テレビのヨミカタ
2015年03月04日(水) 高堀 冬彦

問題発言を繰り返す籾井会長と、沈黙し続けるNHK報道局。「みなさまのNHK」はどこへ行ってしまったのか。

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NHKオンラインより

籾井会長の日本語の使い方と読解力に疑問

「よくあること」。これを言い換えるとすれば、「いつものこと」「日常茶飯事」「珍しくないこと」などとなる。

NHKの籾井勝人会長は就任直後に全理事から辞表を取り付けた。その後、衆院予算委員会分科会で「よくあること」と説明したが、真っ当な企業であるなら、規模の大小を問わずあり得ない話なので、この表現は間違いだ。籾井氏は、正しい日本語の使用を堅守する立場でもありながら、言葉を誤用したことになる。あるいは世間の実情を誤解していたのだろう。

ところが、本人は間違っていないと思っているらしい。籾井氏は2月18日の民主党総務部門会議で、この発言の取り消しを求められたのだが、「撤回しません」と拒否。理由をこう説明したのである。

「(役員からの辞表提出の例は)あるものはある。皆無ではない。言葉尻をとらえないでほしい」

「よくあること」と「皆無ではない」では、意味が全く違う。これでは「大半」と「稀」が同じであると主張するようなものだ。詭弁ですらない。だから、「言葉尻をとらえないでほしい」という言葉の使い方も間違っている。

籾井氏の場合、読解力にもクビを傾げざるを得ない。単純な文言が並び、中学生でも理解できるレベルの放送法が、きちんと分かっているとは到底思えないからだ。上記のように日本語を誤れば、視聴者の代弁者という立場でもある議員たちから指摘されるのは自明だが、それを「くだらん」と切って捨てたのだ。

籾井氏はパブリック・サービスを行うNHKのトップだ。公共の奉仕者であり、政府与党のためだけの存在でないことは放送法を読めば誰にでも分かる。ところが、野党の民主党には最初から最後まで上から目線。「みなさまのNHK」はどこへ行ってしまったのだろう。

政府与党寄りのNHK会長と経営委員

半面、NHK問題については民主党も偉そうなことを言えた義理ではない。政権を担当していた2010年末から2011年にかけ、会長選びで混乱を生じさせた。

有力候補者が西室泰三・東芝相談役(当時)、安西祐一郎・前慶応義塾塾長(同)と二転三転。結局、新会長はJR東海元社長の松本正之氏に落ち着いたが、このときは野党だった自民党と対立するどころか、民主党内において思惑争いを繰り広げた。民主党も誰のためのNHKなのか分かっていなかったのだろう。あるいは、初めて政権を与えられて、浮かれていたのかもしれない。

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