NHK俳句 題「桜餅」 2015.03.01


それでは皆さんどうぞ良い日曜日お過ごし下さい。
「NHK俳句」第1週の選者は宇多喜代子さんでいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
今日の兼題は「桜」。
ご用意しましたけれどももう春。
匂いが漂ってきますね。
香りがいいですよね。
冒頭の句は?これはいかにも桜で罪滅ぼしをするという今も昔も同じだなという気が致しました。
そうですね。
それではゲストをご紹介致します。
今日のゲストは演出家の植田紳爾さんにお越し頂きました。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
よろしくどうぞお願いします。
植田さんは宝塚歌劇団の演出家として「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」などの作品を手がけてらっしゃいますけども宇多さんは宝塚をほとんど見てらっしゃる。
ほとんどもう50年見続けておりますね。
燃え上がるようなファンじゃないんだけどもずっと見てるという。
それはやっぱりご自身の何か…。
これは私籠もって仕事なんかしておりますとね非常に宝塚へ行くと気分が洗われるんですね。
またいい日が来たっていう気がするんですよ。
それでストレスも解消するし大変おかげを被っております。
ですから植田さんの作品もずっと…。
もちろん先生の作品はほとんど…ほとんどじゃない全部見てます。
公演ごとに必ず見ますからね。
ありがとうございます。
そういう植田さんは実は俳句も…。
いえいえ俳句なんて…。
こんなとこへ出して頂くのおこがましいんでね。
俳句らしきものなんですけども。
大体俳句をやってみようかなと思ったのが動機自体が不純なんです。
というのは舞台でセリフを書きますからそれは日本語で言葉である事は違いないんですけどもセリフと会話とは違うんです。
だから舞台では会話してるように見えるけれどこれはセリフなんですね。
ですから最も短い言葉でそれで端的にその時の環境とか人物の心理とかをお客様にまずは伝えなければいけない。
そうすると最も短い言葉で何が一番いいのか。
例えば俳句だったら季語だって数え切れないほどあるぐらいで日本語にたくさんありますでしょ?だからそういった意味で一生懸命そういう事を頭で訓練しとく事もセリフを書く時に頭の中がクリアーになるのかな。
頭の訓練セリフの訓練のためにやってるので本当に俳句らしきものです。
いやそうでもないのよ。
お粗末です。
実はいつも年賀状に俳句をお書きになるという事で今日お持ち頂いたんですね。
ご紹介下さい。
今年の句ね。
「新玉や気を引き締めよ宴あと」。
これ去年が宝塚歌劇団の100周年であって大変に皆様に持ち上げて頂いて温かく迎えて頂いて大変に盛り上がって我々は本当にその100周年という時代を共有できた時の感動みたいなものが大変にあったんですけれどもやっぱりそれじゃあ101年どうするんだ。
これからじゃないか。
これが出発点じゃないかという気がしたもんですからだから今年の年賀状はもう一度気を引き締めてもう一度初心に返ってやりましょうみんなでっていうつもりで書きました。
宇多さん。
いいと思いますね。
確かに宴…。
これ先生がさっきおっしゃったいつもおっしゃってるように「祭り」でなくてね。
初めは「祭りあと」にするのか「宴あと」にするのかっていうの大変に迷ったんです。
「祭り」と「宴」似て非なるものなんですね。
「祭り」っていうとただにぎやかだけども「宴」っていうのは本当に…その「宴」はよくぞ100周年を「宴」という言葉で表されたと思って。
101年大事ですものね。
これから大事だと思います。
これからですよ。
また後ほどお話よろしくお願い致します。
それでは入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
これは本当に語れば山とあるような事をよくこう短く簡潔におっしゃったなというのですばらしい句と思いました。
やっぱりこの「きちんと生きて」っていう言葉が羨ましいですね。
僕たちは何かやれといったら反省と後悔ばかりですから「きちんと生きて」なんて言えないんですけどもその心境に達せられた方っていうのはすごいと思って見事だと思いました。
では今度は2番です。
これは桜餅の効果ですね。
これへほかのものが来たんじゃこうはいかないだろうと思う。
非常に豪華なお菓子が来ても駄目でしょ。
たださらっとね桜餅の本性を非常によくついてらっしゃると思う。
見事だと。
これもいいと思いましたね。
何があってもまあまあ後でって。
後で後で難しい話…。
