6
風を切る音の次に、ざぶんと海に勢いよく沈みこんだ音が鼓膜を震わす。
わたしは何とか無事に飛び込めたことに胸をなで下ろした。
ここで暮らすようになってすぐに島と周辺の海を調べたので、どんな地形で安全な場所と危険な場所はどこかなど、必要なことは熟知している。
もちろん、この崖下の海に岩など危ない物がないことは確認済みだ。そうでなければ、こんな命綱なしのバンジージャンプ、自ら進んでやろうとは思わない。岩に叩き付けられて死ぬなんて嫌過ぎる。痛いのは嫌いだ。
海に入ると同時に閉じた目を開け、周りを確認する。結構深くまで沈んだようだ。誰かが追いかけてくる様子もない、とほっとした次の瞬間。
バシャンッ! とものすごい勢いで『何か』が海に沈む音が、もう一つ響く。
――まさか。
泡の向こうに見えた『何か』の姿に、わたしは盛大に顔を引きつらせた。先ほどの少年が、一直線にわたしを目指して泳いでくるではないか!
うわわわっ、と内心大いに慌てる。
飛び込んでくるなんて思わないじゃないかっ。
しかし、逃げようと手足を動かしたと同時に腕を捉えられてしまった。
――速っ。泳ぐのが異様に速いぞ! 反則だ!
何とか逃げようと暴れたが、わたしの必死の抵抗をものともせずに乱暴に海面まで連れて行かれる。そしてお互いに外の空気を吸った同時に――
『この馬鹿娘! 死にたいのか!!』
なぜか怒鳴られた。
『殺しはしない。だから暴れるな。大人しくしていろ』
分かったな? と吐息が触れるほど近くで言われる。けれどわたしは彼の剣幕に身体が硬直していたため、何も反応できず、なすがままに海岸へ連れて行かれた。
うう、耳がキーンとする。こんなに間近で怒鳴られたのは人生初だ。一生忘れられない思い出になりそう。
少年が向かう岸を見るのが恐ろしくて海を見つめ続けていたが、とうとう辿り着いてしまった。
『着ていろ』
言葉と同時にばさりと少年が着ていた上着をかけられる。思わぬ優しい行為に、つい顔を上げてしまう。そして目に入った光景に、わたしは泣きたくなった。
武装した男達がそれぞれの得物を手にわたしを囲んでいる。どこにも逃げ場がない。どいつこいつも体格が良くて、無駄に腕っぷしが強そうだ。
わたしの見た目が非力な少女だからか、必要最低限の警戒はしているものの彼らに緊張感はなかった。むしろ好奇の眼差しからは余裕さえ感じられる。だというのに、ほんのちょっとの隙でさえ作れそうにないのだ。
くそう、完全になめられている。
その事実が非常に腹立たしく、なんだか喚きたい気持ちになった。
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