イ病幕引きさせない
「全面解決」1年救済申請わずか
富山県の神通川流域で発生した「イタイイタイ病」の被害者団体が、原因企業の三井金属(東京)の謝罪を受け入れ「全面解決」の合意書に調印して17日で1年がたった。合意は国の基準では救済されない被害者に新たな道を開いたが、申請者は約60人と当初予想を大きく下回る。長期にわたる治療への不安や歴史風化の懸念も残り「全面解決が独り歩きしている。幕引きではない」と危機感を抱く関係者も。
「長年の懸案に一つ整理が付いた」。被害者の高齢化が進む中、一刻も早い救済を実現させたかった被害者団体「神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会」代表の高木勲寛(くにひろ)さん(73)は、合意をこう評価する。国の基準では公害病患者と認定されない、カドミウムによる腎臓障害がある人に三井金属が一時金60万円を支払うことが決まった。
当初、対象者は500〜600人と見込まれていたが、三井金属などによると、受け付け開始の今年4月から12月中旬までの申請者は60人程度。自分が該当者だと知らなかったり、手続きの方法が分からなかったりする人もいるとみられ、協議会で掘り起こしを進める。
生涯に及ぶ治療や症状悪化への不安も依然残る。給付額の大きい国の公害認定は条件が厳しいとされ、今年は3年ぶりに2人が認められた。県立イタイイタイ病資料館(富山市)で語り部をする小松雅子さん(59)は「公害に準じる病気として何らかの救済制度が必要」と国の支援を望むが、環境省は「現段階で救済対象を拡大するつもりはない」と動く様子はない。
関係者の高齢化などで問題風化を危ぶむ声もある。このため、公害防止や環境保全に継続的に取り組むため被害者団体が今年9月に財団法人化された。三井金属からの解決金10億円を原資に、環境問題の啓発や保全活動に助成していく。
小松さんは、イタイイタイ病対策協議会名誉会長で、三井金属を相手取った訴訟の先頭に立った故小松義久さんの次女。苦しむ人のため走り回った父は2010年に亡くなった。小松さんは「合意で終わったと思われるのが一番怖い。多くの人を不幸にする公害を2度と起こさないよう活動を続ける」と語る。
イタイイタイ病 富山県の神通川流域で発生した4大公害病の一つ。三井金属の神岡鉱山(岐阜県飛騨市)から流出した重金属「カドミウム」が原因で腎臓障害や骨軟化症を引き起こす。国の患者認定は1967年に始まり、エックス線か骨を削る検査で骨軟化症の症状が認められることなどが条件。三井金属と被害者団体の昨年の合意では、国の基準で患者認定されなくても、75年以前に20年以上流域に居住歴があり、特定のタンパク質の尿中濃度が一定値以上の人に一時金が支払われることになった。
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