さわやか自然百景「静岡 柿田川」 2015.02.23


(テーマ音楽)富士山。
その伏流水をたたえる柿田川です。
澄み切った豊かな流れはさまざまな命を育んでいます。
夏水中に広がるのは水草の森。
水辺はさまざまなトンボたちの楽園です。
そして晩秋数万匹ものアユが群れを成して産卵を始めます。
夏から冬。
清流柿田川に息づく生き物たちを見つめました。
静岡県東部を流れる柿田川です。
富士山麓を源に狩野川に合流しやがては駿河湾へと注ぎます。
全長は僅か1.2キロ。
この川には澄んだ水を好む生き物たちが多く暮らしています。
7月。
柿田川の上流ではかれんな花が満開の時を迎えます。
水中に広がる緑のじゅうたん。
花の大きさは1センチほど。
梅の花に似ている事から「梅花藻」という名が付けられました。
よく見ると花や葉にいくつもの空気の泡がついています。
盛んに光合成を行っている証しです。
かつてミシマバイカモは静岡県のほかの池や川でも見る事ができました。
しかし水辺の環境の悪化で現在自然の中で見られるのは柿田川だけです。
柿田川の最上流部です。
川底からこんこんと湧き出る水。
地元では「湧き間」と呼ばれています。
富士山麓に降った雨や雪が地下水となり数十年の月日をかけてろ過され川底から噴き出しているのです。
川の上流を中心におよそ300か所ある湧き間からは一日に100万トン以上の水が湧いています。
水温は一年を通して15度前後とほとんど変わりません。
柿田川は富士山からの大量の湧き水が生んだ奇跡の川です。
豊かで清らかな流れは多くの生き物を育んでいます。
清流の女王…水に落ちた虫などを川底から狙います。
こちらは…きれいな水を好みほかではめったに見る事のできない魚です。
近くに珍しい昆虫がいました。
清流に住むカメムシの仲間です。
小さな生き物たちでにぎわう夏の水辺。
柿田川には30種類以上のトンボが飛び交います。
その中でも珍しいトンボを見つけました。
大きさは5センチほど。
青い金属のような体の色が鮮やかに輝きます。
清流にしか住めないためその数が減っています。
メスには羽に白い斑点があります。
夏はトンボたちにとって恋の季節。
オスは腹部を反らせてメスにアピールします。
メスの前で激しく羽ばたきを始めました。
求愛のダンスです。
しかしメスはオスに応じようとしません。
するとオスは水面に浮かびました。
これはアオハダトンボに見られる独特な求愛行動です。
結局メスは飛び去ってしまいました。
柿田川の夏。
トンボたちの命をつなぐ営みが続きます。
11月。
気温が10度を下回る日が多くなってきました。
川岸には晩秋の訪れを告げるツリフネソウの花が咲いています。
水の中のミシマバイカモはどうなっているのでしょうか。
バイカモの森はすっかり姿を消し荒涼とした砂地が広がっていました。
日ざしが弱まってきたため古い葉はほとんど枯れ落ちてしまったのです。
ところが川底をよく見ると小さな水草が育っていました。
ミシマバイカモです。
次の世代に向けて新たな命を芽吹かせていたのです。
秋が深まる中思いもかけない営みが行われていました。
ハグロトンボの産卵です。
冬間近なこの時期になっても続いていたのです。
一年を通して一定な水の温かさがトンボたちの楽園を守っていました。
12月。
冬を目前にして柿田川は装いを変えていきます。
水辺の鳥たちは冬に備えて盛んに獲物を探しています。
このころ柿田川では年に一度のドラマが始まります。
柿田川が狩野川に注ぎ込む合流点。
ここからこの川ならではの珍しい光景が繰り広げられるのです。
水面に立つ波しぶき。
柿田川を上って来る魚がいます。
この時期産卵のため狩野川を更に下流へ下っていくはずのアユ。
柿田川を上っています。
その数およそ数万匹。
アユの群れは次々に上流へ上っていきます。
産卵に適した小石がたくさんあるからです。
産卵を控えたアユは婚姻色に変わっています。
黒っぽくなったのがオス。
やや薄いのがメスです。
メスが産卵します。
何匹ものオスが一斉に群がります。
普通アユの産卵は外敵の少ない夕方から夜にかけて行われます。
しかしこの川ではまだ日が高い時間から始まります。
アユたちは卵を産むのにふさわしい場所を求めて更に上流へと向かいます。
柿田川の最上流部です。
水深5センチほどの湧き間の近くにたどりつきました。
ものすごい数です。
ここは常に新鮮な水が湧き出ていて卵が育つのに適した場所です。
アユは生涯に数万個もの卵を産むと言われています。
柿田川を上りながら次々と繰り返されるアユたちの産卵。
この川だけに起きる不思議な現象です。
1月。
気温は氷点下3度まで下がりました。
柿田川は一面深い霧で覆われます。
冷たい空気と川の水の温度差がつくり出す「水煙」と呼ばれる現象です。
真冬になってもなお産卵のために川を上るアユの群れがいました。
小石にしっかりと産み付けられたアユの卵。
大きさは1ミリほどです。
こちらの卵には目が見え始めています。
あと10日ほどでふ化が始まります。
産卵を終えたアユたち。
既に婚姻色は薄れ間もなくその生涯を終えようとしています。
静岡柿田川。
富士山の豊かな伏流水がつくった清流にはこの川だけに見られる命の営みがありました。
2015/02/23(月) 15:41〜15:55
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「静岡 柿田川」[字]

静岡県東部を流れる柿田川は富士山の湧水が流れ込む日本有数の清流だ。夏から冬まで、この清流を代表するミシマバイカモやアユなどの季節の営みを見つめる。

詳細情報
番組内容
静岡県東部を流れる柿田川。全長1.2キロ。年間平均水温が15度、富士山の湧き水が流れ込む川には30種を越える魚などが住む。夏、清らかな流れを象徴する白い花ミシマバイカモが咲き始める。晩秋、柿田川では年に1度のイベントが始まる。産卵のため、アユ数万尾が柿田川の合流点からそ上し、浅瀬で産卵を始めるのだ。夏から冬まで、日本有数の清流・柿田川を代表するミシマバイカモやアユなどの季節の営みを見つめる。
出演者
【語り】中村慶子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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