ダーウィンが来た!「巨大ナマズ ハト狩りの真相」 2015.03.01


突然ですがここで「ダーウィンNEWS」です。
2010年に放送した「ダーウィンNEWS」。
まずはスペインサラゴサで撮影された衝撃の映像をご覧下さい。
屋根のハトが川へ降りてきました。
浅瀬で水を飲んでいるんですね。
あれ?背後に大きな魚が来ましたよ。
うわ!なんとハトが巨大な魚にのみ込まれてしまいました。
魚が鳥を食べちゃうなんて驚きの大スクープです!ハトをのみ込んだのは…最大で3メートルにもなるヨーロッパ最大級の淡水魚です。
この放送から丸4年。
更に衝撃の展開がありました。
なんとスペインだけでなくフランスやイタリアでもオオナマズによる「ハト狩り」が目撃されるようになったんです。
さらにさらに!あっ!人間が襲われる事件まで発生しています。
一体ヨーロッパの川で何が起きているのか。
スペインフランスイタリア3か国にまたがる事件の真相に迫ります。

(テーマ音楽)まず取材班がやってきたのはスペイン。
オオナマズのハト狩りが目撃されたサラゴサから200キロ下流です。
この辺りにはヨーロッパオオナマズがたくさんいるうえ透明度が高く観察にうってつけです。
早速潜ってみましょう。
岸の近くには草がうっそうと生い茂っています。
夜行性のオオナマズは日中こうした薄暗い草の陰などに潜んでいるといいます。
カメラマンが何か見つけたようです。
いたいた!ヨーロッパオオナマズです。
オオナマズは群れを作らず1匹でいることがほとんどです。
体のわりに小さな目。
ハトをのみ込むどう猛さとは裏腹にかわいらしい顔つきですね。
ところが口の中を見ると鋭いトゲのようなものが無数に並んでいます。
これが歯です。
思い出して下さい。
冒頭で紹介した女性の足首の傷。
この歯のせいだったんですね。
このオオナマズはおよそ2メートル。
大きいですねぇ。
でもまだまだ大きくなるんです。
日本の一般的なナマズは最大60センチほど。
日本最大級の淡水魚ビワコオオナマズは1メートル20センチに達します。
これと比べるとヨーロッパオオナマズは桁違い。
最大で全長3メートル体重は200キロになるといいます。
夕暮れ。
ヨーロッパオオナマズが活動を始める時間が近づいてきました。
夜の川に潜ります。
おっ早速現れました。
2匹います。
どちらも大きさは1メートルほど。
やや小ぶりです。
昼間とはうって変わって暗闇の中を活発に泳ぎ回っています。
岩の間を縫うように泳いでいきます。
ちょっと追跡してみましょう。
ひげを前方に突き出してしきりに動かしています。
「手探り」ならぬ「ひげ探り」で獲物を探しているんです。
もう一つ獲物を探す時に重要なのが味です。
人間の場合味を感じるのは舌にある味蕾という器官です。
その数はおよそ6,000。
ナマズの場合この味蕾が体じゅうにあってその数はなんと20万と言われています。
つまりナマズは人間よりも敏感な味覚を持った「泳ぐ舌」なんです。
魚がいます。
そこに近づいていくオオナマズ。
水中に漂う魚のかすかな味を頼りに追跡しているんです。
あっ逃げられた。
また失敗。
今度は待ち伏せ。
近づいてきましたが…逃げられてしまいました。
狩りの成功率はそう高くはないようですねぇ。
水族館で撮影された貴重な映像でヨーロッパオオナマズの狩りを見てみましょう。
狙っているのは30センチほどのコイ。
コイが逃げようとすると…あっ食べられた!巨大な口を素早く開けコイを一瞬で吸い込んでいます。
この驚異的な吸引力こそオオナマズの武器。
この迫力!狙われた獲物はなすすべがありません。
ヨーロッパオオナマズの水中での狩りの技が分かったところでいよいよハト狩りの技に迫ります。
スペイン北東部にあるサラゴサです。
宮殿や教会など歴史的な建造物が数多く残り世界文化遺産に登録されている美しい街です。
国内のみならず世界中から訪れる大勢の観光客でにぎわっています。
(鐘の音)午前9時。
教会の鐘が鳴り始めました。
(鐘の音)大聖堂などをすみかにしているハトたちが飛び立ちます。
向かった先は教会のそばを流れる川です。
ハトが次々に川に降り始めました。
みんなで水浴び。
気持ちよさそうですね。
その直後。
下流の深みから怪しげな影が現れました。
ヨーロッパオオナマズです。
ここ分かりますか?オオナマズの背中です。
じわじわと近づいていきます。
ハトは全く気付いていないようです。
オオナマズはハトとの距離を縮めていきます。
そして…。
あっ!一瞬で丸のみにしてしまいました。
今度は奥にいるハトにご注目。
