2015年03月03日

内容は良いけれど、勝てないをどのように解釈すべきか:ゼロックス・スーパーカップ(ガンバ大阪対浦和レッズ)

 ガンバ大阪は今野が怪我のため欠場。ACLのスタメンから、小椋、米倉、阿部、パトリックをベンチへ。明神、オ・ジェソク、倉田、赤嶺をスタメンで起用した。昨年度は三冠を達成したが、日本代表に選ばれるのは遠藤と今野ばかりで宇佐美の乱が内外で起きていたことは懐かしい記憶。今季はスタートからパトリックと宇佐美のゴールデンコンビが始動できるのは大きなメリットになるだろう。

 浦和レッズは興梠が怪我のため欠場。ACLのスタメンから、ズラタン、石原、橋本、青木、宇賀神をベンチへ。李、梅崎、高木、関根、平川をスタメンで起用した。大量補強で注目を集める浦和レッズ。ベンチでくすぶる人材が増えるのかと思いきや、ガンバ大阪に続いてターンオーバーを実行。いわゆる生え抜き組のレンタル移籍も進み、終わりのときは近づいている気配だ。そうなれば、今季がまさに背水の陣となるのかもしれない。

  ■マイナーチェンジを見せる浦和

 大枠で言えば、変化と呼ぶべきかは曖昧になるかもしれない。浦和のビルドアップは3バック→4バックへの変化を合図にし、4-1-5の5トップによる数の暴力で相手に形の変化を強いる。アギーレ×日本代表では4バック→3バックにすることを常としていた。上記のようなDFラインの形状変化の目的は、ボール前進を容易にすることが狙いだ。相手の形と噛み合わせない、相手の形を自分たちの形によって変化させることによって、ミスマッチを起こさせることによって、危険な状態にボールを晒すことなく前進させていく。これらの行動の注意点は相手の形にある。相手の形によって、自分たちの形を変化させるかどうかを決定させるべきだ。闇雲に自分たちの形状変化させたところで、相手に変化が起きなければ意味が無い。

 浦和は常に形状変化を伴って試合をしていたと言っても過言ではない。その浦和が3バックのままビルドアップを行う場面が何度も見られた。とうとう相手の形を観るようになったといえるようになったかもしれない。浦和の3バックのビルドアップは両脇のセンターバックが横幅を取り過ぎて自滅する場面が何度か見られた。しかし、阿部と柏木のヘルプによって大きな破綻は見られなかったと言ってもいいかもしれない。また、槙野と森脇の運ぶドリブルによる打開も見られなかったわけではないので、今後に期待が持てそうな変化だ。

 ボールを保持する浦和に対して、ガンバは撤退守備で対抗。浦和のワントップツーシャドウは中央での数的優位、相手のセンターバックの孤立を狙った戦術だ。よって、中央に枚数を担保するために、浦和の5トップに対する答えはウイングバック帰陣だった。もしも、浦和が後方から攻撃参加していても、4バックに人あまりの状況が作れていれば、一対一の状況は作られど、数的不利になる場面を日常的に作られることはない。こうして、槙野たちの攻撃参加によるズレを作らせないガンバは上手くスライドで対応していく。浦和はサイドチェンジからの単純なクロスで新しい型を見せるが、今日はズラタン、石原がいないので、クロスは効率的とはいえなかった。ただし、ワントップツーシャドウに配置する選手によって、サイドチェンジからのクロスは効力を発揮するかもしれない。

 浦和の攻撃に問題があったとすれば、ワントップツーシャドウになる。彼らは狭いエリアで息をする、というよりは、決まった形をダイレクトプレーを織り交ぜて行うことで、狭いエリアを打開することが求められている。つまり、相手が側にいても、躊躇なくボールを受ける勇気が必要とされている。

