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火による処刑も奴隷も正当化する「イスラム国」の論理
国際アジア部 横田勇人

(1/2ページ)
2015/3/4 7:00
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 日本人2人を殺害するなど残虐行為を繰り返すイスラム過激派「イスラム国」。同組織のバグダディ指導者は7世紀の預言者ムハンマドの後継者を名乗り、理想とする当時のイスラム国家の復活をうたう。住民にはイスラム教の教えを厳格に守るよう強要し、喫煙まで禁じる。非道行為や人権侵害は数知れないが、イスラム国の特徴は、イスラム教の教義を利用してそれを正当化しようとしていることだ。異様なイスラム国の行為の思想的背景を探った。

■火による拷問は神だけが行えるはずが…

ヨルダン人パイロットの殺害は同国民に大きな衝撃を与えた(パイロットの解放を求める市民)=ロイター
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ヨルダン人パイロットの殺害は同国民に大きな衝撃を与えた(パイロットの解放を求める市民)=ロイター

 2月初め、イスラム国が拘束していたヨルダン人パイロットを生きたまま焼き殺したとする映像を公開。世界に衝撃を与えたが、おそらくイスラム教徒のほとんどは、これに一つのイメージを重ね合わせたはずだ。イスラム教の聖典コーランで幾度となく描かれる、業火で罪深い人が焼かれる地獄の光景――。

 イスラム教では「審判」の日、死者も復活して神の裁きを受けると考える。復活を妨げないよう、遺体は土葬するのがイスラム教徒の慣習だ。それを知っていて焼殺するというのは、イスラム教徒にはこれ以上ない屈辱的な仕打ちと映る。このため多くのイスラム教関係者が激しく反発。カイロにあるイスラム教スンニ派の最高機関「アズハル」の宗教指導者も声明で「(殺人者を)殺し、磔(はりつけ)にし、さもなくば手足をもぎ取るべきだ」と口を極めて非難した。

 イスラム教では火による拷問は神にだけ行えるもので、焼殺はいかなる理由があっても禁じられるというのが一般的な解釈とされる。これに対し、イスラム国はネット上で公開している英語版プロパガンダ誌「ダービク」第7号で「無数のイスラム教徒が生きたまま焼き殺された空爆に対する報復にすぎない」と主張。「キサース(目には目を、で知られる同害報復の原則)の例として焼殺はイスラム法で合法である」と正当化し、「王宮にいる法学者」や「無知な敗北主義者」によって解釈が混乱していると反論まで加えている。

 昨年10月、ダービクの第4号が公開された時も、その時代錯誤の内容が国際社会を驚かせた。記事のタイトルに「奴隷制度の復活」とあったからだ。

 対象とされたのが、彼らが「悪魔崇拝者」と決めつけるヤジド教徒の女性たちだった。ヤジド教はイスラム教にゾロアスター教など複数の宗教の要素が混じった一神教で、「孔雀天使マラク・タウス」をあがめるなど独特の特徴を持つ。信者はイラク北部を中心に居住し、大半がクルド語を話す。

 イスラム国が昨年夏に彼らの居住地を支配下に置いた時に多数の難民が発生し、米国がイスラム国に対する空爆に踏み切るきっかけとなった。国連によると女性や少年少女約1500人がイスラム国に拉致された恐れがあるという。ダービクの記事は「ヤジドの女性と子供はイスラム法に従って戦闘に参加したイスラム国兵士の間で分配された」、「奴隷となったヤジドの家族はイスラム国兵士によって売却されている」と堂々と記している。

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