何が起きているのか?住民の抗議行動に対し、米軍は異例の逮捕にまで及んだ。緊迫の現場をレポート。

【直志の田んぼが生んだ酒】
東日本大震災発生からまもなく4年。陸前高田の長老・佐藤直志さんを通して、復興とは何かを考える。地元の米を原料に地元の酒を復活させる。そこに込めた思いとは?
出演者
【キャスター】
金平茂紀(TBSテレビ報道局)
日下部正樹(TBSテレビ報道局)
小林悠(TBSテレビアナウンサー)
林みなほ(TBSテレビアナウンサー)
制作
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ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
福祉 – 文字(字幕)

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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