NHKスペシャル「腸内フローラ 〜解明!驚異の細菌パワー〜」 2015.02.22


(久保田)美容と健康を保つ知られざる仕組みが私たちの体の中に秘められていました。
ここは栄養を吸収する腸の中。
実は目に見えない小さな生き物たちが住んでいます。
見えてきました。
私たちの腸で暮らす100兆匹以上もの細菌たち。
腸内フローラと呼ばれています。
フローラとはお花畑という意味。
個性豊かな菌たちが暮らす腸の中のお花畑です。
その腸内フローラの研究が今医療を大きく変えようとしています。
世界中で次々と国家プロジェクトが始動。
最先端の遺伝子解析によって新しい菌の発見が相次いでいます。
その腸内細菌が全身の健康に影響を与えている事が分かってきました。
これまで考えもしなかった病気が腸内細菌と関わっていたのです。
腸内フローラは既に治療にも生かされています。
重い感染症にかかり全身のけん怠感とめまいに悩まされてきたこの女性。
腸内細菌を入れ替えるという最新の治療を受けると…。
なんとすっかりよくなりました。
そして美容にも。
腸内細菌が出すある物質の力でお肌のシワが減少。
更に腸内細菌の影響はなんと脳にまで。
性格や感情などを変える力があるというのです。
熱い注目を浴び始めた腸内細菌の世界。
腸内フローラの驚異のパワ−に迫ります。
(2人)こんばんは。
さあ今日のテーマは「腸内フローラ」という事なんですけども。
はい。
私たちの体の中には皮膚とか口の中とかいろんな所に細菌が住み着いているんですけれども中でも腸の中に住む腸内細菌は一番数が多いんですよ。
どれぐらいいるもんなんですかね?なんと100兆以上。
100兆?その腸の中の細菌の生態系全体を指して腸内フローラと。
生態系って事は本当にこの中に地球が1つ入ってるみたいな…。
そんな考え方でいいんですかね?もうそうですね。
今腸内フローラを調べる事で医療の大転換点になるんじゃないかと…。
うわっすごい話になってきましたけども。
宮崎さん何が一番興味深いでしょうか?やはりシワ…。
シワとおなかが関係してるとあんまり思えないですよね。
ふだん考えないですよね。
考えないですからね。
パパイヤさんいかがでしょうか?肥満です。
もしかしたらこれが分かれば効率のよいダイエットができるんじゃないかと。
そうかもしれないですね。
(宮崎)それ聞きたい。
はいという訳でまずは腸内フローラにどんな細菌がいるのかお見せしたいと思います。
どうぞ。
こちらパパイヤ鈴木さんのおなかの中にいる細菌…腸内細菌を挙げてみました。
結構な数ですよね。
(宮崎)こんなにいっぱい?
(鈴木)すごい数だ。
うわっちょっと恥ずかしい!いつ調べたんですか?こんな…。
(鈴木)ちょっとこの間…。
分析をお願いしました服部正平さんです。
よろしくお願い致します。
(一同)よろしくお願いします。
これ結構たくさんいますけど…。
(服部)まあトータルとして200種類ぐらい見つけまして。
例えば皆さんがご存じだとすればラクトバチルスとかですね。
そういうのは乳酸菌として有名な菌とか入ってますよね。
これは人それぞれ違うものなんですか?先生。
これはかなり違うんですよ。
当然の事ながら毎日毎日少しずつ変化するんですが大きくは変化しない。
恐らく死ぬまで一生涯その人はその人の腸内フローラを…タイプを持つと。
(宮崎)そうなんですか。
パパイヤさんがほかの人とこれ全然違うっていう特徴的なものはないですか?ここに不明ってありますよね。
こんなに…。
(服部)結構不明な菌がほかの人よりも少し多い。
新しい菌も入ってる可能性もある。
パパイヤ菌みたいな?パパイヤ菌が…。
これほんの10年前だったらこんなにリストはできないんですよ。
分からなかった…。
この5〜6年前から全体像をリストアップできるまでになったという事ですね。
これが分かるからいろんな事が分かってきたという事ですね。
この200種類100兆以上という菌がおなかの中で毎日増殖していて増えた分がうんちとして出ていく…。
久保田さんが言うとまたかわいく聞こえますね。
うんちがあるじゃないですか。
その半分ぐらいから1/3ぐらいは実は腸内細菌の固まりなんですよ。
そうなんですか?重さに換算しますと1キロから2キログラムぐらい…。
おなかにいるのが…。
あるという事です。
そんなに?