とにかく頂きましょうというような感じですね。
3番です。
これは桜餅がおいしいとか何とか言わないけど非常に季節ですねこのお菓子が出てきた時の季節。
そのような春の風が吹き抜けたというその場をよく表してる句だと思いました。
いいですね。
今度は4番です。
これ「山国」という…。
都会のビルの中の桜もあるでしょう。
いろんなとこであるだろうけれども「山国」と言った事であんまりこだわらないようなちょっと強い桜?私はそれを想像しましたね。
非常に素朴な桜を想像致しました。
うなずいてらっしゃいましたけどいかがですか?非常に素朴な感じがしますよね。
本当にね。
すばらしいですよね地域性が出てね。
今度は5番です。
これは一人で食べずに誰かと一緒に食べようと思って桜餅を食べる時の楽しみをもうあれしてるのね。
これを持ってってあの話をしようというその楽しさがウキウキした気分がとてもよく出ております。
そういう気持ちもぶら下げていく感じですよね。
今度は6番です。
これは非常に「桜餅」がなかったら大きい景色なんですよ。
海が見えるような。
そのところに「桜餅」が出てきて主役を「桜餅」に持っていくと。
小さい小さい。
その海の非常に広い場所の中で「桜餅」を主役にしたというそういう手柄があると思いました。
7番です。
こんな桜をこっち置いといてってそんな離婚沙汰っていうのはこれは大した事ないんですね。
本当の大変だったら「いまはさておき」なんて言葉は出てこない。
桜どころじゃない。
だけどもこれはいまはさておき食べ終わったらまた始めるかっていったらもうグジャグジャになるんでしょうね。
そんな面白いとこがありますね。
植田さんも随分笑ってらっしゃいましたけど。
面白い。
人情の機微みたいなものが…。
今度は8番です。
とかく何かを比較するのは江戸と上方なんですよね。
これ北海道と沖縄何か比べてこうっていう事はあんまりないけれども江戸と上方はことごとくこういうふうになるんですね。
これはこうだこうだと。
ご投句のほとんどは多かったのがこれですよ。
江戸はこうで上方はこうだというの多かったんです。
先ほどの写真にありましたように作り方が違うんですね。
だけども共通しているのはこの大島桜の葉っぱの塩漬けを使う。
香りが共通してるっていうとこで両方桜餅なんですよね。
これを論じておるというそれを句になすったのを非常に簡潔に「江戸はこう」「こう」の中に全部入ってる訳ね。
これが面白い言い方だと思いました。
生徒さんの中にもどうしても東京の桜餅だとおっしゃってる方いらっしゃったようですね。
水穂葉子って実にうまい脇役なんですけどもいい俳優さんがいたんですけどもそれが江戸っ子で東京人である事を誇りに思ってましたから「絶対桜餅は長命寺じゃないと駄目!」って常に言ってました事を思い出します。
あるんですね。
これは事ごとにありますね。
おうどんのだしだとかねエスカレーターの乗り方だとかね。
違いますもんね。
いろいろあるんですね。
そういう事まで思いが行きました。
今度は9番です。
これは母上の記憶があっち行ったりこっち行ったり忘れてる事もあるし非常に間におられるんですよね。
ところが桜を召し上がる時だけは記憶が戻るという桜の効用だろうと思います。
いい句です。
これ桜を見るあるいは桜の葉っぱの匂いを嗅ぐ瞬間にお母さんとのいろんな生活環境がふっと浮かんでくるなんていうのは親子の絆の美しいところですよね。
いいですね。
以上が入選句でした。
では特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
斎藤夏風さんの作品は繰り返し見つめた風景から生まれます。
腰をかがめて重そうな荷物をリヤカーという車を使ってゆっくりゆっくり車を引いていく訳ですが道には不思議にその冬の草が青々としてるんですね。
私は戦時中に私の父が河川敷で野菜を作っていた事がありましてその野菜作りに嫌というほど手伝わされた事を思い出しました。
高い火柱が立ったりなんかしてそれがだんだんだんだん収まってくる。
そうするとその火の粉が地上に落ちてそれがキラキラキラキラこう輝いていく訳ですね。
で燠が出来ていくとその出来ている広さが広いために海に見えるというふうに私は感じました。
何か燠のにぎやかな火の粉とそれから光というものに海と渚の関係が出てくるような感じがしまして。
それでは特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?廣島佑亮さんの句です。
二席の句です。
二席は二藤覚さんの句ですね。
一席はどちらでしょう?後藤利夫さんの句です。
この100年の間にはいろんな事があったろうと。
