集団的自衛権の行使容認を決めた昨年7月の閣議決定を受けて、5月の連休明けから安全保障法制の議論が始まる。何を議論するべきなのか? 重視すべきポイントは何か? 海上自衛隊で自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏に聞いた。
(聞き手 森 永輔)
昨年7月の閣議決定を受けて、具体的な法制の議論が5月の連休明けから始まる予定です。ここで重視すべきポイントは何でしょう?
香田:大きく3つあると考えています。1つは、個別的自衛権に基づく武力行使をいつ発動できるようにするかです。集団的自衛権の行使容認に注目が集まり隠れていますが、個別的自衛権の発動要件が実は重要ポイントです。第2は集団的自衛権の行使容認がもたらす抑止力向上に関する議論。そして第3は集団的自衛権の行使容認がもたらすメリットとデメリットをしっかり比較することです。
元海上自衛隊自衛艦隊司令官(海将)。1949年生まれ。1972年に防衛大学校を卒業し、海上自衛隊に入隊。統合幕僚会議事務局長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官
グレーゾーンは外国なら即座に軍隊が出動
第1のポイントは聞いたことがないポイントです。説明していただけますか。
香田:閣議決定に際して安倍政権は、武力行使が認められる新しい3要件を提示しました。
(1)我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他の適当な手段がないこと
(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
個別的自衛権について、この新3要件の(1)をどのように解釈して、具体的にどう運用するかがこれまで議論されていません。