イッピン「心地よい天然素材のロングセラー〜和歌山 シュロ製品〜」 2015.03.01


流行の最先端をゆく街にある女性に大人気のセレクトショップ。
店内にはおしゃれでモダンな雑貨の数々が並んでいますがそこにはななんとたわしが!実はこれがきょうのイッピン。
1つ2,700円と多少値がはりますがよ〜く売れているんだとか。
たわしっていうととても固いイメージがあるんですけれどもこのシュロのたわしはパームと違ってやわらかくてしなやかでとても使いやすいですね。
やはりリピートしていただく方多いですね。
一般的なたわしはパームヤシの繊維を使っていますがこれはシュロの木の繊維で作られたたわしなんです。
きょうの…シュロのたわしを手にするのは初めてですが…。
あっ!何だろう?気持ちいいです。
これ何ですか?思わず頬ずりしたくなる驚きのやわらかさ。
シュロのたわしはプロも愛用しています。
東京丸の内にある大正11年創業の和食店。
総料理長の鈴木直登さんは「現代の名工」にも選ばれた日本料理界の重鎮。
選び抜かれた食材から生まれる会席料理が食通をうならせています。
鈴木さんがシュロのたわしを愛してやまない理由とは?やわらかいため調理器具の隅にもぴったりフィット。
傷を付けずに汚れを落とすことができるんだといいます。
しかも繊維がしなやかで強くとても長もちするんだとか。
この驚きのたわしが作られたのは和歌山県。
他にもシュロを使ったイッピンを生み出しています。
美しいほうきは江戸時代以来のロングセラー。
今回は心地よい天然素材のシュロ製品。
その魅力に迫ります。
和歌山県北部。
海南市と紀美野町の一帯では古くからシュロ製品づくりが盛んでした。
たわしの素材は地元産のシュロの木。
まずはその林を訪れました。
こんにちは!こんにちは。
どうもはじめまして。
白石と申します。
よろしくお願いします。
ホントご苦労さんです。
シュロの皮を剥いで半世紀。
大ベテランの職人峰伸汎さんに案内してもらいます。
あこれがシュロの木で…。
シュロはヤシ科の植物。
温暖で水はけの良い土地で育ち和歌山で多く見られます。
まっすぐ伸びるのが特徴で成長すると6メートルにも達します。
あ!この状態がもうとれる状態なんですか?そう。
へぇ。
あの皮の部分ですよね?はいはい。
木の上の方幹を包んでいる幅40センチほどの繊維質がシュロ皮。
たわしの素材です。
いよいよ皮をとります。
まず1本ごとに足場を組んでいきます。
両側から…できたら。
両足とれるように。
両足で。
ナイフで切れ目を入れタケノコの皮のように剥いでいくと…。
これがたわしの材料やら…。
わ!すごい1枚の…。
こんなんなってんねんな。
すごいですね。
ありがとうございます。
もうやわらかいですね。
やわらかいなぁ。
シュロ皮はメッシュ生地のよう。
直径1ミリ以下の細い繊維が無数に折り重なっています。
やわらかくコシがあるのが特徴です。
あの…峰さん。
これは1年に何枚とれるんですか?1本のシュロから採取できる皮は8枚。
毎年一度木が成長するのを待って剥いでいきます。
重労働のため年々職人は減っているそうです。
手間がかかりとれる量も少ない貴重なシュロ皮。
ここからどうやってたわしが生まれるんでしょうか。
海南市にある昭和23年創業のシュロ製品製造会社。
こんにちは。
おじゃましま〜す。
30年間たわしを作り続けているベテラン職人です。
用途に応じて作り分けたたわしは形や大きさもさまざま。
どのたわしも優しく汚れを落とせるんだそうですが…。
白石さん実際に使ってみる事に。
泥のついたごぼう。
普通はゴシゴシ洗うと栄養分のある皮が剥がれ香りまで飛んでしまいますが…。
あれ?なんか想像してたのと違う!なんか泥だけ落ちて。
見えますかこれ?これ皮とれない!そうでしょ。
なんでですか?ちゃんと泥が落ちてここの皮目の栄養分が入ってる所は残ってますね!