頭を川に突っ込んで水を飲んでいます。
すると突然大きな口に引きずり込まれてしまいました。
このハト狩り。
多い時には30分に1回のペースで発生しています。
通行人が気付いたようです。
地元では知る人ぞ知るちょっとした名物になっています。
あっ!ヨーロッパオオナマズによる衝撃のハト狩り。
一体どうやって食べているのか。
そもそもなぜ食べるようになったのか。
私たちはハト狩りの様子を徹底的に分析することにしました。
ハトが川に降りた直後オオナマズが現れました。
やってくるのはいつも下流側からです。
上流から流れてくるハトの味を頼りにしているようです。
ハトが水浴びをしている場所へまっすぐにやってきます。
これ以上進めないという所でじ〜っと待機。
ハトが来ると…襲いかかります。
目と鼻の先にハトがいます。
食いついた!今度は逃げられました。
映像をよく見るとあることに気付きました。
ハトを狙うオオナマズはひげを前に突き出しています。
ひげにハトが触れた瞬間飛びついているようです。
よ〜く見て下さい。
ひげにハトが触れると大きな口を開けて襲いかかります。
たとえ水が濁っていてもこの作戦ならへっちゃらです。
今度の狙いは画面中央の茶色っぽいハト。
逃げる間もなくのみ込まれてしまいました。
浅瀬にいるハトだって…。
決して安全ではありません。
こちらはさらに豪快。
勢い余って水から飛び出さんばかりです。
味を頼りにハトに近づきひげに触れると襲いかかるというオオナマズのハト狩り。
それにしてもハトはあまりにも無防備だと思いませんか?研究者によるとハトはオオナマズが敵だと認識できないんだそうです。
ハトにとって最大の敵はハヤブサなどの猛きんです。
だから空から来る驚異に対してはとっても敏感です。
またキツネやネコなど陸上の肉食動物にも強い警戒心を持っています。
ところが長〜い進化の歴史の中でハトは水中の敵に襲われることがほとんどありませんでした。
だから全くの無防備なんです。
ちょっと待った!そこですよそこ。
えどこですか?あいやいやいや。
今「進化の歴史の中でハトは水中の敵に襲われることがなかった」って言ったじゃないですか。
じゃなんで最近になってナマズがハトを襲うようになったんですかね?ヒゲじい鋭いですね。
でしょ。
えっへん!謎を解く鍵は番組のはじめに紹介したこれです。
うん?どれ?ヨーロッパオオナマズによるハト狩りがスペインフランスイタリアでほぼ同時期に見られるようになったという点です。
は〜あ?こちらはフランスの南部に位置するアルビ。
ここにも多くのハトがいます。
うんスペインの風景と似ておりますな。
そうですよね。
でハトが水浴びをしているとオオナマズが現れました。
ほら襲われた!あホントだ。
全く同じ状況ですなぁ。
はい。
こちらはイタリアのベネチアに程近い運河。
ここでもオオナマズがハトを襲っています。
ほうほうほう。
うわ〜!これも同じ光景だ。
はい。
これら最近オオナマズによるハト狩りが見られるようになった場所にはある共通点があるんです。
共通点…う〜んそれが謎を解く鍵ですかな?はい。
実はヨーロッパオオナマズはもともとこれらの場所にはいませんでした。
ところが1970年代から80年代にかけて釣りの対象や食用にするため人の手によって持ち込まれたんです。
もともとすんでたわけじゃないんですか。
そうなんです。
持ち込まれてから数十年。
特に温暖な南西ヨーロッパでオオナマズたちは爆発的に数を増やしました。
その結果食べ物が不足したんです。
ほうそりゃ困りますなぁ。
はい。
そこで新しい獲物としてハトに目を付けるようになったんですよ。
はあ〜!そういうことだったんですか。
なるほどねぇ。
オオナマズたちも生きるために必死なんですね。
はい。
それにねヒゲじいオオナマズは本来夜行性なのにハトの行動に合わせて昼にも活動するようになったんです。
へえ〜そうだったんだ。
オオナマズのハト狩りにそんな切実な事情があったとは。
オオナマズも「ナマズ食わず」じゃ生きていけませんもんね。
うわハハハハ!それにしてもすごい迫力ですなぁ。
生きるためにハト狩りを編み出したオオナマズたち。
しかしさらに新たな競争が生まれています。
それはハトという獲物の奪い合いです。
こちら数匹のオオナマズが同じ場所でハトを狙っています。
私たちの観察では最も多い時で7匹ものオオナマズが同じ場所に集まってきていました。
大きいオオナマズは小さいものを容赦なく追い払います。
オオナマズたちにとって生きていくための戦いが日々繰り広げられています。
第2章ではさらなるスクープ。