(鈴木)え〜っ?その腸内フローラ私たちの全身の健康と切っても切れない関係にある事が分かってきました。
そうなんですよね。
ダイエットしたい方それからお肌のシワが気になる方腸内細菌次第で大違いらしいです。
腸内細菌が全身に影響を与える。
それを世界に知らしめたのは肥満に関するある研究でした。
発表したのは…腸内細菌の研究で世界のトップを走る科学者です。
博士は大胆な実験を行いました。
これはマウスの隔離装置です。
この中は外の世界と完全に切り離されていて細菌一匹たりとも入れない仕組みになっています。
この装置を使って完全な無菌状態で育てたマウスにある事をして特別なマウスを作りました。
人間の腸内細菌を移植したマウスです。
この子のおなかには肥満の人の腸内細菌が入っています。
研究では肥満の人と痩せている人の腸内細菌をマウスに移植。
人間の腸内細菌を持ったマウスを作りました。
そしてエサや運動量など同じ条件で育てます。
すると驚きの結果が現れました。
脂肪の量の変化です。
痩せた人の菌を与えたマウスは変化なし。
ところが肥満の人の腸内細菌を与えたマウスはどんどん脂肪が増え太ってしまったのです。
何度やっても結果は同じでした。
肥満の人の腸内細菌をもらったマウスは太るのです。
肥満の人の腸内ではある種の細菌が少ない事が分かりました。
それが問題だったのです。
肥満の人の腸内で少なくなっていたのはバクテロイデスなどの菌。
こうした菌に肥満を防ぐ働きがあったのです。
一体どうやって?腸内細菌は私たちが食べたものを分解しそれを栄養にして生きています。
その時腸内細菌はさまざまな物質を出します。
腸内細菌が出す物質が私たちの体にとって重要な働きをしている事が分かってきました。
バクテロイデスが出すのは…これが肥満を防ぎます。
その仕組みです。
もともと肥満は脂肪細胞が脂肪を取り込む事で起きます。
血管を流れる脂肪を取り込み続けどんどん巨大化するため太ってしまうのです。
バクテロイデスが出した短鎖脂肪酸は腸から吸収され血液中に入ります。
全身に張り巡らされた血管を通して体の隅々まで運ばれていきます。
短鎖脂肪酸が脂肪細胞に働きかけると脂肪の取り込みが止まります。
余分な脂肪の蓄積を抑え肥満を防ぐのです。
短鎖脂肪酸にはもう一つ別の役割があります。
筋肉などに作用し脂肪を燃やす働きです。
全身のエネルギーのコントロールを腸内細菌が行っていたのです。
短鎖脂肪酸以外にも腸内細菌が出す物質が数多く発見され始めています。
そうした物質がさまざまな効果をもたらしている事が分かってきました。
老化の防止もその一つ。
シワはちょっとあるかな少しね。
腸内細菌が作る物質が肌の若さを保つ事を実証しました。
これがその細菌。
女性ホルモンに似たエクオールという物質を出します。
実験では更年期の女性67人にエクオールをのんでもらい追跡調査しました。
すると…?エクオールをのんだ人はシワが浅くなっていったのです。
こちらがシワの画像。
確かに改善しています。
腸内細菌が作るエクオールが肌の張りを保つコラーゲンを増やしたと考えられています。
コラーゲンっていうその線維芽細胞って細胞が作るものなんですけれどもそういうものの働きを上げて肌の張りを深いところで与えるようなものが増えてくるっていう事は考えていいんじゃないでしょうか。
新たな発見っていうかそういう形ですね。
更にエクオールには更年期の女性を悩ます顔のほてりや骨密度の低下を防ぐ力も報告されています。
腸内でさまざまな物質を作り出す100兆匹以上もの菌。
それは私たちの美容と健康を保つ上で欠かす事のできない存在だったのです。
(ゴードン)腸内フローラは私たちの体の一部といってもよい重要な存在です。
腸内フローラはまるで私たちの臓器の一つであるかのように働いているのです。
へえ〜!顔が明るくなってますけども。
(笑い声)まずは肥満についてなんですけども…。
肥満っていうのはどうしても食べ過ぎの問題とそれから運動不足という生活習慣の乱れという事が大きいんですけれども最近はこの腸内細菌非常に注目されて大切なものだと分かってきましたですね。
我々と腸内細菌は一緒に住んでいる訳ですよね。
で食べたものを一緒にシェアしている訳ですね。
物が入ってきますと腸内細菌がまずそれを消化して先ほどの短鎖脂肪酸みたいなああいったものいっぱい作ってくる訳ですね。
