(テーマ音楽)懐かしいなぁこのお雛さま。
お父さん。
うん?お父さん今日までどうもあり…あ…アリが10匹!なんてね。
はあ?じゃあね。
(遠ざかる足音)皆さんのお宅にもお雛さま飾っていますか?内裏雛を中心に豪華絢爛な宮廷絵巻が再現されます。
起源の一つは平安時代。
節句の折に身代わりである形代で汚れをはらう風習です。
それが「ひゐな」という人形遊びと結び付き江戸時代現在の雛壇の様式になりました。
同時に日本各地で個性的なお雛さまも生まれました。
雛人形の愛好家。
自慢の品を持ち寄ります。
こちら。
押し絵雛をなんと掛け軸にさし込むのです。
面白いですねぇ。
掛け軸の中に憧れの雅の世界が立体的に浮かび上がります。
次なる品は?飾るだけでなく遊べるのです。
子どもたちは楽しかったでしょうね。
長らく雛壇のお雛さまは高根の花でした。
各地で身近な素材を使い独自の雛人形が生み出されました。
今日はふるさとが生んだお雛さまの美をめぐります。
2月上旬。
愛知県三河の足助町。
古くから尾張と信州を結ぶ街道の宿場町として栄えました。
春。
街道筋では軒先にお雛さまを飾り人々を招き入れます。
凛音ちゃん煌莉ちゃん姉妹も毎年おめかしして出かけます。
老舗の書店。
お雛さまは本棚の上にありました。
かっこいいですね。
着物もきれいですね。
100年前の土雛。
土人形のお雛さまです。
足助の周辺は良質な粘土に恵まれ瓦の産地として有名です。
その粘土から美しいお雛さまが生まれます。
祝いの品として親戚などが贈ります。
いわば土から生まれて土に返るお雛さまです。
今日一つ目の壺は…老舗の和菓子屋さんの姉妹凛音ちゃんと煌莉ちゃん。
雛壇にはたくさんの土人形が並びます。
代々贈られたものです。
よく見ると私たちが思い浮かべるお雛さまとは一味違いますね。
足助ではこれら全てを雛壇に飾るのです。
こちらはひいおばあちゃんの綾子さんが初節句にもらったもの。
長い袂の和服に洋風の白いエプロン姿は大正時代の子どもの流行でした。
この家で最も古い土人形。
100年以上前のものです。
厄よけの赤いだるま。
子どもが満面の笑みを浮かべ抱き締めています。
そして一番多いのは歌舞伎のヒーローやヒロインです。
三河地方では昭和の初めまで農村歌舞伎が盛んでした。
娯楽の少ない時代子どもの憧れだったのです。
素朴に見える土人形もスタアとして輝くんですね。
再び雛めぐりに出かけます。
次は神谷武さんのお宅です。
工作の得意な神谷さんが2か月かけて1人手作りした自慢のお雛さまです。
名付けて「竹雛」。
竹だけで出来ています。
寒暖の差が大きい足助。
粘りのある良質の竹が育ちます。
竹雛はどのように作られるのでしょうか。
まずは切れ込みを入れた竹を重ねます。
これが胴体です。
節の断面は顔。
ややほっそりした部分を選びます。
そうお雛さまは理想の女性。
きりっとした襟元。
美しい曲線を描く着物の袖。
そして細面のお顔。
子どもの喜ぶ声が山里に春を呼びます。
(ウグイスの鳴き声)え〜ん…お父さん。
どうしたの?私のお花死んじゃったの。
あそう。
じゃあちょっとだけ命を分けてあげようね。
(泣き声)うわ〜!お父さんありがとう!ありがとう!静岡県伊豆半島の港町稲取。
脂の乗ったキンメダイの水揚げで有名です。
立春のころ港を見下ろす神社にお雛さまが飾られます。
その頭上には光を浴びて宙を舞うたくさんの飾り。
稲取伝統の「つるし飾り」です。
つるし飾りは稲取の雛祭りに欠かせません。
役場にも。
そしてこちらにも。
いらっしゃいませ。
港町に現れた雛の桃源郷です。
今日二つ目の壺は…2月上旬。
こちらのお宅では一家でお雛さまを飾ります。
姉の郁音ちゃんと妹の宥映ちゃん。
2人の楽しみはこのつるし飾り。
姉の郁音ちゃんが生まれた時親戚から贈られました。
つるし飾りは雛壇の脇に一つずつさげます。
糸は5本。
1本につける細工の数も奇数。
縁起がいいとされているからです。
稲取のつるし飾り。
いつどのようにして始まったのか確かなことは分かっていません。
港に面した黒田さんのお宅には稲取で最も古いといわれるつるし飾りが残っています。
江戸時代末期のものというつるし飾り。
細工のほとんどは古来の縁起物です。
猿。
厄が「さる」と縁起を担ぎます。
猿は日本各地でありがたく信仰されてきました。
