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Into the Ocean 作者:no name

4

 無人島生活を始めてちょうど二週間が経った。物に溢れる平和な日本というぬるま湯につかってぬくぬくと育った苦労知らずの温室育ちであるわたしに、サバイバル生活などできるのだろうかと当初は不安だった。しかし、なんとか生活できている。というか、竜たちによって守られながら快適な島ライフを送っていた。
 南国の天候なので夜でも冷え込むことなく眠れるし、竜たちがどこからか持って来てくれた葉っぱのおかげでふかふかの手作りベッドもある。島にはありがたいことに果物が豊富だったので、ずっと果物生活だ。栄養バランスの偏りがそろそろ身体に現れそうで少しばかり恐ろしいが。
 それに二、三日に一度、美龍さんがこの島を訪れた。どうやらわたしの様子見に来てくれているらしい。美龍さんが来た時は、海を一緒に泳ぎ、夜は彼(いや、彼女だろうか?)と共に寝ている。そしてやっぱり不思議なことに、海の中では息ができるのだ。まるで人魚のようで、結構楽しい。
 そういえば、この世界に来てから生き物に好かれるようになったらしく、鳥やら魚やらがわたしの周りに集まるようになった。なんとなく彼らの言葉がわかることも面白い。実際にしゃべっているわけではないけれど、彼らの伝えたいこと――意思がイメージとなってわたしに伝わる。そのせいか、わたしの意思も向こうに言葉にせずとも伝わるらしい。
 もしかしたら超音波なるものを発せられるようになったのかもしれん。すごいな、わたし。日々進化しているぞ。
 相変わらず良すぎるほどに良い天気。降り注ぐ陽光が海面で揺らぐ様子を、海の中から見上げていた時だ。
 ふと、海に響き渡る聞きなれぬ音が聴こえた。わたしの周りを漂うイルカたちの様子もおかしい。
(どうしたの?)
 一匹のイルカを宥めるように触ると、イルカは小さく鳴く。

 ――何かが来る。

(何か? もしかして……人?)

 ――この島に。

 伝わるイメージは、わたしを心配し、何かの訪れを怖がるものだった。
 よしよし、大丈夫だよー。わたしは平気。
(遠くへお行き。しばらく来ちゃ駄目だよ)
 わたしの念話(?)なる言葉に、イルカたちはそれぞれ鳴くと、すいすいと見事な泳ぎで島から離れ始めた。
 それを見送り、再び『音』に耳を澄ます。……近づいている。
 わたしは海面にぷはっと顔を出し、遠くを見つめた。豆粒のように小さな影が水平線に浮かんでいる。――船だ。
「海賊だったら嫌だなあ……」
 この世界が平和な世界であることを願いつつ、わたしは急いで島に戻った。
 後から思えば、わたしも海で隠れていた方が良かったのだ。けれど、この世界に来て初めて人に会える嬉しさと、助かるかもしれないという希望、単調な日々に訪れた未知のものへの好奇心から、浮き立つ心のままに島に戻ってしまった。
 そして最良の選択を判断できないくらいには、船の来訪に動揺していたということに、この時のわたしはまだ気づいていなかった。
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