ああいうものがあるので我々は太らずに済んでいると。
何でしたっけさっきの…バクテロイデス?あっあったあった。
あっあそこ…。
(鈴木)ああ上の?ああありますあります。
いましたね。
(伊藤)まずはバクテロイデスがいたという事はめでたいお話かと。
でも実際にはその数がどれだけあるのかっていう事が大事でたくさんのものがたくさん種類があってしかもその数が多いバラエティーを持ってるというのが非常に大事なんですね。
なるほど。
そのバクテロイデスを増やす方法ってあるんですか?キーワードはやっぱり食物繊維なんですね。
何となく食物繊維っていうのは大事だっていう事は知っておられると思うんですけどね。
実は食物繊維というのはこの腸内細菌のエサなんですね。
はは〜…。
で最近我々は食物繊維をとるのが非常に少なくなっていて日本人は基準量にも達していないんですね。
そうすると結局エサが減ってくるのでですから腸内細菌は当然そうしますと数が増えられないという事で彼らのパワーやっぱり落ちてくるという事が問題。
考えた事なかったですね。
でもそういう考え方って大事ですね。
「これが健康にいいんですよ」って言われても理解ができないけど彼らにエサをあげるために何を食べたらいいかって言われると愛着も湧くし。
例えばごぼうですとかたまねぎとかアスパラガスとかいったああいう野菜ですね。
それから豆類ですね。
納豆とか大豆とか。
ああいったものにも非常にたくさん食物繊維が含まれているので是非ともそういうのをとるのがいいと…。
シワを改善したエクオールっていう物質も大豆を腸内細菌が分解して出来るものなんですよね。
ですから我々はもともと大豆をたくさん食べる民族だったんですね。
ですからエクオールを作る菌を結構我々はちゃんと持ってる人が多かったんですね。
ところが今大豆食べてる人すごい少なくなってきてせっかくエクオール産生菌持っていながらその恩恵にあまりあずかれなくなってきているという状況なんですね。
エクオールを作る菌を持ってない人もいるんですか?そうですね。
それはおられるんですね。
自分に欠けてる菌を摂取して菌を新しく育てる事はできないんですか?そういう考え方が今後やっぱりあると思うんですね。
最近よく美魔女とか…いつまでも若々しくいる人が多いじゃないですか。
そういう方たちっていうのは腸内環境というか…。
もうなかなか聞けませんけども彼女たちはきっと快食快便なんですよ。
エクオールを作る菌をたくさん持っておられる方はああいう…いくつの年齢になられても多分魅力的なんではないかなと。
なるほど…。
もうそれ体質でしょうがないのかなって思ってたんですけど…。
体質といってしまうと我々はすぐに遺伝子と思ってしまうんですね。
「じゃあもうしかたがないんだ」。
でもその体質は実はこの腸内細菌が決めてるかもしれないですね。
はあ〜…。
そっか…。
じゃあこの腸内細菌がいろんな物質を出して私たちの全身の健康を保つために作用してる事が分かってきたんですけども今出てきたシワとか肥満のほかにも糖尿病ですとかがんとかアレルギーとか…。
(宮崎)すごいです。
今この腸内フローラが医学の世界に革命を起こしているそうです。
腸内フローラの秘められたパワーが実際の治療に生かされ始めています。
アメリカ政府が支援するベンチャー企業の研究室。
ここでは腸内フローラで糖尿病を治すという全く新しいタイプの薬を開発しています。
糖尿病は血糖値の調節に欠かせないインスリンが出にくくなる病気です。
その原因として腸内細菌が作る短鎖脂肪酸が関係している事が分かってきました。
短鎖脂肪酸の量が減るとインスリンの分泌も減ってしまうのです。
短鎖脂肪酸を増やすにはどうすればよいのか。
この企業では短鎖脂肪酸を作る細菌を増やそうと考えました。
菌を増やす効果がある食物繊維などの成分を配合して薬を開発。
臨床試験を行いました。
試験を行った…糖尿病の研究でアメリカをリードする医師の一人です。
患者にこの薬をのんでもらい腸の中で短鎖脂肪酸を作る菌を増やします。
2週間後。
食事のあとのインスリン量の変化を見ます。
菌を増やす薬をのんだ人は食後のインスリンが出やすくなっていました。
腸内フローラの力を利用して糖尿病を改善できる事が分かったのです。
医学は進歩してきましたがいまだに糖尿病を克服するには至っていません。
