縦12cm横6cm。
切り抜いたボール紙に描かれた小さな絵「カルト」。
暗く妖しげ。
でもどこかユーモラス。
画家はその世界を「僕の夜」と呼びました。
心に湧き起こる不思議な物語を夜ごと小さな紙に描き続けました。
その数およそ6,000枚。
中でも生涯手元に置いて放さなかった作品が今東京・渋谷の松濤美術館で展示されています。
クートラスは1930年フランス・パリで労働者の家庭に生まれました。
9歳の時第2次世界大戦が勃発。
家族はドイツ軍の収容所に送られ強制労働を強いられます。
凄惨な日々の中強く憧れたのが「美」でした。
終戦後芸術家を志し働きながら美術を学びます。
二十歳の時教会の修復に携わったクートラスは中世の職人たちが作り出した造形に心を奪われます。
名声を求めず己の技を信仰と美にささげたいにしえの職人たち。
その生き方に芸術家としての理想の姿を見いだしたといいます。
28歳の時パリの大手画廊と契約。
現代のユトリロと呼ばれすぐに買い手がつきました。
しかし画廊の求めに応じ売れる絵ばかりを描く日々は理想とはかけ離れたものでした。
僅か2年で契約を解除してしまいます。
待っていたのは貧困。
そんな中でも作品を作り続ける姿を見つめた女性がいます。
岸真理子さん。
パリの画廊で働いていた時クートラスと出会いその晩年を共に暮らしました。
まずこういうどれもなんですけどもボール紙は通りで拾ってまいりましてそして切り抜きますね。
赤チン使ってるものもあります。
赤チンを使ったりクルミの汁を使ったり。
ですから生活の中にあるあらゆるものを錬金術師並みに試しておりますので。
そして今度それをまた破壊するんですね。
例えば床に散らばして上を歩く事もありましたしクギのようなものでたたいちゃう事もありましたし。
破壊と再生みたいな行動を繰り返しながら完成させてくっていうところがありました。
ここにいる髪の長い女性はね彼の恋人だった女性でユダヤ人の収容所で生まれたんですね。
結局7歳まで髪が生えなかったんですって。
その髪が生えだしてすばらしい髪の毛の持ち主でものすごいきれいな人だったって。
明るい時にはまるで太陽みたいに明るいんだけれどもそういう思い出が返ってくる時なんでしょうね沈み始めるとこうやって暗い部屋の中に閉じ籠もってしまっておびえきってるっていう。
そんな様子も見てたみたいで彼はその女性の事がとっても印象に残ったんだと思います。
こういう女性のカルトをたくさん作っておりますし。
中には絵ではなく文字が書かれた作品もあります。
誰も解読できない暗号のような文字。
字を読む事には関心がなかったんです。
字から感じ取るものが好きだったんですね。
ですから古い絵葉書。
別に絵葉書の中に書いてある事は平凡な言葉なんですけどもその人の字体っていうのがあってその字体が古びた紙も傷んだような絵葉書の中にこう染みみたいになって残ってるってそういうものが好きでしたので。
この赤い…そして文字の感じから何となくそれは随分熱い心を伝えてるんじゃないかなっていうふうに思わせるものもありますし字の向こう側の世界みたいなものに興味があったんだと思います。
どこに発表するでもない自分のためだけの作品たち。
まるでイコンのような肖像画も数多く描いています。
(岸)この様式にすごく引かれてたみたいで自分の中のビジョンとして自分をある意味では導くような自分の中の一番尊いものの姿なのかもしれないと思ってますけど。
第2次世界大戦中の収容所での生活ですとかそれから大戦後の厳しいフランスの社会の中での労働者としての生活っていうものに絶望しきっておりまして。
ですからもし絵描きにならなかったらほんとに死んだと思います。
その美というものはほんとに彼にとっては多分宗教家がソフィアっていうんですかそちらにささげるようなそれぐらいの一種の敬意の念を持って持つ対象だったみたいですのでですから美に仕える労働者といったところがあったのがクートラスだったと思います。
クートラスの没後30年を記念した展覧会。
戦後日本とアメリカで活躍した抽象画家古川吉重。
その回顧展が開かれています。
古川が渡米する前1956年の作品。
描かれているのは機械そして人。
2つが絡み合い一体となった姿は工業化が進む日本社会です。
41歳で渡米すると一転新たな世界を切り開きます。
カンバスに別のカンバスをコラージュした作品。
素材が持つ表現の可能性に挑みました。
多彩な手法で抽象画の世界を追い求めた古川吉重。
戦後を代表する美術批評家…針生が注目した戦後美術の傑作を通してその思想と足跡を振り返ります。
針生が初めて展覧会への批評を書いた第1回ニッポン展。
大きな話題を集めたのが…題材は山梨県で実際に起きた殺人事件。
針生は差別や貧困を描く山下の姿勢に共感しました。
全身にやけどを負ったひん死の人々。
丸木位里・俊の「原爆の図」。
当時反米的であると展示への圧力がかかる中針生は作品の公開を支援し平和へのメッセージを発信し続けました。
社会と人間という視点から戦後の美術を批評した針生。
近代陶芸の巨匠富本憲吉は陶芸家でありながらデザイナーとしてもその才能を発揮しました。
シダの模様が大胆に施された代表作。
富本は色絵磁器に金と銀を同時に焼き付ける技法を編み出しました。
新たな図案の創作にも力を注ぎました。
テイカカズラの花があしらわれた飾り箱。
放射線状に配置された花びらが躍動感を与えています。
日本画の枠を超えた斬新な作風で注目を集める岡村桂三郎。
ちょっと不気味な顔。
岡村は自然と人間の根源的な関わりを独特のモチーフで表現してきました。
描き方にも独自の工夫が。
一度焼いて焦がした板に岩絵の具を塗り重ね工具で削り取りながら描く事で生命力を与えています。
2015/03/01(日) 09:45〜10:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“ロベール・クートラス 夜を包む色彩”展 ほか[字]
「ロベール・クートラス展 夜を包む色彩」(松濤美術館 2月28日〜3月15日) ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「ロベール・クートラス展 夜を包む色彩」(松濤美術館 2月28日〜3月15日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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