あのクラシックの名曲をあなたのものに。
「ららら♪クラシック」。
人生を豊かにしてくれる一曲を一緒に見つけませんか?
(「交響曲第5番」)今からおよそ100年前に起きた…この革命と深い関わりがあるのが…旧ソ連の最高権力者…作曲したのはドミートリ・ショスタコーヴィチ。
この曲が生まれた背景にはスターリンとショスタコーヴィチとの芸術を巡る確執がありました。
一歩間違えば命の危険すらある中…。
ぎりぎりの実験を続けていくっていう事。
その境界線をず〜っと歩み続けたのがショスタコーヴィチだと思いますね。
また音符の中にショスタコーヴィチが暗号を忍ばせていた可能性が…。
つるのさんも思わず…。
ショスタコーヴィチが時代に翻弄されながらも命がけで書いたシンフォニー。
そこに込められた芸術家魂とは…。
「ららら♪クラシック」今日はショスタコーヴィチの「交響曲第5番」です。
日本ではね「革命」という名前で親しまれていますこの交響曲今でもコンサートで頻繁に演奏される人気の曲ですね。
本日のゲストはもうおなじみですねつるの剛士さんです。
どうもよろしくお願いします。
前回ご出演頂いた時はショパンの練習曲やっぱり「革命」でしたね。
あれも「革命」でしたねそういえば。
この曲知ってます。
どこで…?パラパーンパパーンの部分は知ってますけど僕このショスタコーヴィチさん?…っていう方のお名前はちょっと恥ずかしながら知らなくて。
全然問題ないです。
「交響曲」というのはどうですか?まず難しいイメージがあってあと長い。
そのとおり。
美濃さんご自分では交響曲書かれた事あります?書いた事ないんです実は。
いつか書いてみたいと夢は持ってるんですけれども。
やっぱり難しいんでしょうね?難しいですしやっぱり作曲家が人生をかけて自分の人格を投影して書くというような。
でも逆にいえばその交響曲を知れば作った方の人格人生が分かるという。
まさにそうなんです。
今日はね一緒にショスタコーヴィチがどんな人なのかという人間に迫っていきたいなと…。
勉強したいと思います。
それでは早速ショスタコーヴィチの「交響曲第5番革命」がどのような曲なのか見ていきましょう。
皇帝の専制政治が長きにわたって続いたロシア。
20世紀初頭虐げられてきた人々の不満は爆発寸前でした。
1917年とうとう革命が起こります。
指導者レーニンと共に立ち上がった民衆がロマノフ王朝を倒し世界で初めての社会主義国家…それから20年後の1937年革命の成功を祝う演奏会で披露されたのが…当時芸術に求められたのは革命の成功によって夢と希望を持って生きる民衆の姿を描く事でした。
ショスタコーヴィチの「交響曲第5番」の場合はどうでしょうか?低音と高音の弦楽器が掛け合いながら印象深いメロディーを奏でる第1楽章。
ものものしい雰囲気はかつてロシア皇帝によって虐げられていた人々の苦悩を思い起こさせます。
短い第2楽章を挟んで続く第3楽章。
苦難の連続だった民衆の気持ちに寄り添うかのような旋律。
初演の時観客の中には革命とその後の混乱で亡くなった家族や友人を思い出して涙する人も多かったといいます。
打って変わって華やかな金管楽器の音で立ち上がる第4楽章。
民衆が苦難を乗り越えて新しい国家の下で幸せになる。
スターリンをはじめソビエトの指導者はこの曲に体制への賛美を感じ取り高く評価しました。
「交響曲第5番」の成功でショスタコーヴィチはソ連の作曲家として不動の地位を獲得する事になるのです。
なるほど〜。
このタイトルの「革命」っていうのは当時のロシア革命からとってるって事なんですかね?という事なんですよねイメージとしては。
すごいですね。
最初のデデーンデデンってコントラバスとかチェロで入ってくるあの感じとかちょっと怖いですねイメージがね。
あのイメージすごくあるんですけど。
まあ革命の事全体を何となく良いふうに書くっていう事はショスタコーヴィチも意識したんだろうなとは思いますね。
ただこの時代のソビエトは小説も絵も音楽も映画も全てが革命思想だったり社会主義を礼賛する事をやらないといけなかったので。
でもなんかこう何ていうんですか岡本太郎さんの「芸術は爆発だ」じゃないですけどもやっぱ僕のイメージするアーティストとか芸術家は何となくそういう反社会反政府みたいなあんまりそういうとこにこびてほしくないっていうか…。
とんがったイメージはありますよねアーティストって。
最高権力者にこびてではないですけれどそういう仕事をしなければいけないっていうのは作曲家としてはどうですか?つらいと思いますね。
自分の書きたいものではないわけじゃないですか。
何のためにね表現者になったか分からないですよね。
実はショスタコーヴィチが「交響曲第5番」を書くにあたっては当時の最高権力者スターリンとの確執があったんですね。
ドミートリ・ショスタコーヴィチは1906年生まれ。
13歳で名門ペトログラード音楽院に入学しピアノと作曲を学びます。
19歳で交響曲を作曲するなど早熟の天才として注目されました。
そして28歳の時野心的なオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」を発表します。
物語は裕福な商人の妻が不倫相手の使用人と結託して夫を殺してしまうというスキャンダル。
しかし一方で虐げられた人々の「権力への抵抗」というテーマも含んでいたのです。
1936年当時の最高権力者スターリンがこのオペラを鑑賞します。
スターリンはこの時期権力を盤石なものにするため抵抗する人々を粛清し始めていました。
このオペラにも「権力への抵抗」を嗅ぎ取ったのかスターリンは…後日ソ連の新聞「プラウダ」で「荒唐無稽のオペラ」と酷評されます。
