問題発言を繰り返す籾井会長と、沈黙し続けるNHK報道局。「みなさまのNHK」はどこへ行ってしまったのか。

2015年03月04日(水) 高堀 冬彦
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NHK報道局はなぜ沈黙し続けるのか?

このため、籾井氏の言動については、反政権的とされる新聞から政権寄りと目される新聞までが一斉に報じている。普段はNHK会長の言動など扱わない民放のニュースまでもが取り上げた。では、当のNHKのニュースはどうかというと、ほとんど扱わないのはご存じの通り。このままでは籾井氏への批判が、NHK報道局にも飛び火しかねないだろう。

辞表をポケットに入れてでも籾井氏の問題について報じようとするデスクや記者はいないのか。読売、朝日、毎日では過去、いずれも記者たちによる激しい経営陣批判が巻き起こり、社長がその座を追われたことすらある。TBSなどもそうだ。これだけ世間が騒ぎながら、沈黙を守り続けるNHK報道局は不気味ですらある。自分たちがジャーナリストであることより、安定したNHK職員の座を守ることを優先させているのだろうか? もし、そうであるなら、天下国家を論じるのはお門違いだ。

NHKでは2007年、記者らが恥知らずな事件を起こしている。放送前のニュース原稿を悪用した株のインサイダー取り引きだ。しかも、担当の違う3人が同じ不正を働いており、単にモラルの欠落した個人がしでかした事件とは色合いが異なった。

業務提携など、特定の企業に関するニュースを流す前、ひそかに株の売買を行えば、誰だって簡単に儲けられる。インチキ賭博と同じなのだから。大体、まともな記者は株取引そのものをやらない。日々、さまざまな情報に触れているので、どうしたって有利になるからだ。NHK職員は十分に高給取りなのに、それでも満足できない拝金主義者であるなら、別の仕事を選ぶべきなのだ。

その後、当たり前の記者教育が行われたためか、NHK記者の不祥事は目に見えて減った。コンプライアンス意識が浸透したのだろう。だが、その分、記者たちがサラリーマン化してしまったのではないか。これだけ世間が問題視している籾井氏について目を逸らし続けている姿勢は解せない。

今、問われているのは籾井氏の資質だけではない。NHK記者たちのジャーナリストとしての矜持も同じ。このまま籾井氏が問題発言を繰り返し、それに対して報道局が沈黙し続ければ、NHKへの信頼は失墜する。
 

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