これからは、アマゾンで注文すれば、配達人の代わりに空飛ぶ無人飛行機(ドローン)がやってきてくれるはずだった――。近未来の都市では、SF映画さながらに、無数のドローンがお互いをよけながら飛び交うはずだった――。そして商品物流は飛躍的に進化するはずだった――。
米連邦航空局(FAA)は2015年2月15日に商業ドローンの規制案を発表した。米アマゾン・ドット・コムや米グーグルといった米国のIT(情報技術)企業が、商品配送にドローン導入を検討しており、その本格始動のきっかけになると期待されていた。究極の短時間配送と省人化によるコスト削減を目指して、各社は開発にしのぎを削っていた。実際に両社とも莫大な費用をかけてテストを重ねている。また、この4年間、FAAもあるべき規制案づくりに苦心してきた。
今回発表されたFAAの案は、60日のパブリックコメントを求めるとしており、まだ決定ではない。その60日を経た後、立案となる。今回のFAA案は、法規制にむけた一歩として評価できる一方で、しかしその規制案自体にはある種の失望が広がっている。今回案のポイントは次の通りだ。
- 商業ドローンは、貨物重量を含めて55ポンド(約25キログラム)以上であってはならない
- ドローンのオペレーターは、FAAの課す筆記試験に合格し、米国でドローンを飛ばす許可書を取得せねばならない
- 商業ドローンは500フィート(約152メートル)以下の高さを飛行し、時速最高スピードは100マイル(約160キロ)で日中飛行とする
- 空港の近くで飛ばしてはいけない
- オペレーターの見える範囲内での飛行とする
重量制限とともに、オペレーターの見える範囲でのドローン使用が必須とすれば、もちろんアマゾンが狙っていたような省人化は期待できなくなってしまう。無数のドローンが自動的に配送する将来を夢見ていたアマゾンにとって、オペレーターとセットのドローンは“悪夢”でしかない。
これを報じたあるメディアは「この大きな規制は、はたしてグーグルやアマゾンにどれくらい損害を与えるのだろうか。少なくとも両社は2010年から相当な研究開発を重ねてきた」と述べた。
なるほどグーグルはドローン開発のために米Titan Aerospaceを買収し、その額に6000万ドルを費やした。また米国よりもドローン規制の緩やかなオーストラリアで実地テストを繰り返してきた。アマゾンも近年中にもドローン配送の準備ができるとしていた。当連載でも、アマゾンの戦略に触れた。アマゾンはラストワンマイルと呼ばれる、倉庫から消費者宅までの配送にドローンを使う計画だった。ドローンにより注文後30分以内の配送が可能になるとされた。