人のことばを認識するロボットや公道での実験が進む車の自動運転。
今、コンピューターが人間のように判断する人工知能の技術が目覚ましい進歩を遂げています。
最先端を行くアメリカではこれまで人間にしかできないと思われていた知的労働まで担い始めています。
スポーツの試合展開に応じて瞬時に作られていく解説。
記者ではなく人工知能が作成したものです。
今後、数十年の間におよそ65%の職業が人工知能に置き換わるという研究結果も出ています。
私たちの社会は人工知能の進化とどう向き合えばいいのでしょうか。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
人工知能と聞いて自動で部屋を掃除してくれるロボット掃除機やプロ棋士を負かす将棋ソフトなどを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。
今、人工知能の技術開発に向けられる投資はかつてないほど活発です。
人工知能から生み出される新しいビジネスの芽。
それが、さらに投資を呼び込み技術革新につながるという好循環を生んでいます。
コンピューターが音声や画像を的確に認識できるようになったり膨大なデータから必要な情報を瞬時に取り出すことができるようになり人工知能は、これまで人間にしかできないと思われていた領域にまで進出しています。
ことし1月に開かれた世界経済フォーラムダボス会議でも人工知能が社会にもたらす影響の大きさに注目が集まり負の側面としては、多くの仕事が失われるのではないかという懸念の声が聞かれました。
イギリスのオックスフォード大学の研究では今後10年、そして20年でご覧のように現在ある仕事の65%の職種が人工知能に取って代わられる可能性が高いという予想が出ています。
より速く、より効率的に考えられるようになり生産性を向上させると見られている人工知能。
働くことの意味や社会の在り方までも変える可能性を秘めています。
最前線で何が起きているのかアメリカで取材しました。
人工知能を使ったシステムを開発しているベンチャー企業です。
膨大なデータをもとにコンピューターが自動で文章を作成する仕組みを開発しました。
バスケットボールの試合の映像です。
選手がシュートを放とうとした瞬間。
プレーの解説情報が瞬時に作られます。
この選手は…データをもとに選手の調子を表現しています。
人工知能はどのようにスランプだと判断したのでしょうか。
人工知能には、人間があらかじめ過去の解説記事と表現を選ぶための前提条件を与えています。
人工知能は、過去の記事がシュートの成功率何%のときにスランプと表現しているかを調べ具体的な判断基準を作ります。
あるプレーをきっかけに選手のデータと判断基準をもとに最適な表現を選ぶのです。
この技術を応用したシステムは100社以上で導入され年間10億を超える記事を生み出しています。
去年、この技術を導入した世界有数の通信社です。
人工知能を活用したのは企業の決算を伝える記事。
市場の予測を超える売上高を記録した、など人間が書いたような原稿に仕上がっています。
こうした決算記事の作成は膨大なデータを調べなくてはならないため記者にとって大きな負担となっていました。
この技術を導入した結果決算記事の出稿本数は10倍に増加。
さらに記者は、空いた時間をより高度な仕事に充てられるようになりました。
人工知能の普及は記者の雇用を大きく変えると見られています。
専門家は、今後、30年の間に記者の仕事の多くが人工知能に置き換わり働き方が二極化していくと見ています。
急速に進化する人工知能の技術。
しかし、まだ乗り越えなければならない壁もあります。
アメリカの大学入試や卒業認定で使われている小論文を人工知能が自動で採点するシステムです。
人間と同じレベルで採点できるとして全米で1500以上の教育機関が活用しています。
人工知能はどのように採点をしているのか。
人工知能は、文章の長さや語彙の数など人が考えた採点の条件と過去の論文データを照らし合わせ具体的な判断基準を作っています。
こうした複数の基準を用いることで論理的な構成などを正確に判断できるとされています。
しかし、このシステムには限界があると指摘する人もいます。
言語学者のレス・パールマン博士です。
人工知能は、文章の内容まで理解して採点しているわけではないといいます。
こちらは、ある大学院の入試で使われる小論文の模擬試験。
博士は、機械が評価する条件を満たしただけの特殊な文章を作成しました。
これをソフトの解答欄に入力。
送信ボタンを押しました。
すると、数秒後。
採点結果が送られてきました。
文章の価値を正しく評価されているのか。
現場では、不安が広がっています。
まだ発展途上の人工知能。
世界的な権威であるスチュアート・ラッセル教授は最近開発された新技術ディープ・ラーニングが進化の鍵を握っているといいます。
ディープ・ラーニングとは人工知能が独自に判断基準を見つけ出す技術です。
例えば、自動採点システムではあらかじめ人間が採点の条件を与えなくても大量の論文を読み込むことでみずから判断基準を見つけることができるようになるといいます。
今夜は、東京大学大学院准教授で、人工知能学会の倫理委員長を務めていらっしゃいます、松尾豊さんをお迎えしています。
今の例で、小論文の採点などについては、人工知能の判断の限界もあるようですけれども、ただ一方で、人間しかできないと思われていた職種に、今の記事の例もそうなんですけれども、人工知能がどんどん記事を書くまでになっている。
どうしてそんなことができるんですか?