三角。
薬袋にも用いられる形です。
「魔よけになる」と文様に使われてきました。
桃。
延命長寿の象徴で子だくさんも意味するといいます。
長寿の神とされる七福神の寿老人も桃を持っていますよね。
・「てるてる坊主てる坊主あした天気にしておくれ」妹の宥映ちゃんのために新しくつるし飾りを作ることにしました。
どんな縁起物が出来上がるのでしょうか。
お母さんの真琴さんが使う布。
真琴さんの母親からもらった反物です。
おばあちゃんの吉子さん。
作ったのは草履。
丈夫な足になりますように。
表地は吉子さんが七五三で着た衣装。
裏は吉子さんの母親の白無垢です。
姉の郁音ちゃんは父親のネクタイをもらいました。
作っていると…。
針使う時親指と人さし指で針の先隠して…。
おばあちゃんが良き先生です。
頑張って縫い上げた三角です。
フフフッ。
みんなの願いを一つのつるし飾りにつなげていきます。
雛壇に飾ってお披露目です。
つるし飾りも完成しいよいよ雛祭り。
真ん中にはまるまると脂の乗ったキンメダイ。
パク!は〜い!は〜い!港町ならではの雛の宴です。
おいしい!
(笑い声)明日の花嫁姿…きっときれいだろうなぁ。
(娘)ありがとう。
え?お父さん今日までいっぱいありがとう。
あのころは素直に言えたのにね。
幸せに…なるんだよ。
子どもの何気ない一瞬を切り取った人形たち。
全て和紙を重ねて作った張子です。
子どもの軽やかさが見事に表現されています。
作者は野口三四郎。
戦前の日本を代表する人形作家の1人です。
昭和7年3月三四郎は長女を授かります。
桃の節句の季節に生まれたので桃里と名付けました。
三四郎はこのまな娘のために3組の雛人形を残しています。
幼き命を慈しんで作られた雛人形です。
今日最後は…「お雛様」。
三四郎が残した3組の雛人形の一つです。
鮮やかな色彩とふくよかなフォルム。
まるで娘を授かった幸せが込められているかのようです。
三四郎が残した雛人形。
こちらは「立ち雛」です。
先ほどの人形とは全く印象が違います。
もろさが美しさにつながっています。
この美しさを生み出す技とは…?最大の工夫は通常の張子に比べ和紙の重ねを薄くしてあることです。
例えば一つの木型から厚さが違う張子を作ると…。
薄いほうは繊細な輪郭線が忠実に再現されています。
次に色。
和紙の上に直接塗り淡くにじませています。
更に離れた目丸い鼻小さな口。
子どもの顔の特徴です。
いとしい雛人形を作った三四郎の人生は苦難に満ちていました。
桃里ちゃんが生まれて2年後妻のしげが結核で亡くなります。
翌年には桃里ちゃんが赤痢で他界。
3歳になったばかりでした。
無垢ではかなげな立ち雛です。
残るもう一つの雛人形とは…。
木彫りの絵馬です。
三四郎が残した作品の中で絵馬はこれ一つだけ。
絵馬とは祈りを込めるもの。
そこに描かれた表情や色彩は春のような明るさに満ちています。
三四郎が娘をいとしんで作った3組の雛です。
雛人形は親から子へ思いの結晶なのです。
(チャイム)こんにちは!あお父さんだ。
いらっしゃいお父さん。
ほうこれはなかなか立派な…うん?福島第一原発の事故で2015/03/01(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「ひな人形めぐり」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「ひな人形めぐり」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
「ひな人形」に“ふるさとバージョン”があることをご存じですか。ひな壇に並ぶ人形だけでなく、日本各地にはいろいろなひな人形があるんです。菜の花の素朴なひな人形とはどんなものか!?三河地方の土人形のおひな様が引き連れるユニークな家来とは?!伊豆に伝わる空に浮かぶひな飾り?!すべてに共通するのは子を喜ばせたい気持ち。親の子への想いを知れば、涙なしには見られない!日本の故郷には美しいひな人形文化があった。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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