それを一切書かずにただ「きちんと生きて」という自分を顧みて恥ずかしい事がなかったという事を言ってらっしゃるの。
それを桜餅というお餅を食べる時にお菓子を食べる時にこの事を思い出したという。
非常に無駄がないですね。
で言いたい事をきちんと全部言ってらっしゃる。
あやかりたいような生き方だと思いますね。
「きちんと」という言葉が響きますね。
この平俗な言葉が生きてますよね。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちら「NHK俳句」テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報も参考になさって下さい。
続きまして…ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
今日はこちらの句です。
これはよく分かります。
ところが分かり過ぎるんです。
どこが分かり過ぎるかというと「食う」が余計なんですね。
こういう時に「食う」を言わなきゃね私は香りを食べたんだ。
匂ったんじゃなくて食べたんだという事が言いたかったろうと思う。
ところがこの「食う」が余計ですね。
もう食う事分かってるんですね。
それでこれを消しましょう。
そうするとどうするかっていうとこういう時に俳句独特の「かな」とか「けり」とか「や」とかこういうのの中からこの「かな」をお使いになるといかがですか?そうすると余情が出てきます。
「桜年一回の香りかな」というとこの香りに一年にいっぺん巡り合ったっていうそこが非常によく出てくる。
だからこういうふうになさって何もかも言わなくてもいいよというのが今日の勉強ですね。
ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
それでは皆さんからの投稿のご案内です。
4月からの新年度は選者が替わります。
第1週の選者は池田澄子さんです。
ではここで今年度1年間の入選句の中で宇多さんが年間大賞に選ばれた句ご紹介下さい。
青木孝夫さんの句ですね。
これ初鰹鰹という大きな…鰯や何かに比べると大きな魚。
立派です。
立派。
その魚の大きさとかその季節だとかそれと初鰹というおいしいお味とかそれが全部出てると思いますね。
これは「や」の字の効果ですね。
とてもいい句だと思いました。
青木さんどうもおめでとうございました。
それでは続きまして宇多さんの年間のテーマ「季節の食卓」です。
今日は「桜」ね。
これね桜って非常に和菓子というのは季節に準じておりますからねその中でも桜というのは大変に何て言うんだろう…庶民的な非常に桜という日本人がぐっと来る名前が付いてるだけでであの香りでしょ。
ですから春を象徴する和菓子だなという事で季節を味わうという意味では一番お菓子の中でもうぐいすわらびいろいろありますけれどもこの桜は非常に季節を感じさせると。
それが分かるような句をお作りになる事ですね。
こちらの句ですね。
これね私若い時に「歳時記」でこの句を知りました時に「何だろう?この句は」と思ってあまり好きじゃなかったんです実は。
それは?これ当たり前じゃないのという気がして。
ところが年を取ってきますとああそうか。
こういう即物というか物に即してこれがもし三つ食って葉が二片だったら誰かが食べたんだな葉っぱもと。
これが四片あったらミステリーになるなとかいろいろあるんですけど現実をそのまま書いてらっしゃるでしょ。
それでもって「や」で一度切ってそういうもの切って「桜」を持ってきたという大変に印象深い句として今は大好きですね。
ですから句も年代によって変わってきますよ。
そうなんですね。
食べるものの好みが変わるように変わってきます。
ありがとうございました。
続きましてはまた宇多さんと植田さんとお話をして頂きます。
・「愛、それは」聞こえてまいりましたね。
ここでこれを聴こうとはね。
でもありがたい事で。
植田さんといえば「ベルサイユのばら」をずっと演出をし続けてこられてる訳なんですけどもいつも「ベルサイユのばら」を詠んだ俳句を作ってらっしゃるんだそうですね。
はい。
初日にいろんな感じた事を何か短い…またこれもセリフと一緒で短い言葉の中へ入れてきたいなと思ったものですから大体初日とか何か自分で感動した日はその時は書いていってます。
ご紹介頂けますか?はい。
これなんですけどもオスカルっていう池田理代子さんがお作りになった人物が本当に貴重な人物ですからその彼女の生き方が男装をしながら男としてフランス革命の中で散っていくその姿が僕は寒椿の寒い中にふっと咲いてる椿の感じがしてそれでそれもポタッと見事に落ちていくっていうそういう感じがしてたんですけども。
