イベントレポート

Androidは検討しなかった。最初からWindowsをターゲットに

〜マウスコンピューターが本気で取り組むWindowsスマートフォンの姿

マウスコンピューター平井健裕氏。手に持つのが同社が開発中のWindowsスマートフォン

 マウスコンピューターは、本誌読者にはお馴染みの日本のPCメーカーで、多くのPC製品をラインナップしている。同社は、ここ最近ユニークな製品を多数リリースしており、中でも2014年の暮れに発表されたスティック型PCは、未だに品不足で購入するのが難しいほど人気を博している。また、LTEモデムを内蔵したWindowsタブレットを販売するなど、ここ最近ではセルラー通信機能を内蔵した製品に取り組んでおり、時代に即した形のコンピューティングデバイスをユーザーに提案し続けている。

 そうしたマウスコンピューターが次のターゲットとしているのが、スマートフォンだ。同社は2月にWindows Phoneの開発着手を発表したが、MWCでその端末を公開した。

スマートフォンに参入するなら、既存ITシステムと親和性が高いWindowsを考えていた

マウスコンピューターが開発中のWindowsスマートフォン

 同社製品企画部部長の平井健裕氏は「弊社はデスクトップPCに始まり、ノートブック、タブレット、そしてスティック型PCのようにTVに接続されるデバイスとラインナップを広げてきた。その最後のピースとしてスマートフォンに参入したいと考えていた。もちろん、MVNOの通信キャリアが成長してきたことも大きな後押しになっている」と語る。

 その上で、「今回のスマートフォンを出すにあたり、Androidを採用した製品というのは検討してこなかった。Androidスマートフォンであれば、もっと早いタイミングで出すことができたが、弊社としては弊社のお客様が使っている現在のWindows PCとの親和性や、デバイス管理の容易さなどを評価しており、最初からWinodwsでスマートフォンにも参入しようと考えてきた」と、スマートフォンのビジネスに参入するにあたり、当初からWindowsをターゲットに考えてきたのだと説明した。

 Windows Phone 8.1は、AndroidやiOSなどに比べると操作体系が若干異なるため違和感を感じるユーザーも少なくないが、現在Windowsを利用していて、スマートフォンへと移行するユーザーにとっては同じ作法で利用することができるので逆に乗り換えるは容易になる。

 また、Windows Phoneに実装されている管理機能なども、既存のエンタープライズITの管理者からすれば、Windowsの作法で利用できるため、管理がしやすいという点が法人顧客から評価されている。

 マウスコンピュータとしてはそうした点を評価し、これからスマートフォンにするならWindowsに絞って製品を展開していく計画なのだという。

 このため、現時点では同社のロードマップには、Androidスマートフォンはなく、存在するのはWindowsスマートフォンだけだ。「Windowsスマートフォンに関しては長期的なロードマップを持って取り組んでいきたい、今回の製品はミッドレンジ製品となるが、近将来にはもう少し上のクラスの製品展開を考えている」(平井氏)と、既にその先の製品も検討開始しているとのことだった。

 ユーザーにして見れば、業務利用を想定してスマートフォンを購入しても、将来それを置き換える製品が出なければ安心して利用することができない。中長期的にWindowsスマートフォンがリリースされる計画があるというのは安心できる材料と言えるのではないだろうか。

5型HD液晶、Snapdragon 410、1GBメモリ、8GBストレージというスペック

 今回マウスコンピューターが公開したWindowsスマートフォンは、現在試作段階のプロトタイプだが、既に同社のロゴが入っている状態。現時点ではタッチパネル周りの仕様について、ハードウェアのタッチボタンをつけるのか、それともソフトウェアボタンで行くのかなどを最終調整している段階。

 筆者が触った試作機は、ハードウェアのタッチボタンだが、印刷がないという状態だった。そうした点を含めて、まだ開発段階ということで、スペックも確定していない。以下のスペックは、その試作機を触って分かった仕様ということになるので、その点はご了承頂きたい。

 液晶ディスプレイは5型で1,280×800ドット。パネルの種類までは分からなかったが、横から見て視野角は広いと感じた。SoCはMSM8916となっており、Snapdragon 410ということになる。MSM8916は、Cortex-A53のクアッドコアで、Adreno 306をGPUとして内蔵している。メモリは1GB、ストレージは8GBで、裏蓋を開けたところにはmicroSDカードスロットがあなる。カメラは800万画素(背面)、200万画素(前面)となっており、バッテリの容量は2,300mAhだった。

 モデムに関してはLTE(FDDのみ)に対応するが、対応バンドに関しては現時点では分からなかった。平井氏によれば「今回の製品は日本市場だけをターゲットにした製品で、PCBに関しても弊社カスタムで作っている」とのことなので、基本的には日本の通信キャリアがサポートする帯域に対応した製品になりそうだ。日本では3キャリアがそれそれ異なる帯域を利用しており、どのキャリアの帯域に対応するかも現時点では未公開ということだった。なお、SIMカードは、Micro SIMとなっていた。

 製品の価格やリリース時期に関しては、発表時点と一緒で未定とのことだったが、平井氏が述べた通り、この製品はミッドレンジということなので、筆者の勝手な予想だが、2〜4万円あたりを狙っている製品となるのではないだろうか。なお、OSに関しては「Windows Phone 8.1 Updateでリリースする」と平井氏から明言があったが、リリース時にさらなる最新版がでればそれを適用して出す予定だという。

 なお、気になるWindows 10へのアップグレードに関しては、「現在提供されているWindows 10のテクニカルプレビューで、ストレージが小さいLumia向けには提供されないことからも分かるように、技術的な課題も有り、それを解決することが可能であればアップグレードは前向きに検討していきたい」と言う。

 販売に関しては、基本的には既存のマウスコンピューターの販路(Web直販、店頭販売、大手量販店など)が利用されるほか、「開発着手を発表してから、MVNOキャリア様からの問い合わせも沢山頂いており、現在調整中」とのことで、MVNO SIMとのセットなども検討していきたいとのことだった。また、「この製品は法人顧客に訴求力がある製品となるので、法人顧客に向けたチャネルも検討していきたい」としている。

上部にはMicro USB端子とヘッドフォン端子
左側面にはボリュームボタン
右側面には電源ボタン
裏蓋を開けたところ、Micro SIMスロット(手前)とmicroSDカードスロット(奥)がある
Micro SIMカードを装着したところ
縦は約142mm
横は約70mm
厚さは8〜9mm程度だった。
システム情報では、モデル名がM54TE、無線のハードウェアのところでMSM8916であることが確認できた

(笠原 一輝)