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龍が辿り着いたのは、一つの島だった。巨木が立ち並ぶ様は圧巻で、そしてどことなく異様な雰囲気を醸している。
人が居そうにない。得体の知れない生物がたくさん居そう。猛獣が出てきそう。
美しい龍、略して美龍さんは島の海岸に寄ると、長い首をぐるりと回し、わたしをじっと見つめた。
ええと。これは、その、降りろと言うことでしょうか。
ぽく、ぽく、ちーん。
はい、分かりました! たぶんそういうことですね!
いそいそと美龍さんの背から降りる。けれど龍はどこかに行く様子はなく、まだじっとわたしを見つめている。なので、わたしもじっと龍を見つめ返した。
きれいな目だなあ。
ほうと、わたしは感嘆のため息をこぼした。
まるでこの海を嵌め込んだかのような、澄んだ深い青の瞳。けれど陽射しや月光によって色彩を変える海面のように、銀色のような、灰色のような、そんな複雑な色が所々混じり合っている。
わたしが観察している間、龍も同じく『わたし』という生き物を観察していたらしい。龍はふと、わたしに顔を近づける。そしてその口を、わたしの額にそっとあてた。
「ほわ」
思わず変な声を出してしまう。
わたしは美龍さんの突然の行為に驚いていると、龍はすっと身体を引き、満足そうに目を細める。そして、海の中へと沈み、どこかへ行ってしまった。
んー……、一体なんだったのだろう。
わたしは腕を組んでしばらく考えてみたが、すぐに考えることを放棄した。
まずはこの島を調べてみよう。もしかしたら、そう、もしかしたら人がいるかもしれない。そんな希望的観測の可能性は、この時点ですでに絶望的ではあるが。
日差しの強さにくらっとしつつ、わたしはぶらぶらと歩き始めた。びしょ濡れの白いワンピースはそのうち乾くだろう。
髪の毛を絞ろうと、髪に手をやり――わたしは絶句した。
「んなっ」
髪が、わたしの髪が!
「白い!?」
なんてことだ、実はこの状況に自分でも気づかないほどショックを受けていたのだろうか。それで一気に白髪に? 嘘だろう。
「かみは死んだ」
髪と神をかけてみた。我ながら上手いことを言うねえ。……って、いかんいかん、現実逃避なんぞしている場合ではない。
髪をもう一度よく見てみれば、白いというよりも、白っぽい銀色という表現のほうが近い気がした。でも淡い水色のようにも、白金のようにも見える。そういえば、これとよく似た色合いをどこかで見たような。
「美龍さん」
そうだよ、美龍さんの鱗の色だ。なあんだ、じゃあ奇麗だからいいかー。
わたしは気分を浮上させると、髪色は気にしないことにして――うん、大丈夫、気にしない気にしない――島の探索を再開した。
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