不十分な術前検査の末、肝臓を大きく切ったことによる出血や肝不全。腹腔(ふくくう)鏡手術後に患者8人が死亡した問題で3日、群馬大病院が公表した最終報告書は、執刀医らが手術前から退院後まで判断ミスやずさんな診療を重ねた連鎖が死亡につながったと判断した。
8人はいずれも第2外科の同一医師が執刀。報告書によると、肝細胞がんの患者の一人は手術翌日から体内で出血し、敗血症などで約2カ月後に死亡した。十分な検査をしないまま、肝臓と脾臓(ひぞう)を同時切除したのは負担が大きすぎた可能性があり「出血は手術操作に何らかの問題があった可能性が高い」とした。
別の患者は、炎症性のできものとの診断で切除手術を受けた。手術後に多臓器不全となり約1カ月後に死亡。病理検査の結果、病気は悪性リンパ腫で誤診と判明した。
胆管のがんで手術した患者は、退院後に腹水がたまり、同病院の救急外来を受診した。対応した医師は入院させずに帰し、患者は翌日に自宅で倒れて死亡した。報告書は「執刀医と救急外来の医師の連携が不十分だった」と指摘した。
他に、臓器の縫合がうまくいかずに感染症にかかった例や、手術中に何らかの処置ミスで出血が止まらなくなったとみられる例が複数あった。
野島美久病院長は3日の記者会見で「術前、術中、術後それぞれ問題があり、総合的に作用して死亡に結びついた。閉鎖的な診療体制が問題で、抜本的な改革が必要だ」と述べ、謝罪した。〔共同〕
群馬大病院