イケメン店員 美の先生 韓流コスメ 新スタイル
多くの化粧品ブランドが集客にしのぎを削る韓国に、店員が全員男性という新たなスタイルの化粧品店が登場した。店頭に立つのは韓流スターのような顔立ちの「イケメン」ばかり。彼らに「美」の手ほどきを受ける女性客はどんな気分なのだろうか。店内で開かれたメーク教室をのぞいてみた。 (ソウル植田祐一)
アイシャドー、チーク、ファンデーション…。ちりばめられた絵の具のような化粧品が並ぶフロアに、男性店員の穏やかな声が響いた。「誰でも美しくなりたいですよね。今日の主役はみなさんです」
おしゃれなカフェが並ぶソウル・三清洞。昨年10月にオープンした化粧品ブランド「ムーンショット」旗艦店で2月中旬、メーク教室が開かれた。応募した女性7人が商品の使い方を教わりながら、実際に店員からメークをしてもらう。
店員5人は全員男性だ。全員がモデルやタレントにメークを施すメーキャップアーティストの出身で、他の有名ブランドから移籍してきた。親会社は大手芸能事務所「YGエンターテインメント」だけに、韓流スターのように爽やかなイケメンがそろう。
「化粧品業界への新規参入で、差異化が必要だった。お客さんに『何か変われるかも』と感じてもらう狙いがあった」。白好鎮(ペクホジン)PR部長はこう明かす。
イケメン店員は海外でも話題になり、来店客の4割は外国人観光客が占める。女性客が帰国後、ブログに写真を掲載することもある。店員の姜汀昶(カンジョンチャン)さん(26)は「それを見た中国や台湾の人からファンレターが届いた」という。
ところで、すっぴん姿は彼氏にも見せたくないのが女心‐と思いきや、男性店員の手ほどきを受けたメーク教室の参加者は満足そうだった。ソウル市の会社員呉政殷(オジョンウン)さん(24)は「興味深かった。男性だからという驚きもないし、不快感もない」。
参加者には日本人もいた。ソウル在住で留学中の向久保聡美さん(34)は「イケメンに見詰められて緊張したけど、詳しく教えてくれた。男性目線のアドバイスは新鮮で参考になった」と笑顔を見せた。
韓流コスメに新風を吹き込む男性店員。店員を束ねる朴雨弼(パクウピル)チーム長(36)は「女性のメークは普通、しみなど顔の欠点を隠そうとする。私たちはその女性の長所、目なら目をよりきれいに見せるようにするメーク。観点が違うんですよ」と胸を張った。
=2015/03/02付 西日本新聞朝刊=