腸内フローラを変えるという全く新しい方法を見つけた事で糖尿病治療は大きく進歩する事でしょう。
更に人類の大敵がんの予防に役立てようとする取り組みも始まっています。
がん研究会有明病院では患者や健康診断に来た人から便を集め腸内フローラを調べるプロジェクトを始めました。
プロジェクトのリーダー…原さんはがんを引き起こす腸内細菌を見つけました。
遺伝子解析の結果新種である事が分かりアリアケ菌と名付けました。
これががんの原因となります。
DCAは人の細胞に作用して細胞老化を引き起こします。
老化した細胞は発がん物質をまき散らし周囲にがんを作るのです。
この研究は科学雑誌「サイエンス」で年間の最重要項目の一つにも取り上げられ世界中の注目を集めました。
更に原さんは肥満になるとアリアケ菌が大幅に増える事も突き止めました。
肥満ががんに関係している事を示す重要な発見でした。
腸内細菌をコントロールする事でがん予防が可能になってくるんでかなりの部分ですね。
可能になってくるんじゃないかと私は期待していますね。
(宮崎)ふ〜ん…。
がんの話も出てきました。
随分と具体的な感じになってきましたね。
アリアケって日本の名前が付いてるのはうれしいけどこれは増やさない方がいい…。
悪い菌ですよね。
ものすごく大きな発見だったんですよね。
今まで肥満とがんという関係はかなり昔からいわれてましてですねある報告によると世界中で約280万人肥満を含めた生活習慣でがんになってると。
そういう報告があるんですよね。
その中でしかしなぜ肥満ががんを誘発するかというちゃんとした原因分かってなかったんですけどもそこに腸内細菌が出てきたと。
多分原因の一つだろうと。
(宮崎)これ特に…がんにもいろいろありますよね。
何のがんが得意な…。
私の専門の前立腺がんももちろんそうだし乳がんもそうだし大腸がん肝がん。
大体5大がんといわれるがんはかなり関係があるといわれてます。
大腸がんは女性の死亡原因の第1位になってますし本当に太った方で大腸がん多くなってきましたですね。
そのアリアケ菌が悪さをしている可能性が…。
もう一つこれが…アリアケ菌は悪玉菌という感じだったんですけども我々の研究グループで見つけたナッツ菌というものがあります。
これはいい菌ですね。
つまり私たちの今の研究では前立腺がんを予防するという働きがある菌です。
特にがんに関してみると予防が大事でしょ?つまりがんになってから治療するのがものすごくコストがかかっちゃう。
でも予防のために何か薬を作って化学物質を作って投与するのもまたおかしな話で。
つまりこういうふうに生活環境あるいは腸内細菌を変化させる。
それで疾患が予防できればこれはものすごく効率的ですよね。
それはとてもすばらしい事だなっていう。
研究者の皆さんにとってもこの腸内っていうのがもう新たなフロンティアっていうか…。
そうですね。
我々が今原因が分からない病気ってまだまだいっぱいある訳なんですね。
どうもそういったものに我々が腸内細菌っていうのを意識してひとつのジグソーパズルの新しい一つのピースと考えたらかなり病気は分かってしまうんではないかなと。
新しい治療法も分かって…。
だから腸内細菌はそれぐらい我々の医療を次のステージに引き上げてくれるぐらい力がある。
いわゆる難病っていわれている今治療法がない病気でも変わってくるかもしれない。
そうですね。
原因が分かってそれが実は腸内細菌なのでそこから新しい治療法が出てくるかもしれないですね。
はあ〜。
何か腸内の細菌の研究が進めば我々にとってこんないい事ばっかり?本当にそれが医学や医療に通用するかどうかというところはもう少し詳しく臨床試験するなり何なりしないと表面的な話だけになっちゃいますけどね。
でも確実ですよ。
確実にこの研究というかこういう学問は大事だと思います。
本当に医療に大きな革命を起こしている腸内細菌なんですけれどもオープニングのVTRに出てきた女性。
あの方がかかっていたのは腸の中でディフィシル菌っていう菌だけが異常繁殖してしまう病気でもう全身に不調が出てっていう病気なんですけれども薬がほとんど効かなくて。
…でこれアメリカだけで年間1万人以上が亡くなっている深刻な病気なんですけれどもここ2年ほどで急速に発展してきたのが腸内細菌を使った治療でこういうものです。