数十匹ものヨーロッパオオナマズが大集結!一体どうして?そして命をつなぐ感動の場面にも遭遇しました。
事件はフランスのとある川で起きました。
1人の女性がヨーロッパオオナマズに襲われたんです。
遊び疲れた2人が岸に上がろうとしていた時。
あっ!足首にはやすりでこすったような傷。
そうオオナマズにかまれたんです。
また別の川では小型のイヌがオオナマズに食べられるという事件もありました。
こうした被害と同時に生態系への影響も懸念され始めています。
フランススペインドイツなどの専門家たちは国際的な研究会を発足。
オオナマズが何を食べているのかどれぐらい繁殖しているのかなど詳しい生態調査に乗り出しました。
オオナマズは望んでここに来たわけではありません。
でも問題が起きていることも事実。
解決の糸口はまだ誰もつかめていません。
スペインフランスイタリアでハト狩りを行うようになったヨーロッパオオナマズ。
さらに不思議な行動が最近観察されるようになりました。
場所はフランス東部の川。
地元カメラマンが撮ったスクープ映像がこちらです。
1メートルから2メートル級のオオナマズたちが50匹もの大群を作って渦巻いています。
名付けて…この川では何度も目撃されています。
これは一体何なのか。
映像を見たサントゥール博士も首をかしげます。
博士は一つの仮説を立てました。
まずはこちらをご覧下さい。
釣り人の針にかかったヨーロッパオオナマズをさらに大きなヨーロッパオオナマズがのみ込もうとしています。
オオナマズは共食いをすることもあると考えられています。
その共食いを避けるために取る行動が「ナマズ竜巻」だというんです。
大群をよ〜く見ると2メートル級のオオナマズに小さめのオオナマズがすり寄っています。
こうして「食べ物ではないよ」と訴えているというんです。
獲物が不足しハト狩りが起きている中で目撃された「ナマズ竜巻」。
それは新天地でオオナマズたちが編み出した苦肉の策なのかもしれません。
春。
オオナマズの恋の季節です。
浅瀬を見ると…。
巨大なオオナマズが2匹一緒に泳いでいます。
やがてもつれ合うように泳ぎ始めた2匹。
動きは次第に激しさを増していきます。
この2匹はカップル。
オスがメスにプロポーズしているんです。
プロポーズから数日後。
浅瀬にいる1匹のオオナマズを見つけました。
近づいても動こうとしません。
明るい日中浅瀬に姿を現すなんてハト狩りの時以外にはなかったことです。
実はこのオオナマズはオス。
メスが産んだ卵を守っているんです。
卵を狙って集まってくる小魚たち。
オスは片ときも離れず水草の上の卵を守り続けます。
産卵からおよそ1週間後。
体長3ミリほどの赤ちゃんが誕生しました。
数日間はおなかの袋の栄養分を吸収して育ちます。
その間泳ぐことのできない赤ちゃんは他の魚たちの格好の獲物です。
ようやく泳げるようになっても小さな赤ちゃんは狙われる立場。
成長すれば無敵のオオナマズも今はとにかく隠れるしかありません。
2週間がたちました。
赤ちゃんはすっかりナマズらしくなっています。
あっ虫を食べました。
生き残るためにはひたすら食べて大きくなるしかありません。
やがて無敵の巨体を手にしたオオナマズは80年も生きるといいます。
この小さなオオナマズはそれまで生きることができるでしょうか。
新天地で命をつなぐためハト狩りという驚きの技を編み出したヨーロッパオオナマズ。
人間に翻弄されるその運命は今後どこへ向かうのでしょう。
2015/03/01(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「巨大ナマズ ハト狩りの真相」[字]

全長3mになるヨーロッパオオナマズ。近年、スペインなどでハトを丸飲みにする狩りが目撃されるようになった。さらにフランスでは人を襲う事件まで!謎の行動、真相とは?

詳細情報
番組内容
全長3m、体重200kgにもなる巨体を誇るヨーロッパオオナマズ。近年、川辺で休むハトを丸飲みにする狩りが目撃されるようになった。現場はスペイン、フランス、イタリアの3か国。さらにフランスでは水遊びをしていた少女が、足首をかまれるという事件まで発生!いったい何が起きているのか?ヒントは3か国でほぼ同時に見られるようになったこと。真相を探ると人間に翻弄されるナマズたちの姿が浮かび上がった!歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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