【英国のウィリアム王子来日 】被災地訪問に母の面影 英王室の「新たな顔」
福島県本宮市の子ども向け運動施設を訪問し、記念植樹する英国のウィリアム王子。奥は安倍首相=28日午後(代表撮影) |
▽新風吹き込む
来日した26日午後。雨の中、東京都中央区の浜離宮恩賜庭園にボートで到着した王子は、出迎えた地元の小中学生に「天気が悪いね」などと気さくに声を掛けた。
翌27日に訪れた横浜市の英連邦戦死者墓地。王子は記帳台に置かれた一冊のアルバムに目を留めた。1990年と95年にダイアナ元妃が同墓地を訪れた時の写真9枚が入っており、うれしそうに見入った。写真を提供した同市の英語塾経営 田村佳子 (たむら・よしこ) さんは「和やかな話し方がお母さんに似ている」と話した。
チャールズ皇太子(66)の長男として「英国王になるために生まれた」(英BBC放送)ウィリアム王子は2011年4月、一般家庭出身のキャサリン妃と結婚。皇太子とダイアナ妃の離婚やダイアナ元妃の事故死などをめぐる騒動で威信が揺らいだ英王室に新風を吹き込んだ。
▽社会貢献
第2子出産を控え今回は同行しなかったキャサリン妃(33)とともにウィリアム王子の人気はチャールズ皇太子を上回っており、英王室に詳しい英作家ヒューゴ・ビッカーズ氏は、日英両国の「未来志向の関係強化」を目指す訪問に「ウィリアム王子以上の適任者はいない」と断言する。
ウィリアム王子は、ダイアナ元妃がエイズ問題や地雷除去などに取り組む姿を見て育った。英王室の伝統を離れ、公務を減らして子育てにエネルギーを注いだ母の影響は大きく、自身も社会貢献への意欲は強い。
王子が日本に到着した26日、英王室は、王子が空輸パイロットの試験に合格し、この夏から救急ヘリコプターの操縦士として勤務を始めると発表した。
▽強い意向
28日午後、王子は福島県入り。東京電力福島第1原発事故を受けて、子どもたちが安全に遊べるようにと除染作業を経てつくられた本宮市の運動施設で子どもたちと一緒に遊び、夜には郡山市で安倍晋三首相と地元食材を使った料理を味わった。震災4年を前に、被災地の復興に役立ちたいとの王子の強い意向が感じられた。
しかし、英紙デーリー・テレグラフは、王子の福島訪問について「原発再稼働を目指す、安倍首相に利用されているのでは」との被災者の懸念を紹介。「(王子の)海外訪問で最も物議を醸すものになりそうだ」と指摘した。
日本訪問を終えた王子は3月1日、中国に向かう。滞在は同じ4日間。日本と同様に政治や経済、文化の各分野を網羅するイベントを並べ、日中の一方への偏重を避ける慎重さが透けて見える。
(東京、ロンドン共同=高橋伸輔、黒崎正也)