これ先生どんな?本当に驚かれると思うんですけれども健康な人から便を頂いてそれを水100ccぐらいに溶かす訳です。
それをチューブで直接腸の中に流し込むっていう方法。
えっ!非常にショッキングな言葉を今…。
(笑い声)健康な方の腸内環境を全部集団として入れ込んでいくというそういう治療法なんです。
本当に劇的な効果があって取材した女性も2日後にもうピンピンしてらっしゃいましたし生命維持装置が必要なぐらい重症の患者さんが翌日にすっかりよくなった…。
(鈴木)え〜っ!なかなかこれ大変な病気なんですけれどもアメリカの報告ですと8割から9割ぐらいの方がよくなると。
もう実際に臨床というか現場で?欧米の方のガイドラインでは実際にほかの薬が効かない方にはこの治療法をやる事が強く勧められるというふうに書かれてるんですね。
日本ではまだそこまでいってませんけども私どもの病院でももう既にこれ臨床の試験が始まっています。
次はいよいよ脳にまいります。
なんと性格まで腸内細菌が関係しているらしいです。
不安や恐怖。
幸せや喜び。
このような感情は私たちの脳で生まれています。
しかし脳で生まれる感情が腸内細菌によって操られている可能性があるというのです。
それを明らかにしたのはマウスの性格に関する研究でした。
衝撃的な実験を行ったのは…
(ベルチック)この2匹のマウス見た目は同じですが性格が全く異なるんです。
こっちはとても臆病な性格です。
そしてこっちは…う〜ん。
好奇心が旺盛で活発なんです。
マウスを高さ5センチの台の上に乗せ降りるまでの時間で警戒心を測ります。
右の活発マウスはすぐに台から降りようとします。
一方左の臆病マウス。
結局5分経過しても降りませんでした。
2種類のマウスの性格の違いはもともと持っている遺伝子の違いによるものだと考えられてきました。
しかしベルチック博士は腸内フローラにも違いがある事を発見。
これが性格と関係していると考えました。
そこで活発マウスの腸内フローラを臆病マウスに移植。
反対に臆病マウスの腸内フローラを活発マウスに移植しました。
3週間後再び実験を行うと臆病マウスは台から速く降りるようになりました。
警戒心が下がったのです。
反対に活発マウスは警戒心が高まり台にとどまる時間が大きく伸びました。
何度繰り返しても結果は同じ。
腸内フローラを交換する事でマウスの性格まで変わってしまったのです。
更にコミュニケーションの能力にも腸内細菌が関係している可能性が浮かび上がってきました。
マウスは人には聞こえない超音波で呼びかけを行っています。
今オスがメスに活発に求愛をしているところです。
しかし中には呼びかけの回数が少なくコミュニケーション能力が低いマウスがいます。
普通のマウスでは呼びかけの回数は3分間におよそ450回。
一方コミュニケーション能力の低いマウスでは普通の1/3です。
一体なぜなのか。
イレイン・シャオ博士はコミュニケーション能力が低いマウスの血液中である物質が増加している事を突き止めました。
腸内細菌が作る4EPSという物質です。
これが脳に悪影響を与えていると考え4EPSを取り除く薬をのませました。
するとマウスの呼びかけの回数が大幅に増加。
コミュニケーション能力が改善したのです。
予想もしていない結果だったのでとても驚きました。
脳と腸内細菌の関係を探る研究は今最も熱い分野なんです。
腸内細菌は人の脳にも影響を与えるのでしょうか。
私たちの脳は1,000億個もの神経細胞が作るネットワークで出来ていて電気信号をやり取りしています。
神経のネットワークは脳の外にもつながり全身に広がっています。
ネットワークが集中する場所が脳のほかにもう一つあります。
腸です。
腸を覆う神経細胞の数はおよそ1億個。
人体で脳に次いで2番目に多く腸管神経系と呼ばれています。
実は腸内細菌が作る物質の中には神経細胞を刺激するものが数多くある事が分かってきました。
こうした刺激によって電気信号が生まれます。
それが脳に伝わり感情などに影響を与えると考えられているのです。
既に腸内細菌をうつ病の治療に使う研究が始まっています。
マウスの性格を入れ替えて世界を驚かせたベルチック博士は去年から臨床試験を始めました。
脳に影響を与える可能性がある菌を患者にのんでもらい不安や恐怖をつかさどる脳の領域がどう変化するか調べています。
腸内フローラを変える事でうつの症状は改善するのか。
今データの解析を進めています。
うつ病の患者の中には腸内フローラを変えるだけで心の不調が治ってしまう人がいるはずです。
今後心の病の治療にはきっと腸内フローラが使われる事になるでしょう。
すごい話ですね。
脳にまで関わってくる。
私今まで脳って人間が人間である高等な器官で腸って栄養吸収したあとは要らないものを排せつするみたいな事でちょっと軽く見てたかもしれない。
ましてやそこにいる細菌の事なんてあんまり考えてなかったかな正直言って。
脳と同じぐらい何か大事な場所というような感じが。
だって性格が腸が影響してるってなったら「腸内細菌を整えなさいよあなた」って。
ちょっと暗かったりすると「あなた大豆を食べなさい」。
だからそういう思いも寄らなかった事になってくるかもしれないって事ですよね。
ここからまた服部先生…。
(一同)よろしくお願いします。
実際腸内細菌と脳の機能といいますかねここ2〜3年の間にこういうような論文が立て続けにいろいろ出てきましてやはりそういう脳と腸の間の関係が間違いないだろうと。
でもそう考えると人間というのは心も体もその腸内細菌に何となく操られているんじゃないかという気持ちになってくるんですけども。
いやそれは…そういうのにも見えるんですけど実は我々に住んでいる腸内細菌というのは実は人間の方がですねセレクト選んでお前は駄目お前はOKと。
やはり人間にとっていいものを住み着かせたいじゃないですか。
だから我々にとって都合のいいものを選んできてるという。
例えば地球上にいる菌の大きな分類でいくと70グループぐらいに実は分かれるんですね。
見つかってるんですね。
ところが腸内にいるのはこの黄色で書いてあるこの4つのグループだけが腸内で住む事を許されている。
それは人間が許したと?
(服部)許したという。
長い進化の中でこういうものを住ます事が人間にとってすごくいい事だという事で選んできた。
私たち人間は共に生きる腸内細菌をどうやって選ぶのでしょうか?もともとお母さんのおなかの中にいる胎児は全く菌がいない状態に保たれています。
頭見えてきた!見えてきたよ頑張れ。
あ〜あ〜!細菌と初めて出会うのは誕生の瞬間。
ほら見て見て!見える?見えた!その後口や鼻から入った菌が腸へたどりつき少しずつ住み着いていきます。
しかし入ってきた菌が全て住み着ける訳ではありません。
必要な細菌だけを住み着かせる仕組みが私たち人間の体にある事が最新の研究で分かってきました。
人と腸内細菌が共に生きる仕組みを研究している…人間の腸の中で分泌される物質に特別な役割がある事を発見しました。
青いのが腸内細菌。
その周りに張り付いている緑色のものがIgA抗体です。
緑色に光るのがIgA抗体。
青く見える腸内細菌の周りにびっしりと張り付いています。
そもそも抗体は体の中に入ってきた細菌を攻撃するためのものです。
表面に取りつき菌を殺す働きがあります。
しかし不思議な事にIgA抗体が張り付いても菌は死にません。
驚くべき役割がそこにはありました。
全く逆なんです。
IgA抗体は攻撃するためでなく腸内細菌を助けるために働いています。
IgA抗体は私たち人間に必要な菌だけを選んで腸に住み着かせているのです。
実は細菌たちにとって腸に住み着く事は簡単ではありません。
腸の中には常に流れがあるためです。
唯一流されないのは腸の壁を覆っている透明の部分粘液層です。
厚さ0.1ミリ。
細菌にとって格好の住みかです。
しかしここは粘りけが強く普通は細菌が中に入る事はできません。
ファガラサン博士はIgA抗体に選ばれた細菌だけが粘液層に入れる事を発見しました。
粘液層に暮らしている数多くの細菌たち。
IgA抗体はどのようにして細菌をここへ導くのでしょうか?腸の壁から大量のIgA抗体が湧き上がり始めました。
今IgA抗体が粘液層の表面に達しました。
表面近くにいた細菌の体にIgA抗体が張り付き粘液層の中へと引き込んでいきます。
IgA抗体が張り付く事で抵抗が減り中へ入る事ができるのです。
これは顕微鏡で見た腸の粘液層の断面。
数多くの細菌たちが粘液層の中に入り込んでいるのが分かります。
IgA抗体がどんな細菌を選ぶのかは私たちの祖先が細菌たちと共に過ごす中で徐々に決められてきました。
長い時間をかけて作り上げられた巧妙な仕組みが私たちの体の中に秘められていたのです。
私たちは細菌と共に長い進化の歴史を過ごしてきました。
その過程で互いに助け合う仕組みを発達させたのです。
腸内細菌と共に生きている事の本当の意味を知るべきです。
私たちは腸内細菌と一緒になって初めて一つの生命体なのです。
いや〜…。
何かちょっと泣けてきますね。
(鈴木)ドラマだね。
そうですね。
一緒に生きていく腸内細菌を選んでおなかの中に住んでもらってるっていう。
そういう事ですね。
だから彼らにとってもすごく安住の地ですよね。
人間がごはんを食べる。
それが彼らにとってエサになると。
定期的にエサも運んでくれる…。
だからお互いこう総合的に扶助し合うというまあ共生的な関係が結局成り立っているという事になりますね。
お互いさまだったんですね。
本当に人間すごいなと思うけどこれを発見するっていうのがまたすごい事だなと思って。
こんなに人類は一緒に歩んできてたのにずっと気付いてあげてなかったっていうところあるじゃないですか。
今この時代で分かったってとてもすごい事ですよね。
そうねえ。
本当に知らなかったっていうのは本当にびっくりしてて…。
それは研究する方も一緒で我々も本当にこのように腸内細菌というものがこんだけ人に対していろんな生理作用を持ってるというの本当…この5年ぐらいですよね。
そうなんですか。
あまりにも腸内細菌というのが膨大すぎてそのいわゆるそういう科学技術といいますかその技術の発達を超えてるような複雑さがあったと。
それからその科学技術がですねやっとここでそういう複雑なものを解き明かすぐらいになってきて初めて見えてきたと。
宮崎さんどうでした?今日。
腸内のフローラの映像が何か宇宙の映像見てるようなね。
本当この中に小さい宇宙があるみたいな感じですよね。
あと「こんな事に役立ってたの?」っていう人間が考える…想像の及ばないようなものがそれぞれいてだからなおさら一人一人が人間っていとおしい存在大事な存在だなってちょっとちょっと思いました。
考え方変わりましたね。
今まで漠然と「おなか冷やしちゃ駄目だよ」とか何か「こうした方がいいんだよ」っていうものが腸内細菌という事を分かると全てふに落ちる。
だからこれからはトイレに行ったあとに必ず感謝をしてですね「いやご苦労さまでした。
助かりました」って。
なるほど。
ここにやっぱり一つパートナーがいるんだと思うとちょっと一人じゃないんだなというか共に生きていかなきゃいけないんだなというふうに心にしみましたね。
私たちのおなかの中の不思議なパートナー腸内フローラ。
人と腸内細菌は何百万年もの時をかけ共に生きる仕組みを築き上げてきました。
しかし薬の使用や食生活の変化によってその奇跡のバランスが崩れかけているのではないかともいわれています。
私たちは腸内細菌と共に生きる事の本当の意味にようやく気付きました。
腸内細菌は今この瞬間もあなたのおなかの中で生きています。
2015/02/22(日) 21:00〜21:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「腸内フローラ 〜解明!驚異の細菌パワー〜」[字]

腸内フローラ(腸内細菌の生態系)が注目されている。美肌やダイエットなど身近な話から、がんや糖尿病、うつなどの病気まで。私たちの健康と細菌の知られざる関係に迫る。

詳細情報
番組内容
腸内フローラ(腸内細菌の生態系)に、今注目が集まっている。私たちの腸内には100兆以上もの細菌が住んでいて、その菌が出す物質が全身の健康と深く関わっていることが分かってきた。美肌やダイエットなど身近な話から、がんや糖尿病、うつなどの病気まで。既存の治療だけでは限界のある病気に対する切り札として、腸内フローラが脚光を浴びているのだ。最先端の研究を紹介しながら、腸内細菌と人間の知られざる関係に迫る。
出演者
【司会】井ノ原快彦,久保田祐佳,【ゲスト】宮崎美子,パパイヤ鈴木,東京大学教授…服部正平,慶応義塾大学教授…伊藤裕,東京大学特任教授…赤座英之

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ニュース/報道 – 報道特番

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