う〜ん…。
わ〜い!こらアンタたち!家の中を駆け回るんじゃないよ。
外で遊んでおいで。
はぁ…少ない稼ぎでこの大所帯。
アンタもそろそろ働きに行ったらどうなんだい?わかっちょる!ととさ〜ん!おう!優しいいい人なんだけどね。
この男和紙を作る材料となる楮という植物を農家から買い問屋に売るのが仕事だが商いが下手でいつも損ばかりしていました。
こりゃとても食えない渋柿じゃ。
もし儲けが出たらおいしい柿をお供えしにまた参ります。
えっ!?うまいぞうまいぞ。
わしは夏からずっと喉が渇いておったんじゃ。
ひぇ〜!!待て。
男に話しかけたのはこの祠に祀られている明神様でした。
へへえ!商売がうまくいったらもっとうまい柿を供えると言うたな本当か?ウソは申しません。
よしならばわしのもとで修行をしている狐をしばらく貸そう。
きっとお前の役に立つであろう。
狐よ来い!コーン!明神様は握り飯を毎日3つこの狐に供えるようにと男に言いました。
男は明くる日から早速言われたとおりにしました。
それからというもの商いのときには明神様の狐が現れておもりの分銅にのるので男は少ない金でたくさんの楮を買うことができました。
そして売るときも狐が現れて天秤の楮の皿にのるので多めに金を受け取ることができました。
だいぶ儲かったようじゃな。
はいおかげさまで。
では狐を返してもらおう。
そ…それはちょっとお待ちください!だが神様の集いがあってわしはしばらくここを留守にする。
狐もそろそろ嫁をもらうことになっておるのじゃ。
どうかこの冬を越すまでは。
ふむ。
しかしこれ以上お前と狐の因縁が深まってしまってはのう。
やめておいたほうがよいぞ。
男はもうしばらくの間狐を借りるかわりにその嫁の分まで握り飯を供えることを約束しました。
それは明神様の留守中のことでした。
ちょっと待ちな。
お…お前はいったい?俺は明神様の狐さ。
俺も所帯を持ち子供ができた。
その数9匹。
これからは子供たちの分の握り飯も用意してもらう。
33個だ。
よいな?33個!?そ…そんなに!多いか?握り飯33個でお前を問屋にしてやってもいいんだぜ。
問屋…わわかった。
よし約束だ。
そのかわり孫の代までしっかり面倒をみてもらうぞ。
コーン!男は間もなく問屋の主になりました。
店の中はひっきりなしに客が訪れました。
大勢の使用人を使う大金持ちになったのです。
しかし男の心は晴れませんでした。
あんたこの頃いったいどうしたんだい?それは…じ実は…。
ずいぶん立派になったものだ。
ひえ〜!どうしたんだい?あんた。
ひえ〜!な…何をしに来た?言われたとおり毎日33個の握り飯を使用人に運ばせているではないか!確かにもらってる。
だが足りぬ。
なんだって!?9匹の子が所帯を持ちそれぞれ9匹の孫ができた。
その数81匹。
我が一族3代の面倒をみると約束をしたからにはしっかり守ってもらおう!あんたあの握り飯は明神様へのお供えじゃなかったのかい?あぁこの狐なんだ!なんちゅうこと!狐と約束をすりゃその一族を養うのに身代の一つや二つじゃ足りんそうじゃ。
よいかこれから毎日303個の握り飯を持ってくるのだぞ。
そ…そんなにたくさん…。
む…無理だ。
問屋にしてやった恩を忘れたか!やがて81匹の孫狐にもそれぞれ子が生まれ孫の一族の数はもう数え切れないほどになりました。
男はとうとう寝込んでしまいました。
あんた!あんた起きとくれ。
里の婆さまに聞いたんだけどね狐の一族がこれ以上増える前に十分なお供え物をしておはらいすりゃ狐は落ちるそうじゃよ。
ほ…本当か!?ならはようそうしよう。
明神様この身代すべてお返しいたします。
だから言うたではないか。
あの狐も少々やりすぎた。