天才作曲家ショスタコーヴィチの評判は一夜にして地に落ちてしまったのです。
翌1937年はスターリンが政治的ライバルをはじめ100万人以上を収容所に送ったり暗殺したりした大粛清の年でした。
ショスタコーヴィチにも絶体絶命の危機が迫っていました。
次の作品はスターリン政権に決してにらまれてはならない。
恐怖と重圧の中で書き上げたのが「交響曲第5番」でした。
重苦しい3つの楽章のあと華やかに展開する第4楽章。
ショスタコーヴィチ自身……だと語っています。
スターリン政権への賛美にも聴こえる「交響曲第5番」。
しかしただ政府に気に入られるためだけの音楽を書くなど芸術家ショスタコーヴィチのプライドが許しませんでした。
そこで彼は音符の中にスターリンを頂点とする権力者たちを批判する暗号を忍ばせたといいます。
芸術家っていうのは…たとえそれを強いられたとしてもどこかにそこに…それはまさに後世に対するメッセージとして刻み込む。
見えないように…そういうものすごい激しい精神力がないとこれだけの傑作は書けないと思いますね。
「交響曲第5番」はショスタコーヴィチが命がけで書いた音楽だったのです。
なんか気持ち分からないでもないですよね。
でも今のVTR見てるとショスタコーヴィチ勇気あるやつだなって思いますよね。
そうですよね。
やっぱりVTR見ただけでは伝わりにくいかもしれないけれど当時例えば自分が住んでいるマンションの前に夜車が止まる音がするじゃないですか。
そうするとそのマンション中の住民が怖くて震え上がったんですって。
「今晩も誰かが連れていかれる」。
理由もなく連れていかれて殺されてしまうかシベリア送りなので誰もが怖い中でこういう曲を書いているというね。
しかももう一度にらまれたあとでですよ。
命がけですよね。
でもやっぱり芸術家って絶対にこれだけは譲れないってものがあるんですね。
結局そういうものを貫いて最後までなんとかね生き抜いていければ幸せだなって事ですけどね。
本当に難しい時代背景があったからでもだからこそのこの作品があって後世に私たちは今メッセージを預ってますからやっぱり読み解いていかないといけないわけですよ。
そっか〜。
メッセージを入れるってね…。
その前に…クラシックにまつわる素朴な疑問にお答えしま〜す!答えて下さるのは多くのコンサートを取材し最新の情報を発信し続ける…楽器を演奏しながら同時に指揮をする事を通称「弾き振り」というふうに呼んでおります。
かつてはそうではありませんでした。
そういった事は広く行われておりました。
演奏家の顔と指揮者の顔両方を一度に楽しめるってわけですね!番組ではクラシックにまつわる疑問・質問をお待ちしております。
今日の一曲は…ロシア革命を賛美する音楽とされてきたこの曲。
しかし最近の研究によってショスタコーヴィチが当時の最高権力者スターリンを批判する暗号を忍ばせていた可能性が…。
その暗号とは何なのか?作曲家の美濃さんが楽譜に隠されたメッセージを読み解きます。
いくつもの説がありますがその中のいくつかねご紹介していきたいと思います。
まずね前置きとしてはショスタコーヴィチは過去の作曲家のさまざまなフレーズの一節を引用するというのがねとても好きだったようなんですね。
それは現代的には「パクる」っていう…。
いやいや。
サラッとさりげなく…。
うまい具合に溶け込ませる。
そうなんですよ。
これは技の見せどころだと思うんですがさあという事で研究者がいろいろと研究をした結果とても興味深い事が明らかになってきています。
まずはこの第4楽章のクライマックスで登場するフレーズを聴いて下さい。
さあこの部分どっかで聴いた事ある…。
えっ今のですか?はい。
このメロディーの部分なんですけれども…。
ダダッチャッチャ。
チャチャッチャッチャ。
そうそう!「ハバネラ」ですね。
うまい感じにパクりましたね。
パクってるわけではないんです。
このフレーズで歌われている実は歌詞が大切なんですけれどもちょっとこちらをご覧下さい。
こちらの楽譜をちょっとご覧下さい。
黄色くなっている部分ここトランペットで弾いているこのメロディー。
ここにその先ほどの歌詞……という言葉が当てはまるのではないかという事なんですね。
では今度はちょっと下の方に目線を下げて頂いて黄色くなっている部分これ全部全てこの音。
「ラ」の音なんですね。
なんとラの音が全部で200回以上出てきますここから。
「ラ」が好きだったんですか?いや好きだったからって200回もこんなしつこく使うかどうかという事なんです。
「ラ」に何か意味があるんですか?そうなんですよ。
古いロシア語で「ラ」という発音は「私」という意味なんです。
この音についてショスタコーヴィチ自身も「あれは『私』です」という発言を残しているんですね。
さあそうなると…。
うそ!こういう隠しワードが入るんですか!?すごい!そうなんです。
何を?スターリンを。
そうですね。
もう革命全体に対してもすごく批判的だったっていうふうにも受け取れますよね。
このように「カルメン」の「ハバネラ」とラの音を使ってこの曲が国家を賛美した音楽にとどまってはいないんではないかという側面が浮かび上がってくるというわけなんですね。
ええ〜!そんな深い意味があるんすか!?今度冒頭部分に戻りたいんですけれども第4楽章の冒頭はこんなフレーズで始まります。
あ!これさっきのタタンタンタンのマイナーですよね。
そのとおり!この音でこの曲第4楽章スタートするんですがという事は?ははあ〜なるほど!「私は政府に対して反対してますよ」みたいなメッセージがあるって事ですか?深い!もうどんどんいって!どんどんいって!?
