【モスクワ=田中孝幸】ウクライナ中央銀行は3日、主要政策金利を19.5%から30%に大幅に引き上げることを決めた。親ロシア派武装勢力との停戦合意後も東部で不安定な情勢が続き、インフレと通貨フリブナの下落に拍車がかかっているのをくい止めるのが狙いだ。ウクライナ経済が混乱の度合いを増すなか、米ホワイトハウスはオバマ大統領が3日、欧州の首脳とウクライナ問題についてテレビ会議を開くことを明らかにした。
利上げは2カ月連続で、4日から適用する。中銀は2月に14%から5.5%の大幅利上げを実施したばかりで、わずか1カ月で金利は2倍以上に上がったことになる。中銀は同時に、輸出業者に外貨収入の4分の3のフリブナへの両替を義務付ける措置も発表した。
1ドル=16フリブナ程度で推移していたフリブナ相場は、東部情勢やウクライナの債務問題への懸念が広がった2月初旬から一気に下げ足を速め、対ドルで一時、同30フリブナまで下落した。
ゴンタレワ総裁は3日「一連の措置によって1ドル=20フリブナの水準に戻るだろう」と語ったが、市場には「東部情勢が今のままでは3カ月程度で1ドル=30フリブナに落ちるだろう」(投資会社アリパリのキエフ支店のアナリスト、アレクサンドル・ミハイレンコ氏)といった声が多い。
通貨安による輸入品物価の高騰でインフレも加速。1月に年率換算で約28%だった物価上昇率は2月に30%を超える見通しだ。
中銀はこの間、大規模なフリブナ買いの為替介入を繰り返したが、ほとんど効果が上がらなかった。外貨準備は2月1日時点で約64億ドル(約7700億円)と3カ月前の半分の水準に急減し、国際通貨基金(IMF)が最低限必要と定める輸入額の3カ月分を大きく下回った。
これ以上の介入が困難なことを踏まえて中銀は2月25日、外貨購入取引の禁止といった強硬策を打ち出したが、政府側の反対で効果が出ないまますぐに撤回に追い込まれていた。中銀は「残された最後の切り札」(政府高官)である利上げによって、為替相場の安定に向けた強いメッセージを発しようとしたとみられる。
ただ、利上げがもたらす資金調達コストの増加によって、民間投資や個人消費がさらに冷え込むのは必至だ。政府は今年の経済成長率をマイナス5.5%と見込むが、実際にはこれを大きく下回る公算が大きくなっている。
ウクライナは今年、債務不履行(デフォルト)を回避するため100億ドル規模の金融支援が必要としているが、IMFなどとの協議は遅れている。同国東部では親ロ派と政府軍の戦闘が散発的に続いており、停戦が定着するメドは立っていない。
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