 3バック変化の代償は槙野と森脇の攻撃参加の減少に繋がる。ウイングバックはサイドで孤立する場面が多く、ガンバのサイドハーフは守備をサボることがない。この場面でそれでも槙野と森脇に攻撃参加を求めるのか。それとも高木のようなサイドの選手が中央からサイドに流れることで、枚数をそろえるのかなどはまだまだ未整備のように見えた。特に高木はレアル・マドリーにいたときのディ・マリアロールのような動きでサイドにヘルプに行くと、ちょっと面白いかもしれない。

 場面がそもそも少なかったが、ガンバの攻撃はサイドバックの攻撃参加によって、浦和のシャドウの選手に守備を強いる狙いがあった。狙い通りに相手がついてこない場面も見られたが、いかんせん機会そのものが少なかった。浦和のボール保持時間が長かったことと自陣に撤退するばかりではなかった浦和の守備に少し手を焼いていた、もっと言えば、無理矢理にボールを持つ必要もなかったと判断したのだろう。

 後半になると、浦和は4バックへ変化からの槙野、森脇コンビの攻撃を解禁する。この変化により、サイドからボールを運ぶ、サイドから仕掛ける形が増えていく。ボールを保持するチームがなかなか得点を取れない、決定機を作れない時の最後の手段に大外からのダイナゴル侵入という技がある。いつぞやのバルセロナの得意技で、ときどきアウベスや懐かしのアビダル、そしてジョルディ・アルバがボールサイドでない逆サイドからクロスに飛び込んでいく形を思い出してください。浦和はこの形をときどきやっていたので、ちょっと驚かされた。クロスを大外からフィニッシュに繋げる、中央に折り返す形はどちらも効果的だ。前者はフリーであることが多し、後者は相手の視野をリセットすることができる。しかし、その決定機は関根が外してしまう。

 ズラタンの登場で、浦和の攻撃姿勢を見ると、ガンバはパトリックを投入。おそらく、カウンター機会が増えると予測したのだろう。カウンターが増えれば、セットプレーの機会も増える。そして、その狙い通りにパトリックの強さから最後は宇佐美が決めて、コーナーキックからガンバ大阪が先制点を決める。そんなできすぎたストーリー。

 浦和は予想通りにツーシャドウを全とっかえしながら攻勢に出るが、東口を焦らせる場面は特に作れなかった。焦った場面はバックパスの判定くらいだろうか。浦和は判定にも泣かされながら、最後に自分たちのミスからパトリックに独走を許し、試合は2-0で終わる。

 ■独り言

 スペイン人からこんな話を聞いたことがある。

 あれなんだ、スペインがワールドカップ、ユーロと覇権を握っていた時期があるだろう。でも、その前はなかなか勝てなかった。で、色々と話し合いがあったんだ。俺達はいつだってボールを保持する。試合をコントロールすることもできた。でも、相手のカウンターやセットプレーによって、そう、それは一瞬の間によって、試合で結果が出なかった。だから、俺らたちの目指している方向性が果たして正しいのかって疑問が、俺達の目の間に訪れたことは何度もあったよ。でもね、試合の分析をすればするほど、その方向性に疑問を持つべきではないって解答がいつだって示されたんだ。つまりさ、カウンターやセットプレーなどで負けることは基本的に繰り返されることではないはずなんだよ。わかるかい?俺達が負けたのはぶっちゃけたまたまなんだ。10試合やって1回負ける。それがこの試合で来てしまったんだ。もちろん、そのあとも同じような形で負けることはあったけれど、そのあとの俺達の覇権はみんなも知っているだろう?でもな、大切なことは課題を見つけて解決していくことなんだ。もしも、それを怠っているならば、何度やっても同じ結果になるだろうね。だから、俺達はそのちょっと変化ってやつがサッカーのチームにとって、とっても大事だってことを知ったんだ。分析して方向性は間違っていない。うん、そのとおりだ。でも、それは今のままでいいなんてことはないんだ。これを忘れてはいけない。

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