モータースポーツ > SUPER GT > MUGEN CR-Z GT マシン解説 > PART1 未来のレースを先取るハイブリッドシステムを解剖する
市販されているCR-Zは、1.5リッター直列4気筒VTECエンジンに、モーターを組み合わせたパワーユニットですが、MUGEN CR-Z GTは2.8リッターV6ツインターボエンジンを搭載しています。
GT300の車両規定では、同一メーカーの製造したエンジンに変更することが認められているため、市販車用の3.5リッターV6エンジンをベースに開発されたレース用エンジンを採用しました。このエンジンは、今年のル・マン24時間レースLMP2クラスで優勝した実績もあり、CR-Zのコンパクトな車体にレイアウトする上でも、V6エンジンの持つ全長の短さが利点になっています。しかしながら、レース専用に開発されたエンジンに比べれば、全体寸法がやや大きなものとなり、コンパクトなCR-Zに載せるレイアウトは難しい作業となりました。エンジンの最高出力は、SUPER GTのレギュレーションに合わせて吸入する空気量が絞られるため、221kW(300ps)程度に出力が抑えられています。
MUGEN CR-Z GTでは、エンジンをドライバーシートの後方、つまり市販車であれば後部座席にあたる位置にマウントするミッドシップ・レイアウトが採用されました。これは、エンジンを前方に配置するFFに比べて、車輪前後にかかる重量が均一に近づき、マシンの運動性能を上げるために必要な設計です。CR-Zのコンパクトな車体に、エンジンやミッションを組み込むスペースを確保するために、ドライバーの着座位置は市販車よりもやや前寄りになっています。ミッションはレース専用ギアボックスで、エンジン後部にレイアウトされ、後輪に動力を伝えています。
エンジン自体を冷却するラジエーター、およびインバーターとバッテリーを冷却するラジエーターは車両前部に設置され、ギアボックス側面に配置されたモーターを冷却するラジエーターは車両後部に設置されています。
「MUGEN CR-Z GTで使用するエンジンは、市販車用をベースとしたターボ過給エンジンなので、ターボラグをモーターのアシストで補填できればと考えています。ターボエンジンには、タービンの回転数が落ちたところからその回転を上げてターボ過給圧を取り戻すまでにトルク上昇がもたつく、いわゆるターボラグの問題があります。少し昔のレーシングエンジンでは、生ガスをタービンに流して燃焼させて、タービンの回転数を維持するといった対処的な工夫がなされていましたが、今回MUGEN CR-Z GTが搭載するターボ過給エンジンでは燃費を考慮する上でも、そのような仕組みをつけておりません。ターボラグの部分をモーターのアシストで補う方向を考えています。
我々はGTAと共同で、すでにNSX GTをベースとしたテスト車両でハイブリッドシステムの先行検討を行っていました。今回のMUGEN CR-Z GTには、そこで蓄積したノウハウを引き継ぎたいと思います。レーシングハイブリッドシステムにはいろいろな使い方があります。我々のシステムでは、パワーアシストに振った使い方以外に、燃費を追求する方法もあり、同じラップタイムで燃費効率を数%向上できるというデータがあります。
今後、コースによってアシストの制御は細かく変えていく必要があると思いますが、ラップタイムのアップか燃費アップかという方向性と、制御をMUGEN CR-Z GTにどう絡めるかという点にはいろいろな可能性があり、どのように有効に使っていくか、これから考えていこうと思います」
全長 | 4445mm |
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全幅 | 1940mm |
全高 | 1100mm以上(最大高さ) |
ホイールベース | 2555mm |
最低重量 | 1200kg以上 |
パワープラント | 2.8リッターV6ツインターボ+レーシングハイブリッド |
エンジン形式 | J35A |
最大出力 | 221kW(300ps)以上 |
モーター出力 | MAX50kW |
フレーム | パイプフレーム構造 |
タイヤ | BRIDGESTONE製 |
タイヤサイズ(前後) | 330/40/R18 |
(2012年JAF-GT300規定に準ずる)