それと池田さんがお描きになったものは絵ですから動かないんですけどもペガサスに乗ってるオスカルの絵があったのでこれを舞台にするんならどうするんだろうと思ってそれでクレーンで乗せていって客席の上までオスカルが飛んでいくんですけども凰稀かなめがやってくれたんですけどもそれが一番最近では…。
去年これお詠みになった句なんですね。
去年で。
100周年で記念にやった時に作ったものです。
宇多さんはこちらをご覧になってるんですね?初演からずっと見ておりますけれどもね去年のこれにはびっくり仰天でしたね。
仕掛けが非常に…。
来るんですよ。
大きいオスカルが天を飛んでくるんですけどねこれが舞台だと思いましたね。
ちまちました世界じゃなくて大きくてね。
これのために見に来たんだと思って。
テレビとか何とかじゃない映画とかじゃなくて舞台は舞台らしいものというのを作らないといけませんのでね苦労はしてるんですけども。
それでオスカルっていう人物はいわゆる漫画の中の世界で。
舞台の世界だけども現実の世界の人になってしまいましたねもうね。
なかなか美しいんですこれが。
立ち姿が。
本当に歴代40周年「ベルサイユのばら」をやって40年なんです去年。
本当にいろんなスターが生まれてくれました。
宝塚の100年の歴史を支えてくれてるなと思ってます。
そうですね。
スターが全部私頭の中でダ〜ッ。
巡るんですけどでも本当にあれを見ると現実にどこを探してもない世界ね。
オスカルがいるような世界ってないですよ。
ところが気分が高揚するしコロッと変わるし。
一方で俳句をずっと宇多さんやってこられてそして一方ではずっと宝塚をご覧になってらっしゃるっていう事ですよね。
見てますね。
だから初演が昭和47年でした。
その時にとにかく漫画がこれになったというのでちょっとびっくりでしたね。
その俳句とやっぱり宝塚っていうところで先ほど植田さんはセリフをある種考える時に非常にやっぱり俳句の中からヒントっておっしゃいましたよね。
いかがでしょうか?これは本当に日本語を鍛えるためのいい修業の場だと思いますよね。
こんな文化があるっていうのはすばらしいですね俳句っていうのは。
で短いセリフっていうのはこちらが記憶しやすい聞いていて。
長く状況説明があるようなセリフも時には必要だけれども短くスターさんがクッと言うセリフはその場で頭に入りますね。
芝居でいえばつかみという言葉があるんですけども筋売りっていうんですね。
つかみとか筋売りって。
やっぱり芝居が始まる前にいろんな事件があったり環境があったりしてそこから芝居が始まっていきますからそれまでの間を延々としゃべってもお客さんが退屈なさるだけですよ。
だからいかに短い時間でそれを端的に分かって頂けるかっていうのもやっぱり芝居のリズムを作るのには大変に大事な事だと思いますし俳句のあのリズムというのはやっぱりすばらしいですよね。
十七文字の中に全てが凝縮して入るという。
韻ですね。
リズムとも確かに…。
それも日本語の韻なんですね。
リズムなんですよね。
だから俳句っていうのは本当にすばらしものが日本にはあるなと。
先生はスターさんの印象も全部俳句で残しておられる。
そういう接点があると知りませんでしたけど。
今後も楽しませて頂きたいものでございます。
今日は植田さんをゲストにお話を伺ったんですけども宇多さんにはこの番組「さく咲く!」も含めまして3年間…。
そうなんです長々と。
お願いしましたけれどもいかがでらっしゃいましたか?本当に勉強させて頂きましてありがとうございました。
口はばったい事も申し上げたと思うし失礼も言ったと思うけど大変楽しい時間でございました。
ありがとうございました。
今日はもう宇多さんの素顔も…。
バレちゃった。
本当うれしそうに頬を赤らめて宝塚のお話をされる…。
バレましたね。
という事も分かりましたけども。
一番大好きなところです。
お二方ご活躍下さい。
本当にどうもありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
どうもありがとうございました。
(きてき)2015/03/01(日) 06:35〜07:00
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「桜餅」[字]

植田紳爾,宇多喜代子,【司会】桜井洋子

詳細情報
出演者
【出演】植田紳爾,宇多喜代子,【司会】桜井洋子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:13968(0x3690)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: