韓国の朴槿恵大統領(63)は1日、朝鮮半島で1919年に起きた「3・1独立運動」を記念する政府式典で演説し、旧日本軍の元従軍慰安婦女性は平均90歳に近いと指摘し「名誉を回復するための時間はあまり残っていない」と日本側に早期解決を求めた。また日本政府が「教科書歪曲」を試みていると批判した。その韓国で先月末、姦通(かんつう)罪が廃止されるという歴史的な法律改正が行われていた。同罪をめぐる状況は…。
韓国の憲法裁判所は2月26日、同国の刑法にある姦通罪は「個人の自由や権利を過剰に制限し憲法違反だ」とする判決を出し、同罪は即時廃止された。1953年の刑法で制定されて以来、62年ぶりの廃止。
憲法裁は過去4回同罪を合憲と判断していたが、配偶者以外の異性と性的関係を持つことに刑罰を科すことは不適当だとの考えが社会で強まったことが反映された。
2008年の最後の合憲判決後に同罪で起訴された約5400人は再審を申請すれば全員無罪になる。一方、民法改正などを通じ不倫で家庭生活を破綻させた側の責任を問う仕組みを補強すべきだとの声も出ている。
貞操観念の重要性を強調する儒教文化に根ざした韓国で、家族のあり方をめぐる議論が活発になりそうだ。リベラルな女性団体が判決を歓迎する一方、儒者の団体は「嘆かわしい」と非難した。
韓国の姦通罪は夫婦双方を対象に、不倫をした側とその相手を処罰。配偶者の告訴に基づく親告罪で、罰金刑はなく2年以下の懲役刑だけを定めていた。
日本にはない罪だが、どうして韓国にはあるのか。「韓国呪術と反日」(青林堂)などの著書がある文筆人の但馬オサム氏はこう語る。
「韓国国内では、このような前近代的な法律は早くなくなってほしかったという意見が大半を占めますが、続けるべきだという声も少なからずあるようです。韓国では現在でも毎年20件程度、姦通罪での有罪ケースがあるといいます」
記憶に残るものでは、1983年、日本でも活躍したことがあるプロ野球の白仁天選手が姦通罪で逮捕された。2011年には、なんと牧師が、自分が担当した結婚式の新婦と10年近く関係を続け、不倫妻ともども夫に告訴され、それぞれ懲役1年6月と懲役1年の実刑となった。
「姦通罪自体は親告罪なので、配偶者が訴えない限り“犯罪”にはなりませんし、訴えても途中で金銭による和解が成立するケースが多いようですが、実際は韓国にも日本に負けず劣らず不倫文化が根付いているようです」と但馬氏。
韓国で姦通罪が存続していた背景に、儒教的な性モラルを挙げる識者もいるが、あくまでそれは形式的なモラルにすぎないだろう。
「一方で、夫婦間に跡取りである男子がなかなか生まれない場合、夫人から愛人を囲うことを勧めるのを『妻のかい性』とみる伝統も根強く、これもまた韓国流の儒教道徳なのですから、日本人はちょっと理解できないことかもしれません。愛人といっても、法律的に重婚が認められていないだけで、正式の婚礼を挙げ、族譜(韓国式の家系図。韓国人が最も大切にするもの)にも正妻と同列に記載されます。第二夫人あるいは側室と呼んだ方がニュアンスが伝わりやすいかもしれません」(同)
姦通罪があろうとなくなろうと、韓国儒教式の男性優位、家父長絶対主義は100年たっても変わらないかもしれない。
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