(こする音)強くこすっても皮はしっかり残っています。
細い繊維が適度にしなって汚れだけをかき出しています。
ポイントはこのしなり。
やわらかくコシがあるシュロの繊維に最適なしなりをもたらす技を見ていきましょう。
まずはたわしの作り方をご紹介。
使われるのは専用の機械。
カットしたシュロの繊維を銅線に挟んで…。
ねじっていくと…。
棒状になっていきます。
曲げればたわしの出来上がり。
え!たったこれだけかって?いえいえ。
すばらしい職人技が隠されているんです。
最初の工程はシュロ皮をほぐす作業。
これはこの状態からまさに始めるわけですね。
そうです。
機械の中では並んだ刃が回転しています。
シュロ皮はみるみるうちにほぐれて一本一本の繊維になっていきます。
こういうふうにしたら…。
わ〜!繊維状に全部バラけてます。
そしてほぐした繊維を束ねます。
1束はシュロ皮およそ30枚分。
ここから作られるたわしは2個か3個だけ。
シュロの繊維は太さや硬さが一定ではありません。
そのためやわらかくてしかもコシのある真ん中の部分だけを使うんです。
そしてここからが腕の見せどころ。
カットしたシュロの繊維を銅線に挟むんですが田さんは指で繊維を広げるようにしています。
実はたわしのよしあしはここで決まるんだそうです。
調整していかないと無理なんですね。
密度ですね。
密度を均一にしてシュロの繊維を並べること。
これがたわしのしなりの秘密なんです。
均一に並べないと銅線をねじった時…隙間のあるいびつな形になってしまいます。
固く締まりすぎている所と緩い所。
密度が一定していません。
これではこすった時にうまくしなりません。
でも均一に並べること自体難しいんです。
これ見ているのとやるのとでは全く感覚がつかめないですね。
(田)全然違います。
白石さんは親指だけに力を入れています。
一方田さんは全ての指を使い優しく広げています。
田さんは指先で微妙な密度の違いを感じ取って空気を含ませるようにしながら均一に並べていたのです。
続いては銅線をねじるハンドルさばき。
ここにも職人技が!巻き足らんかったら毛引っ張ったらもしかしたらここで抜けるおそれがある。
だから目いっぱい巻ける所まで巻く。
銅線をねじればねじるほどそれだけ繊維はしっかりと固定されます。
そうすると繊維をこすった時の反発力が強くなりさらにしなりが増すのです。
田さんがギリギリまでねじっている証拠に止めたハンドルに少し力を加えただけで…。
銅線が切れてしまいました。
指先で銅線の張り具合を感じながら切れる寸前のところを見極めていたのです。
「これ以上巻いたらあかんで」って言われる寸前分かります。
ねじってるからねじってる方向に手がこういうふうに行く。
これがこういうふうになってもたらもう切れる。
たわしづくり一筋。
30年に及ぶ経験が生んだ技です。
そして仕上げは曲げの作業。
田さんは曲げ方ひとつで用途に応じたさまざまなたわしを作ります。
こちらはコップや花瓶洗い用のたわし。
体を洗うためのたわしは丸みのある形にしました。
そして余った繊維で作ったのはなんともかわいいストラップ。
爪を磨くのにもちょうどいいと人気なんだそうです。
たわしの魅力そのシュロの優しいぬくもりがすごく伝わってきたんですけど。
はいはい。
この良さをねやっぱり使ってもらえるようにうちは一生懸命努力しながら商品作ってるんよ。
驚きのやわらかいたわし。
それは天然素材の魅力を熟知した職人の技と思いが生み出していました。
シュロは古くから和歌山の人々の暮らしの中に息づいてきました。
江戸時代に盛んに作られた縄。
シュロは水に強く魚を取る網の材料として使われました。
こちらはみの。
雨具や防寒具として重宝されたそうです。
明治にはたわしづくりが始まりシュロ産業は大きく発展しました。
その流れから戦後にはブラシやスポンジなど水回りの家庭用品の一大産地に成長。
一方でシュロ製品そのものの生産は少なくなっていきました。
ところが今たわし以外にもうひとつ改めて注目されているシュロ製品があるんです。
そのイッピンとは…。
こんにちは。
こんにちは。
和歌山にある人気のレストラン。
さてイッピンはどこに?あちらに。
あ!あちら。
わっすてきですね。
インテリアとしてもなんかしっくりとなじんでますね。
それはシュロのほうき。
堂々として洗練されたデザインが洋風の空間に映えています。
お客様の反応とか?
