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Into the Ocean 作者:no name

5

 わたしは島の海岸に停泊する船を見て顔を引きつらせていた。ちなみに今いる場所は巨木の幹の上である。覆い茂る葉に身を隠しながら、島に入る人間を観察するには絶好の場所だからだ。
 いくら平和な日本で過ごしてきた世間知らずといえど、すべての人間が善良ではないということぐらい分かっている。なので信用するに値する者たちかどうか見極めようと思ったわけなのだけれど。
 ――船でかっ!
 そうなのだ、びっくりするほど大きな船。あれほど離れていても捉えることができたのだから、現物はそりゃ大きいはずだ。それも一隻ではなく五隻! 迫力がすげー。でもって、船の横にずらりと並ぶ大砲の見事なこと。
「……やばい人達?」
 まさか本当に海賊とかだったりして。……笑えねえっ。
 一人突っ込みをしながら、じっと船を見つめていると、梯子から人が次々と降りてきた。皆似たような恰好をしている。なぜか野郎ばかり。
 何よりも目を引いたのが、遠くからでも鋭い光を放つ武器。
「…………物騒な」
 あれ、嘘、海賊? それとも騎士とか軍人とか、そっち系?
 多くの男達は剣だが、中には斧……普通の斧じゃなくて、いわゆる戦斧を持っている危ねえ奴までいる。それに銃まで携帯していることが分かった。なんで分かったかと言うと、銃声が聞こえたからです。
 じわりと手の平に汗が滲む。わたしは小さく息を吐き、結論を出した。
 ――逃げよう。
 絶対危ない奴らだ。捕まったら『最後』ではなく『最期』な気がする。
 心配そうにわたしを見守る竜達に「大丈夫だよ」と微笑み、木から降りるのを助けてもらう。
(わたしは海に身を隠すから、心配しないで)
 竜達に伝え、人間達がいない方へ早足で向かう。
 本当は走りたいけれど、素足なのだ。非常に残念なことに。だが言い訳をさせて欲しい。こちらに来る前は夏休みで、海で一人遊んでいる最中だったのだ。靴など履いているわけなかろう。
 いつ見つかるかと冷や冷やしながら林を抜けた時だ。
 視界の端に、鮮やかな金髪が見えた。
 ――嘘、そんな。
 林を歩いていたのは、一人の少年。彼は一瞬瞠目したけれど、すぐに鋭い視線を向けてきた。いつの間にか手には銃が握られている。
『――何者だ。なぜここにいる? ここは不可侵の聖域。どうやって探し出した』
 敵意の滲む声音に、どくんと心臓が大きな音を立てる。まったく聞いたことがない言語。それもそのはず。ここはわたしの知る世界ではない。ここは異世界なのだ。
 なのにどうして、すらすらと意味が分かるのだろう。
『答えろ』
 しばらく膠着状態が続き、少年が焦れたように一歩足を踏み出した、その瞬間。わたしは反射的に海へと走り出した。
『待て!』
 背後で怒号が上がる。けれどわたしは止まらなかった。
 目指すは切り立つ崖の下に広がる海。少年の声に他の男達も集まってきている。
 ――嫌だ、捕まりたくない。あともう少し、もう少しで海に逃げられるのに!
 足に感じる鋭い痛みを無視して走り、そして。
『なっ!?』
 聞こえたのは、驚愕の声。彼が驚くのも無理はない。なぜなら――

 わたしは、何の躊躇もなく崖から飛び降りたのだから。
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