しかしお前の欲につけ込んだまでじゃぞ。
もう高望みはいたしません。
はじめから真面目に働きます。
どうかお助けくださいませ。
狐よ。
お前も自分で一家を養うのは大変だろうがもうこの男から離れよ。
(2人)ひゃ〜っ!!コーン!それからというもの男は欲をかかず商売に精を出しぼちぼち繁盛したということです。
昔むかしあるところに1人の若い石工がおりました。
ある日石工は思いました。
《毎日毎日石を打って同じことの繰り返し。
石工なんてこの世で一番つまらない者なんじゃないか?もっと広い世界を見てみてぇなぁ。
そいでもってこの世で一番えらい者になってみてぇ》《けどこの世で一番えらい者って誰だい?》この世で一番えらい者って誰なんだ?誰か教えてくれ!教えてくれ!神様!呼んだ?うわっ!お…お前誰だ?だから神様!神様?ああ神様。
ならこの世で一番えらい者は誰なんだい?教えてくれ!そりゃわしに決まっとろう。
はぁ?だって神様だもん!あじゃあ…じゃあ二番目にえらいのは誰だ?二番目かそうさな…。
さしずめお日様あたりかのう。
お日様か…。
それじゃおらをお日様にしてくれ!お前を?神様ならできるはずだろ?まったく。
よしわかったお日様にしてやろう。
ん〜ほい!うわ〜やった!これで神様の次にえらい。
ん?ま神様は別格だからな。
これで一番えらい者になったぞ。
それあったかい光をお前たちにやろう。
ココラ何するんだ!おらの光が地面に届かねえでねえか!何をわめいておるお前は。
雲の俺様には勝てねえんだ。
何だと?うわ〜っま待てコラコラ!クーッ神様!呼んだ?神様今度はおらを雲にしてくれ。
雲?あぁお日様に負けねえ雲だ。
わかったわかった。
ほ〜れ!ハハハーッどうだ!これでこの世で一番えらい者になったぞ〜い!うわぁ〜!おっ何だお前は?大風よ。
大風?お前なんぞ俺のひと吹きで…。
うわぁ〜!神様神様。
何?神様今度こそ一番えらい大風にしてくれ。
ふぁ〜。
は〜い!今度こそこの世で一番えらい者になったぞ!それ〜っ!ハハーッどうだ!みんなみんな吹き飛ばされてしまえ!それ〜っ!それいけ!あっ…。
えいっえいっはい!生意気なヤツめ!ハァッハァッ…コイツ一番えらい大風よりもっとえらいのか?じゃったら石にしてやろうか?あっはぁ…これが最後のお願いだ。
おらを大石にしてくれ。
あいよ。
ヘヘヘッ!今度こそ今度こそこの世で一番えらい者になったぞ!なんだこそばゆいぞ。
なんだ石工か。
大したことはない。
やがて日が暮れ石工は家路につきました。
大石は安心して一夜を過ごしましたが…。
お?やがて大石は気持よくなりうとうとし始めました。
ふぁ〜。
お?痛っ!あいた!痛い!そして石工は次の日もまた次の日もやってきて大石を打ち続けます。
そしてみるみるうちに痩せてしまいました。
くぅ〜この世で一番つまらないと思っていた石工にかなわないとは…。
神様神様!なんじゃ?おらを元の石工に戻してください。
この世で一番えらい者は…。
なあに?この世で一番えらい者は石工でした。
やっとわかったか。
はい。
ハハハ!ほ〜れ!はっ…。
石工はあんなにつまらないと思っていた自分の仕事が一番だということに気がつきました。
さあて仕事に取りかかるか。
よ〜し!それからの石工は毎日毎日楽しく働いたそうです。
昔むかし山あいの里に屋敷がありました。
そこにはおばあさんが使用人たちと暮らしていました。
それはみぞれまじりの雨が降る冷たい夜のことでした。
ひとりの老人が里にやってきました。
そしてちょうど屋敷の前を通り過ぎようとしたとき…。
うっ…。
アンタどうなすったんじゃ?おばあさんは老人を中に入れて手当てしてやることにしました。
この傷は…。