(笑い声)自由にそうやって妄想を広げていきましょう。
暗号ですねまさに。
ほんとにそうですよね。
続いてもう一つ今度は曲の最後の部分なんですけれどもこちらをご覧頂きたいんですが…楽譜ですね。
ティンパニとそして大太鼓が出てくるんですけれども…。
という合図というか記号なんですけれども一体どんな部分なのかちょっとね演奏を聴いて頂きたいと思います。
僕の…素人で1発目に聴いたのは…私も最初この太鼓の音をね賛美のために打ち上げられた花火のような印象を持ったんですけれどもこの大太鼓の音をロシアの研究者の一人はロシア正教の……というふうに解釈してるんです。
ほんとですか!?でもそう思って聴くと…確かにね。
柩を打ちつける…。
それで曲を締めたと考えるとね確かに恐ろしい。
なるほど〜。
本当にボーッとボケーッと聴いてもらってもいいんですが今みたいな事をちょっと知って聴くとまた面白みが。
でも楽しいですこういう事考えて聴くのは。
それではショスタコーヴィチ作曲「交響曲第5番」。
第4楽章から抜粋でお聴き下さい。
はあ〜!もうそういう音楽にしか聴こえないです。
「私は信じないよ」っていうメッセージがもうふんだんに出てる音楽にしか聴こえなくなっちゃいました。
でも単純に聴いてもすごく気分がアップするいい曲ですよね。
すごくね高揚感もありますし迫力もあるし「ラ」がすごいですね。
真の芸術家だったのかもしれませんね。
そういう世の中のいろんなしがらみの中で自分を出していく表現していくんだという思いたくましさ。
クラシックっていうと美しくて優雅な音楽ってイメージが強いかもしれませんけどこういう曲もあるって事ですよね。
だから聴く度にやっぱり違って聴こえてくるし味わいが自分の年を重ねていくごとにまた違ってくるだろうし。
さあ今日番組の冒頭に「交響曲は長くて難しい」とおっしゃってましたけどイメージどうですか?結局長くて難しいんだなと思いました。
でも難しくていいんだなって。
やっぱりその人のいろんなメッセージが交響曲の中に入ってる。
それは多分聴き手の聴き方の問題だと思うんで難しくていいと思います。
難しいから残るのかなとか。
いろんな皆さんの想像をかきたてられるから名曲としてずっと残っていくんじゃないかなってすごく思いましたね。
早く美濃さんの交響曲を聴いてみたいです。
解き明かしてみたいです。
頑張ります。
皆さんも想像の翼を広げてこの曲を楽しんでみて下さいね。
2015/03/02(月) 10:25〜10:55
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「ショスタコーヴィチの交響曲第5番“革命”」[字][再]
ショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」。旧ソ連のスターリン政権との芸術を巡る攻防から生まれた傑作。音符に隠されたメッセージを読み解き作曲家の芸術家魂に迫る。
詳細情報
番組内容
20世紀のソ連を代表する作曲家ショスタコーヴィチの交響曲第5番「革命」。この曲の誕生の背景には、当時のソ連の最高指導者スターリンとショスタコーヴィチの間に芸術を巡る確執があった。一歩間違えば命の危険すらある中“命懸けで書いたシンフォニー”。しかも、政権ににらまれているにもかかわらず、政権を批判するメッセージを音符の中に暗号のように刻み込んでいた可能性が…。番組では隠されたメッセージを読みとく。
出演者
【ゲスト】つるの剛士,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【出演】管弦楽…東京フィルハーモニー交響楽団,指揮…円光寺雅彦,【語り】服部伴蔵門
ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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