(オーナーシェフ)どこで売ってるとか。
はい。
「やっぱ高いんじゃないのか」という話が帰り際にもできたりとかもするんで。
かつてはこの地域で数多く作られていたシュロのほうき。
しかし今はなかなか手に入らないんだそうです。
中でも数の少ない最上級のほうきがあると聞き特産品のショールームを訪ねました。
こちらパネルだけ置いてあるんですか?ここには一応展示はしてないんですけれども。
特別にサンプルを見せてもらえることに。
こちらになります。
あ!わっまたすてきですねぇ。
ねっ。
柄がちょっと長めですね。
そうですね。
座敷ぼうきみたいに使っていただいてますので。
主に畳とかで…。
はい。
またこのデザインも特徴的ですね。
シュロ皮の特性を生かしたそのままのほうきです。
豊かに張り出した先の部分の美しさ。
シュロの繊維とそれを束ねる金属の線との絶妙なコントラスト。
丹念に作られています。
しかも見た目の良さだけではないんです。
毛足が長い分しなりが良くて流した時にスッスッってなんか流れていく感じがしますね。
手になじむ感じが。
使いやすい。
使い心地もまさに芸術的。
適度なしなりが心地よく繊維が床にフィットして細かいゴミもかき出せます。
美しくしかも使い心地抜群!幻の「シュロのほうき」の秘密を探ります。
海南市の隣に位置する紀美野町。
シュロほうきを作っている数少ない職人の一人を訪ねました。
父親から技を受け継いで伝統的なシュロほうきを作り続けています。
果たしてその作業とは?まずは適度な大きさに切ったシュロ皮を…重ねて丸めます。
たわしとは異なりこのほうきではシュロを繊維にほぐすのは最後なんです。
丸めた皮を紐で縛ってまとめていきます。
作っていたのは玉。
シュロほうきはこの玉を幾つかつなげて出来るんです。
それは伝統の中で育まれた形。
最も負荷がかかる外側の玉は耐久性を持たせるため太くするなど部分によって大きさが決まっています。
シュロほうきに強さとともに美しさをもたらすのが銅線を巻く作業です。
かなりしっかり締めないとほうき自体がゆるゆるになってしまうので。
皮がバラけないよう力いっぱい縛り上げます。
そして同時に均等な間隔を保つなど見た目の美しさに心を配ることも怠りません。
柄の材料は地元産の黒竹。
艶があって美しいのが特徴です。
ここにまず中心となる玉を取り付けてさらに両脇に玉を連ねるため竹のくしを挿します。
(たたく音)黒い糸は銅線との色の対比から選んだもの。
二色の線が狂いなく連なるよう細心の注意を払いながら玉を取り付けていきます。
そしてそれぞれの玉を柄に固定。
ここは見た目の印象を左右する重要な部分。
丁寧に銅線を巻きつけます。
これで完成です。
ようやくほうきの形になりました。
鮮やかな銅と落ち着いた黒。
直線と丸みの対比。
もはや芸術品です。
そしていよいよほぐしていきます。
さばきという作業です。
刃が回転する機械に当てて一本一本の繊維にしています。
ところが桑添さん全部さばきません。
だいたい…確かに半分しかほぐされていません。
実はどの程度までさばくのかが使い心地に大きく影響すると桑添さんは言います。
検証してみましょう。
半分までさばいたものと全部さばいたものを比較します。
細かいゴミを全部さばいた方で掃いてみると…。
ゴミが残ってしまいました。
一方半分までさばいたもの。
ゴミは残っていません。
よく見てみると毛のしなり具合が違うことが分かります。
さばき過ぎると毛の一本一本が広がってしまいコシがなくなります。
そのためゴミを取り逃がしてしまったのです。
最適にさばいてコシのあるしなりを生み出す。
それがゴミを逃さず使い心地の良いほうきの秘密でした。
最後に整えて先端をカット。
半日ほど天日で乾燥させるとシュロほうきの完成です。
手間がかかるため1日に制作できるのはせいぜい5本。
来る日も来る日もシュロのほうきつくりに取り組んできた桑添さん。
出来たものに満足したことはないと言います。
きっちりこう…ここの間隔もピタッと合ったほうき。
果てなき理想を追い求める職人が技の限りを尽くして作り上げるシュロのほうきに脱帽です。
ほうきとたわし。
シュロ製品の魅力に触れた白石美帆さん。
シュロという植物がもたらすやわらかさであったり風合いであったり日用品であって芸術品であってそれを生活の中に取り入れて使って周りを潤すもとになるんじゃないかなぁと思います。
長く人々の暮らしに寄り添ってきた和歌山のシュロ製品。
シュロの良さを信じ今もなお生かそうとする職人たちの営みが途絶えることはありません。
2015/03/01(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「心地よい天然素材のロングセラー〜和歌山 シュロ製品〜」[字]

掃き心地がよくデザイン性にも優れた“伝説のホウキ”と体まで洗える“信じられないほど柔らかいタワシ”など和歌山のシュロを素材としたロングセラーを白石美帆が紹介。

詳細情報
番組内容
和歌山県の海南市や紀美野町で作られるシュロのホウキは、知る人ぞ知る“伝説のイッピン”だ。掃き心地が抜群であるだけでなく、デザイン性にも優れているためインテリアとしても使えるのだ。また日本を代表する料理人が愛用するのは、同じ地域で作られたシュロを素材とするタワシ。柔らかく、傷をつけずに食材や調理道具を洗うことができるためだ。身近な天然素材を生かし、心地良い日用品を生み出す驚異のワザに白石美帆が迫る。
出演者
【リポーター】白石美帆,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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