おいアンタはどこから来なすった?おばあさんは山を越えたところにある町で戦が始まったらしいという噂を思い出しました。
何か事情がおありのようですね。
とにかく今は養生して傷を癒やしてくださいませ。
おばあさんは昼も夜も老人を手厚く看病しました。
おばあさんのおかげで老人の傷は日増しに癒えていきました。
そんなある日のこと…。
何をなさるおつもりですか?長い間思いがけず世話になりましたが身一つゆえ何もお礼ができませぬ。
私はさる城に仕えた人形師。
せめてものお礼に人形を作らせてください。
やがて一対の美しい雛人形ができあがりました。
まあなんて美しい。
この雛人形は私が仕えていた方によく似ております。
どうか末永くかわいがってください。
そう言うと老人はその晩人目を忍ぶようにそっと旅立ちました。
やがて桃の節句がやってきておばあさんは老人が作った雛人形を飾りました。
奥様山を越えた城の戦ではなんでも年若い殿様と姫が命を落としたとか。
まあそれは不憫なこと…。
あの老人はその城に仕えていたのだとおばあさんは悟りました。
雛人形は見れば見るほど気品に溢れていました。
きっとあの老人はお城の殿様とお姫様の姿を雛人形にうつしたのだろうと思いました。
おばあさんは毎年雛人形を飾りましたが2人きりではかわいそうに思い五人囃子を譲ってもらい一緒に飾るようになりました。
ある年の桃の節句が近づいたときのことです。
いい香りだこと。
甘酒の出来も上々でそろそろ雛人形を飾ろうと思っているときにおばあさんは風邪をひいてしまいました。
おばあさんの風邪は長引きお節句の日を迎えても寝込んでいました。
雛人形は箱から出されることなく隣の部屋に置かれたままでした。
その夜のことです。
隣の部屋から声が聞こえてきました。
今日は桃の節句じゃのう。
はいさようでございます。
はて女主は節句を忘れてしまったのだろうか?そんなことはございますまい。
毎年この日を楽しみにしておったが今年は外には出られぬか。
寂しゅうございます。
おや?こちらから声が聞こえたと思ったけれど。
なんと箱からひょっこりと現れたのは五人囃子でした。
今夜は桃の節句じゃ。
甘酒の出来も上々。
先ほどから姫が泣いておられる。
お寂しいのであろう。
それではお二人のため夜ばやしをやるとしよう。
おおそれは名案。
〜これは夢かしら?おばあさんはうっとりと聴いていました。
そして立てかけてあった琴をおろすと一緒に演奏し始めました。
おお琴の音も聞こえる。
よい調べじゃ。
殿私も見とうございます。
うむ。
おお女主もおったか。
次の曲も聴かせておくれ。
(みんな)はい喜んで。
〜こうしてひと晩中夜ばやしは続きおばあさんはいつの間にか疲れて眠ってしまいました。
うわぁ!これは大変。
昨夜はネズミが大暴れだったようですな。
奥様おかげんはいかがですか?おやゆうべは琴をされたのですか?《まあ…夢ではなかったのね》今日は雛人形を出しましょう。
手伝っておくれ。
しかし節句はもう終わってしまいましたが…。
年に一度は出してやらないと寂しがりますからね。
この雛人形にはいつの間にか殿様とお姫様の魂が宿ったのですね。
それ以来この屋敷では桃の節句には必ず雛人形を飾りました。
もし忘れると雛人形が泣いてその1年はいいことが起こらないといわれています。
2015/03/01(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「分銅狐」
「この世で一番えらい者」
「雛の夜ばやし」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:34637(0x874D)