やはりですね、一つ大きいのは、コンピューターが進歩していること、この計算スピードが非常に上がっていること。
それと同時に、データが増えていること、この2つだと思います。
例えば、先ほどのバスケットボールの記事を書くという例ですけれども、シュートを打とうとした瞬間に、この人についての記事を書こうと、コンピューターは判断するわけですね。
じゃあ、何を書こうと考えたときに、この人について、特徴的なことは何か、特筆すべきところは何かというところを、過去のデータから探し出すわけです。
そうすると、シュートの率がかなり低いぞということを見つけて、それを記事にするという仕組みで、自動的に記事を書いていくということが実現されています。
そして、冒頭でご紹介したように、オックスフォード大学の研究では、10年後、20年後、65%の職種が失われるのではないかという予想も出ているんですけれども、どんな仕事がなくなる傾向が強いんですか?
いくつかあると思うんですけども、例えば電話でのセールス、それからスポーツの審判、いろんな仕事、影響あると思いますが、例えば電話でのセールスっていうのは、やることが比較的決まっている、相手の反応に合わせて言うべきことというのは決まっているようなもの、それからスポーツの審判というのは、正確性が要求される。
例えばデータの入力作業なんかも、そうだと思います。
そういったものが人工知能が利用されやすいといえると思います。
では、なくならない傾向が強いものってどういうものが?
私自身は、職業がなくなる、なくならないというのは、少し違ってるんじゃないかと思ってまして、例えば同じ仕事でも、昔からあるんだけども、やることが変わっているっていうような仕事って、多いと思うんですよね。
例えば教師。
教師という仕事は、これからデータがたまってくると、どういう生徒に、どういう教え方をするといいのかっていう情報が、どんどん増えてきますから、コンピューターがより教えるのがうまくなる。
こういう人には、ここでつまずきやすいので、こういう教材を教えるといいんじゃないか。
ただし、生徒をやる気にしたり、それから生徒の夢はなんですかと問いかけて、そこに至るまでの道を一緒に考えてあげるですとかね、そういった役割というのは、やっぱり、人間がやるしかないですし、そういった比率っていうのがどんどん増えていくというふうに思います。
そうすると、同じ職種でも、仕事の質が変わる可能性があるということですね?
そうですね。
質がやっぱり変わっていくと思いますし、よりクリエイティビティーの高いもの、それから判断が必要とされるもの、こういったものに変わっていくと思います。
人工知能の研究というのは、ずいぶん前、1960年代ぐらいからずっと始まってきたんですけども、今、急に投資額が増え、そしてビジネスチャンスの芽が生まれやすくなっていると皆さん、感じているのは、なぜなんですか?
それはですね、例えば監視カメラっていうのがありますね。
これは世の中、いろんな所に設置されてるわけですけども、監視カメラで映っている映像っていうのを、最後に見てるのは、やっぱり人間なんですね。
ここが一番のネックになっているわけです。
ところが、ここの部分まで人工知能ができるようになるとですね、実は今までは100%コンピューターができる仕事しかやらすことができなかったのが、もっと0%から100%の間のグレーなところも、コンピューターにやってもらうことができるようになってくるということだと思います。
つまり、どんな人が怪しいのか、今までだと、どういう人が怪しいのかっていう条件を、ずっとインプットしてたというふうに聞くんですけども、そうではなくて、そのグレーの部分が判断できるようになるのは、どういったことが可能になるからですか?
これは、怪しいのだと、この人は不審だって判断するには、その判断基準自体をコンピューターに教えてあげる必要があるんですね。
そこが今までの技術の一番難しかった、人間がやるしかなかったところで、自動化できなかった部分なんですね。
基準を人間が教えていた。
そうですね。
というのは、不審な動きというのは、いろんな形の不審な動きがありますから、想定できないんですね。
例外がたくさんあると。
例外を捉えるようなうまい判断基準の作り方、これができるようになってきたことっていうのが、今の人工知能、特にディープ・ラーニングと呼ばれる技術の一番画期的なところかなと思います。
機械みずからが、経験によって何が怪しいのか、その判断基準を作れるようになってきたと?
そうですね。
それがディープ・ラーニング。
さあ、人工知能を応用して、実用化に向けた動きが今、加速しているのが車の自動運転です。
人間が運転するより安全、あるいは自由に移動できるという可能性を秘めているわけですけれども、一方で、人命が関わる運転を機械に委ねてもいいのだろうかという議論も巻き起こっています。
スウェーデンの高速道路で行われている自動運転の開発テストです。
メーカーのエンジニアは手放しで走行。
アクセルも踏んでいません。
危険があれば自動ブレーキが作動します。
自動運転の車は、カメラやレーザーなどのセンサーで周囲の状況を検知します。
その情報をもとにみずから判断しながら走行するのです。
長年、安全性をブランドイメージにしてきたこのメーカー。
事故の90%以上は人間のミスによって起きていることから人工知能に判断を任せたほうが安全性が高まると考えています。
研究で使っているのは会社が40年以上かけて蓄積してきた事故のデータです。
事故がどのような状況で起きたのか。
人工知能に学習させてきました。
その成果は、事故を予測し回避することに生かされています。
例えば、高速道路の路肩に止まっている車を見つけた場合人が飛び出すリスクを計算し車線変更をする判断をします。
あらゆる場面を想定しておくことで安全性を高めたいとしています。
自動運転の開発が進む中地元市民からは不安の声も多く聞かれました。
ひとたび事故が起きれば命の危険にもつながりかねない運転を、機械に任せてよいのか。
懸念する人が、少なくないのです。
安全性を確認するためメーカーでは国や地元自治体と協力し世界初となる社会実験の計画を進めています。
2年後、市民100人に自動運転の車を使用してもらい実際に事故を減らせるか渋滞の解消に役立つかなどを検証します。
まずは、自動車専用道路50キロメートルで試験的に走らせその後、エリアを拡大することも検討しています。
さらに、自動運転を見越したインフラ整備も始まっています。
建設が進められているのは自動運転の車が、無人でも駐車できる地下駐車場です。
駐車場待ちの渋滞を減らし効率化につながると期待されています。
地元自治体では今都市計画や交通計画の担当者が安全性を考慮したインフラをどう整備するか議論しています。
インフラの整備や街づくりでは、数十年先の計画を立てなければならないため自動運転への対応を急いでいます。
そして、世界共通の課題となっているのが万が一、事故が起きた場合に誰が責任を負うのかです。
スウェーデンでもメーカーと国が共同で法律を研究してきました。
自動運転を想定していない今の法律では、責任の所在が不明確となるおそれがあるのです。
自動運転ですけれども、こうやって見ますと、街づくりもルール作りも、本当に人間にとって違和感のない車になるのかどうかっていうことを考えると、かなりハードルがありますね。
そうだと思います。
やっぱりなんと言っても一番大事なのは安全性で、とにかく人間の操縦よりも、安全であること。
これを満たすっていうことが、一番大事なことかなと思います。
恐らく、1桁ぐらいは事故の確率減らないと、なかなか使われるようにならないのかなと思いますが、そこまで安全になったとしても、やっぱりまだまだ、クリアしていかないといけないハードルというのはかなりあると思います。
例えば、何をもって車に安全だって教え込むんですか?
例えば、人工知能の場合は、価値基準を人間が与えると、それに対して最適なふるまいを学習することができるので、事故を減らすというふうな目的を与えることはできますね。
ところが、事故を減らすっていったときに、それは事故の件数なのか、それとも死亡者の数なのか、あるいは重傷者と軽傷者っていうふうに、どういうふうに重みつければいいのか、こういうあたりも、従来は議論されてこなかったことなんですけれども、人工知能が社会に入っていくうえでは、十分に議論して、社会全体でコンセンサスを取っていかないといけない部分かなというふうに思います。
社会実験を繰り返しながら、危険性、そして便利さというのをどう、いわばプログラムしていくわけですよね。
そこのコンセンサスを作り上げる?
そうですね、コンセンサスの問題もありますし、法律を定めていくということもあると思います。
やっぱり、最終的に一番大事なのは、人間のための人工知能であるということだと思います。
人間のための人工知能といったときに、一つ重要な判断軸が尊厳と、人間の尊厳をきちんと守るということだと思います。
例えば、機械に命令されて、人工知能に命令されて働くのは、幸せかというと、これはノーの人がかなり多いんじゃないかなと。
したがって、その仕事のやりがいとかですね、生きがいみたいなのを、十分に尊重するような、こういう人工知能を社会全体で作り上げていく必要があるんじゃないかなと思います。
ただ、技術の進歩があまりにも速くて、今まで人間が、仕事を変わったりするということが追いつかない。
本当に人間は人工知能の技術が広がることで、ハッピーになるのかどうかということに、ものすごく議論も集中していました。
そうですね。
やっぱり、人間の心っていうのは、非常に重要だと思います。
2015/03/03(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「人間は不要に? “人工知能社会”の行方」[字]
記者に代わって原稿を書き、教師に代わり、小論文を採点、自動車も自動で運転する…世界で実用化が進む人工知能は、私たちの社会をどう変えていくのか。最前線をルポする。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京大学大学院准教授…松尾豊,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京大学大学院准教授…松尾豊,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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